イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

人間交差点フェス、KIRINJI弓木英梨乃の素晴らしい二面性にヤラれる

5月14日はRHYMESTER主催フェス、【人間交差点2017】へ行ってきました。RHYMESTERをはじめ出演された方々皆さん素晴らしかったのですが、そこで最も印象的だったのがKIRINJI、そしてメンバーでもある弓木英梨乃さんでした。超絶ギタープレイとかわいらしいボーカル、クールとキュートの同居...これは只者ではない!と実感した次第。

 

彼女のこれまでについて、またギタープレイの凄さは下記記事に詳しく掲載。記事では放課後ティータイムGO! GO! MANIAC」のギタープレイ動画が紹介されており、この演奏だけでも如何に凄い方か理解出来るはずです。KIRINJIでの演奏は勿論のこと、Base Ball Bearのサポートギターとしても幾度となくギターソロを披露しており、観客から喝采を浴びていました。

 

 

一方でキュートな側面が最も端的に示されたのが、人間交差点でも披露された、彼女がボーカルを務める「Mr. BOOGIEMAN」(アルバム『ネオ』(2016)収録)。声のあどけなさやかわいらしさ、さらにギターを置いてボーカルに徹した際の仕草のひとつひとつがかわいらしく、ギタープレイとのギャップにただただ驚かされました。

曲の後半、サビのある部分でボーカルが一気に高音に達するところがあるのですが、歌詞世界と見事に相俟っており世の男子はノックアウト必至かと。まさに"マブシっす!"な仕上がりで、釘付けになってしまいました。

 

KIRINJI自体が超絶演奏陣による集団ゆえ音像も見事、ゆえにRHYMESTERをフィーチャーした「The Great Journey」を間近で観たその衝撃は、今回のフェスで1、2を争うほどの最高の瞬間だったなあと実感。上記トレーラーをチェックし、DVDをポチったのは言うまでもありません。

 

チャイルディッシュ・ガンビーノ、ファンクな「Redbone」がチャートを駆け上がる

ビルボード最新5月27日付アダルトR&Bソングスチャートメアリー・J・ブライジ「U + Me (Love Lesson)」から首位の座を奪ったのはチャイルディッシュ・ガンビーノ「Redbone」。登場22週目にして遂にトップに上り詰めました。

もの凄い画...ですがこれはアルバム『"Awaken, My Love!"』(2016)のジャケット写真。そして機械的に聴こえる声は、実は無加工。それを証明するのが昨年末、テレビ番組『The Tonight Show Starring Jimmy Fallon』でのパフォーマンス動画。

ひたすらに格好良く、ただただひれ伏すしか無いというような空間ですね。

 

『"Awaken, My Love!"』は米R&Bアルバムチャートで初登場1位(総合5位)を獲得。アルバムの詳細等は後述するbmrの記事に詳しく掲載されているのでそちらを是非。そしてこのアルバムは先月発売された『新R&B教本~2010sベスト・アルバム・ランキング』、2016年分において上位にランクインしています。何位に入っているのかは是非手に取って確認していただきたいと思います。

音楽ジャーナリスト、林剛氏のツイートを勝手ながら引用させていただきましたが、その林氏が『"Awaken, My Love!"』についてレヴューしています。「Redbone」を、とある曲の換骨奪胎と評しているのに激しく納得した次第で、まさしくチャイルディッシュ・ガンビーノは、今の時代にファンクを蘇らせんとしているのですよね。

 

その「Redbone」。最新5月27日付総合ソングスチャートで前週の44位から上昇、36位に達したことで、遂に自身初となるトップ40入りを果たしました。今後の動向が気になるところです。そういえば「24K Magic」「That's What I Like」でチャートを賑わせているブルーノ・マーズも80年代以降のR&Bの換骨奪胎といえそうですし、そう考えればチャイルディッシュ・ガンビーノに追い風が吹いているのかもしれません。

米ソングスチャート、ジャスティン・ビーバー参加曲が2週連続で首位に到達

ビルボードソングスチャートを定点観測。

現地時間の5月15日月曜(日本時間の火曜早朝)に発表された、5月27日付最新チャート。先週1位発進した、DJキャレド feat. ジャスティン・ビーバー、クエヴォ、チャンス・ザ・ラッパー、リル・ウェイン「I'm The One」は1週で陥落し3位へ。代わって首位の座を射止めたのはルイス・フォンシ&ダディー・ヤンキー feat. ジャスティン・ビーバー「Despacito」でした。

記事は下記に。

そしてトップ10はこちら。

 

まさに"ジャスティン・フィーバー"。ジャスティン・ビーバー参加曲が2週連続で首位に立つのですから、ジャスティン様様ですね。

「Despacito」はストリーミング(5430万回、前週比14%上昇)、デジタルダウンロード(104000、先週比4%上昇)の3指標中2つでトップに。ダウンロードのうち73%がジャスティン参加バージョンというのですからジャスティン人気の凄さが解ります。ラジオエアプレイもここにきて7ランク上昇し11位へ。前週比17%の上昇とのことで、こちらの指標で伸びれば次週以降安泰かもしれません。

ちなみにここに至るまで、ケンドリック・ラマー「Humble.」(5月6日付)→ブルーノ・マーズ「That's What I Like」(5月13日付)→DJキャレド等「I'm The One」(5月20日付)→「Despacito」と、4週連続で首位が交代。1990年秋の7週連続以来となる交代劇ですが、次週「Despacito」を揺るがす存在は見当たらないと思われます。なお、1990年の毎週交代劇に終止符を打ったのはマライア・キャリー「Love Takes Time」。1990年11月10日付で首位に立って以降、3週連続1位をキープし連続交代劇が潰えました。

また、「Despacito」の首位獲得により、実に8曲連続で男性が首位の座を射止めるという現象が。過去7曲については下記に。女性陣に頑張って欲しいと切に願います。

 

ルイス・フォンシとダディー・ヤンキーにとっては初の全米制覇、ジャスティン・ビーバーは5曲目の首位獲得となる「Despacito」。ホットラテンソングスチャートではリミックス登場前から首位の座を射止め、最新週で15週連続の首位を獲得したこの曲ですが、主にスペイン語で歌われた曲が総合チャートでトップに上り詰めたのはロス・デル・リオ「Macarena (Bayside Boys Mix)」以来実に21年ぶりなのです。

しかしながら?双方の曲にはわずかながら英語が登場...ゆえに、全てスペイン語で貫き通された曲での全米制覇となると、ロス・ロボス「La Bamba」(1987)ただ一曲しかないということに。

「Macarena」も「Despacito」も元来オリジナルバージョンが存在し、リミックスによってわずかながら英語が足された形になったのですが、そのリミックスバージョンが大ヒットに至ったという次第。「Despacito」はリミックスバージョンが加算される以前は44位が最高、そして「Macarena」は、実はオリジナルバージョンのリリースがリミックスバージョンによるチャート制覇の前の年であり、その際の最高位は45位。ニューヨークのラジオ局、WKTUがリミックスバージョンの人気に火をつけたと言われています。

 

一方、1週天下に終わったDJキャレド等による「I'm The One」はデジタルダウンロードで前週比53%、ストリーミングでは同15%の大幅ダウン。ラジオエアプレイでは一気に53%上昇し5400万回オンエアされ同部門で14位につけていますが、ラジオエアプレイの伸びがもっとあれば(それこそ「Despacito」の5700万回を上回っていれば)、首位の座をキープ出来ていたのかもしれません。ブルーノ・マーズ「That's What I Like」のラジオエアプレイは175万回、前週比1%上昇しており総合で2位をキープしているのですから、「Despacito」「I'm The One」がラジオエアプレイでどこまで伸び、他指標を補完出来るかがロングヒットの鍵と言えそうです。

 

 

次週はおそらく「Despacito」が数字的にがっちりと首位固めしてくる予感がします。

聖俗をスムースに行き来するマリ・ミュージック、アルバムが来月発売

特定のジャンルに強い楽曲が、その枠を飛び越えて総合チャート等にもランクインすることをクロスオーバーヒットといいます。ジャスティン・ビーバー参加のリミックスにより最新5月20日付米ビルボードソングスチャートで3位まで上昇した、ルイス・フォンシ&ダディー・ヤンキー feat. ジャスティン・ビーバー「Despacito」もそのひとつで、ラテンソングスチャートではジャスティンが参加する前から既に1位に上り詰めており、最新5月20日付現在、14週連続でその座をキープしています。総合のソングスチャートについては下記、今週火曜のエントリーをご参照ください。

 

さて、ゴスペルの世界でもクロスオーバーヒットの兆候を持つ楽曲が登場しました。3年前にメジャーデビューを果たしたマリ・ミュージックがこの春リリースした「Gonna Be Alright」が、最新米アダルトR&Bソングスチャートで30位に初登場。一方、同日付ゴスペルソングスチャートには上位25位以内に入っておらず、聖俗のうち後者で先にヒットを獲得したことになります。

マリ・ミュージックのプロフィールはbmrに詳しく掲載されています。

R&B歌手のエイコンのレーベルに一時所属というのも面白いですし、所属時に一部ゴスペルファンから批判を受けたことも、語弊があるかもですが興味深いですね。ゴスペルファンに限らず、どんな分野においても超がつくほどの保守的な方は存在するものだなあと。ゴスペルと密接につながるキリスト教における、同性愛への一部保守層からの偏見も同様で、そのことは以前ここで書いたことがあります。

そのようなゴスペル界にあって、昨年はカーク・フランクリンがカニエ・ウェストやチャンス・ザ・ラッパーの、上記ブログで取り上げたキム・バレルはフランク・オーシャンの、それぞれ高く評価されたアルバムに参加しており、聖と俗が以前よりも行き来しやすくなった感じがします。それを踏まえれば、保守的な考えが時代遅れになって来ていることも理解出来るでしょう。

 

マリ・ミュージックについても、先述したR&Bチャートへのランクインが示す通り、聖と俗を行き来する方と言っても過言ではなく、今年はホセ・ジェームス「Let It Fall」に参加、また映画『Chi-Raq』(2015)にジェネイ・アイコとの「Contradictions」を提供しています。

メジャーファーストアルバム『Mali Is...』(2014)からのシングル、「Beautiful」は日本のR&Bコンピレーションに収録。一方で同曲はゴスペルヒットのコンピレーションアルバム『WOW Gospel』シリーズには収録されず、ファーストアルバムから選ばれたのはよりゴスペリックな「I Believe」(『WOW Gospel 2015』収録)でした。こういうところからも聖俗シームレスということが解りますし、R&B的な音を入口にしてマリ・ミュージックにハマり、ゴスペルそのものに没頭していく人も生まれるかもしれません(そして逆もまた真なり)。それはとても素晴らしいことだと思います。

現段階でアルバムの詳細は未定ですが、先行曲が素晴らしいだけに個人的な期待は高まっています。 

 

なお、音楽プロデューサーの松尾潔さんが先日、自身のラジオ番組でこの新曲に触れています。冒頭に用いられている一節等について、下記の文字起こしを是非ご参照ください。

今度のラジオはひと足早く音頭を先取り

本日、5月14日放送の『わがままWAVE It's Cool!』(FMアップルウェーブ 日曜17時。サイマル放送で日本全国どこからでも聴取可能)の音楽特集は、当日が温度計の日ということでちょっとひねって【音頭】をお送りします。定番も勿論おかけしますが(とはいえ今回の選曲担当が若手のホープ、しょうごくん(の予定)なのでどうひねってくるか...というか、定番を知らない可能性も?)、歌詞検索サイトで"音頭"と曲名検索したところ276曲(5月9日時点)もあって驚いた次第。

東京音頭」など定番をはじめ、バラエティ番組やアニメのエンディングテーマ等で用いられたもの、さらにはJ-Pop歌手によるオリジナル楽曲も少なくないことに驚きました。今日はそれらの曲の中からいくつか取り上げてみます。

 

ピエール瀧「まるちゃんの静岡音頭」

静岡市の広報による(おそらく)専用アカウントが発信。作詞がさくらももこさんなのは想像つきましたが、まさか作曲が細野晴臣さん、アレンジが小山田圭吾さんだとは...本格的過ぎます。

 

MINMI feat. SHINGO★西成「ポジティブ音頭 ~D.P.P~」

夏女MINMIだからこういうテイストも許せる感じがしますね。ライブでこの曲を披露したときの会場のリアクションが気になります。

 

爆乳三国志「爆乳音頭」

サビのリズムからして音頭じゃないとツッコみたいところだけど、それ以前にツッコむところがいろいろ有りすぎて頭がパンクしそうなまさに珍曲。手島優さん等によるユニット、爆乳三国志の他にも様々なセクシーユニットがあるそうで、"セクシー☆オールシスターズ"名義で『セクシー☆甲子園』(2010)をリリース。それにしてもユニット名といい曲名といい、アルバムの詳細見るとどこまで本気なのかわからなくなりますね...。

 

 

「爆乳音頭」はフィジカルで手に入れることが出来ず、今日の特集に合わせてダウンロードしようかと本気で考えましたがさすがに(?)躊躇ってしまったことをここに告白します。一方でそれとは真反対とでもいうか、DT御一行「DT音頭」は手に入れたので、もしかしたら今日OAされるかもしれません。てなわけで、今日放送の『わがままWAVE It's Cool!』にどうぞご期待ください。番組はサイマル放送で全国どこからでも聴くことが出来ますよ。

 

 

ちなみに自分は昨年に引き続き、この日に開催されるRHYMESTER主催の音楽フェス【人間交差点】に参戦させていただきます。

ラジオにおける、曲のベストな落としどころをまとめてみる

昨日は、現在のラジオ業界等での、曲の落としどころにおけるぞんざい過ぎる扱いについて指摘させていただきました。

この【曲の落としどころ】問題を解消することにより、曲に心地よい余韻が生じ、ひいてはリスナーの、番組や局に対する心象まで変わっていくかもしれません。つまりは、曲の扱いひとつでファンになるか離れていくか決まります。信頼は聴取者数の増加を招き、スポンサー獲得の武器となる…そう考えると、中長期的な戦略にも影響するのです。

いやいやそれは大袈裟だよと思われるかもしれませんが、自分が以前チェーン店の小売業界に在籍していた当時、これからの店舗はクリンネスも重要という当時の社の(いやこれは店舗数的に飽和となりつつあった業界全体の考えではありましたが、その)決定を伝えたところ、オーナーの中には"そんな抽象的なことで売上が上がるのか!"と無下にされたことがあります。無論伝え手であるこちらの実力不足は否めませんが、しかしクリンネスを徹底しない店舗は数年後、ことごとく閉店したのを強く覚えています。店舗の心象の悪化はすぐには数字(売上)として表れなくとも、長期的な意味でファン離れを起こすのです。ラジオ業界は潰れないという神話はもはや過去の話、ネットラジオradikoのサービス拡充に伴いライバル局を容易に聴くことが出来ますし、YouTubeや定額制音楽配信サービスによるストリーミングが台頭したことで、受け手からすれば音楽を聴く媒体にいくらでも代わりはあるのです。その際、ラジオにとって大事になるのは音楽にどう付加価値をつけるかではないかと。この店舗はいつ行っても気持ち良いという先例におけるクリンネスの徹底の如く、選曲の良さは勿論のこと、曲の余韻をより良くさせる技術により聴き心地十分と思わせてくれる…これはラジオだからこそ出来ることですし、またラジオ局同士においても良質な番組には、都道府県や県域/コミュニティの境目が無くなった分、その評判を聞いて区域外からリスナーが流入することだって十分にあり得るはずです。

 

 

では、どうすれば曲の落としどころがより心地よく聴こえていくか、星野源「恋」を例に、みていきましょう。

(動画では2番の箇所で告知が入りますが、曲自体が分断されているわけではないので用いさせていただきます。)

歌詞はこちらに。

曲の構成は、《イントロ→1番→サビ→間奏→2番→サビ→間奏→大サビ→サビ→アウトロ》となっています。どの段階でフェードアウトやトークの挿入を行えばいいかについて、6つのタイミングを取り上げてみます。

 

① 曲の終わり (「恋」においては4分07秒)

曲自体がフェードアウトしないタイプのものであれば最もオーソドックスというか、②以下がわずかながら技術を伴うものだと考えればこの方法は非常に無難といえます。

ちなみに曲終わりにそのままCMに入る場合、曲の尺を事前に計測し逆算して、イントロを流すタイミングを決めておけば、曲終わりから間髪を容れずCM入りしたときの爽快感たるや、リスナーもラジオスタッフも強く味わうことが出来ます。この爽快感は格好良さと言い換えることも可能です。

 

② 歌い終わり (3分31秒)

③ 大サビの後(大サビからそのままサビに入ることも有) (3分00秒)

④ 2番のサビ終了後(サビからそのまま大サビに入ることも有) (2分20秒)

番号が大きくなるにつれて、リスナーの満足度は下がるものと考えますが、個人的にベストなのは②ではないかと。歌い終わりでトークを挿れ、曲の終わりのタイミングに合わせて"お送りしたのは星野源「恋」でした。"と締めくくり曲とトークのタイミングを同時に終了出来れば、これもまたリスナー等に心地よい余韻を与えることが出来るでしょう。

③、④に関しては、大サビやサビ直後に間奏なしでメロディが来る場合もありますので、大縄跳びにどのタイミングで入るかの如く、タイミングの見極めが大事です。生放送で且つリクエストに応える番組であれば事前に曲をチェック出来ませんので、その場合は歌詞検索サイトで曲を事前にチェックし、どれがサビか大サビかを予想しておくことをお勧めします。

 

⑤ 2番サビ頭 (1分53秒)

出来れば2番まで流すべきだと個人的には考えていますが、どうしても尺の都合でという場合には最悪⑤が適切でしょう。もしくは、サビで同じメロディを二度繰り返す場合は2番サビ後半の頭で…というのもアリかもしれません(ちなみにこの方法は、『J-WAVE TOKIO HOT 100』(J-WAVE 日曜13時)でクリス・ペプラーさんが採っている手法です。クリスさん、ディレクターどちらのタイミングかは判りかねますが、そこまで違和感を抱くことはありません)。

 

⑥ 1番の前にサビがある(サビはじまりの)曲の場合は1番サビ終わり

たとえば先述した星野源さんならば「夢の外へ」が、他にも中島美嘉「ORION」などがサビはじまりの曲は多数あります。

この動画の場合は2分46秒となります。

⑤は1番まるごとと2番前半、⑥は1番まるごとと(その前の)サビというように、⑤、⑥とも1番と、その半分近くの尺をかけることが出来ます。尤も曲はもっと長くかけたほうがいいとは個人的には思うのですが。

 

 

そんなわけで、①から⑥まで提案してみました。最も簡単に出来るのが①であることはたしかですが、ラジオを好んで聴く方であれば②から⑥の方法で流しても心地よさを感じる番組や局を知っていると思います。ラジオをやりたいという方は好きな番組や局を活きた教科書にして、自分なりのスタイルを確立するのをお勧めしますし、少なくともradikoプレミアムやらじる★らじるなど、区域外の局をチェック出来るネット機能をフル活用してほしいんですよね。

 

 

さて、ここまでは【曲の落としどころ】のベストなタイミングを書いてきましたが、ベストがあればワーストもありますので、聴き心地の悪い曲の落としどころを列記してみます。

 

(1) 歌っている最中

上記③~⑥では、実際に歌っている最中にトークを挿入することになるので、そのタイミングできちんとトーク用のBGMレベルに落とすことが大事になります(ゆえに、DJのみならず、音のレベルを管理するミキサー、そしてタイミングを決めるディレクターとの連携が重要となります。ワンマンの場合は全てをひとりでこなすためその点ではあまり問題はないでしょう)。昨日のエントリー(上記にリンク有)で中島美嘉「桜色舞うころ」でのタイミング問題を取り上げましたが、サビの盛り上がりのタイミングにトークし始めることでリスナーの気持ちの高まりを壊すことだけは避けていただきたいものです。

 

(2) 1番のサビ終わり

曲によっては1分前後しかかけておらず、尺の3分の1も流れません。

 

(3) 1番の途中

厳しい物言いですが論外です。最近この手法が本当に目立っています。

 

 

(3)の実例を挙げるとすれば、たとえば番組中に喋り原稿を持たないラジオショッピングコーナーがある場合、そのショッピングキャスターが商品紹介時に熱を込めすぎるあまりに当初予定されていた尺を伸ばしてしまった(いや、そもそも締めの時間自体知らされていないのかもしれませんが)、その流れで曲をかけても1番途中でフェードアウト…ということがままあります。仮に百歩譲って1番終わりまで流せればOKだとして、それすら行けないのであれば無理に流す必要はないのではないでしょうか。曲は穴埋めとして流す道具ではありません。

また、今週ある番組で、アルバムをリリースしたばかりの三戸なつめさんの、番組への事前収録コメントが流れたのですが、デビュー曲の1番歌い出しが流れた直後にコメントが挿入されたことにも果てしない違和感を覚えました。せめて1番をフルで流してからというのは出来なかったのでしょうか。まるで、コメントが届いたから曲を流さざるを得ないとでも言うべき義務感を覚えます。

また、これは曲の落としどころとは異なりますが、この春とある10代歌手がリリースキャンペーンで来県し、1時間近くもの間某番組に付き添うという、青森県のラジオ番組では非常に贅沢な起用のされ方をしていたことがあったのですが、その方のプロフィール紹介において女性アシスタントが流れるのではなく"流れ過ぎる"口調で紹介しており、ファン以外の方にとってはどれが作品名でどれがフェスの名前なのか、聴いていて全く区別が付かなかったのです、その言い方にははっきり言って怒りすら覚えたほど。最低限事前に学習し、何が作品なのか等を、その詳細を知らなくてもいいので理解し、自身で咀嚼して話せなかったのか? せっかくキャンペーンで時間を割いてくださった歌手をより多くの県民に知っていただくべく動くことが出来なかったのか…と思うのです。個人的にこの日以外でも、この女性アシスタントの態度には我が我が…という、適当だったり投げやりだったりする姿勢が強く滲み出ていて聴く度に違和感を覚えるのですが、この時の応対はあまりにも酷かったと記憶しています。更には先述したプロフィール紹介の後、男性パーソナリティが"この説明で合ってますか?"と、まるでこの女性アシスタントの態度は何も問題なかったかの如く普通に質問したことにも驚きましたが、その歌手の控えめ過ぎる肯定(これこそ大人な対応だと実感しました)に、この歌手はもう二度と青森に来てくれることないのではないかという強い不安を抱いてしまったほど。少なくともその女性アシスタントにはラジオに関わっていただきたくはないものです。

 

 

少し話が逸れましたが、このような形で曲が大事にされていなさすぎる問題が目立ってきています。ネット/デジタル時代になったとしても、"データは軽くなったが 音楽の意味は重くなった"のです。この言葉はRHYMESTER「ゆめのしま」の一節ですが、この言葉、そしてリリック全体の意味を、ラジオに携わる者が皆共有しないといけません。ラジオ離れが起きている原因が、音楽を聴く媒体の変化以上に、それを仕方ないなどとして諦めるあまりに業界全体が曲をぞんざいな扱いをするようになったことにあるのではないでしょうか。音楽により感動を、心地よい余韻を残し、ラジオを聴くと音楽がより立体的に感じられると思っていただくべく動かないと、ラジオは間違いなく危機を迎えると断言します。

ラジオ等における、"曲の落としどころがぞんざい過ぎる"問題と、その実例

今週火曜の午前、『わがままWAVE It's Cool!』(FMアップルウェーブ 日曜17時)を共に担当する大学生スタッフのつぶやきに端を発し、今のラジオ番組が音楽を雑に扱っていないか?というやり取りに至りました。発端は某番組における、OA曲の2番サビでのフェードアウトに対する指摘だったのですが、自分はもっとひどい例を近年様々な場所で聴いてしまっているのです。

たとえば。

番組名特定は申し訳ないのですが、以前つぶやいたので引用。1ヶ月前の『ヒルモット』(エフエム青森 月-金曜11時30分)において、桜シーズンを先取りする形でOAした中島美嘉「桜色舞うころ」。2番のサビ終わり前でまさかのフェードアウトしCMへ。10秒位待てなかったのか?と思わずにはいられません。

上記ビデオはショートバージョンゆえ1番しかなく、実際は2番まで流れたのですが、例えるならばこの曲の1分16秒で急にフェードアウトするようなものです。

 

また、ラジオ番組や局ではないものの、最近とりわけひどいと思ったのはブックオフの店内放送。ゴールデンウイーク中に何度か通ったのですがこちらはもっと酷かったですね。実は以前も同様の指摘をさせていただいたのですが。

今回も様々な曲でサビ終わり直前にDJが割り込むというスタイルが。たとえばB'z「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」は下記ビデオの1分25秒のところ、"僕と君だけよ消えないで"という1番最後の一節に被る形でトークが挿入されるのです。あまりにも強い不快感を覚えてしまいます。

ブックオフに関しては全て1番しか流さない(実際は1番すらきちんと流さない、ですが)というのもまた問題ですが。

もしかしたらこういう考えもあるのかもしれません。とはいえ、好きな歌手や曲が同様の扱いを受けたときのことを想起出来るならば、このような扱い方はあまりにも無礼だと思うはずです。想像力の欠如、と言っても過言ではないでしょう。

 

 

さて、これは個人的な感触ではあるのですが、最近のラジオ等での曲の取扱のずさんさは、以前にも増して高まってしまっているように思うのです。その要因を考えると。

ダウンロードや定額制音楽配信サービスの普及を、イコール"(金額的な意味等で)音楽の価値が下がった"と捉える向きがありますが、音楽の作り手にとっては昔も今も、少なくとも自身の作品に対してはそのような考えを抱かないはずです。ネット/デジタル時代で音楽が(たしかに安価で)手に取りやすくなったのは事実でも、だからといって雑に扱っていいというのはあまりに失礼、ましてそれを制作側と受け手の仲介役であるラジオが行ってしまえば、受け手はその誤った解釈を正しいものと思い込んでしまいかねないのでは?と。せめてラジオ側が曲を、しっかりと愛情を持って流すことが大前提だと思うのですが、その大前提がどんどん薄れてしまっているような気がします。

 

 

とはいえ、自分が十数年前に学んだラジオDJセミナーでは、イントロ乗せについては学んでも、曲を流した後どのタイミングでトークを挿れるかについては学ばなかったと記憶していて、もしかしたらこの、【ラジオにおける曲の落としどころ】ついての教科書はないのかもしれません。自分自身はJ-WAVE、2000年代前半の番組群から体感し自然に身についたようなものなので、ラジオを沢山聴くもしくは実際にやってみるという経験でしか学べないのかもしれませんが、それでは今後ラジオ人を目指す方にとってはアドバイスが抽象的になってしまいます。

というわけで明日、曲へのトークの挿入やフェードアウトといった【曲の落としどころ】について、自分なりにまとめて書き上げてみます。