イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米ビルボードソングスチャートから遂に彼の名が消える

ビルボードにおいて、まもなく偉大な記録が生まれかねないということを昨日記載したのですが、一方この偉大な記録が遂に途絶えてしまいました。

 メジャーデビューシングル、「Best I Ever Had」(最高2位)が92位に初登場を果たした2009年5月23日付以来、前週2017年8月19日付までなんと431週...8年以上もソングスチャートトップ100内にランクインし続けたドレイク。ですが、前週81位の「Passionfruit」および100位の「Signs」が共に圏外となったことで、遂に100位以内連続チャートイン記録が途絶えてしまいました。

 

この記録がどれだけ凄いかというと。

総合チャート100位以内連続チャートイン記録

(リードアクト(主演)、客演双方において)

1位 431週 ドレイク

2位 326週 リル・ウェイン

3位 216週 リアーナ

4位 207週 ニッキー・ミナージュ

5位 161週 クリス・ブラウン

6位 159週 ジェイ・Z

7位 152週 ネリー

8位 141週 ケニー・チェズニー

9位 139週デスティニーズ・チャイルドケイティ・ペリーテイラー・スウィフト

3位と2位、2位と1位の差は共に2年以上もあるため、ドレイクが如何にぶっちぎりなのかが解りますね。

 

ちなみに、ドレイクがこの8年以上もの間に成し遂げた記録は他にも。

・トップ100へ157曲をランクイン(歴代2位 1位はグリー・キャスト)

・トップ100に24曲も同時ランクイン(歴代1位)

・51週連続トップ10入り(歴代3位 1位はケイティ・ペリー、2位はザ・チェインスモーカーズ)

 

ドレイクの数々の記録については、特にラッパーが客演に招かれやすいこと、そして特にストリーミングの興隆によりヒップホップ(やR&B)がチャートで優位になってきていることが追い風になっているとは思います。しかしながら、ここまでチャートを席巻するのは、それだけ彼の音楽が愛されている証拠と言えるでしょう。

ただ...これは私見と前置きした上で苦言というかお願いなのですが。ミュージックビデオが作られていない、もしくはあったとしても公式YouTubeアカウントに置かれていない場合が多かったり、最新アルバムの『More Life』が本人曰く”プレイリスト”のためCD化されなかったり...と、中途半端な面が否めないと思ってしまうのです。CD化については今後フィジカルを見送る歌手が増えそうな予感がするので強くは言えませんが、せめて公式YouTubeアカウントには音源だけでもいいのできちんと集約していただきたいものです。

米ソングスチャート、「Despacito」14週1位は歴代2位タイ! ライバルは不在か

ビルボードソングスチャートを定点観測。

現地時間の8月14日月曜(日本時間の火曜早朝)に発表された、8月26日付最新チャート。ルイス・フォンシ&ダディー・ヤンキー feat. ジャスティン・ビーバー「Despacito」が14週目の首位を獲得し、首位獲得週で歴代2位タイとなりました。

記事は下記に。

そしてトップ10はこちら。

「Despacito」強すぎます。非英語曲(ただし一部使用ですが)に限って言えば、ロス・デル・リオ「Macarena (Bayside Boys Mix)」と並び歴代1位タイに。これまで14週1位を獲得している曲をおさらいすると。

・マーク・ロンソン feat. ブルーノ・マーズ「Uptown Funk!」(2015)

ブラック・アイド・ピーズ「I Gotta Feeling」(2009)

マライア・キャリー「We Belong Together」(2005)

エルトン・ジョン「Candle in the Wind 1997 / Something About the Way You Look Tonight」(1997-1998)

・ロス・デル・リオ「Macarena (Bayside Boys Mix)」(1996)

ボーイズIIメン「I'll Make Love to You」(1994)

ホイットニー・ヒューストン「I Will Always Love You」(1992-1993) 

これら強烈な面子に「Despacito」は並んだわけです。しかしこの上はとなると唯一、マライア・キャリーボーイズIIメン「One Sweet Day」(1995-1996)のみが16週1位を記録。”15週”の壁は厚いのですが、果たして「Despacito」はその壁を打ち破り、更には前人未到の16週超えを達成することが出来るでしょうか。

 

...私見を前置きした上で書くならば、可能性は十分でしょう。「Despacito」はチャート構成3指標のうち今週は2つで1位を獲得。そしていずれの指標もあまり減らしてはいないのです。デジタルダウンロードは82000で前週比3%ダウン、ストリーミングは4940万で同1%ダウン。実は先週先々週と2週続けて、デジタルダウンロードが10%以上のダウンを続けていたため、このタイミングで持ちこたえていることに驚きました。他方ラジオエアプレイでは首位の座をDJキャレド feat. リアーナ&ブライソン・ティラー「Wild Thoughts」に明け渡したものの前週比4%ダウン(1億3460万)に留まっています。他方、「Wild Thoughts」はラジオエアプレイで首位を獲得したもののその差はわずか50万であり、全指標の合計において両者の差は前週とほぼ変わらず、「Despacito」のポイントは「Wild Thoughts」のおよそ1.46倍となりかなりの差が生じる結果に。また先週から3位をキープしているフレンチ・モンタナ feat. スウェイ・リー「Unforgettable」はラジオエアプレイで数値を落としており勢いがそこまで強くないことから、「Despacito」のライバルは未だ不在ではないか...と考えるのが自然でしょう。

 

では今最も勢いがあるのは誰か?となると、28→14→8位とジャンプアップしたカーディ・B「Bodak Yellow (Money Moves)」かもしれません。

女性ラッパーによるメジャーデビューシングルのトップ10入りは、イギー・アゼリアがチャーリーXCXを客演に迎えた「Fancy」(2014)以来の快挙。また同じく女性ラッパーによる”客演なし”作品でのトップ10入りはニッキー・ミナージュ「Anaconda」(2014)以来というのですから、彼女の勢いの凄まじさを感じます。ストリーミングは前週比28%もの大幅増で3140万、デジタルダウンロードは同8%アップの23000、そしてラジオエアプレイはこちらも同47%の大幅アップで3200万となっています。

無論、これらの数値は「Despacito」と比べてかなり低いのですが、そろそろチャートに嵐を起こしてほしいという期待が、もしかしたらこの曲の勢いを加速させているのかも...というのはちょっと考え過ぎでしょうか。しかしネットセレブの仲間入りを果たした後にラッパーになった彼女(詳細はbmrのデータベースを参照)に、出自にこそもしかしたら賛否両論あるかもしれませんがチャートをかき回してくれると面白いという期待を込めたくなる人もいるはず。次週どこまでジャンプアップするか、見ものです。

シャナイア・トゥエイン、久々の新曲から感じるゴスペルっぽさ

昨日8月13日付、『J-WAVE TOKIO HOT 100』(J-WAVE 日曜13時)で83位に初登場を果たしたのがシャナイア・トゥエイン「Life's About To Get Good」。オリジナルアルバムとしてはなんと15年ぶりとなる『Now』(輸入盤9月29日発売予定)からの先行曲です。

プロデュースを手掛けたのがマシュー・コーマやジェイク・ゴスリングといったポップ畑の方々ゆえ、シャナイアが大ヒットを連発していた頃、ロバート・ジョン・”マット”・ラングが手掛け総合チャートでもトップ10ヒットを連発していた作品群に似た勢いを感じます。とはいえアレンジは全くもって異なりますが。

歌詞の和訳や、彼女の長き”不在”時に何があったか等については下記サイトに詳しく記載されています。なるほど、ロバート・ジョン・”マット”・ラングと制作しない理由は公私の...なんですね。

 

個人的には今回の「Life's About To Get Good」、ゴスペルっぽいなと感じたのです。歌詞はまるで彼女の苦難を表しているかのようで、そこから前を向く力もそうなのですが、実は”音”もゴスペル的。なぜなら現在のゴスペルのトレンドのひとつがアコースティックギターを用いることにあるのです。

ラヴィス・グリーンが顕著な例なのですが、この「Made A Way」はゴスペルソングスチャートを制覇したのみならず、ゴスペル最大の音楽賞であるステラ賞において、同曲および収録アルバム『The Hill』で今年7部門も受賞。そのステラ賞のパフォーマンスにおいてトラヴィスは、イスラエル・ホートン、ジョナサン・マクレイノルズそしてジョナサン・バトラーと共にパフォーマンスしたのですが、なんと全員がそれぞれの持ち歌をアコースティックギター弾き語りにて披露。【ゴスペル×アコースティックギター】が如何に自然な組み合わせであり、また大衆に認知されているかがわかろうというものです。

シャナイアの新曲でのアコースティック度はそこまで高くないかもしれませんし、カントリーミュージックにおけるギターといえばスティールギターだったり(ギターではないものの)バンジョーであるためアコースティックギターとは異なるのですが、それでも何かしらの親和性を覚えた次第。シャナイアの新曲がカントリーとゴスペルのクロスオーバーヒットになったなら嬉しいと期待する自分がいます。

再掲・New Agenda

人種差別主義者によるデモが発生する事自体がおぞましいことなのです。しかもデモ反対派に車が突っ込み死傷者が出るという状況に唖然としています。

更におぞましいことには、人種差別主義、白人至上主義者はこのデモでトランプ大統領を称えているのです。

”Heil”とは万歳の意。ゴスペルでも使われているはずの言葉であり、人種差別主義者にとってトランプ大統領は”神”なのかと...開いた口が塞がりません。

その称えられた側は。

この問題において人種差別主義者を名指しで非難しないのみならず、暗にオバマ前大統領の名前をちらつかせて自身の責任を回避しようという...自分はこの点において、トランプ大統領を”最低”だと糾弾しました。

北朝鮮の問題においてはあまりにも強気であり戦争すら起きかねないとおぞましさすら感じるのですが、他方人種差別主義者には弱腰...トランプ大統領の支持者はおそらくこのような人たちであり、大統領もそれをよく分かっているのでしょう。敵味方をあまりにもはっきりと蔑視ありありで区別する人が最高権力者たる社会は今の世界に大きな歪を与えており、いつ銃爪が引かれてもおかしくない状況を作り上げているという意味において、トランプ大統領には退いていただきたいと強く思います。

 

 

4年前、ジャネット・ジャクソン「New Agenda」を紹介したエントリーを掲載しました。

本文では直接言及しなかったものの、日本において安倍政権が、野党や東アジア諸国を平然と敵認定する、その姿勢を憂いたことが掲載の背景にあります。『日本を、取り戻す。』というキャッチコピー登場時からその姿勢を疑問視していた身として、急激に政権支持率が低下した今、市井の多くがその姿勢を認識してきたのではと感じています。

荻上チキ・Session-22』(TBSラジオ 月-金曜22時)、7月31日付Main Sessionについてはこちらで聴くことが出来ます。

 

今の日本、そしてアメリカの政権に共通する敵認定、蔑視上等という姿勢が強硬な人種差別主義者を生みもしくは育んでいるような気がしてなりません。彼らにとって最高権力者は自分の歪かもしれない考えが間違いないことの理由となる絶対的な存在、すなわち”神”なのでしょう(それゆえ、彼らに一縷でも思いやる心があったとして、”神”の存在が暴走に走らせることを許してしまうのでは、と)。日本ではアメリカほどの動きはないかもしれませんが、ネット上で溢れるヘイトスピーチの数々には閉口するばかり。尤も、反政権の人々の中にも叩くことを正義としてヘイトを振りかざす人がいて、右でも左でも極端に振り切った人間による議論を無視した行動、言動の刃には辟易してしまうのですが。そういった差別上等の方には改心の余地がなければ退出していただきたいところですがそれも極端な発想にほかならず、ならば「New Agenda」での宣言の如く強い思いをもって話し合い、諭し、そして慈しむ場を設け、柔和を目指さないといけないと考えます。だからこそ、こういう問題が起きる度に何度でも声を上げていこう、このエントリーを再掲していこうと考えた次第です。

 

人種差別を振りかざす人間の改心には一縷でも期待出来るとして、しかし彼らの心の拠り所が存在する限り、またも暴走を繰り返しかねないのではという懸念を覚えます。その意味において、崇められる人々にはその座から退いていただきたいと強く願います。そもそも多様な人間の集まりたる国において、その多様性を認められない人が首長に就く段階で大きな矛盾を孕んでいるのですから。

世界◯◯テーマソングの中毒性たるや

今週何度もテレビから流れて来て、気付くと口ずさんでいるという【世界陸上】テーマソング。

実は2年前にもこの曲について取り上げているのですが。

2年前に70万回を突破していたこの動画は現段階で107万回近くにまで到達。自分同様に聴きたくなっている人が少なくないことを実感した次第です。

 

そういえば、【世界水泳】のテーマソングは今年のフェスで大盛り上がり。

最後の"ultra soul"3連発の昇天具合といったら。

元がいい曲であることに加え、2年に一度のペースで大量オンエアされたら間違いなく覚えますね。ずっとタイアップされ続けてほしい曲達です。

米ビルボードが邦楽ニュースを発信しはじめている?

リツイート、そしてとりわけお気に入りがあまりに伸びてビックリしました。

 

自分が引用したのは米ビルボードのツイート。実は米ビルボード、最近になって邦楽を取り上げるようになった気がするのです。先のSKY-HIさんの件に限らず、他にも。

以前は邦楽ミュージシャンの名前がほとんど出てこなかったはずで、ゆえに驚きました。

調べてみてわかったのですが、これらの記事はいずれも、以前ビルボード・ジャパンに掲載された記事を(一部編集の上で)転載したものでした。元記事は下記に。

ビルボード・ジャパンには日々沢山の音楽ニュースが掲載されるのですが、その中から米ビルボードに”選抜される”のはごく一部。おそらくは海外でリリースやライブを行ったり、海外のミュージシャンと組んだ方のニュースが積極的に発信されているということでしょう。そんな中で、米津玄師さんのチャートアクションについて海外発信されるのはなかなか面白いなと思うのです。

 

ビルボードでの邦楽の紹介の動きがなぜ出てきたのかは不明です。しかし、この流れは本当に歓迎したいところ。なぜなら。

日本のレコード会社に対してちょっと厳しい物言いになったかもしれず、その点はお詫び申し上げます。しかしながらたとえば米津玄師さんの記事において、YouTube等のリンクが掲載されておらず、仮に海外で米津さんの公式動画が見られない(制限されている)ゆえの未掲載ならば(そしてそれが日本のレコード会社の方針ならば)、機会損失であり非常に勿体無いと思うのです。尤も、ビルボード・ジャパンの記事でも動画は未掲載であり、米ビルボードそれに倣っただけかもしれませんが。

ビルボードは、ビルボード・ジャパンの記事そして豊富な情報量を通じて、優れた邦楽を今後も発信していくでしょうし、その頻度が高まるものと推測出来ます。その際、海外からの邦楽に対するニーズの高まりにどう応えていくかを議論し実行するのは急務です。積極的な音楽配信、ショートバージョンや途中の宣伝挿入等のないミュージックビデオの発信等、海外でも通用するやり方を積極的に構築しないとならないでしょう。日本のレコード会社にその流れが生まれることを願うばかりです。

実力派ゴスペルデュオ、それぞれのソロ曲が”対決”?

ビルボード最新8月19日付ゴスペルソングスチャート。トップ25内に初登場した2曲は姉妹それぞれのソロ曲。あたかも”対決”という形となりました。その姉妹とはゴスペルデュオ、メアリー・メアリーの姉エリカ・キャンベルと妹ティナ・キャンベル。

勝者は...。

・15位初登場 エリカ・キャンベル「Well Done」

・20位初登場 ティナ・キャンベル「Too Hard Not To」

姉エリカに軍配が上がりました。

ティナが伝統的なというかストレートなゴスペルに対し、エリカは世俗的なアプローチ(でも伝統的なゴスペルに帰結)という好対照。世俗的というか、中盤のベース(シンセ?)のうねりがジャネット的でもある「Well Done」のプロデューサーはエリカの夫でもあるウォーリン・キャンベルで、つい先日ここで取り上げた、ザ・ウォールズ・グループ「My Life」も手掛けていましたね。

 

他方「Too Hard Not To」についてはクレジット不明(見つけられず)なのですが、ティナは2年前にリリースしたソロファーストアルバム『It's Personal』に新曲を加えた『It's Still Personal』を9月にリリース予定で、「Too Hard Not To」はそこからの先行曲。詳細はティナのFacebookを参照していただきたいのですが、あのスティーヴィー・ワンダーも参加し内容的に申し分ない『It's Personal』は結局CDでリリースされることはありませんでした。ゆえに改訂版が”CDの形で発売される”ならば意義深いなというのが私見。とはいえFacebookでは『IT’S STILL PERSONAL IS RE-RELEASE OF #1 AWARD-WINNING DEBUT SOLO CD』と書かれており、一昨年のアルバムはCD化されてたっけ…?とふと思うのですが。

 

さて、両者のソロ作については一度ブログで言及していますのでよかったらご覧ください。

今回の”対決”についてエリカは、姉妹のソロ作が同日発売になることをふたりとも知らなかったと話しています。これは本当にただの偶然なのか、それとも姉妹の意思疎通が巧くとられていないのか…?と変に勘ぐってしまうのですが、しかしながらテレビ番組でリアリティショウ『Mary Mary』の最新(且つ最終)作がこの秋から始まるとのことですので不仲と決めつけてはいけないよなあとも。

ソロ作が出ることはそれはそれで嬉しいのですが、とはいえやはり姉妹でのオリジナルアルバムが『Something Big』(2011)以降6年半も出ていない現状を考えれば、何よりも姉妹でのアルバムを切望する自分がいます。R&Bの世界でもデュオ自体が減っていて、メアリー・メアリーはその点でも稀有な存在なのですから。