イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ラジオ人が生まれる機会が減っていく? サテライトスタジオの終焉を懸念する

TOKYO FMのミッドタウンスタジオが今度の日曜をもって閉鎖することを知り、正直愕然としています。

TOKYO FMのプレスリリースはこちら(※PDF)。

 

TOKYO FMで活用していた渋谷スペイン坂スタジオも昨年閉鎖。これで同局でのサテライトスタジオはなくなったことになります。下記は昨年7月11日付の記事。

この閉鎖について、聴取率調査の分析が素晴らしい【近日出荷-キンジツシュッカ-】さんが、強い願いを込めた記事をあげられていたので勝手ながら紹介させていただきます。

『リスナーと対面できる公開放送』の場(『』内は上記ブログより)、そして自分が思ったのは【ラジオ業界で活躍する人(個人的に”ラジオ人”と表記します)を生む場】、それらが減っていくという懸念です。

 

スペイン坂スタジオと同じ渋谷にあったHMV(以前あったセンター街のほう)のサテライトスタジオで放送されていた『GROOVE LINE』(J-WAVE)の放送を本社からに変更すると知ったときに同様の感情を抱いたものでした。サテライトスタジオからの最終日はスタジオがあった2階が身動きできないくらいの人だかりになっていたと聞きます。

渋谷が職場と自宅の乗り換え駅だったこともありこのサテライトスタジオには足繁く通ったのですが、そこでの経験は後に、自分がラジオ人になるきっかけをあたえてくれました。制作の楽しさ、秀島史香さんの逆キュー(曲などの指示出し)の格好良さ、ふざけているように見えて真摯に放送に向き合うピストン西沢さん、少ないスタッフで多くの方に影響を与えるメディア…仮にラジオ人を目指さなくとも、裏方のテキパキとした様子は眩しく見え、純粋にラジオが楽しいと思えるはずです。その『GROOVE LINE』が本社放送に切り替えて数年後、同時間帯でライバルに負けじと人気番組に成長した『Skyrocket Company』(TOKYO FM 月-木曜17時)が渋谷スペイン坂スタジオからの放送を終了、そして今回…非常に悲しくなります。

ラジオは旧態依然のメディアであると幾度となく言われ、もしかしたらスタジオを管理する側からすれば別な業態に切り替えたほうが集客的に好いと判断したのかもしれませんし、放送局側はテナント料などがネックになっていたのかもしれませんが、仮にそうだとしたならば、そういう視野の狭さ(とはっきり言い切ります)がラジオ人の誕生を妨げかねないのではないか、ラジオが旧態依然だとしても、たとえば大災害時等のツールとして欠かせないことは自明である以上ラジオというメディアが消滅することは考えられず、ゆえに中長期的な視点で見れば損ではないかと…至極勿体無い気がしてなりません。

 

たしかに、先に触れた公開生放送の番組において、著名ゲスト登場時以外の観客数は決して多いとはいえませんでしたが、それでももう少し業界全体で考えて欲しいと思わずにはいられません。実は私が住む地元の県域放送局、RABラジオでは最近になってワイド番組の公開生放送が不定期ながらも月3回程度行われていて、その活況と首都圏との落差に驚かされます。TOKYO FMは最近聴取率が好調を維持していますが、個人的にはイメージ悪化だと思ってしまいます。

米ビルボード速報…3週連続で首位交代、新たな1位は

ビルボードシングルチャートを定点観測。 日本時間の火曜早朝に発表された、1月21日付最新チャート。前週首位に返り咲いたレイ・シュリマー feat. グッチ・メイン「Black Beatles」がわずか1週でその座を奪われることに。新たにトップに立ったのはミーゴス feat. リル・ウージー・ヴァート「Bad and Boujee」でした。

記事は下記に。

そしてトップ10はこちら。

先週曖昧なまま紹介してしまったのですが、「Bad and Boujee」についてはブログ記事アップ後まもなく、bmrがヒットの理由等について詳しく報じていましたので勝手ながら紹介させていただきます。

この“Bad and Boujee”ではサビの頭に登場する「Rain drops, drop top (drop top)…」(雨が滴る コンバーチブルに)という部分。12月頭になって、この部分を引用しつつ、続きを独自のリリックにしたツイートが面白いと話題になったことで注目を集め、「Rain drops, drop top」に続く面白いリリックをそれぞれ発表するという大喜利的な展開を見せたことでSNSを中心に流行し始めた。

SNSでの流行が後押し、ミーゴスの最新シングルが全米2位に急上昇 新作は今月発売が決定 | bmr(1月4日付)より

日本でもたとえば匿名掲示板的な物言いのハッシュタグが爆発的に流行することがありますが、それに近いものかもとふと。そしてその流れで先週紹介したグリンチとのマッシュアップ等も生まれたのかもしれません。「Bad and Boujee」はストリーミングで前週比9%上昇し同部門を2週連続で制したほか、デジタルダウンロードも2位に上昇しています。

 

今週はマルーン5 feat. ケンドリック・ラマー「Don't Wanna Know」が最高位を更新(7位)、マシン・ガン・ケリーと元フィフス・ハーモニーのカミラ・カベロによる「Bad Things」がみたびトップ10に返り咲いたりという動きを見せ、また『Know-it-all』(2015)の来月の国内盤リリースが遂に決定したアレッシア・カーラ「Scars To Your Beautiful」が3ランクアップの12位に、初登場で6位を記録しながらも直後にトップ10圏外になってしまったゼインとテイラー・スウィフトによる「I Don't Wanna Live Forever (Fifty Shades Darker)」が映画の新たなトレーラー公開の影響で8ランク上昇して14位につけるなど、トップ20内の動きが慌ただしくなっています。

が、次週はさらなる嵐到来の予感が。それはエド・シーランの”帰還”。先週木曜にアナウンスした通り、翌金曜に「Shape Of You」そして「Castle On The Hill」の2曲を同時公開しており、その2曲が次週のチャートに高位置で登場すると見られているのです。

予定されている3作目のアルバム『÷ (Divide)』からの先行シングル。アルバムリリースは未定ですが、公開初日の米Spotifyでの再生数が新記録を樹立しました。

「Shape…」は6,868,642回、「Castle…」は6,168,395回という再生回数は、これまでのタイトルホルダーだったワン・ダイレクション「Drag Me Down」の持つ4,759,698回を大きく上回ることに。またデジタルダウンロードやストリーミングと集計期間が異なるラジオエアプレイでは「Shape」が公開後わずか3日間で2900万ものエアプレイを獲得し同部門41位につけました。ゆえに次週付での2曲同時トップ10入りも夢ではない気がします。

一方今週はじめて首位に立った「Bad and Boujee」にも追い風が。日本時間の昨日行われたゴールデングローブ賞にて、チャイルディッシュ・ガンビーノ名義で音楽活動を行う俳優のドナルド・グローヴァーが手掛け主演も務める作品『Atlanta』が作品賞ならびに主演男優賞を受賞。その際のドナルドのスピーチにおいて、『Atlanta』にゲスト出演したミーゴスへの賛辞が述べられたのです。詳細はこちらもbmrに掲載されています。

となると、逃げるミーゴス、追うエド・シーランという構図が次週のチャートのテーマかもしれませんね。

クリーシェイ「Rush (Full Crew Mix)」

※訂正(1月11日)

歌手名表記、正式にはクールシャイではなくクリーシェイでしたので訂正しました。ご指摘いただいたu-knoさんに感謝申し上げます。

 

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CD好きで、過去の作品から良質なのを見つける自称”掘り師”としては、現在開催中のGEO店舗における【280円以下の中古CDが2枚で100円】というキャンペーンが非常に魅力的なのです。たしか今月末までと記憶していますし、もしかしたら全国的なものではないかもしれませんが、稀にこれが50円?というお宝もあるので足繁く通うことをお勧めします。

で、昨日購入したこの作品が当たりだったのでここにご報告。

オリジナルアルバムではありませんが侮ることなかれ。2枚組38曲という大ボリュームゆえ、たとえばメアリー・J・ブライジ「All That I Can Say」のイントロが半分程度に割愛されるという萎えポイントはありますが、このイギリス発のコンピレーションの嬉しい点は、当時流行のUS産に対して良質と言われていたUK産R&Bが多く収録されていたり、また残念ながらアルバム発売に至れなかった歌手も収録されているという点にあります。特に気に入ったのはこちら。

・クリーシェイ(Kleshay)「Rush (Full Crew Mix)」(1998 (1999?))

シングル「Reasons」(→YouTube)と「Rush」を残し、終ぞアルバムリリースに至れなかった女性3人組。その後3人は個々に活動し、リア・チャールズ・キングは現在テレビ番組等で活躍しているとか。そのリアが自身のバイオグラフィーできちんとクリーシェイ時代に触れている他、彼女のYouTubeアカウントでは「Rush」(のオリジナル版)を紹介しています。

オリジナル版がクールな仕上がりなのに対し、フル・クルーによるリミックスはウワモノの使い方が完全フロア仕様に。大サビでは当時大ヒットしたブランディ&モニカ「The Boy Is Mine」よろしくハープ的な音をまぶし、心地よい(いい意味であざとい?)感じに仕上がっています。こういう曲、少し大袈裟かもしれませんがクラブの流れを変えたり爆発させるという意味では持っていて重宝するんじゃないかと思いますね。

フル・クルーは当時リミックスでその名をよく見かけており、たとえば2ステップの女性歌手、ロミーナ・ジョンソンによる「Never Do」のリミックス(feat. KO)ではブギー・ダウン・プロダクションズの大ネタ「South Bronx」をサンプリングするなど、ネタのセレクトが大胆ではあるのですがそれでもやらしすぎないのが心憎いなあと当時から思っていたものでした。

その他フル・クルーによるミックスはこちらでチェック出来ます。

 

また面白いのは、「Rush」のソングライター陣が凄いということ。その名を連ねるのはバリー・イーストモンド(ディスコグラフィーこちら)、そしてゴードン・チェンバース(同じくこちら)、など。バリーとゴードンが共同で手掛けたアニタ・ベイカー「I Apologize」(1994)はグラミー賞を獲得し、ブランデー、タミア、グラディス・ナイト&チャカ・カーンという豪華メンバーによる「Missing You」(1996)という美しいバラードも生まれました(共にプロデュースはバリーの単独名義)。

 

つまりは制作陣も豪華、そしてフロア向けに良質リミキサーもついていた(「Reasons」にもフル・クルーが関与してました)…にもかかわらず、残念なことにクリーシェイはアルバム発売すら出来なかったのです。理由は解りませんが、如何にこの業界が世知辛いかと痛感させられます。イギリスではスマッシュヒットしたのですけどね。

そこに手を差し伸べてくれたのが今回見つけたアルバム『Sisters Of Swing 99』と言えるかもしれません。クリーシェイが遺した音源が収録される形で救われたことにより、わずかでもR&Bファンには”クリーシェイ”の名が記憶に刻まれたわけですから。少なくとも自分はこの良質リミックスをいずれラジオなどで使いたいなと思った次第です。

邦楽チャートを動画紹介することは出来ないものか

自分がスタッフの一員を担当しているラジオ番組、『わがままWAVE It's Cool!』(FMアップルウェーブ 日曜17時 サイマル放送でも聴くことが出来ます)。今日放送の音楽テーマ(今週のおすすめ)は、明日新成人を迎える方の多くが生まれた年、【1996年のヒット曲】です。翌1997年に生まれた方もきっとお腹の中でこの年のヒット曲を感じて(聴いて)いたのではないでしょうか。番組へのメッセージやリクエストの送付およびサイマル放送の聴取は、番組ホームページ経由で可能ですので是非アクセスしてください。

 

さて、今回の音楽特集にて参照させていただくチャートについては先日のブログで一度言及しております。

この中で参考にしているチャートのひとつ、米ビルボードシングルチャート(Hot 100)について、『CDTV』(TBS系)のようなチャート紹介動画を編集、アップされた方がいらっしゃいましたので勝手ながら紹介させていただきます。

おそらくは各権利団体(レコード会社等)に無許可で制作したのでしょうが、ミュージックビデオも確認出来、チャートのピークやその日付、登場週数等がきちんと解るのは素晴らしいこと。どうかこのまま残って欲しいと思います。ちなみに弊ブログで紹介したジョージ・マイケル「Fastlove」(上記リンク先参照)も、昨年リバイバルヒットしたゴースト・シティ・DJ's「My Boo」(ベース・ミュージック「My Boo」リバイバルヒットの理由(2016年5月13日付)にて言及)も同チャートに登場しますし、1位を獲ったのがあのおじさん二人組…懐かしいと思うと共に面白いチャートだなあと実感しますね。

 

 

さて、日本のチャートでもこういう動画はあって然るべきだと思うのですが如何でしょう。『CDTV』がかなり前に確立したチャートのカウントダウン紹介方法を参考に、ビルボードジャパンに制作、発信していただきたいものです。(先に紹介した動画を作成した方には失礼ながらも)きっと上記動画より綺麗に編集出来るはずです。おそらくは、ミュージックビデオの活用についてテレビではOKなのにネットではNGというところがあるでしょうが、ならばその部分は画面を黒且つサイレントで文字表記だけにしても今のところはやむなしだと思います。

外国在住のJ-Popファンは少なからずいらっしゃるでしょうから音楽を海外発信するという点で動画は有効ですし、同時に日本の閉塞性(画面を黒且つサイレント…の点)を如実に示すことで、ネットに懐疑的な芸能プロダクションに再考を促すことが出来るというメリットも生まれます。そういう外堀を埋めるという意味でも、ビルボードジャパンには奮起していただきたいものです。

日本のビルボードチャートでもジョージ・マイケル関連曲がランクイン

年末年始の関係で、通常水曜日のところ昨日になって最新チャートの詳報がアップされたビルボード・ジャパン星野源「恋」があまりにも強い状態が続いていましたが、さらに勢力を強めていますね。

この「恋」をはじめとする『NHK紅白歌合戦』披露曲が伸びたり(特にX「紅」の20位には驚きました)、ベストアルバムが登場2週目にしてミリオン目前となったSMAPの楽曲が躍進する中、昨年クリスマス(日本時間12月26日)に訃報が伝えられたジョージ・マイケルについては4曲がチャートインを果たしました。

・31位 (ワム! feat. )ジョージ・マイケル「Careless Whisper」(前週圏外)

・36位 ワム!Last Christmas」(前週23位)

・48位 ジョージ・マイケル「Faith」(前週圏外)

・68位 ワム!「Freedom」(前週圏外)

同日付米ビルボードシングルチャートはこちら昨日のブログでは米ビルボードチャートを解説しましたが、面白いのは米チャートに再浮上しなかった「Freedom」(1984)が日本のチャートには登場しているということ。この曲を聴くと、”あれ?テレビで使われてたような…”と思う人が多いかもしれませんね。

 

一方でイギリスのシングルチャートに目を向けると、ワム!Last Christmas」(7位)、「Careless Whisper」(44位)、「Faith」(64位)の他、エルトン・ジョンとの「Don't Let The Sun Go Down On Me」が91位にランクイン。イギリスを代表する才能同士の共演を聴きたいということでしょうか。

 

 

こうしてジョージ・マイケルの死を悼む人の多さをチャートを通して感じ、あらためて彼の偉大さを実感した次第です。と同時に、日本のビルボードチャートでもこういう追悼の思い、または『紅白』を観た人の”もっと音楽に接したい”という衝動などがより強く反映されているのが目で見え、非常に面白いと思うのです。ビルボードジャパンのチャートは時代の鑑と言っても過言ではありません。

ジョージ・マイケルのチャート躍進と「Fastlove」

一昨日速報を掲載したビルボードシングルチャート(1月14日付)にて、昨年末亡くなったジョージ・マイケル関連曲(ワム!時代の作品を含む)が3曲ランクインしました。

同日付アルバムチャート、200位以内には関連作品4作がランクインを果たしており、彼の死をきっかけに再度注目が集まったことが解ります。

 

シングルチャートでの最上位はワム!時代の「Careless Whisper」(”ワム! feat. ジョージ・マイケル”名義)ですが、完全なソロ(名義)曲のランクインとなると、47位にランクインした1987年リリースの「Faith」(同名アルバムより。アルバムも18位にランクイン)が最高位に。オリジナルアルバムおよびそこからのシングルがここまで高い位置につけるというのは、このアルバムの凄まじさゆえ。

アルバムは1000万枚を超えグラミー賞では最優秀アルバム賞を受賞。シングルではこの曲を含む4曲が1位を獲得という輝かしい記録を達成しました。そしてこのアルバムが白人ではじめてR&Bチャートを制したという点に注目(記録等はフェイス (ジョージ・マイケルのアルバム) - Wikipediaより)。彼のブラックミュージックへの精通についてはジョージ・マイケル、クリスマスに旅立つ(2016年12月27日付)にて触れましたが、この作品の高評価が、数多くのR&B/ソウル歌手と共演するきっかけになったことでしょう。

 

それらを考えれば、自分がはじめてきちんとジョージ・マイケルに触れたこの曲も、今聴くとおもいっきりR&Bしてるんですよね。

ジョージ・マイケル「Fast Love」(1996 全米8位 全英1位)

アルバム『Older』(1996)からのシングルであるこの曲は、パトリース・ラッシェン「Forget Me Nots」(1982 最高23位)をサンプリングし、サビのフレーズも引用しています。

「Fastlove」にはじめて触れたときにはサンプリング元について知らなかったのですが、ソウルミュージックでクラシック化しているこの「Forget Me Nots」はサンプリング使用頻度が高いいわゆる”大ネタ”(サンプリング等のデータベース、【WhoSampled】では使用曲が30も登場)。とりわけ有名なのは映画『メン・イン・ブラック』の主題歌、ウィル・スミス「Men In Black」(全米1位)でしょうか。この曲は「Fastlove」が発表された次の年にリリースされており、もしかしたらウィル側は「Fastlove」をアイデアの根源にしていたのかもしれませんね。

 

 

さて、来週1月8日放送の『わがままWAVE It's Cool!』(FMアップルウェーブ 日曜17時)の音楽特集は【1996年のヒット曲】です。今年の成人式の参加対象(新成人)の多くは1996年生まれということで毎年恒例となったこの特集。日本のCDセールス(当時はCDセールスと認知度が強く比例していました)、米ビルボードチャートに加え、日本のラジオチャートも参考にして曲を選ぶことにしていますが、今回紹介した「Fastlove」は1996年度J-WAVE TOKIO HOT 100チャートで9位にランクインしたことから、もしかしたらこの曲も流れるかもしれません。FMアップルウェーブのホームページ経由でメッセージ(当日発表)やリクエストが送れるほか、サイマル放送も聴くことが出来ますので、よかったら是非チェックしてください。

ゴスペルシンガー、キム・バレルの同性愛非難についての私見

どうしても言及しないとと思い、この問題についての私見を。

キム・バレルの実力の凄まじさやどれだけ愛されていたかについては、エッセンスミュージックフェスティバルでの彼女のステージを観れば解りやすいかと。昨年その旨については、音楽評論家の林剛氏のツイートを引用する形で紹介させていただきました。

 

だからこそ今回の発言は本当に残念…なのですが、問題を別の視点から見ると、まずなによりこの問題が”何故アップロードされたのか”という疑問に行き着きます。無論、彼女の教会に行き彼女の説教を聞いた者は多くいらっしゃるわけで(ゆえに彼女の考え方がなぜ問題視されてこなかったかは疑問)、行って疑問を感じた者が”これは問題だ”との意思に基づきアップしたのだとは思うのですが…ただ動画の注釈における『2017年に死ぬべきだと仄めかした』のが果たして事実なのか、とりわけ強い疑問を抱きます。ならばキムが指摘するように説教の全てを公開すること、そして実際に注釈のような発言があったのかを私たちが確認出来る状態にすることこそフェアではないでしょうか。その点において、動画アップロード者や、同性愛非難を許せないとする者には冷静さが欠けているように思います(いや、実際自分も最初は怒ってしまったので同罪なのですが)。邪推ですが、アップロード者の真の目的は同性愛非難を許さないとかではなく、単に彼女を陥れたいだけでは?とすら思うのです。

 

そしてもう一点。キリスト教にも様々な教派が存在し、その中には(同じ聖書を元にしながらも)同性愛は罪とするところが存在します。もしかしたらキムはその教派、いわゆる保守と呼ばれる側の人間なのかもしれません。

キリスト教と同性愛の関係については下記コラムが非常に解りやすいと思います。

また、日本でも保守的な教会が未だに”同性愛は罪”という説教を行うそうです。

そういう教会には唖然としますが、逆に昔からそういう考えを教えられ続け、違和感を抱かないまま成長すると”同性愛は罪”という論調になってしまうのではないかと思うのです。その背景があるならば、彼女が考えを変化すること、そう促すことこそ最も重要ではないでしょうか。

 

 

キムにとって残念だと思ったのは、彼女が同性愛者を公言するフランク・オーシャンの昨年作『blonde』に参加したことにより同性愛について何かしら肯定的に捉えることの出来る機会があっただろうに…と。フランクの母親がキムを非難している(上記bmrより)のは、親としての自然な感情だと思います。

ただ、この問題を受けた者の中に、キムを擁護しないのは当然としても、たとえば”キリスト教の教派によって解釈が異なる”という背景を伝え、”保守過ぎる考えは時代錯誤では?”と呼びかけ、そしてキムに”柔軟な考えを持って欲しい”と促す人が果たしてどれだけいるのでしょう。”炎上”という見出しからすればキムを追い詰める側には、先に自分が邪推した動画アップロード者の目的同様に、問題を真に問題化せず茶化すだけの愉快犯的な人間が大半を占めているのではないかと思うのです。なにより、キリスト教の考えは『赦し』にあるとゴスペル歌唱を通じて学んだ自分からすれば、こういう炎上が大きな機会損失となり、保守過ぎる人の改心に至らせられないのではないか、キム自身変わりたくとも変われないのではないかと考えてしまいます。それは非常に勿体無いことなのです。

 

 

問題発言した方の反省は必要ですが、永遠の後悔を求めてはいけません。それは問い詰める側の”罪”だと思います。今回発生してしまった問題を真面目に捉えることで、極端な考えが軟化し、同性愛者がより生きやすい社会につながっていくようになれば幸い…という思いを込めてここに記載します。