イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

番組キリ番の日、そして"ダチーチーチ"にみるニッチとラジオの関係

弘前市コミュニティFMFMアップルウェーブ。その開局の年から放送している番組の一つが、自分がスタッフの一員を担当している『わがままWAVE It’s Cool!』(日曜17時)です。さてこの番組、本日4月23日が放送888回目といういわゆるキリ番を迎えることになりました。スタッフを勝手ながら代表して、皆さんに感謝申し上げます。自分は2007年からの参加ですが、最近では裏方の楽しさも学び、また弘前大学ラジオサークルの個性豊かな面々とのめぐり合わせにもまた楽しく、貴重な経験をさせていただいています。

さて、今日の音楽特集(今週のオススメ)は、そのキリ番にちなんで【8】。歌手名や曲名に8、もしくは88や808もOKという振り幅広めのテーマにしていますが、今回曲を探すうちにこんな音源を見つけました。これがいわゆる”ダチーチーチ”満載でアガること必至!

2001年にここまでソウルフルな(音質的にも70年代ソウルを思わせる)、そしてダチーチーチ満載な作品を持ってくるとはなんてセンスあるんだ!と実感です。

 

さて、"ダチーチーチ"とは何かというと…今年1月の『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(TBSラジオ 土曜22時)で特集された、ドラムによるフレーズのひとつ。演奏方法、その起源ならびに番組でのOA曲などは下記ブログにてまとめられていますので勝手ながら取り上げさせていただきます。

番組中、"ダチーチーチが出たら\ウェーイ/ってしましょうという"呼びかけがあり、自分も身体が勝手に反応してしまいました。しかも、プレゼンターのオカモト"MOBY"タクヤさんが所属するSCOOBIE DOの新曲にも"ダチーチーチ"が用いられていて、しかもこれまでのイメージとは少し異なる雰囲気にニヤリとさせられます。

 

"ダチーチーチ"を取り上げるだなんてニッチすぎる…と言ってしまえばそれまでなのですが、こういうのを取り上げてくれることこそラジオの醍醐味なんですよね。そしてニッチな楽しみ、面白さを少しでも多くの方が受け入れ、その中から熱狂的に好きになってくれる方が生まれたならばそれこそ発し手にとって最高の喜びかもしれないなと。その点については、最近公開されたばかりの宇多丸さんの番組に関するインタビューが刺さりました。

——タマフルに出たいという人も多いと思うのですが、どうすればいいんでしょうか。

やっぱり、一個でいいから狂気じみた熱量をもって、伝えたい何かがあることじゃないですか。伝えたいという気持ちがあればいい。

逆に、いくら知識があっても、伝えたい熱が薄い人は、うちの番組には合わないかもしれない。熱を持つ対象はなんだっていいんですけど。

話題性より大事なのは狂気的な熱量...ライムスター宇多丸が語る「タマフル」の10年 - BuzzFeed News(4月21日付)より

前に国会論戦を取り上げた『荻上チキ Session-22』(TBSラジオ 月-金曜22時)においてつぶやいたことがあったのですが、ラジオは音のみで伝えるメディアゆえ、声の機微でその人の本気度や、嘘をついていないかなどが如実に伝わるしまた判るんですよね。ニッチだとかは関係なくまたそれを気にすることなく、誰かに伝えたいという思いは本当に大事ですし、それは間違いなく伝播していきます。それこそがラジオをより輝かせる大きな原動力ではないでしょうか。

 

 

自分が関わっている『わがままWAVE It’s Cool!』では音楽特集が番組の軸となり、またテーマには括りがありますが、そんな中で今日はどんな珍曲をかけるかをメインの選曲担当であるササキさん共々考えています。少なくとも東北一珍曲をかける番組という自負を勝手ながら抱いていますので、今後とも是非ご愛聴のほど、よろしくお願いいたします。

映画『ムーンライト』における日本版の違和感…その理由を邪推する

今回のエントリーはいつも以上に推測の域を超えない、はっきり言ってしまえば邪推なのですが、この段階で一度まとめようと思い至り、記載に至りました。

(ツイート等、勝手ながら引用させていただきました。問題があれば削除させていただきます。)

 

 

今年のアカデミー賞、作品賞を受賞した『ムーンライト』。作品賞アナウンスの際のトラブルにより、よりこの作品に注目が集まったこともあってか、日本では当初の予定より前倒しで公開されました。

しかし、この作品の日本版においてはいくつかの問題がある…と伝わってきています。R&Bライターなど黒人文化に詳しい方などから噴出しているのは主に3つの問題。

① 主人公の男性の名前がシャイロンなのに日本版ではシャロンとなっている

アトランタジョージアではなくジョージア州アトランタと誤表記

③ 口語訳がおかしい

②については音楽プロデューサーの松尾潔氏がツイート。

③についてはbmr編集長の丸屋九兵衛氏がつぶやき。

映画配給会社のチェックミスともいえますが、後述する(特に丸屋氏が怒りを込めて指摘した)翻訳者の問題ではないかと。物語の流れを壊しかねない表現をあわよくば問題ないと思っているかもしれないことが、②や③からは露呈された気がします。

そして最大の問題は①。この問題はとりわけ大きく取り上げられています。

丸屋氏の言う"like ジョーンズ…"とは、昨年他界したファンクバンド、シャロン・ジョーンズ&ザ・ダップ・キングスの女性ボーカル、シャロン・ジョーンズのこと。弊ブログでも以前触れています。

他にもシャロンといえば女優のシャロン・ストーンが想起されるなど、"シャロン"というのは女性名なんですよね。主人公の男性に対し、はっきり女性の名前が付けられることは観る側の集中力を削ぎかねないものではないかと。そして、押野氏のいうように"直す時間はあった"はずなのですが、最近になってこんなツイートが。

パンフレットに関与した方(寄稿でしょうか?)によるこの告白。山崎氏がシャイロンと記しておきながら、映画配給会社側にシャロンへの訂正を求められたことが明らかになりました。

 

となると、映画配給会社が"シャロンにこだわった"ということが明らかになったように思います。ではなぜこだわったのか…自分が考えたのは3つの可能性。

(A) 映像に日本語の字幕を既につけてしまい訂正には時間やコストがかかってしまうため、パンフレットでの訂正のほうが手っ取り早い

(B) 翻訳者を必要以上に持ち上げ、その方に傷がつけてはいけないと考えた等の過剰な配慮があった

…これらもあながち間違いではないでしょうが、もう一つ思ったことは、

(C) 主人公をどうしても女性的な人間だと思わせたかった

ということ。

 

この『ムーンライト』、ネタバレになってしまいますが賞レースでの報道で明らかになっていることを踏まえて書くならば、主人公は同性愛者の男性であり、成長するにつれて徐々に男性が好きであるという己の感情に気付くのとのこと。今年はじめの段階で、町山智浩さんがこの映画について紹介する際にもこのことが紹介されていました。

同性愛者が登場する映画と知って抱くイメージとは何か…個人的には、メディアで活躍する方…性転換をした、女装する、喋り方が女性以上に女性らしい…つまりはいわゆる”オネエ”のイメージをシャイロンに対しても投影させた方が少なからずいらっしゃたように考えます。まして、日本盤では主人公の名がシャイロンではなく明らかに女性的な”シャロン”ならば、余計にその感覚に囚われかねないと思うのです。

しかし、そういったゲイイコール"オネエ"という認識、はっきり言ってしまえばステレオタイプなイメージなのですがそれは改める必要があります。たとえば一昨年の調査によれば、同性愛者や性同一性障害といったいわゆるLGBTの割合は、たとえるならば30人クラスにおいて2人いるというデータが登場しています。

つまり、確率的にみれば周囲にLGBTが全くいないという人はほぼ皆無なのです。そうなると、みなさんの周りに先述したような、メディアで活躍するような"オネエ"的な方はいらっしゃるでしょうか? むしろそういった方は少数派であり、LGBTの多くが自身の身体の性に合わせた格好や言葉遣いをし、その上で同性を好きになっていることが理解出来るはずです。みなさんの周囲には公言しないだけでLGBTの方がいらっしゃるかもしれません。

 

 

もしかしたら映画配給会社や翻訳者は、主人公の名前を敢えて女性名にすることで主人公が同性愛者であるということをより際立たせる、そして映画をより"解りやすく"する…そういう狙いがあったのかもしれません。映画の公式Twitterアカウントでも1件のリツイートを除き"シャロン"という名を未だ用いています。現在までに著名な音楽関係者等から様々な指摘やクレームが送られている(らしい)ものの、謝罪訂正等コメント等が確認出来ない(単に自分が見落としているだけかもしれませんが)ことを踏まえれば、パッケージ化の際に直すどころか、それすら行わない可能性だって否定出来ないでしょう。今回の"シャロン"の徹底により、映画配給会社や翻訳者は、世間のLGBTに対するステレオタイプなイメージから抜け出せない(もしくは抜け出そうとしない)ことを露呈し、映画の美しさに対して傷をつけてしまったという意味において、今回の名前問題はかなり酷いと思っています。無論邪推だと前置きさせていただきますが。

 

(ちなみに、メディア等で活躍する"オネエ"の方を問題視しているわけではありません。彼らの才能は素晴らしいと思いますし、自身が積極的になりたい姿になっているわけですからそれを否定するのは違います。問題は、ゲイイコール"オネエ"という暴力的な方程式をほぼ毎回用いているメディアであり、そのイメージが刷り込まれている市井もまた問題でしょう。)

 

 

今回の邪推の基礎となった自分の考えは以前記していますので再掲します。

また、今月末に放送される『バリバラ』(Eテレ 日曜19時)でも【検証!"オネエ"問題】という企画が生放送で検証されます。

『バリバラ』が攻めているとも言えるでしょうが、個人的にはこういうマイノリティの件こそ『24時間テレビ』や民放のゴールデンタイムで紹介する必要があると思うのですが如何でしょう。

 

ちなみに自分は『ムーンライト』上映外地域(青森ではまだ上映されていない)で未見ゆえ、内容についての細かな指摘は出来ないことをご容赦ください。そして今日放送の『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(TBSラジオ 土曜22時)内、映画批評コーナーにてこの映画を取り上げるとのことですので、宇多丸さんが"シャロン"等日本版の問題に切り込むのかにも注目したいと思います。

星野源が短期間で示した、ラジオへの高い貢献度

この春から、月曜から火曜に引っ越したばかりの『星野源オールナイトニッポン』(ニッポン放送他 火曜25時)。スペシャルウイークと題した聴取率調査週間となる今週の放送のゲストに小堺一機さんと関根勤さん…あの"コサキン"が登場しました。水曜朝になっても番組ハッシュタグTwitterでトレンド入りし続けており、番組の爆発力の高さを実感した次第。コサキンの衰えなさと共に、星野源さんの純粋に楽しまんという姿勢に、星野さんのラジオ愛をひたすら感じました。

 

この直前に起きたある出来事も含め、この1週間における星野源さんのラジオへの貢献度が実は半端ないんじゃないかと感じています。振り返ると。

 

① 名物番組を復活させる

この日の力の入れようは半端なく、生放送にコサキンがやってきたのみならず、『コサキンDEワァオ!』(TBSラジオ)の番組構成作家である鶴間・舘川両氏も出演。その上で番組の名物コーナー、"意味ねぇCD大作戦"を、当時の出囃子含めて復活させるというこだわりよう。番組独自の流行語もふんだんに飛び出した他、コサキンとのお別れのBGMが小堺一機「With」、そして番組締めの挨拶でおなじみだった"パッフォーン!"であったことから、コサキンのラジオで育った人たちにとっては感涙必至の内容だったと思います。

こういう名物番組の復活を、スペシャルウイークだからと斜に構えて指摘する方もいるかもしれませんが、ある種その考えは否定出来ないでしょう。逆に言えば、スペシャルウイークだからこそ聴取率獲得も目的としてこれ以上ないコンテンツを用意したのだと思います。しかしそこにいやらしさが感じられなかったのは、星野源さんがコサキンで育ったと公言しているゆえ。放送中、コサキンの影響で自身の曲の歌詞が生まれた、と本人に明かしているのです。

真面目な告白からの勝新モノマネという流れがまた面白いのですが、もしかしたらコサキンによる照れ隠しかもしれませんね。歌詞のバックボーンの面からも、星野さんが純粋にコサキン好きだということが今回の復活の原動力になったということがよく解ります。

 

② AM局の垣根を超える

コサキンDEワァオ!』はTBSラジオの名物番組でした。また、星野源さんは匿名のラジオネーム"スーパースケベタイム"としてTBSラジオRHYMESTER宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(TBSラジオ 土曜22時 以下『タマフル』)のジングルオーディションに応募し、見事採用されています。その番組および投稿者がニッポン放送で邂逅を…というのですから面白いものです。しかも先述したように"意味ねぇCD大作戦"は完全な形で復活(CM明け後半パートの第一声が構成作家によるものというもの含め)。TBSラジオサイドは今回の出来事について喜んでいるかもしれませんし、同時に星野さんをパーソナリティに起用しなかったことや『コサキンDEワァオ!』の終了を今更ながら悔やんでいる可能性もあるでしょう。

 

 

③ テレビでラジオについて語る

星野源さんが先週土曜ゲスト出演した『嵐にしやがれ』(日本テレビ系)で、『タマフル』でのジングル採用の話をしており、さらにはそのジングルが公開されていました。とはいえジングルの尺は半分にされ、記憶が確かならばジングルについての説明や『タマフル』の番組説明もされてないところに、テレビの編集方法の問題を感じてしまったのですが。

しかしながら、いくらラジオがネットとの親和性の高さゆえ関連ワードがTwitterでトレンド入りするとしても、ラジオの聴取者より遥かに多数の方が観ているテレビというメディアを介してラジオの話をすることは、視聴者に"ラジオも楽しいよ"という道標をもたらすという意味で非常に大きな意義があるのではないかと。そして今回のテレビでの紹介を当の宇多丸さんは好意的に捉えてラジオに呼び込んでいました。この点は、"スーパースケベタイム"こと星野さんがライバル局にいるにもかかわらず…という意味において、②にも通じるものがありますね。

 

 

星野源さんですが、先月には【AMとFMの垣根を超える】特番にも参加。その番組、『民放ラジオ101局特別番組 WE LOVE RADIO! 山下達郎星野源のラジオ放談』では今週の『オールナイトニッポン』でもコサキンソングとしてお送りした「オマリーの六甲おろし」を紹介しており、自身の曲のライブ音源も含め【音楽の楽しさを伝える】ことについても貢献しているように思います。

この短期間で星野源さんがラジオに果たした役割は、ラジオをひとつにすることや好い作品を復刻するなど多岐に渡っており、これらは全体的な聴取率低下(そしてそれに基づくであろう収入減少)に悩むラジオ業界にとってひとつの光明になるのではないかと考えます。明後日TBSラジオにて『ぼんやり審議会』(4月23日19時)が放送され、そこでラジオ業界の今後がどうなるか議論されるとのことですが、この短期間での星野源さんの活躍っぷりを、他局でもいいので取り上げていただき、そこからヒントを探っていただけたならば嬉しいですね。

イギリス発今年最大の新人、ラグンボーン・マンに注目

先日、オムニバスCD『Now 96』について触れたのですが、届いたCDを聴いてその初っ端、耳が引っ張られて仕方ない声に出会いました。それが、ラグンボーン・マン「Human」という曲。

『Now 96』のトラックリストは下記に。「Skin」という曲も収録されており、ラグンボーン・マンの勢いが解ります。

 

上記紹介時には恥ずかしながらノーマークだったこの男性。巨漢に髭、そして声のブルージーさ…格好や音楽は流行りとは程遠いかもしれませんが(失礼)、自分は一聴して虜になりましたし、こういう作品が全英最高2位というのですから、イギリスの懐の深さを実感します。「Human」からは、以前ここで紹介したマイケル・キワヌーカを思い出した次第。

なんだろうこのヒリヒリとした感じは…と思ったら、この曲の歌詞やテーマに宿る人間の不条理をストレートに歌い上げているからなのか、と。半ば永久的なテーマなんですよねこれって。

(勝手ながら取り上げさせていただきました。問題があれば削除させていただきます。)

 

エド・シーラン『÷ (Divide)』が猛威を振るうその3週前に発売された、ラグンボーン・マンのファーストアルバム『Human』はイギリスのチャートで初登場首位を獲得。初週のセールスは11万7000枚で『2011年発表のエド・シーランのデビュー・アルバムや2014年発表のサム・スミスのデビュー・アルバムよりも大きなもの』となりました(ラグ・アンド・ボーン・マン、男性ソロのデビュー作としてはここ10年で最多の初週セールスを記録 | NME Japan(2月20日付)より。なお、記事での歌手名表記は弊ブログでのそれと異なりますが、ブログでの表記は後記するソニー・ミュージックのサイトに合わせています)。イギリス最大の音楽賞であるブリット・アワードでは『新人賞で、過去にはサム・スミスやアデルらもデビュー時に受賞している「ブリット・アワード批評家賞2017」に加え、今年度のブリット・アワードがその年期待の新人に贈る「ベスト・ブリティッシュ・ブレイクスルー・アクト賞」のW受賞を果たしました』(『』内は下記サイトより)とあり、エド・シーラン、サム・スミス、アデル…と肩を並べたという段階で如何に彼が評価されているかが解ろうというもの。そのラグンボーン・マン、今年のフジロック・フェスティバルに出演が決定しており、日本での知名度も今後上がっていくことでしょう。

(フジロックの出演は7月28日金曜。同じ日には同じくイギリスのR&B歌手、サンファも登場とのことで、今の英音楽界が気になる方にとって、この日はとんでもないことになりそうです。)

 

 

惜しむらくは、これだけイギリスで評価されている(そして米ビルボードソングスチャートでも4月22日付で「Human」が100位に初登場。ただ翌週は早くも圏外になってしまいましたが…)ラグンボーン・マンのアルバム『Human』の、日本でのリリースが4ヶ月近くも遅れること。上記ソニー・ミュージックでは6月7日発売予定となっています。おそらくはフジロックでの来日により認知度が上がっていくタイミングに合わせての発売ずらし作戦なのかもしれません。たしかにそのほうが最終的にセールスが見込めるかもしれませんが、保守的な感じがしてしまう自分がいます。そういう作戦よりも、いい曲を純粋に広めたいという衝動のもとにもっと早いうちから国内盤を流布出来なかったのか(無論ただ出すだけではなく最低限の戦略は必要ですが)…と。最近のレコード会社の洋楽国内盤の戦略には少々首を傾げざるを得ませんが、ならばラジオ業界がレコード会社の戦略に関係なくいい曲を早いうちからかける、その船頭にならないといけませんね。

"エロいドレミソング"を歌うブラックベアーに注目

ビルボード4月29日付最新ホットR&Bソングスチャートではビヨンセの新曲やフランク・オーシャンがトップ25内に初登場を果たしています。そんな中、22位に同じく初登場でランクインしたブラックベアー「do re mi」に惹かれたのでメモ。

イントロで女性による♪ドレミファソ~という声が流れてくるのですがそれが少しエロティックに聴こえて驚き。それもそのはず、サビでは♪Do re mi fa so fuckin' done with you, girl と歌われており、結局はそういう曲なのかい!と突っ込まざるを得ません。「ドレミの歌」の朗らかさとは正反対、ある種"R師匠"なこのアイデアが面白いなと。

 

 

ブラックベアーは、プロデュース等をこなすマシュー・タイラー・マストによるソロプロジェクト。今度の金曜にリリースされる通算4枚目(「I Took A Pill In Ibiza」が昨年ヒットしたマイク・ポスナーとの共作を含む)のアルバム、『Digital Druglord』からの先行曲が先程の「do re mi」なのです。Twitterで歌手名を検索したら女性の写真が出てきたので一瞬混乱したのですが、今回のジャケ写なのですね…それにしてもこのジャケットもまたいい意味で頭悪いなと。

ブラックベアー本人の画像は公式サイトに掲載。顔はよく見えませんが…。

 

そんなブラックベアーですが曲提供等も積極的に行っており、とりわけ彼が共作で参加したジャスティン・ビーバー「Boyfriend」(2012)はアルバム『Believe』からの先行曲として米ビルボードソングスチャートで最高2位を記録する大ヒットとなりました。アルバムからの先行曲はある種アルバムの鑑且つ名刺代わりの曲であり、それだけ「Boyfriend」をジャスティン側が気に入っていたと言えるでしょう

 

今回のアルバムの日本でのリリース予定はありませんしフィジカルでの販売も不明ですが、今後も自身の作品やソングライターとして名を馳せることは間違いないでしょう。その名を覚えて損はないと思います。

米ソングスチャート、エド・シーランが12週目の1位に。3曲が新たにトップ10入り

ビルボードソングスチャートを定点観測。

現地時間の4月17日月曜(日本時間の火曜)早朝に発表された、4月29日付最新チャート。エド・シーラン「Shape Of You」が根強く、通算12週目(11週連続)となる1位を獲得。ワン・ダイレクションのメンバー、ハリー・スタイルズのデビュー曲が4位に初登場を果たしました。

記事は下記に。

そしてトップ10はこちら。

エド・シーラン「Shape Of You」はラジオエアプレイで10週目の1位を獲得し、しかも前週比3%上昇(1億8500万回)とのことで未だ失速せず。これを追う形で、先週1ランクダウンしたブルーノ・マーズ「That's What I Like」が再浮上し2位へ。デジタルダウンロードでは「Shape…」を既に凌駕し、ラジオエアプレイでも1億5100万回に到達(前週比8%アップ)。じわじわとその差を縮めています。

 

今週はトップ10に3曲が初登場。ラッパーのフューチャーによる「Mask Off」は、1位を獲得したアルバム『Future』収録曲。

フューチャーのこれまでの最高位はリル・ウェイン「Love Me」にドレイクと共に招かれた際の9位であり自己最高を更新しました。「Mask Off」上昇の要因はSNSでの【#MaskOffChallenge】とのこと。それにしてもフューチャー、アルバム『Future』と『HNDRXX』で2週連続アルバムチャートを制したわけで、その勢いがソングスチャートにも表れた形といえるでしょうね。アルバムチャートの記録に関しては下記bmrをご確認ください。

 

そしてリル・ウージー・ヴァート「XO TOUR Llif3」が、前週から8ランク上昇し8位に登場。ミーゴス「Bad and Boujee」の客演で今年1位を獲得していますが、主演作では最高位を更新。

こちらも上昇の要因は【#LilUziVertChallenge】というチャレンジものだそうで、ヒップホップとSNSとの親和性を、今回トップ10入りした2曲から実感した次第。共にストリーミングで人気を博しており、「Mask Off」は同部門で3位、「XO TOUR Llif3」は5位につけています。

 

そしてもう1曲のトップ10入りは、4位に初登場を果たしたワン・ダイレクションのハリー・スタイルズによる初のソロ曲、「Sign Of The Times」。

ワン・ダイレクションとして登場したドコモのCMでも特に印象的だったのがハリーだと認識しているので、いよいよ真打ち登場としった感じです。自身の名を冠したソロファーストアルバムを5月12日にリリースすることもアナウンスしており、そこからの先行曲となる「Sign Of The Times」は発売初週に142000ものデジタルダウンロードを獲得し好発進しています。

ちなみにワン・ダイレクションとしては米ビルボードソングスチャート(Hot100)において6曲のトップ10ヒットを記録しており、最高位は「Best Song Ever」の2位。ソロにおいては既に脱退したゼインによるソロデビュー曲、「Pillowtalk」が初登場で首位を記録しているのですが、メンバーのソロデビュー曲という点で、ハリーはゼインに次ぐ高位置につけています。

 

 

さて次週ですが、現在トップ10内に50週連続でランクインし続けるザ・チェインスモーカーズが次週もトップ10内をキープし、歴代2位のドレイクに並ぶか…がひとつの見所。今週「Paris」が10位、コールドプレイとの「Something Just Like This」が5位と2曲ランクインし、更に今週アルバムチャートで『Memories…Do Not Open』が1位を記録しており、51週連続は間違いなさそうです。

カイル feat. リル・ヤティ「iSpy」は2ランクダウンし今週6位となりましたが、実は全ての指標で上昇中。こちらも台風の目になり得る可能性があります。

そして先週初登場で2位にランクインしたケンドリック・ラマー「Humble.」。今週は1ランクダウンしていますが、逆に言えば1ランクダウンでよくぞ留まったともいえそう。次週はアルバム『DAMN.』がアルバムチャートで初登場を果たすこともあり、「Humble.」の各指標がアルバム発売に併せて牽引される可能性は十分あり得ます。既に前作以上のヒットが見込まれるとの報道もあり、そうなると次週は逃げるエド・シーラン、追うブルーノ・マーズとケンドリック・ラマーという展開になりそう。誰がトップに立つか、実に楽しみです。

青森県出身同士による大人なデュエットを堪能する

青森県下北半島出身のシンガーソングライター、Sinon(シノン)さんが先月リリースしたサードアルバム『Trinity』。その冒頭を飾る曲が絶品でしたので遅ればせながら紹介させていただきます。

動画の冒頭に一瞬だけ登場しているのですが、Sinonさんと同じく青森県出身、SING LIKE TALKING佐藤竹善さんとのデュエット曲「mystery」が洒落ています。下記Apple Musicでも聴取出来る他、CDや配信で購入も可能です。

惜しむらくは、動画における「mystery」の紹介時間が短すぎること。更には、CDやApple Musicのクレジットに佐藤竹善さんの名前がないため、探しにくかったり手に取りにくかったりするのは勿体無い気がします。Sinonさんは、歌ヂカラのある佐藤竹善さんと対等に渡り合えるほどの実力の持ち主なだけに(共に実力者ゆえ、歌に余裕が感じられる程なのです)、竹善さんの音楽を探していた方がこの曲に出会ったなら間違いなく彼女を覚えるはず。自分はそのパターンで露崎春女さんを知ったので、そう断言出来ます。

 

もしかしたらクレジットに載せられない理由があったのかもしれませんが、機会損失ではないかと残念に思います。レコード会社等には今からでもクレジットの変更や長尺での動画公開等をお願いしたいところです。そして、このエントリーでSinonさんの実力を知っていただけるならば嬉しいですね。