イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米ソングスチャート、アルバムリリース効果でサム・スミスとマルーン5が上昇

ビルボードソングスチャートを定点観測。

現地時間の11月13日月曜に発表された、11月25日付最新チャート。ポスト・マローン feat. 21サヴェージ「Rockstar」が5週目の首位を獲得。また今週アルバムチャートに初登場した方々の曲が好リアクションをみせています。

記事は下記に。

そしてトップ10はこちら。

「Rockstar」は未だストリーミングが牽引しているものの同指標では前週比5%ダウン(4360万)。他方ラジオエアプレイでは同17%もの大幅アップで10位に達し、ポスト・マローンにとって初となるトップ10入りを果たしています。今回5週目の首位獲得により、”Rock”がついた曲での1位在籍週記録であのマイケル・ジャクソン「Rock With You」(1980)の4週を抜き歴代3位へ。ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツ「I Love Rock & Roll」(1982 7週)、LMFAO feat. ローレン・ベネット「Party Rock Anthem」(2011 6週)を破るのももうすぐです。

先週2位に上昇したカミラ・カベロ feat. ヤング・サグ「Havana」はストリーミングはほぼ横ばいながらデジタルダウンロード、そしてラジオエアプレイが牽引。特に後者は前週比23%もの大幅アップで9位に上昇しています。これによりカミラはソロとしては2曲目、在籍していたフィフス・ハーモニー時代を含めると4曲目となるラジオエアプレイでのトップ10入りに。

「Rockstar」はチャート構成の3指標の合算において前週比1%ダウン、一方で「Havana」は同10%上昇。共に現在iTunes Storeにて安価販売を実施しているのですが、「Havana」においては12日に開催されたMTVヨーロッパ・ミュージック・アワードで披露され、更にはダディー・ヤンキーを招聘した新たなリミックスを同日付で発表...と”仕掛け”が満載。もしかしたら来週は首位交替の可能性もありますね。

 

今週アルバムチャートを制したのがサム・スミスThe Thrill Of It All』。前作『In The Lonely Hour』(2014)は2位どまりだったため念願の1位獲得となりましたが、そこからの先行曲「Too Good At Goodbyes」が6ランクアップで4位に上昇し、同曲の最高位を更新しました。

デジタルダウンロードは前週比2%落ち込みましたが(アルバム単位で購入された場合カウントの対象外に)、ストリーミングは同40%もの大幅アップを果たしています。前のアルバムからは「Stay With Me」(2位)をはじめ3曲がトップ10入りを果たしているだけに、『The Thrill Of It All』からどれだけのヒットが生まれるか、気になるところです。

The Thrill Of It All』が237000ユニットを獲得し首位を記録した最新アルバムチャートで、122000ユニットを記録し2位に初登場を果たしたのがマルーン5『Red Pill Blues』。そこからのシングルでSZA(シザ)をフィーチャーした「What Lovers Do」が3ランク上昇し9位に到達。マルーン5にとって13曲目、SZA自身初となるトップ10入りとなりました。

面白いのはサム・スミスと真逆で、この曲のデジタルダウンロードは前週比52%もの大幅アップを果たしているということ。曲単位で買うかアルバムトータルとして聴くか...歌手に対する聴き手の姿勢が如実に解るかのようです。

エド・シーラン「Perfect」は再びトップ10入りし8位に。

今月9日にミュージックビデオが到達。木曜公開のため今回のチャートには公開日1日分のストリーミングポイントが加算されています。次週のチャートには公開2日目から1週間分のポイントが乗ることから、トップ5入りもあり得るかもしれません。

 

もうすぐトップ10は2曲。

・G・イージー feat. エイサップ・ロッキー&カーディ・B「No Limit」(24→13位)

・ホールジー「Bad At Love」(27→20位)

 

来週はいよいよテイラー・スウィフトのアルバムチャート登場によりソングスチャートにも影響を与える予感。アルバムは初日に70万超えを果たしているそうですので注目しましょう。

昨日のラジオ番組、自分責任監修による安室奈美恵さん選曲リスト~音楽的変遷と実績を振り返る

※ 追記 (11月13日20時17分):加筆修正を行いました。

※ 追記 (2018年9月16日7時8分):リンクの再貼付等を行いました。

※ 追記 (2019年1月20日21時45分):リンクの再貼付を行いました。

 

 

昨日はラジオ番組、『わがままWAVE It's Cool!』(FMアップルウェーブ 日曜17時 サイマル放送で全国各地にて聴取可能です)の放送日。先週に引き続き安室奈美恵さん特集をお送りしました。先週の内容は下記に。

今回は自分が選曲を担当し、初週ミリオンセールス確実と言われる『Finally』(2017)未収録曲群をメインに、彼女の音楽的変遷(と彼女がカリスマ性を放ち続けた理由)を伝えることに徹しました。一緒に喋り手を担当したのが弘前大学ラジオサークルの大学生3名、皆彼女のデビュー後に生まれ、安室奈美恵さんといえば小室哲哉さんとのタッグをかろうじて知る程度ゆえ、喋りたいことは山ほどあったけれど音楽面に要点を絞って伝えることに。

 

さて、今回のベストアルバム発売においてはそのフラゲ日以降、このブログへのアクセスが急増しています。ほとんどの方がたどり着いているのが下記エントリー。

曲目リストは上記に。おそらくはCDを手に取って、もしくはベストアルバムと聞いた段階でリストをチェックしないまま予約しそれが届いてはじめて”これは...?”とモヤモヤした感覚を抱き検索した結果ではないかと。で、曲目リストと新録とを知ったタイミングで”違和感”と当初書いたのですが、エントリーをアップした後、自分の中でこの『Finally』に関してはスタンスの変化というか、捉え方が変わってきています。

原盤権については下記サイトが分かり易いので勝手ながら紹介させていただきます(問題があれば削除いたします)。

原盤権においては安室奈美恵さん側と前所属事務所との折り合いがつかなかったものと考えられますし、また両者の関係性が今も悪化したままと考えるならば、仮に安室奈美恵さん側が『NHK紅白歌合戦』出場に前向きな姿勢を示したとしても、その事務所から今年三浦大知さんと荻野目洋子さんが出るだろうかもしれないことを踏まえれば(現に今日このような報道が。あくまで”関係者”発言ゆえ正式発表ではありませんが)、所属歌手がいくら安室奈美恵さんへの尊敬の念を抱きまたそれを引退発表を聞いて表に出したとしても、前所属事務所の上層部の姿勢により出られないか、もしくは彼らに配慮して出演を控えることも考えられます。これら、いわゆる圧力や忖度が今の芸能界の闇であり(変えないといけないと痛感しています)、安室奈美恵さんに(引退日までまだ日はありますが)最後の紅白に出てほしいと思う自分には、『Finally』の新録と同様に紅白出演という近い将来においてもモヤモヤ感を抱いています。いつか原盤権が彼女側に渡される等の措置が採られることを願うと共に、ネット時代においては(100%断定は出来ないものの)こういう闇については可視化されているわけですから芸能界には自浄作用を持っていただきたいと切に願うばかりです(ちなみにこの問題は芸能界全体の問題であるゆえ、どんな芸能事務所やレコード会社にも発生しうるものです)。

ゆえに”新録曲”以降の楽曲を楽しもうとは書きましたが、『Finally』は前所属事務所時代の曲が新録でありこれらの原盤権は彼女側にあるだろうことを踏まえれば、買えば買うほど安室奈美恵さん側の支援(という表現は大袈裟かもですが)になりますので是非手に取ってほしいところ。そして、(仮に前所属事務所側に利益が入るとしても)彼女の素晴らしさはオリジナルアルバムの濃密な完成度に宿ることを踏まえれば、『Finally』をきっかけに是非過去の作品群に触れてほしいと切に願います。なんせ、彼女が『GENIUS 2000』(2000)以来オリジナルアルバムで週間CDセールスランキング首位(オリコンより)を獲得した『PLAY』(2007)以降、アルバムはベスト等を含めすべて週間1位を獲得。年間チャートにおいても『PLAY』(15位)→ベストアルバム『BEST FICTION』(2008 2位)→『PAST<FUTURE』(2009 2010年度6位)→コラボレーションアルバム『Checkmate!』(2011 6位)→『Uncontrolled』(2012 11位)→『FEEL』(2013 6位)→バラードセレクション『Ballada』(2014 4位)→『_genic』(2015 16位)といずれも上位にランクイン。『_genic』においてはシングル曲無しで構成されているためか順位は他に比べれば高くないかもしれませんが素晴らしい成績であることに変わりありませんし、年間チャートの他の作品は半分程度がベストアルバムで占められていることを踏まえれば、オリジナルアルバムがここまで安定した成績を保っているのはその完成度の高さ故と言っていいでしょう。そしてライブでは常にダンスしながら生歌でピッチをキープ、ストイックな姿勢を追求するわけですからまさしくアーティストの鑑といえるのではないでしょうか。

 

前置きが長くなり過ぎましたが、それら考えを踏まえ、実際に番組中にツイートした内容を用いて、昨日放送のラインアップを振り返ります。

 

ツイート訂正。”大きな意味を持つ”、でした。活動休止前のシングル、「Dreaming I was dreaming」(1997)と対をなすよう曲のような気がしますし、この2曲で大人な方向性、R&Bへの移行が強く示されたように思います。

 

オリジナルアルバム未収録となるとやはり手に入れたいと思う方は多いはず。その点においても、シングル全曲を網羅したベストアルバムの必要性について先日書いた次第。 

 

当初は特集コーナー内は全曲自分セレクト且つ『Finally』未収録曲のみでいきます、と告知したのですが、ラジオスタッフサイドのミスで先週の放送前に届いていたリクエストが先週紹介出来なかったためこのタイミングで。この曲のみならず、「SWEET 19 BLUES」(1996)や「RESPECT the POWER OF LOVE」(1999)のゴスペルクワイア(コーラスの意)、また「CAN YOU CELEBRATE?」(1997)大サビ時のゴスペルクワイアと思しきメンバーのソロのフェイクをみるに、小室哲哉氏がR&Bやゴスペルを取り込んだというよりは、その後の曲群を踏まえれば、R&Bやゴスペルは安室奈美恵さん側の提案ではないかと思うのです。そして特にゴスペル要素においては、2000年代中盤で”結実”、特集4、5曲目で紹介します。

 

音楽ジャーナリストの高橋芳朗氏も現在のスタイルの布石として取り上げた曲がこちら。

702については下記に。引退発表直前に書いたエントリーでした。

1990年代、雨後の筍の如く飛び出した女性R&B界にあって突出した人気を放ったTLC。ダラスがプロデュースし全米1位を獲得した「Creep」(1994)は下記に。

そのTLCの代表曲のひとつ、「Waterfalls」のセルフカバー版に参加した安室奈美恵さんは、「Hands On Me」(アルバム『FEEL』収録)のミュージックビデオにてTLCを招聘しています。

 

 SUITE CHIC時代(アルバム『WHEN POP HITS THE FAN』は2003年リリース)があったからこそその後のR&B群へのシフトしたのは間違いないはず。2000年代前半はセールス的に落ち込む時期ではありますが、だからといってイコール低迷期とするのはあまりにも早計。礎を築いた極めて大事な時期なのです。

ちなみに個人的には、彼女の音楽的変遷は4つの時期に大別されると考えています。【デビューからユーロビート時期】【小室哲哉氏(TK)によるプロデュース時期】【(TKプロデュースと一時期被りますが)R&B時期】そして『BEST FICTION』でR&B時期が浸透、結実して以降の【様々なダンスミュージックを取り入れた”安室奈美恵というジャンル”確立時期】の4つ。SUITE CHICは第2期の中間地点にあって、ダラス・オースティンから取り入れた本場の空気感を日本のR&Bクリエイター陣と共有し、彼女のクオリティはもとより国産R&B全体のレベル向上に寄与したのではないかと思うのです。

ちなみに、安室奈美恵さんについはRHYMESTER宇多丸さんがラジオ番組、『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(TBSラジオ 土曜22時)でその思いを語っています。音楽的変遷については自分の考えよりも細分化されていますが、非常に面白い視点だなあと感心させられます。この熱量、思いの深さだからこそ、RHYMESTER安室奈美恵さんとでタッグを組んでほしかった...!と願わずにはいられないのです。ラジオの書き起こしについては、みやーんさんのサイトを勝手ながら引用させていただきます。

 

両プロデューサーの作品群について、Nao'ymt氏はこちら、GIANT SWINGについてはT.Kura氏のサイト内”discography”を参照してください。また放送で触れたNao'ymt氏による「Pink Key」については以前言及しています。

一方、GIANT SWINGにおいて、「SHOULD I LOVE HIM?」は歌詞こそゴスペルではないもののその荘厳な空気感(そしてそれを作り出すコーラスワーク)はまさしくゴスペルのそれではないかと。なおGIANT SWINGのリーダー作『GIANT SWING DELI』(2007)、そのラスト2曲は歌詞の面においてもゴスペルで、特にMICHICO氏(ツイート、すべて小文字表記してしまいました。失礼しました)による「CAN'T LIVE WITHOUT YOU」の説得力には圧倒させられます。

Nao'ymt氏、そしてGIANT SWINGの両プロデューサーは安室奈美恵さんの代表曲を手掛けてきた方(特にNao'ymt氏は『Queen of Hip-Pop』(2005)にてデュエット相手も担当)。その二組が腕を競い合った『PLAY』における「Pink Key」「SHOULD I LOVE HIM?」という2曲のゴスペルアプローチは、R&B時期における最高の輝きではないかと。自分が『PLAY』リリースの前年までゴスペルクワイアに所属していたゆえ主観が強く働いていると言われればそれまでですが、ゴスペルは歌唱力、表現力の高さも求められるジャンルであり、それを見事にこなした彼女の実力の高さに唸らされるのです。昨日の放送で「SHOULD I LOVE HIM?」の大サビ後にトークを再開したのですが、この大サビを聴く度に心が揺さぶられ、一瞬喋ることが出来なくなりそうになりました。圧巻です。

 

ゼッドの世界的な最初のヒットは日本独自でヒットした、マシュー・コーマをフィーチャーした「Spectrum」と、フォクシーズを招いた「Clarity」。いずれもアルバム『Clarity』(2012)収録で、後者は全米8位を記録。そしてこの曲が全米チャート100位以内への初のチャートインとなります。

「Heaven」の後、2014年にはアリアナ・グランデへの客演として(実際はゼットとマックス・マーティンによる共同プロデュース)参加した「Break Free」が全米4位を記録。そしてEDMから方針転換したと思しき、アレッシア・カーラをフィーチャーした「Stay」が今年全米8位とコンスタントにヒットを放っています。

こうしてゼッドは世界的な人気を博すようになるのですが、その初期の段階で彼を起用した安室奈美恵さん側の凄さを感じていただきたいと思います。

 

この曲について、カバーの存在を知りつい最近ブログに上げました。

今では”スマートフォンでミュージックビデオを視聴する”というスタイルが確立されつつありますが、それをうまく、そしていち早く利用したアイデアは見事。こういう遊び心をこの先どんどん見せてくれるんだろうなあと思っていただけに今回の引退は寂しい限り、なのです。

 

この曲も大好きな作品。ベストアルバム『Finally』に収録されています。彼女の作品にはドラマや映画主題歌が多かったように思いますが、特に『PLAY』以降のそれらはいずれも素晴らしく、ドラマ制作陣が売上や知名度から彼女を起用したのではなく、”安室奈美恵さんならドラマに相応しい曲を提供してくださるはず”という信頼と、それに応える安室奈美恵さん側との結晶なのではないかと思うのです。

 

 

そんなわけで、昨日のラインアップはこのような形になりました。放送で伝えた内容に補完する形で書いたためあまりにも長文になりました(し、書かないといけないと思ったため原盤権についても触れた次第です)。まずはとにかく『Finally』を手に取り、そこからオリジナルアルバムの素晴らしさに触れて(掘り下げて)いただきたいと願うばかり。そして安室奈美恵さんに興味を持った方がその掘り下げを十分に行える環境整備を、レコード会社や所属事務所(新旧を問わず)はきちんと行っていただきたいと強く思います。

来年9月まで走り抜ける安室奈美恵さんを、心から応援します。

チャートや賞レースで垣間見える、今のゴスペルの”多様性”

米ゴスペル界が良曲を柔軟に取り込んでいるなあと実感する、最新チャート。

最新11月18日付、米ビルボードゴスペルソングスチャートで18位に初登場を果たしたのがレデシー feat. カーク・フランクリン「If You Don't Mind」。9月にリリースされたアルバム、『Let Love Rule』の巻末曲であり、冒頭や大サビ後の掛け声を聴けば解るように、ゴスペル界の若き大御所、カーク・フランクリンが参加しています。多彩なメンバーが手掛けた作品を締めくくるに十分な、カーク印の逸品。

ふたりの共演映像も観客によりアップされていますね。

 R&B歌手のゴスペル挑戦が珍しいことではないことは、このブログで幾度となく記しています。レデシーにおいては、クリスマスアルバム『It's Christmas』(2008)の巻頭を飾る「I'll Go」で、ゴスペル界の大御所、リチャード・スモールウッドを迎えており(ピアノを担当。Apple MusicではノンクレジットながらCDでは客演として記載)、ブックレット記載の歌詞ではYouが”YOU”と表記されていることから、大文字表記すなわち神様への曲ということが判ります。今作でのカーク・フランクリンの招聘はその流れにあるのかもしれません。そして先に紹介したライブ映像には”続き”があり、レデシーがカークのピアノでカークの名曲、「My Love Is In Your Hands」「Wanna Be Happy?」(途中で切れますが)、自身の「Alright」などを披露しているのです。これは贅沢!

実に相性ぴったりなコラボレーションと言えます。

最新チャートでは、R&B歌手のチャーリー・ウィルソンによる同チャート制覇曲「I'm Blessed」が6位にランクイン(現在はラッパーのT.I.を客演に迎えた歌手名表記となっています)。チャーリーはこの曲のヒットゆえか、先日開催されたソウル・トレイン・アワードのゴスペル部門(ベスト・ゴスペル/インスピレーショナル・アワード)にノミネートされています(結果発表は月末)。

上記エントリーではラッパーのチャンス・ザ・ラッパーをメインに書きましたが、ノミネートされた方は実に多様な顔ぶれであり、今のゴスペルがチャート上でも賞レースでも多様性を持ち合わせている、面白くなっているように思います。今後さらに多くの聖俗(ゴスペル)と世俗(R&B)とのクロスオーバー作品が出てくることを期待します。

クリス・ブラウンの”無知”が招いたアルバム発売日設定の失敗

厳しい物言いですが、案の定の結果に。

Chris Brownは10/31のハロウィンにニューアルバム『Heartbreak on a Full Moon』をリリースしたが、この日は火曜日だった。つまりこのアルバムはビルボードチャートでは発売日当日の火曜日と、水曜日、木曜日の3日間しか売り上げがカウントされない』(上記リンク先より)...発売日がハロウィンだと聞いて、てっきりハロウィンに合わせてのリリースだと思ったのです。こんな恐ろしいミュージックビデオも作っているのですから(閲覧注意)。

そして、最新11月18日付米ビルボードアルバムチャートの結果。

1位はカントリー歌手、ケニー・チェズニーのライブアルバム『Live in No Shoes Nation』が219000ユニット(うち純粋な売上は217000)。2位にケリー・クラークソンのアトランティック移籍第一弾『Meaning Of Life』が79000ユニット(うち純粋な売上は68000)。そして3位がクリス・ブラウン。68000ユニットを記録し、うち純粋な売上は25000と、ヒップホップ的な売れ方となっています...が、案の定1位には至れず。とはいえ仮に金曜リリースだったとして、ケニー・チェズニーに追いつき追い越すことは出来たか?…個人的には微妙だと思っています。先行シングル5曲のうち、ソングスチャートトップ40入りはアッシャーおよびグッチ・メインをフィーチャーした「Party」のみ、それも最高位が40位ということでは、シングルヒットがないままリリースに突入してしまったといっても過言ではなく、先行曲がアルバム購入の原動力にならなかったわけです。

 

今回の件を踏まえるに、戦略が如何に大事かを自分も実感しました。尤も、一番痛感したのはクリス・ブラウンでしょうが。

テイラー・スウィフトは新作で”フシン”を払拭するのか

今日リリースされるテイラー・スウィフトのアルバム、『Reputation』。今週月曜には予約数が好調である、と報道されています。

ただ、この報道は『テイラーのレーベル、<ビッグ・マシーン・レコード>がAP通信に伝えたところによると』(記事より)とあり、テイラー側から発せられた内容です。

勿論今作も売れるでしょう。3年ぶりの待望の作品であること、前作『1989』(2014)の大ヒット(米ビルボード年間アルバムチャートでは2014年が3位、2015年が1位、2016年が17位にランクイン)、並びに今作からの先行シングル「Look What You Made Me Do」の初登場から3週連続での全米1位という記録を踏まえれば、初週は記録的な数値を叩き出すことが確実です。

しかし、あくまで私見と前置きするならば、2週目以降に失速するのではと考えています。杞憂かもしれませんが、下記に記載することにします。

 

 

理由は大きく分けて2つ。一つ目は「Look…」をはじめとする先行曲のチャート成績における【不振】。火曜の米ビルボードソングスチャート速報でも触れました。11月18日付において。

先週も触れたテイラー・スウィフトの勢いの問題。先週13位に初登場を果たした「Gorgeous」は今週68位に大幅ダウン。そして。

10月27日金曜に公開され、1週間分の動画公開に伴うストリーミング加算効果が期待された「...Ready For It?」はチャート上で返り咲き、46位から19位に上昇。しかし再びトップ10入りするには至れませんでした。今週彼女のアルバム『Reputation』がリリースされ、”予約数は40万を超えた”とのアナウンスがあるのですが、先行シングルの勢いがどうもパッとしないんですよね。

米ソングスチャート、ミュージックビデオ公開効果でトップ10内に大きな変動が(11月7日付)より

「Look What You Made Me Do」は前週の25位から更に順位を落とし34位に後退しています。これを3曲の票割れとみることもできますが、たとえば同様に『Purpose』(2015)から先行曲を相次いで発表したジャスティン・ビーバーは、『Purpose』が2015年12月5日付アルバムチャートで初登場首位を獲得した同日付のソングスチャートにて、「What Do You Mean?」が5位、「Sorry」が2位となり、また「Love Yourself」が4位に初登場しています。「Love Yourself」以外の2曲は共に前週もトップ10入りしています。そう考えると、やはり勢いの差を感じずにはいられません。

前作『1989』(2014)は、先行曲が「Shake It Off」と「Welcome To New York」。後者はプロモーションシングルとしての扱いゆえ最高48位にとどまりましたが、アルバム『1989』が2014年11月15日付アルバムチャートを制した同日付のソングスチャートでは「Shake It Off」が1ランクアップで首位に返り咲き。同年9月6日付で初登場し2週連続で首位に立った後、8週連続の2位を経てからのカムバック。つまりは曲にそれだけの力があるゆえ踏ん張り(とどまり)続けられたわけで、テイラー自身の前作と今作においても、その勢いの差を感じてしまうのです。

 

そしてもうひとつの理由は、彼女の売り出し方に対する【不信】ではないかと。

彼女は前作リリース後、歌手への配当がフェアじゃないことを理由に、定額制音楽配信サービスから一度全カタログを撤退させています。下記はSpotifyに対して2014年11月に実施した際の記事。

そしてこちらはApple Music。『1989』を引き上げています。2015年6月の出来事。

無料お試し期間中の聴取分に対する対価が支払われないことを理由に引き上げたテイラー。直後にApple側は方針転換しており、彼女の言い分は通りました。しかしその後なかなか解禁に至っていなかったのですが、「Look…」がアナウンスされる前の6月、”『1989』の1000万ユニット突破を記念して”再度定額制音楽配信サービスでの解禁に踏み切ったのです。無論、彼女が謳った配当問題はきちんと考えないといけないものであり、インフルエンサーである彼女の言動・行動により”ストリーミングとは?”と考える業界人は非常に多かったはず。現に改善もされています。しかし、ではもう少し早く解禁に踏み切ってもよかったのではないかと思うのです。そしてこの解禁の『裏には彼女の最大のライバルのケイティ・ペリーの新アルバム「ウィットネス」が6月9日に発売された』ことがあり(『』内は下記記事より)、この解禁はケイティ潰しこそ真の目的では?と思ってしまいかねません。

そうでなくとも、引き上げの際に音楽界の問題と謳っていたはずが、戻ってくる際には『アルバム「1989」の販売枚数の1000万枚突破と楽曲ダウンロード数の1億回突破記念』(記事より)を理由にするという姿勢には驚かされます。大きな問題を自身の都合に矮小化させているのではないかと。そしてストリーミングの再解禁が新曲の初登場1位に大きく貢献しているのですが(米ソングスチャートは遂に1位が交替も、注目は”社会的意義のある”9位登場曲(9月6日付)参照)、ストリーミングがチャート構成指標のひとつであることを踏まえ、今回の再解禁が新曲好発進のための”地ならし”だとしたら、彼女はインフルエンサーではなかったのではないかと思ってしまうのです。

 

さらに...これは非常にセンシティブな問題ゆえ慎重に語らないといけないのですが、彼女は同じく「Look…」のリリース直前になって、セクシャルハラスメント裁判に勝利しています。

ここで彼女は”全ての女性のために戦う”と言い、勝ち得た金額はわずか1ドル。実際この行動に勇気を抱いた女性は多いものと思われますし、もしかしたらこれが今のエンタテインメント業界で増加している”セクシャルハラスメント被害者の告発行動”における精神的支柱になっているかもしれません。テイラーの勝訴は当然のことでしょう。しかしながら、セクハラを起こしたとされる側から2015年9月に訴訟が起こされ、そこからなぜ2年もの期間がかかったのかが気になるのです。米司法制度に明るくないためそれだけ期間がかかることが常識と言われればそれまでですが、結審したタイミングが新曲発表直前というのが、穿った見方と思いつつも強く引っ掛かるのです。もし今回の裁判スケジュールが新曲直前に結審することを目的に組まれたのだとしたら、ここで掲げられた女性のためという社会的意義に、ストリーミング問題の際と同様の疑問を覚えてしまう自分がいます。

 

彼女の曲作りにおいてはよく、”別れた男性との恋愛をネタにしている”ということを耳にします。ラジオDJクリス・ペプラー氏はその件を踏まえ、自身の番組で彼女を幾度となく”ビジネスウーマン”と呼ぶほどです。無論、リリースのタイミングで知名度が上がるような出来事を仕掛けることは日本でも行われており(テレビ番組のゲスト出演等)、名前を売るというビジネスは大事です。ただ、テイラー・スウィフトに関していえばその露出の仕方、話題になるタイミングが決して心地の良いものではなく、【社会的な問題を表向きにしながら、個人の宣伝に用いているようにみえる】ため、【結局社会的な問題は彼女にとって二の次ではないか】とすら思われるのではないかと。恋愛経験を歌にするのはあくまで個人の自由ですし、ストリーミングの再解禁やセクハラ裁判の結審が”偶然にも”新曲発表前のタイミングだったならばよいのですが、真に社会を良くしたいと思うなら、自身の利益を無視してでもストリーミングの再解禁、セクハラ裁判について早々に動くべきではなかったのかと思うのです。

 

また、アメリカのエンタテインメント業界が反トランプ(大統領)であること(音楽評論家やアメリカ社会に詳しい専門家の中には、米エンタテインメント界の99%は反トランプと言う方も)において、未だテイラーは反トランプか否かを公言していません。下記記事からは薄く反トランプという姿勢も見えてくるかもしれませんが、実際はデモ参加者への支持であり、反トランプか否かには言及していないんですよね。

保守的なカントリー畑出身ながら、しかし今はポップフィールドで活躍していることから音楽等で多様性について寛容だともいえるでしょうし、またスターがどんどん自身の考えを明言する中にあって黙り込むその方法は、アメリカにおいてはちょっと異質に思えてしまいます。その意味でも”テイラー離れ”が起こっている気がするのです。

 

 

彼女の作品は売れるでしょう。が、前作ほどの数値を上げられるか、瞬発力だけ大きくなってやいないか、しばらくその動向を見守ってみましょう。

ちなみに昨日になって、こんな動きも出てきました。

結局彼女はストリーミングについて未だきちんと信頼していないのではないかと思ってしまいますし、今夏のストリーミング解禁は社会的意義というよりケイティ・ペリーへの”私怨”だったという疑いが自分の中で強くなっています。今夏全SNSを消去したこと(テイラー・スウィフト、ニューアルバムは9月? それとも10月以降?(8月21日付)参照)も、ファンからすれば今までのテイラーが見られなくなったという点において非常に無礼な行動だと思わざるを得ません。正直、非常に残念です。

”AKB<坂道”は前から読めていた...AKBがここから脱出するためには

昨日のYahoo! JAPANトップにリンクが掲載されていたのが下記の記事。

運営グループによる坂道グループへの露出拡大の狙い等が指摘されていますが、実は”AKB<坂道”の構図は、音楽チャートにおいて鮮明になっています。ビルボードジャパンが今年上半期のチャートを発表した際、一度分析しています。

AKBグループと坂道グループにおける差もはっきりしてきたように思います。いずれも今年リリースしたシングルがトップ10入りしていますが、総合ポイント数の推移は3点において驚くほど異なります。それは【CDセールス加算前の動向】【CDセールス週の翌週における前週比】【CDセールス週から何週で100位圏外に達するか】。

ビルボードジャパン2017年上半期ソングスチャートを分析~「恋」の強さ、AKB<坂道、シングルCDセールス比重の低下?(6月10日付)より

【】内に注目して、下半期にリリースした楽曲群をチェックしましょう。リンク先はいずれもビルボードジャパンのCHART insight。チャート構成各指標および指標の合計について、グラフ化されています。

AKB48「#好きなんだ」(8月30日リリース)

乃木坂46「逃げ水」(8月2日先行配信 8月9日リリース)

欅坂46「風に吹かれても」(10月25日リリース)

欅坂46「風に吹かれても」は発売から間もないため当然ながら100位以内に在籍していますが、とはいえ、CDセールスが加算されてから2週連続の1位というのは立派な成績です(昨日発表のチャート詳報はこちら)。動画再生回数が伸び悩むというのは、「サイレントマジョリティー」で強烈なインパクトを残した(視覚に訴えようとする)彼女たちからすれば意外ではありますが。また乃木坂46「逃げ水」もCDセールス加算後の成績が1位→4位と勢いを維持し、加算後は5週連続でトップ10をキープ。先行配信分が加算された週も10位に登場しており、通算6週のトップ10入りはアイドルとしては立派な成績です。他方AKB48「#好きなんだ」はCDセールス加算週に1位となったものの翌週はなんと13位。CDセールス加算後6週目にして100位圏外となっており、坂道グループに比べてAKB48のジェットコースター感が如何に強いかが解ります。

 

ここから思うに、売り出し方の問題が大きいでしょう。坂道グループが格好良かったり同性の支持を集めていたりという側面もあるでしょうし、AKB48がその商法等を非難されるなどアイドルとしての負の側面を一手に引き受けてしまっているような気もしますが、それ以前に楽曲の高クオリティが大前提ではないかと。「恋するフォーチュンクッキー」がなぜ社会現象化したかを踏まえ、今後は(運営に支障をきたすかもしれなくとも)年4枚のシングルリリースにこだわることなくもっと腰を据えて好い楽曲をチョイス、制作することが最優先だと考えます。

TBSラジオは野球中継終了の英断を下すべきではないか

放送終了直後は”これはこれで面白い”とつぶやいたのですが、段々と怒りの感情に差し替わっていきました。

『都市型生活情報ラジオ 興味R』(TBSラジオ 月曜18時 今回のエントリーでは全てTBSラジオについての紹介ゆえ、以降放送時間紹介時のTBSラジオ表記は省略します)の11月6日の放送は19時から。終了時間は普段と変わらず19時15分であるため、実際の放送時間は15分というものでした。番組側は”濃縮放送”を敢行。

(※radikoタイムフリーは、首都圏在住者以外はプレミアム(有料)会員のみ聴取可能。11月13日まで確認出来ます。) 

この日は18時台に、前週土曜放送予定ながらプロ野球日本シリーズ中継のために流れた『明日へのエール~ことばにのせて~』(土曜21時)が振替されたための15分放送。TBSラジオは他にもスポンサーのついた番組が日本シリーズで放送出来なかった場合、後日別番組の枠を削る形での振替放送を毎年行ってきました。今年については下記の通り。

11月7日(火曜)

・18:00-18:30『川口技研プレゼンツ 司馬遼太郎短編傑作選』

      (11月4日(土曜) 18:00-18:30放送予定分)

・18:30-19:00『自転車協会 presents ミラクル・サイクル・ライフ』

      (11月5日(日曜) 18:30-19:00放送予定分)

11月8日(水曜)

・18:00-18:30『聖教新聞 presents ラジオシアター~文学の扉』

      (11月12日(日曜) 21:00-21:30放送予定分)

      (※10月29日(日曜)放送予定分が11月5日に放送されたため)

今日の番組情報|TBSラジオAM954+FM90.5~聞けば、見えてくる~より

これらはいずれも、『THE FROGMAN SHOW A.I.共存ラジオ 好奇心家族』(火-金曜17:50-22:00)の枠を削っての振替放送。ここでいくつか疑問が。

日本シリーズ中継で中止となったスポンサー付番組は他にもある(『ガスワン presents 田中みな実 あったかタイム』(土曜18:30))が、レギュラー枠の放送を削ってまで放送する番組としない番組の差が生じたのはなぜか

② 『…興味R』はそもそも75分しか放送時間がないのに、そこに60分もの番組を挿入するのはなぜか

③ 『…興味R』にもスポンサー提供の生CMがあり、11月6日放送におけるそれは、スポンサーを大事にしていないと思われても仕方ない放送でした。放送枠が削られなければきちんと生CMが出来たはず。振替する番組のスポンサーと生CMのスポンサーとで優劣をつけてはいないか

④ 『…興味R』枠に挿入された番組は録音であり、18時台は交通情報を流せません。交通情報を軽視してはいないか

TBSラジオの公式Twitterアカウントには振替番組の情報は流れず。各番組のアカウントで発信されていますが、振替番組の中にはアカウントがないものも。局のホームページ同様、情報提示を徹底しなかったのはなぜか

これらの疑問で見えてきた(と個人的に感じる)のは、ツイートしたとおり局が大事にしているのは【リスナー<スポンサー】ではないかという姿勢。そして同時に、【スポンサーの中で優劣を決める】というものです。正直、今回の日本シリーズ関連施策によって自分の中でのTBSラジオへの信頼度は一気に落ちました(聴取率を公表しなくなったことと含め、今年はダブルパンチです)。6日放送の『…興味R』には賛否両論あるかもしれませんが、局の施策を快く思わない番組側がヤケになったとしても、自分は番組側の味方に付きますし応援します。また、仮に③において、生CMスポンサー側ではなく、振替番組のスポンサー側が早期での振替放送を強く願い出たのだとしたら、その思いは解れど、あまりに自己主張が強いと思ってしまいます。無論、ヤケについてもスポンサーの件についても、あくまで仮の話ではありますが。

 

TBSラジオについてはこの秋、このような”噂”が流れました。

上記問題の解決策は、『…興味R』ではなく尺の長い『THE FROGMAN SHOW…』に振替番組を用意すればいいということも一案ではありますが、個人的にはどうも【】内で示したような、局の意識の問題のような気がしてならず、ならばこのエントリーの表題通り野球中継を終わらせるという英断を下してほしいと思うのです。日本シリーズに限らずレギュラーシーズンにおいても、首都圏ラジオ局が一斉に野球中継を行うより、中継するしないで差別化を図ってほしいと考えるリスナーは少なくないはずです。