イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米シングルチャート、ヒップホップ勢が半数を占める

ビルボードシングルチャートを定点観測。 祝日の関係上一日遅れて日本時間の水曜早朝に発表された、1月14日付最新チャート。レイ・シュリマー feat. グッチ・メイン「Black Beatles」がザ・ウィークエンド feat.ダフト・パンク「Starboy」から首位を奪還、「Starboy」は3位に後退しました。

「Black Beatles」も「Starboy」も、ストリーミングおよびラジオエアプレイはともに微減。しかし勝敗を分けたのはデジタルダウンロードの差。「Starboy」が前週比18%上昇に対し「Black…」は同120%もの上昇を果たしたのです。「Black…」の急伸はどうやら、クリスマス商戦で50曲を安価販売した影響によるものとみられます(ゆえに、「Starboy」は10万超えのダウンロードを果たすものの同部門11位という結果に。ただし「Starboy」は前週、69セントの安価販売を独自に行っているため今週は伸び率が低い結果に)。

そして「Starboy」を飛び越えて2位に入ったのはミーゴス feat. リル・ウージー・ヴァート「Bad and Boujee」。前週13位から急上昇し一気にトップを狙える位置に。

ドレイク&フューチャー「Jumpman」をサンプリングしているというこの「Bad…」のヒットの要因は様々。このライブパフォーマンスツイートが3万近いリツイートを稼いだこと、

2000年のアメリカ映画『グリンチ (原題:How the Grinch Stole Christmas)』とのマッシュアップ動画が紹介されたこと、

さらにはこの曲を聴くと赤ちゃんが泣き止むという動画も…

最後の理由は”タケモトピアノか!”と思わずツッコんでしまいますが、それだけ生理的に癖になる音なのでしょう。他にも要因があるようですが、それらが集計週に連続で発生したことが「Bad…」の急伸に繋がった模様。「Black…」も”マネキンチャレンジ”がもたらした大ヒットであり、ヒップホップとSNSとの親和性は高いんだなということを、上位2曲からは強く感じずにいられません。

その他上位陣にはあまり大きな動きはありませんが、D.R.A.M. feat. リル・ヤティ「Broccoli」がデジタルダウンロード部門で前週比281%もの伸びをみせ、総合で5ランク上昇し10位に再浮上。トップ10にヒップホップ5曲という事態となっています。

 

 

来週はデジタルダウンロード安価販売効果がなくなるでしょうから、またも大きくチャートが変動する気がします。今週新たにトップ20入りした下記楽曲の動向にも注目しましょう。

・16位 ジョン・ベリオン「All Time Low」(前週24位)

ジョン・ベリオンは『エミネム&リアーナ“The Monster”(全米チャート/全英チャート1位)の作者のひとりで、ジェイソン・デルーロ“Trumpets”(全英4位)のプロデューサーとしても知られる新進気鋭のシンガー・ソングライター/プロデューサー』(bmrより)。この曲に様々なバージョンがある他、才能ほとばしる(ゆえに暴走する?)曲もあって、非常に気になる存在だなということを下記ブログを読んで実感しました。

勝手ながらブログを貼らせていただきます(問題があれば削除させていただきます)。

 

そして。

・20位 ナイル・ホーラン「This Town」(前週37位)

ワン・ダイレクションのメンバーによるソロ作。脱退したゼイン(・マリク)がR&B寄りにシフトした一方、ナイルはカントリーに移行するのでしょうか。

 

他にもショーン・メンデス「Mercy」(→YouTube)は前週28→17位。確実にヒット曲を輩出していますね。

我らがラジオ番組的正月の音楽

遅ればせながら、元日の『わがままWAVE It's Cool!』(FMアップルウェーブ 日曜17時)にお付き合いいただきありがとうございました。新年一発目の生放送、めずらしくメッセージテーマを設けずフリーとしたのですが、様々なメッセージをいただき嬉しい限りです。こういうテーマ設定もアリかもしれませんね。

 

一昨日の音楽特集は干支にちなんで【鳥】。選曲担当したフレッシュフグササキさんによる渾身の一発、FANATIC◇CRISIS火の鳥」をかけたところ、起き抜けにラジオつけたら流れていて驚いたという声もいただき(その反応が嬉しかった!)、またなにより生まれてこの方ここまで”ファナティッククライシス”という言葉が連呼されたのを聞いたことがなかったためなかなかツボでした。ササキさんのいうようにたしかに『聖闘士星矢』の必殺技っぽいですね。

 

さて、正月を代表する音楽といえば「春の海」であり、そこで用いられている尺八…なのですが、今回は同じ尺八を前面に出したこちらをトークBGMに使うことに(これもササキさんのアイデア)。これが結構ハマってましたね。

一番インパクトがあったのは実はテイラー・スウィフトのカバー「Shake It Off」でした(動画はなし)。フルアルバム、その名も『SHAKUHACHI』はApple Musicで聴取可能です。

たとえばマイケル・ジャクソンの「Smooth Criminal」は2CELLOSによるチェロでのカバー(→YouTube)も知られていますが、まさか尺八でポップカバー集とは…と驚き。しかしながら和楽器つながりで相性の良い三味線をフィーチャーすることにより音が補完され、格好良く仕上がっています。それでも、さすがにAメロにすきの多い「Shake It Off」のメロディを尺八で奏でるのにはビックリ。喋り手陣も驚いてたのが印象的でした。

 

こんな飛び道具(といったら失礼かもしれませんが)を曲として、BGMとしても用意するのが『わがままWAVE It's Cool!』なのです。よかったらサイマル放送でも聴けますのでFMアップルウェーブのホームページ経由で是非。今年も番組をよろしくお願いいたします。

椎名林檎「青春の瞬き」を手掛けた冨田恵一の美しきアレンジ集

昨年の『NHK紅白歌合戦』については後日きちんと触れるとして、個人的な白眉のひとつは椎名林檎さんによる「青春の瞬き」でした。周囲では東京事変再結成!という喜びの声や、SMAPとの関連を指摘する声(紅白で『青春の瞬き』を歌った椎名林檎、SMAPに哀悼の意があった?「粋な演出」「東京事変がまた見られるなんて」という声も - Togetterまとめ参照)が溢れていましたが、個人的な喜びは、冨田恵一氏によるプロデュース曲がほぼフルで流れたことにあります。

このミュージックビデオは『やり直しの利かない今この瞬間の美しさと儚さが表されている』のだそう(椎名林檎、5/27発売のセルフカバーアルバムより“青春の瞬き”のMVを公開 (2014/05/14) 邦楽ニュース | ロッキング・オンの音楽情報サイト RO69より)。

 

椎名林檎さんとの相性の良さは、冨田恵一氏のミュージシャン名義、”冨田ラボ”でのアルバム『Joyous』(2013)にボーカリストのひとりとして招聘されたときに感じていました。原由子さん、横山剣さん、さかいゆうさんという錚々たる面子の中で、多様な表現と芯の太さ…その凛とした存在感は特に素晴らしかったと記憶しています。それが冨田氏独特のアレンジ(特に弦楽)と高い次元で混ざり合う様は見事でした。

4人でのボーカル曲は、ミュージックビデオ未制作ながら「都会の夜 わたしの街」のほうがより好みだったりします。特に『兎に角椎名林檎の声が入ってきたところで鳥肌』なのです(2013 JP Songs Best(2013年12月31日付)より)。いずれ、冨田恵一氏のアレンジでもう数曲作っていただけたなら…と願わずにはいられません。

 

 

独特な冨田恵一氏のアレンジメントは、以前リリースされた作品集『冨田恵一 WORKS BEST ~beautiful songs to remember~』で堪能出来ます。下記インタビューサイトも参照にしてください。

作品集には、氏が手掛けたおそらく一番のヒット曲であろうMISIA「Everything」が未収録なのがなぜなのかは解らないのですが、氏独特の手腕はきっと病みつきになるはずです。下記に、作品集に未収録だった、個人的に好きな作品を紹介しますので、冨田氏の音世界をどうぞご堪能ください。

2017年一発目の音楽はカウンターパンチ

あけましておめでとうございます。

 

 

NHK紅白歌合戦』で2016年を終え、2017年は『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(TBSラジオ)で幕開けた自分。カウントダウン後、RHYMESTERによるスタジオライブの一曲目がとにかく大好きな曲だったので共有させてください。

RHYMESTER「ONCE AGAIN」(2009)

歌詞はこちら。昨年も”己にその中指を”立てまくった自分にはキツいカウンターパンチをくらいましたが、それだけ今の自分には必要な歌でした。”生身のままでそれに耐え”、今年の終わりには親指を立てられるような一年にします。

 

 

ちなみに番組終わり、『紅白』を終え、『CDTV年越しプレミアライブ!』(TBS)を控えた星野源さん…をよく知る男(という体の)、ラジオネーム”スーパースケベタイム”師匠がちらっとスタジオに寄った模様。きちんと挨拶に伺う師匠の律儀さ、素敵でした。宇多丸さんと星野源さんについてはこちらに詳しく載っていますので是非(勝手ながら紹介させていただきます)。

 

紅白雑感は明日にでも。

2017年もよろしくお願いいたします。

もしも日本版グラミー賞があったなら…主要部門ノミネーションをシュミレートしてみる

西野カナさん、おめでとうございます。

 

 

結局、『輝く!日本レコード大賞』(以下レコ大)は、今秋報じられた疑惑を自ら晴らすことはありませんでした(ただし選ばれた人を責めるのは違うと思います)。が、同時にいやそれ以上に、それを元にした誹謗中傷が多くて辟易したことは以前触れたとおりです。優秀作品賞のラインアップを見るに、レコ大の良い意味での変化も見出すことは出来ましたが、双方(レコ大自体、そしてレコ大に誹謗中傷しか出来ない者自体)が変わらないと、日本の音楽業界に未来はないと思います。

 

レコ大においては放送局の定期的な変更や放送時期の変更によって、買収問題は発生しにくくなると思いますが、”日本の音楽業界の未来”という点においては、シングルCDセールスのみにこだわらない姿勢、そしてたとえば日本版グラミー賞の創設が必要になるように思うのです。前者は既に今年の優秀作品賞一覧を見るに叶えられているように思いますが、”社会的にヒットした曲”、”曲そのものが純粋に優れているもの”、”最も優れたアルバム”、”最も優れた新人”という主要4部門を(分けて)確立したほうがより説得力ある気がしますし、その賞が本場アメリカのお墨付きをもらえたならば、日本の音楽がグローバル化しやすい(世界に伝わり、新たな市場開拓を行いやすい)という意味においてもプラスではないかと考えます。

 

 

昨日は私的邦楽ベストを掲載した際、日本版グラミー賞云々と言及したのですが、日をおいて少し客観的になって、実際に日本版グラミー賞があるならばどんなラインアップになるだろうか…を仮定してノミネーションを考え、載せてみることにしました。あくまでも仮定ですので、”これが入っていない”というクレーム等はご遠慮ください。

○日本版グラミー賞 主要4部門ノミネート一覧

 ・対象:2015年12月~2016年11月発売の作品より選出

     (なお、米グラミー賞は2015年10月からの一年間)

 ・新人賞(Best New Artist)についてはメジャーデビューしてからシングル3枚以上、もしくはアルバム1枚以上リリースした歌手が対象(だが、その限りではない)

 

Record Of The Year (最優秀レコード賞)

宇多田ヒカル花束を君に

・浦島太郎(桐谷健太)「海の声

欅坂46サイレントマジョリティー」

星野源「恋」

RADWIMPS前前前世(movie ver.)」

 

Song Of The Year (最優秀楽曲賞)

宇多田ヒカル花束を君に

AKB48365日の紙飛行機

Suchmos「STAY TUNE」

星野源「恋」

RADWIMPS前前前世(movie ver.)」

 

Album Of The Year (最優秀アルバム賞)

宇多田ヒカル「Fantôme」

スピッツ「醒めない」

・BABYMETAL「METAL RESISTANCE」

星野源「YELLOW DANCER」

RADWIMPS人間開花

 

Best New Artist (最優秀新人賞)

岡崎体育

欅坂46

・JY

D.A.N.

・METAFIVE

ビルボードジャパンの年間チャート(特に最優秀楽曲賞においてはラジオエアプレイも強く加味)、タワーレコードのフリーペーパー『bounce』に掲載された”OPUS OF THE YEAR”、最優秀レコード賞においては曲の浸透度とも関連するカラオケランキングなどを参考に、努めて客観視はしながらも独断に選出。ちなみにアルバムにおいては、他のメディア(特に音楽雑誌)において質に基づくランキングが記載されているはずですが、インターネットに登場していないので参考には出来ませんでした。音楽雑誌を売りたいがためのネット未掲載というのは解らなくはないものの、国内はおろか海外にも音楽が伝わらず…というのは機会損失ではないかと思うんですよね。海外メディアではこんなにランキングが公表されているわけですから。

今年の音楽賞の軸は宇多田ヒカルさん、星野源さんそしてRADWIMPS(サントラ含む)であることは間違いないでしょう。そこにシングルCDセールスと共に他指標の高さも相俟って一気にブレイクした欅坂46や、auCMソングに起用されDAMおよびJOYSOUND双方の年間カラオケランキングを制した「海の声」も入ってくる混戦となるでしょう。曲の格好良さで年末にホンダヴェゼルのCMソングに起用されたSuchmos「STAY TUNE」は「MINT」共々高いラジオエアプレイを誇りその曲の好さが証明された形ゆえ選出…といったところでしょうか。とにかく絞りきれないのでこのあたりで。

 

 

仮にレコ大が納得いかないのであれば、何が原因なのか?どうすれば解決出来るか?を自問自答して、どうしてもダメだと思うなら触れないのが最善です。ダメだと思うものを虐げる気持ちで祭り上げようとする人が多いのが炎上だと思うのですが、でもその執着心を持ち続けることは体力的にも精神的にも、そして時間もロスしている気がして勿体無いなあと。少しでも変わって欲しいと願うならば罵倒ではなく提案提言で…そのほうが相手は聞く耳を持ってくれる可能性が俄然高まります。そのスタンスで今回このようなエントリーを記載した次第です。

 

 

 

というわけで、今年1年ありがとうございました。ブログは昨日を持って丸2年間、1日も途切れず更新出来ました。ラジオも【人間交差点フェス】参加日を除き全てに参加。自分にとって自信になった気がします。かなり真面目な内容多くもう少し軽くなれたならと思いますが…来年もよろしくお願いいたします。

2016年私的邦楽ベストソング集

毎年行っている、あくまで私的な選曲集。まとめてみました。

<2016年私的邦楽ベスト (2016年12月28日作成)>

◯ 作成時のルール

 ・今年発売されたシングル、またはアルバムからの先行配信曲で、基本的にミュージックビデオが制作された曲から選出(ただし一部例外有り)

 ・1組の歌手につき1曲、ただし主演と客演は別とする

 ・1枚のCD-R(80分弱)に収まるように編集、歌手名の前の数字はトラックNo.であり順位ではない

YouTubeにミュージックビデオが掲載されている曲はYouTubeより引用、弊ブログで言及している曲にはブログのリンクを掲載

 

では一曲毎に紹介。

 

01. NakamuraEmi「YAMABIKO」

オーガスタからこんな新人が出るとは想起出来ずいい意味で裏切られた感。このようなアコースティックファンカーがメジャーに登場するというのは嬉しいですし、10年前まで四谷天窓などのアコースティックライブハウスに足繁く通っていた身にはノスタルジアも感じた次第。”頂上の高さなんて隣と比べるもんじゃない”という歌詞はとりわけ刺さるものがありました。

 

02. PUSHIM「Feel It」

ベテランの彼女がレコード会社を移籍、レーベルオーナーとなって放つ第一弾アルバムからの先行曲。”さぁ ありのまま Let it go”というフレーズは一昨年多用されともすれば古臭さが拭えませんが、姐さん(親しみを込めて)が言うと本当にそうだよなあと思い知らされます。ポジティブに行こうという姿勢、そして大袈裟かもですが多様性の尊重(これ、それこそ『アナと雪の女王』のテーマとも聞きます)という今年の世界のトレンドをいち早く伝搬した意味でも重要ではないかと。PUSHIMの黒いグルーヴに身も心も委ねてみる(1月17日付)にて記載。

 

03. 三浦大知「Cry & Fight」

三浦大知の『Mステ』出演を祝う(5月7日付)などで触れているのですが、番組出演(今年3度も!)により一気に知名度を増した彼による今年第1弾シングル。盟友UTA氏と、初参加のSeiho氏との制作で生まれた(Seihoの「Plastic」な音がダンスシーンを変えんとしている (6月6日付)より)のはこれまでにないタイプの楽曲…洋楽でもこういうの味わったこと無い気がします。いつ何時聴いてもフレッシュでドープ。来年は是非紅白を狙って欲しいというか狙える位置にいると思います。

 

04. METAFIVE「Don't Move」

日本にグラミー賞があるならば彼らは”新人”扱いなんでしょうか? だとしたらいい意味でずるい。理屈抜きで格好いい大人のダンスミュージック。変拍子に聴こえるようでずっと同じリズムも、ダサいようで格好いいシンセのアタック音も癖にならずにはいられません。

 

05. モーニング娘。'16「泡沫サタデーナイト!

”ズッキ”こと鈴木香音さんの卒業曲にして今年最高の”動”のアイドルソングハロプロ×ディスコティークが最高の相性であることは以前から証明済でしたが、この曲を作ったのがつんく♂さんではなく赤い公園津野米咲さんというのに感嘆(モーニング娘。'16「泡沫サタデーナイト!」のソングライターに唸る(5月12日付)より)。今後彼女の名前は覚えていて絶対損はないはずです。

 

06. Negicco「矛盾、はじめました。」

「泡沫…」が”動”ならこちらは”静”の最高アイドルソング土岐麻子さん×さかいゆうさんという「How Beautiful」(土岐麻子さんの楽曲。作詞には他に川口大輔さんもクレジット)コンビによる楽曲が非常に沁みる…というか、このアレンジが個人的に大好きな、松任谷由実「届かないセレナーデ」(アルバム『LOVE WARS』(1989)収録)を彷彿とさせ、刹那さの中で動き出す女性の感情を見事に表しているように思うのです。

 

07. レキシ feat. 森の石松さん「最後の将軍」

レキシネーム”森の石松さん”こと松たか子さんの歌声は本当に真っ直ぐで混じり気がなく、だからこそ主人公の将軍の背中をポンと押してくれているように感じます。そして自分はやはり三連リズムが大好きなんだなあ、と。『Vキシ』の三連リズムに惹かれる(6月27日付)にて記載。

 

08. 宇多田ヒカル花束を君に

今年の邦楽界、最大のトピックの一つは彼女の復帰。アルバムはCDが売れないとされるこの時代にあって(しかもオリジナルアルバムなら尚更)、現在までに70万枚近い売上を叩き出し、さらには音楽評論家やジャーナリストがこぞって絶賛。しかも内容は”死”や”同性愛”など、これまでの邦楽で扱ってこなかったようなタイプの詞…それを堅苦しくないポップスに仕上げる宇多田ヒカルさんの才能はただただ見事でした。こういうテーマを選ぶことも邦楽の多様化な気がします。アウトロの長尺は聴き手の感情を増幅させ揺らすのに非常に効果的…ということは「花束を君に」から思い出す楽曲群(9月18日付)で記載しています。

 

09. 桑田佳祐「ヨシ子さん」

上半期/下半期ベストに唯一選ばなかった曲。流行りに管を巻く歌詞なのに(それこそ後述するEDMとか)、実はアレンジ面で最先端の流行を押さえ(「ヨシ子さん」は音楽の流行を捉えている?(7月20日付)より)、桑田さん自身が若いミュージシャンの才能をきちんと評価している("音楽業界の今"を桑田・長渕両氏はどう受け止めたか(12月24日付)より)という姿勢に感銘を受けここに選出した次第。流行りを吸収しながら、それでいて完全な桑田節というのですから参りました。

 

10. KIRINJI feat. RHYMESTER「The Great Journey」

歌詞のダブルテーマ、完璧な演奏、堀込高樹さんの”まんしーつ!”の強烈なインパクト、そしてなによりKIRINJIとRHYMESTERの相性の素晴らしさは、1+1=2どころかまさにグレートな作品に。RHYMESTER主催フェス【人間交差点】第3弾があるならばぜひKIRINJIを呼んで欲しい!と切に願います。KIRINJI、初のコラボレーションで生まれた圧倒的大作「The Great Journey」(6月16日付)にて記載。

 

11. 早見優「溶けるようにkiss me」

21年ぶりの(ミニ)アルバムは、プロデューサーを務める藤井隆さんのレーベルから。日本語と英語がシームレスな歌詞、カイリー・ミノーグを彷彿とさせるきらびやかなアレンジ、基本一種類のメロディのリズムパターンなのに何ら飽きさせないメロディの細かな起伏の付け方など、聴いていて非常に面白いのです(早見優21年ぶりの新作が格好良すぎた(8月24日付)より)。そして青森県平内町で開催された音楽フェス【夏の魔物】で観た彼女は本当にキラキラしていて永遠のアイドル!と実感。藤井隆さんのパフォーマンスも見事でした(【夏の魔物】観戦記&雑感(10月9日付)より)。それにしても今年大活躍をみせた藤井隆さんのポテンシャルの高さには驚かされます。

 

12. DAOKO「BANG!」

ファレル・ウィリアムス「Happy」の流れにあり、自分的には大好物、抗うほうが無理というものです。「Happy」から生まれたと思しき邦楽については「Happy」×「Shake It Off」?なDAOKO「BANG!」がかわいすぎる(8月18日付)にて記載しています。

 

13. 中田ヤスタカ feat. 米津玄師「NANIMONO」

世界的な潮流でありもはやジャンルを確立した感のあるEDMですが、こと邦楽の世界において、洋楽をそのまま取り入れたようなものはあれど、”和”の匂いのするものはほとんどなかったように思います。その点でこの曲は秀逸。中田ヤスタカさんのプロデュースながら近年のPerfumeのようなバッキバキな感じがないのは、米津玄師さんの曲の推進力ゆえなのかもしれません。

 

14. bonobos「Cruisin' Cruisin'」

R&B好きな自分としてはこの曲はドストライクでした。bonobos、東京23区を駆け巡る「Cruisin' Cruisin'」(9月19日付)でも書きましたが、「NANIMONO」に続きこの曲のテイストもまた”和”な感じがして、聴くたびに郷愁を感じるところもあります。

 

15. 向井太一「SLOW DOWN」

最近のR&Bの流行であるアンビエントを取り入れながら聴き手を選ばせる(ふるいにかける)ことなく、乾きと潤い、シンプルと芳醇の双方を感じさせるという不思議な楽曲。この曲を歌う向井太一さんの魅力って、一言では表しきれないような気がしますね。”スローダウン”な音楽集(11月23日付)にて記載。

 

16. Da-iCE「恋ごころ」

今年もコンスタントに良曲を発信し続けたDa-iCE。シングルの中では一番J-Popな楽曲ながら、大サビ後の”届かない”における花村想太さんの心からの声が本当に刺さりました。ボーカリストとしての実力もどんどん高まっていますね。

 

17. Kan Sano feat. 七尾旅人「C'est la vie」

優雅で美しい曲。前向きな感じにも聴こえながらその実決して明るくはないという矛盾を、七尾旅人さんのボーカルが見事に表現。アルバム『k is s』における客演陣の人選、Sanoさんのボーカル自体も好く、ラジオでかかりまくっているのもうなずけます。

 

18. 星野源「恋」

もしも日本にグラミー賞があるならば、最優秀アルバム賞は宇多田ヒカルさんと星野源さんとが争ったのでは?と思うくらいに『YELLOW DANCER』は素晴らしかったのですが、アルバム後の初シングルは、そのアルバムの流れを更に加速させた、ソウルミュージックの邦楽踏襲の最高峰。ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)での用いられ方も”恋ダンス”も最高の次元でいわばバズりまくった、今年を代表する邦楽。また、この曲が謳う”多様性の尊重”というテーマもまた見事でした。星野源と藤井隆と多様性とエイリアンズと(12月14日付)にて記載。

 

 

 

今年は自分の中で音楽フェスに初参戦したり、担当のラジオ番組は裏方が増えた分責任をより強く実感したり…と新たな挑戦をした一年でした。とはいえまだまだ浮沈激しく、冒頭の2曲はまさに今の自分へのエール的な意味での選出でもあるのですが。来年は良いところを更に伸ばし、他方反省点は省みても後悔に至ることないようにして、進んでいこうと思います。あとは結構表現に刃があるので気をつけねばなと。

 

あらためて、今年のリストを。 

2016 JP Songs Best (20161228)

 

01. NakamuraEmi「YAMABIKO」

02. PUSHIM「Feel It」

03. 三浦大知「Cry & Fight」

04. METAFIVE「Don't Move」

05. モーニング娘。'16「泡沫サタデーナイト!」

06. Negicco「矛盾、はじめました。」

07. レキシ feat. 森の石松さん「最後の将軍」

08. 宇多田ヒカル花束を君に

09. 桑田佳祐「ヨシ子さん」

10. KIRINJI feat. RHYMESTER「The Great Journey」

11. 早見優「溶けるようにkiss me」

12. DAOKO「BANG!」

13. 中田ヤスタカ feat. 米津玄師「NANIMONO」

14. bonobos「Cruisin' Cruisin'」

15. 向井太一「SLOW DOWN」

16. Da-iCE「恋ごころ」

17. Kan Sano feat. 七尾旅人「C'est la vie」

18. 星野源「恋」

 

Total Time:1:19:01

 

来年も素晴らしい音楽とたくさん出逢えることを願って。

クリスマスは過ぎましたが…クリスマスソングのチャートインあれこれ

昨日速報版を紹介した米ビルボードチャート。集計期間がクリスマス直前であったことからか、またはチャートにおけるデジタルの影響度の高さゆえか、クリスマス関連曲が今年は例年以上に総合シングルチャートにもランクインしています。

2017年1月7日付 Billboard Hot 100 Chart | Billboard

クリスマスの日に亡くなったジョージ・マイケルがメンバーの一員を務めたワム!の「Last Christmas」は50位に初登場。その他クリスマスソングのチャートインについては下記記事をご参照ください。

次週1月14日付チャートにおける、デジタルダウンロードとストリーミングの集計期間は12月23日からの1週間(ラジオエアプレイはそこから少し前にずれます)。クリスマスソングは26日に急激にトーンダウンしますが、もしかしたら「Last Christmas」に関してのみ、追悼の意も相俟ってクリスマス後もかかり続けるかもしれません。

 

さて、個人的にクリスマスソングのチャートインで驚いたのが、最新1月7日付の米ビルボードホットゴスペルソングスチャートで19位に登場した「Real Love This Christmas」。歌っているのはR&B歌手のケニー・ラティモア。ゴスペルの要素もほぼなく、R&Bソングとして楽しめる作品がなぜ?と思ったのですが…。

ビデオの最後に登場するレコード会社のクレジットに納得。この曲を収録したアルバム『A Kenny Lattimore Christmas』はモータウン内のゴスペルレーベルからリリースされているんですね。アルバムも同日付ゴスペルアルバムチャートで4位と自己最高位を記録していることも含め、恥ずかしながら未チェックでした。

ちなみに「Real Love…」については、『ダニー・ハサウェイ“This Christmas”にインスパイアされた』とbmrに記載(R.ケリー、ケニー・ラティモアらが自身初のクリスマス・アルバムを発売 | bmr(10月21日付)より)。おそらくこの情報はケニー側からの発信なのでしょうが、この曲はむしろシャラマー「This Is For The Lover In You」のほうが近いのでは?と思っていたところ、サンプリングのデータベースである【WhoSampled】にてサンプリングしているとの情報が。最近は自身がサンプリングされること多かったはずで、こういう演出にはニヤリとしますね。

 

そういえば、先にケニー・ラティモアを”R&B歌手”と紹介していましたが、その昔彼が元妻のシャンテ・ムーアと2枚組のデュエットアルバム『Uncovered/Covered』(2006)をリリースした際、ディスク2がフレッド・ハモンドプロデュースによるゴスペル盤だったことを思い出しました。

個人的にはこの「Your Name」が好きだったなあと、久々に思い出してしみじみ。袂を分かったふたりの再共演は難しいでしょうが、再度共演していただけないだろうか…と考える自分がいます。