イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパンソングスチャートとオリコン合算シングルランキング、どちらが社会の流行を示しているか考えてほしい

自分が音楽チャートでビルボードジャパンを支持し(とはいえ違和感や問題等があれば提言する姿勢は忘れず)、紹介する理由。それは、音楽チャートの中で未だに最も認知度が高いであろうオリコンランキングに比べて、社会の流行の鑑になっていると考えるゆえ。以前から幾度となく記載していることですが、今回上半期チャートが出揃ったので比べてみるとよく解ると思うのです。

 

オリコンでは今年度より、デジタルダウンロードおよびストリーミングを合算した合算ランキングを新たに立ち上げ、水曜朝に発表しています。

(リンクでの掲載が禁止であれば削除いたします。)

その合算ランキングが昨日発表されました。

オリコンは無断転載禁止を強く押し出しているゆえ引用は控えますが、そのオリコンではAKB48「ジワるDAYS」が2位に大差をつけてトップを獲得。坂道グループが3作、AKBグループが3作、ジャニーズ事務所所属歌手が2作となっており、デジタルダウンロードが強い米津玄師「Lemon」は5位、ストリーミングが強いあいみょんマリーゴールド」は8位という結果に。

 

一方、オリコンとは1ヶ月のズレがありますが、元来複合指標を合算したチャートであるビルボードジャパンの今年上半期のソングスチャートはこちら。

先述した「Lemon」が制覇し「Flamingo」も5位、ストリーミングが強いあいみょんが「マリーゴールド」の2位を皮切りに3作をランクインさせた他、シングルCDセールスが強いながらも他指標も弱くない坂道グループが3作入っています。AKBグループはシングルCDセールスに長けながら他指標が弱く、デジタル未解禁のジャニーズ事務所所属歌手共々トップ10以内にはランクインしていません。これはビルボードジャパンが合計8つの指標で構成されていること、またシングルCDの複数買い(売上枚数に対する実際の購入者(ユニークユーザー)との差等)を考慮して独自の係数を用いたことも影響しているといえます。

 

このふたつのチャート、どちらが社会の流行を示す鑑になっているかを音楽好きな方ひとりひとりが考えてほしいと思います。サビだけでも歌える曲がいくつあるかを数えるのもいいですし、極端に順位が異なる「ジワるDAYS」(ビルボードジャパンでは上半期12位)を知っているか、他者にそして自己に問いかけてもいいでしょう。

またオリコン上半期合算シングルランキングの20位以内にはダブルAサイドシングルの曲の双方がクレジットされているものがあります。仮にその歌手がデジタル解禁した場合、2曲ともほぼ同数のデジタルでの売上が見込まれるためより上位に来やすい傾向があると考えられるのですが…となるとオリコンの合算シングルランキングは楽曲単位ではなくあくまでCD単位のものであり、もっといえば社会の流行を示すためではなくレコード会社等のためではないかと思ってしまうのです。その点で、以前自分が示した疑問点は拭えないままです。

リル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」は11週連続首位、ドレイクがビートルズに並ぶ…6月22日付米ソングスチャートをチェック

ビルボードソングスチャート速報。現地時間の6月17日月曜に発表された、6月22日付最新ソングスチャート。リル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」が11週目の首位を獲得、またドレイクがクリス・ブラウンに客演参加した「No Guidance」が9位に初登場を果たし、トップ10入り記録でビートルズに並び歴代2位タイとなりました。

あまりの強さゆえその理由を先週自分なりに分析した「Old Town Road」。

ストリーミングは9週連続で1億を突破していたのですがここに来て失速。前週比14%ダウンし9990万となりましたがそれでも巨大な数字であることには間違いなく、同指標トップ。デジタルダウンロードも同18%ダウンしながら71000を獲得(同指標1位)。そしてラジオエアプレイは前週から1つ順位を落とし3位となりましたがこちらは前週比1%近く上昇し9910万。やや失速傾向にはありますがトップはまだまだ安泰と言えるかもしれません。次週はテイラー・スウィフトの新曲「You Need To Calm Down」が登場しますが、勢いからするに仮にトップ10入り出来ても首位奪取は難しいでしょう。

ラジオエアプレイで首位に立ったのはカリード「Talk」で、自身初となる同指標制覇。カリードのラジオエアプレイにおけるこれまでの最高は3位でした(ロジックにアレッシア・カーラ共々フィーチャーされた「1-800-273-8255」(2017)、ノーマニとの「Love Lies」(2018)およびベニー・ブランコ & ホールジーとの「Eastside」(2019))。また今年最高の初動ユニット数でアルバムチャートを制したジョナス・ブラザーズですが、そのアルバム『Happiness Begins』の冒頭を飾り先行シングルとなった「Sucker」は1ランクアップの4位に。アルバムは獲得ユニット数のおよそ86%がアルバム(単位での)セールスであり、単曲ダウンロードやストリーミングの割合が高くなかったことが「Sucker」の順位をさらに押し上げられなかった要因と言えるでしょう。

9位にはクリス・ブラウン feat. ドレイク「No Guidance」が初登場を決めています。

ストリーミングは2800万を稼ぎ同指標4位、デジタルダウンロードは15000で同指標9位発進。クリス・ブラウンにとって初登場9位という順位は「Forever」(2008)およびリル・ディッキーに客演参加した「Freaky Friday」(2018)と並ぶ自己最高のスタートとなり、15曲目となるトップ10入り。そしてドレイクは今回が34曲目のトップ入りを果たしたことになり、かのビートルズに並ぶ歴代2位タイの記録となりました。

昔は客演という概念が(ほぼ)なかったゆえ、客演参加しやすいラッパーがランクインしやすい状況と言われればそれまでですが、とはいえ本当に素晴らしい記録です。あと4曲で最高記録を持つマドンナに並びます。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (1位) リル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」

2位 (2位) ビリー・アイリッシュ「Bad Guy」

3位 (3位) カリード「Talk

4位 (5位) ジョナス・ブラザーズ「Sucker」

5位 (4位) エド・シーラン & ジャスティン・ビーバー「I Don't Care」

6位 (6位) ポスト・マローン「Wow.」

7位 (7位) ポスト・マローン & スウェイ・リー「Sunflower (Spider-Man: Into the Spider-Verse)」

8位 (8位) ダベイビー「Suge」

9位 (初登場) クリス・ブラウン feat. ドレイク「No Guidance」

10位 (9位) サム・スミス & ノーマニ「Dancing With A Stranger」

次週は先述した通り、テイラー・スウィフトの新曲がトップ10内に登場する可能性が高いと思われます。またリル・ナズ・Xが今週末メジャー初のEP『7』をリリースし、そちらにビリー・レイ・サイラスとの「Old Town Road」が収録されます。

「Old Town Road」の購入方法が曲単位からアルバム(EP)まるごとへとシフトすれば、同曲のデジタルダウンロードはさらに減少に転じるため長期政権が揺らぎかねない気もします。『7』は再来週、7月1日付で初登場予定のため同日付ソングスチャートに注目です。

小袋成彬が指摘する日本の音楽業界の現状をaiko『aikoの詩。』で痛感する

RIRIさん、KEIJUさんとの「Summertime」が現在、資生堂アネッサのCMソングに起用され、現在イギリス在住の小袋成彬さん。

その小袋さんが、自身のラジオ番組『MUSIC HUB』(J-WAVE 金曜25時30分)の中で日本の音楽業界について厳しくも、音楽好きには至極真っ当な疑問を提示していたのが非常に興味深かったのでメモ。

疑問についてはみやーんさんが書き起こしされた内容を是非読んでいただきたいのですが、この話のきっかけとなったのが『僕は「aikoが聞けなかった」っていうのがすごく悲しいんだ』というもの。

 

事実、aikoさんは未だストリーミング解禁していないのです。たとえばApple Musicで歌手名検索すると。

f:id:face_urbansoul:20190617081717p:image

(最上位に出てくる”aiko”は同姓同名の別人です。)

また、YouTubeで公開されるミュージックビデオもその多くがショートバージョン。先週の『ミュージックステーション』(テレビ朝日 金曜20時)で披露した「milk」(2009)も短尺版で公開されています。

逆に「あたしの向こう」(2014)はトレーラー→ショート→フルバージョンと3バージョンもあり、公開されるバージョンは徹底されていません。近年の楽曲も、「ストロー」(2018)がaikoさんの公式YouTubeチャンネルではショートバージョンのみだったりするのですが、aikoさんの大ファンであるパオパオチャンネルの@小豆さんによる”踊ってみた”動画ではaikoさんサイドの了承を得て「ストロー」がフルバージョンで用いられています。

これにより、YouTube Premium会員が使用出来るYouTube Musicというストリーミングサービスにてオフライン再生が可能となり同会員は「ストロー」をストリーミングで聴取可能に。大ファンだという@小豆さんへの特別対応なのかもしれませんが、実際YouTubeでの再生回数が爆発的に伸びてチャートに再度エントリーを果たしており動画の影響は絶大。そして”踊ってみた”動画からシングルコレクションのベストアルバム『aikoの詩。』の購入に至った方もいらっしゃるはずです。

 

ただ、その『aikoの詩。』、ストリーミングが出来ないだけではなくデジタルダウンロードも不可という状況です。

f:id:face_urbansoul:20190617081733p:image

f:id:face_urbansoul:20190617081743p:image

前週のB'z『NEW LOVE』から2週続けて、ビルボードジャパンアルバムチャートではデジタルダウンロード未配信作品が首位制覇という事態に(なお『NEW LOVE』については6月10日付ビルボードジャパンアルバムチャートを制したB'z『NEW LOVE』のデジタル未解禁を思う(6月8日付)で触れています)。

 

aikoの詩。』のデジタルダウンロード未配信については、全曲既発ゆえこれまでのシングルやアルバムで代替ダウンロード等可能だろうという考えか、パッケージでの購入を促進する意図があったのかもしれません。ただ『aikoの詩。』のディスク4、本人厳選によるカップリング集は代替ダウンロードが出来ません。1曲目の「未来を拾いに」が収録されたシングル「夢見る隙間」(2015)は。

f:id:face_urbansoul:20190617081646p:image

上記はiTunes Storeの状況ですが、シングル表題曲のみがダウンロード可能に。そしてそもそも、シングルCDの表題曲をデジタルダウンロード出来るのはここ数年分のみ。

f:id:face_urbansoul:20190617081656p:image

f:id:face_urbansoul:20190617081704p:image

そうなるとたしかに『aikoの詩。』を買うのが最善かもしれませんが、全て揃えたいならばシングルCDを掘る必要があります。しかし昔のシングルCDを買うもしくは借りることは、廃盤(の可能性)や在庫状況を踏まえると難しいだろうことを考えると、代替措置がほぼないと断言してもよく、先述した意図は理解し難い…というのは自分だけではないでしょう。

 

シングルコレクションのリリースが入門編であり新しいファン拡大の目的があるならば、そこからさらに深く掘り下げられるようにデジタルダウンロードはきちんと解禁していただきたいですし、それを固辞するならばシングルCDを購入等しやすい環境の整備は必要でしょう。そして「ストロー」の”踊ってみた”動画が証明した動画再生のチカラを考慮してミュージックビデオフルバージョンを解禁すること、および小袋成彬さんも悔しがったストリーミングの解禁についてはきちんと議論していただきたいと切に願います。aikoさんのレコード会社であるポニーキャニオンは現在、Official髭男dism「Pretender」がストリーミング週間再生回数新記録を更新中であり、ストリーミングの効果を強烈に実感しているでしょうから尚の事です。

 

無論この問題はaikoさんだけではありません。未だ多くの歌手やレコード会社がパッケージリリースにこだわる意思は解るのですが、そこにこだわりすぎるあまりレコード会社がコピーコントロールCD(CCCD)という最悪の商品(いや、音質も悪くプレイヤーが壊れても補償しないというのですから商品とも呼べない代物でした)を生み、日本の音楽業界の失墜を招いた負の歴史が既にあるわけですから、パッケージへこだわりすぎることはやめて次の音楽の聴かれ方を考慮しないと世界の音楽市場において日本だけが置いてきぼりになると強く危惧します。

安室奈美恵、『Finally』をはじめとする作品が遂にデジタルダウンロード&Apple Music限定ストリーミング解禁

一昨日の20時台に弊ブログへのアクセスが急増したのですが、原因はこちらだったのですね。遅ればせながら昨日ニュースを知りました。

弊ブログでずっとアクセス数トップ5に入っていたエントリーが、『Finally』(2017)のデジタル解禁を望む、というもの。

あれから1年半、遂に叶いました。

 

興味深いのは、ストリーミングをApple Music限定で解禁するということ。Apple Musicでは安室奈美恵さんが大々的に打ち出されています。

f:id:face_urbansoul:20190616045416p:image

ひとつのストリーミングサービス限定での解禁がチャート上ではあまり意味を成さないことを、back numberや新しい地図 (join ミュージック)の例を挙げて紹介したばかりです。

しかしながら安室さんはこの先新しい作品を出すことはないためチャートを気にすることはないだろうことが、限定解禁を選んだ理由かもしれません。今回、Apple Musicをただひとつの解禁先に選んだことで同サービスは箔が付いたと言えるでしょう。

 

また、気になるのはライブ音源をCD化しなかったこと。これまでライブ音源は、おそらく映像盤購入促進を目的にレンタル限定でCD化されたと記憶しています(特にavexは積極的に実施し、三浦大知さんやV6等も同種の対応を行っていました)。しかし今回、ライブ音源をレンタル店に卸さないという事態は、ストリーミングサービスにApple Musicが選ばれたこと以上に大きな意味を持つかもしれません。引退後ゆえフィジカル作品を出すことは難しかったのかもしれませんが。

 

ちなみに、コラボレーションアルバム『checkmate!』(2011)については6曲もがストリーミング未解禁のままで、共演相手のストリーミング未解禁がネックになっているのだという印象を受けます。ただ、デジタルダウンロードでも同じ曲が未配信となっているため、それに準じた形での解禁なのかもしれません。

f:id:face_urbansoul:20190616050032p:image

 

今日の解禁からいろいろ見えてくるものがありますし、他のストリーミングサービスでの解禁も願うところですが、まずは安室奈美恵さんの音楽を楽しみたいと思います。無論ベストアルバムも素敵ですが、『Finally』で録り直しに選ばれなかった作品にも素晴らしいものが…詳しくは以前ラジオ番組で特集したものがありますので、気になったら是非。こちらで紹介した「toi et moi」(1999)もデジタルダウンロード等解禁されています。

今、自分の中でトニー・トニー・トニー熱が高まっている

ここ最近、R&Bグループのトニー・トニー・トニー (Tony! Toni! Tone!)に触れる機会が増えています。きっかけは、先月開催されたRHYMESTER主催フェス【人間交差点2019】で、RHYMESTERが初披露した「予定は未定で。」の冒頭における”ダララレイ”。

「予定は未定で。」はMIGHTY CROWNがプロデュースしたRHYMESTER初のレゲエチューン。人間交差点で初公開されたにもかかわらず”歌って!”と無茶ぶりされながら、一聴して口ずさめる”ダララレイ”の心地よさたるや…でも待てよ、これどこかで聴いたことあると思ったらトニー・トニー・トニー「If I Had No Root」(アルバム『Sons Of Soul』(1993)収録)のアレだよなあと。

「予定は未定で。」が『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ 月-金曜18時)で初OAされた後、リスナーの方からトニー・トニー・トニーの”ダララレイ”ですねというリアクションが届いたのに対し宇多丸さんがKRS-ワンからだと答えていたのですが、「If I Had No Root」がサンプリングした「Remix For P Is Free」(1987)はKRS-ワンも在籍したブギー・ダウン・プロダクションズの作品。なるほど、トニー・トニー・トニーもRHYMESTERも源流はここだったのですね。

 

(自分の想像は厳密には間違っていたものの)トニー・トニー・トニーを想起するきっかけとなった「予定は未定で。」にライブで触れた後、またも彼らの名を耳にする機会が。『松尾潔のメロウな夜』(NHK-FM 月曜23時)の中で、山下達郎さんが彼らの「Thinking Of You」(アルバム『House Of Music』(1996)収録)を紹介、それも平成を代表するR&Bの1曲として選んでいたのです。

(『House Of Music』はApple Musicにはありませんでした。というか、『Sons Of Soul』以外の作品はiTunes Storeにもない状況です。)

達郎さんによると「Thinking Of You」はアメリカで酷評されたそうですが、bmrでのトニー・トニー・トニー紹介ページでは『Sons Of Soul』および『House Of Music』は傑作と記載されており、どちらの見方が正しいのかは判りかねます。しかし平成一桁台にリリースされた「If I Had No Root」と「Thinking Of You」がエバーグリーンな魅力を放ち、今聴いても格好いいことは間違いないと思っています。

 

こうしてRHYMESTER山下達郎さんおよび松尾潔さんを経て、自分の中でトニー・トニー・トニー熱が高まってきたところに、遂にメンバーのひとりだったラファエル・サディークの新譜情報が! なんという偶然でしょう。8月23日リリース予定のニューアルバム『Jimmy Lee』が今から待ちきれません。

 

ちなみに、ラファエル・サディークの記事(勝手ながらアップさせていただきました。問題があれば削除いたします)のアップ元であるブログ、【coco tottööto by @hsuezaki】を記載しているのは、元bmrの末﨑裕之氏。精力的な記事の更新で、且つ情報も解りやすく重宝しています。他方、bmrが3月末以来更新されていないのは、bmrが丸屋九兵衛氏個人所有になったこともさることながら、末崎氏の力が大きかったのだなと実感。今後、アーカイブbmrを、そして最新のR&Bに関しては【coco tottööto by @hsuezaki】を参考にしようと思います。 

米津玄師「Lemon」がビルボードジャパン最新チャートで初の二桁順位に…次週トップ10内をキープ出来るか

一昨日発表された、6月17日付ビルボードジャパンソングスチャートでチャート好事家の注目を集めているのが、米津玄師「Lemon」。今回10位となり、初の二桁順位となりました。

f:id:face_urbansoul:20190614075355p:image

「Lemon」はドラマ『アンナチュラル』(2018 TBS)の主題歌となり大ヒット。デジタルダウンロード解禁→ミュージックビデオ公開→シングルCD発売→レンタル解禁という段階的な流れが功を奏しロングヒットになりました(解禁等タイミングの絶妙さについては米津玄師「Lemon」 シングルCDセールスに至るまでの絶妙なタイミング(2018年3月16日付)を参照)。2018年2月26日付で2位に初登場して以降これまで一度として10位まで落ちたことはなかったゆえ、遂に下がったか…という声があがっています(なお、初登場の前週以前はTwitter指標により100位未満(300位以内)となっています)。

それでも今週「Lemon」が叩き出したポイントは4801。10位のポイントが2000点台の週が少なくない中でこの数字は極めて高いと言えます。今週は『ラジオ、カラオケ、ルックアップ以外の5指標が下落に転じ』たとのことですが(『』内は【ビルボード】米津玄師「海の幽霊」が134,911ダウンロードで総合首位獲得 ストリーミング解禁の菅田将暉「まちがいさがし」は総合2位に急上昇 | Daily News | Billboard JAPAN(6月12日付)より)、ラジオやカラオケの上昇は「海の幽霊」効果で米津玄師さんへの注目が集まったゆえと考えられ、ポイントは前週比95.7%と比較的高く推移。次週、仮に前週比9割で推移しても4320ポイント程度となります。この数字が当たっているとして、次週トップ10内をキープ出来るのでしょうか。

 

 

今週初登場、もしくは前週からランクインしていた曲で「Lemon」を逆転したのはデジタルダウンロード解禁した米津さん自身の「海の幽霊」(1位)、ミュージックビデオとストリーミングを解禁した菅田将暉まちがいさがし」(2位)、デジタル先行ながらシングルCDセールスが今週初めて加算されたMAN WITH A MISSION「Remember Me」(5位)、そしてシングルCDセールス初加算の影響で初登場した3曲(V6「ある日願いが叶ったんだ」(3位)、MAG!C☆PRINCE「ゴメン、、離したくない」(6位)およびJuice=Juice「「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?」(7位))。そのうち、初登場の3曲についてはいずれもチャート構成比におけるシングルCDセールス指標が極端に高く、V6は8割以上、Juice=Juiceは9割近く、そしてMAG!C☆PRINCEに至っては95%以上が同指標で占められています。そのような作品はシングルCDセールス加算2週目のランクダウンが激しいことは以前述べた通り。

前作の動向をみると、Juice=Juice「微炭酸」は上記エントリーにあるように3位から100位圏外(300位以内)へ急降下。V6の前作「Super Powers」は2→52位、そしてMAG!C☆PRINCE「SUMMER LOVE」は2→53位と移行しており、今作が上回るためには、シングルCD発売初週と同規模のセールスを上げないといけませんが、V6「ある日願いが叶ったんだ」、MAG!C☆PRINCE「ゴメン、、離したくない」およびJuice=Juice「「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?」は前週72000枚以上を販売している一方、今週水曜までの販売状況をみると同水準をキープしているとは言えません。

その、今週水曜までのシングルCD販売状況。

上位3作品が前週の水準を大きく超える12万枚以上を既に記録。NEWS「トップガン」が147606枚で首位、MONSTA X「Alligatorが137407枚で2位、モーニング娘。'19「人生Blues」が121669枚で3位(ダブルAサイドの場合シングルCDセールス指標は片方のみに加算されるため、CDの1曲目に収録されたものを記載)。この3組の歌手の前作はいずれも1万を大きく上回っており(NEWS「「生きろ」」は18200ポイント、MONSTA X「Shoot Out」は13286ポイント、モーニング娘。'18名義の「フラリ銀座」は14419ポイントをシングルCDセールス加算初週に獲得。いずれも同週のシングルCDセールスは15万枚台を記録)、「Lemon」を超えることは確実であり、前週シングルCDセールス指標が突出していた3曲と入れ替わるものと予想されます。

シングルCDセールスに特化した以外の曲をみると、米津さん自身の「海の幽霊」がストリーミング未解禁かつ未CD化ゆえ5指標のみで戦わなければいけません。前作「Flamingo」はシングルCDセールス加算初週に36088ポイントをマークし翌週10196ポイントへ大きく下落していますがこちらはシングルCDがリリースされており、デジタルのみの「海の幽霊」に当てはめるのは難しいところ。強いて言えばデジタル解禁した菅田将暉まちがいさがし」がデジタル解禁2週目でおよそ3割減となっており、「海の幽霊」は前週比3~5割減と予想。またその「まちがいさがし」をはじめ、Official髭男dism「Pretender」およびあいみょんマリーゴールド」は今週ストリーミングの上位3強となり(【ビルボード】Official髭男dism「Pretender」が歴代最高記録を更新しストリーミング3連覇 菅田将暉が2位に初登場 | Daily News | Billboard JAPAN(6月12日付)参照)、極度に落ちることはないとみています。たとえば「マリーゴールド」がふたたびトップ10した1月7日付以降、ポイント前週比が85%を下回ったことがないため、今週5993ポイントを稼いだ同曲が次週5000ポイントを下回ることはおそらくないでしょう。

読みにくいのはMAN WITH A MISSION「Remember Me」(今週5位)および昨日取り上げた乃木坂46「Sing Out!」(同8位)の動向(「Sing Out!」については乃木坂46「Sing Out!」がここ最近のシングルで最もダウンした理由を考える…6月17日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック(6月17日付)参照)。前者はシングルCDセールス加算2週目、後者は同3週目となりシングルCDセールスもひとつの鍵になりますが、カラオケ以外の7指標がいずれも50位以内に入りバランス良く稼いでいることを踏まえれば急落はあまり考えにくいかもしれません。強いて言えば、昨日のエントリーを考えるに「Sing Out!」がこれまで以上に速いペースでダウンするかもしれないのですが。

 

そして注目すべき曲が今日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日 金曜20時)で披露。

GENERATIONS from EXILE TRIBE vs THE RAMPAGE from EXILE TRIBE「SHOOT IT OUT」は今週14位に初登場(2826ポイント)。シングルCDリリースはないため今日放送の『ミュージックステーション』を機にストリーミング等が伸びても倍増とまではいかないかもしれません。むしろ注目は今週シングルCDをリリースしたsumikaかと。

6月1日にデジタルダウンロード先行解禁となった「イコール」は今週発売のシングルCDのダブルAサイドの1曲目に収録。アニメ『MIX』(読売テレビ/日本テレビ)の主題歌となりアニメファンの購入もみられそうなこの曲は今週既に31位に登場(1395ポイントを獲得)。前作「ファンファーレ」が昨年9月10日付で最高4位、5558ポイントを獲得していることを踏まえれば今回も前作と同等のポイントを稼ぐことが見込まれます。

そして昨日、追加で出演が発表されたのがFoorin。 

Foorin「パプリカ」は今週15位にランクインし、史上2番目のポイントとなる2768ポイントを獲得。シングルCDセールスが2500枚を超え週間最高の売上を記録しましたが、これは6月4日の『うたコン』(NHK総合 火曜19時57分)に出演したことが影響しているものと思われます。前週に続くテレビ出演となると、二度目の3000点台も夢ではないかもしれませんし、更に上がる可能性もあるでしょう。そうなると次週、3000~5000点台が大渋滞という状況になるかもしれません。シングルCDセールスに長けた3曲が上位に進出し、ストリーミングに強い3曲がとどまり、「海の幽霊」は極端に数字を落とさないだろうとして、「Remember Me」「Sing Out!」「イコール」「パプリカ」と「Lemon」が強烈な争いをすることになるとみています。自分が見逃した曲でライバルに成り得る曲が他にあるかもしれません。

 

 

仮に「Lemon」が次週10位以内をキープしたいとするならば、「海の幽霊」がシングルCDとして販売しなかったことで予想出来るであろう”次のオリジナルアルバム”について、この週末に何かしらのアナウンスがあればツイートが増え、Twitter指標が伸びるかもしれません。さすがに発売から1年数ヶ月経過した作品に積極的なチャートアクション対策を施すのは違うかもしれませんが、そのような想像を働かせてしまうくらいに、今回の「Lemon」初の二桁順位というのは衝撃だったということです。

乃木坂46「Sing Out!」がここ最近のシングルで最もダウンした理由を考える…6月17日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

6月3~9日を集計期間とする、6月17日付のビルボードジャパン各チャートが昨日発表され、ソングスチャートは米津玄師「海の幽霊」がデジタルダウンロード解禁、および主題歌となった映画『海獣の子供』が公開された効果もあり、首位に立ちました。

映画『海獣の子供』は最新の映画興行収入ランキングで5位に初登場。決して高い順位とは言えないかもしれませんが評判は高いと聞き、今後急激にポイントが落ちるとは考えにくいとみています。

2位には米津玄師さんが提供した菅田将暉まちがいさがし」が、ミュージックビデオ公開およびストリーミング解禁効果で浮上。3週ぶりに1万ポイントの大台を回復しました。

今回で7000ポイント超えが3週となり、前週Official髭男dism「Pretender」が3週をクリアしたときに提示した、大ヒットの基準をクリアしたことになります。

そのOfficial髭男dism「Pretender」も今週7669ポイントで4週目の7000ポイント超えを果たしており、主題歌となった映画『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-』も最新ランキングで3位にとどまっていることやカラオケ指標が14位に上昇していることを踏まえれば、高値安定は続くものと思われます。「まちがいさがし」そして「海の幽霊」も以前の彼らの作品同様カラオケ指標が上昇することでロングヒットとなる可能性は十分あります。

 

さて今日は、前週首位を獲得した乃木坂46「Sing Out!」における異変について。

f:id:face_urbansoul:20190613075551p:image

ビルボードジャパンソングスチャートにおいてシングルCDセールスに係数が用いられるようになった2017年度以降、「Sing Out!」はシングルCDセールス指標初加算週からの順位の落ち込みが最も大きくなりました。となると、握手会等の兼ね合いによりシングルCDセールスが落ち込んだからでは?と捉えることも出来ますが、ダウン幅等が大きいのはシングルCDセールスだけではありません。

f:id:face_urbansoul:20190613075603p:image

この表は、2017年度以降のビルボードジャパンソングスチャートにおけるシングル表題曲の、シングルCDセールス指標初加算週および翌週の動向を示したもの(カラオケ指標は2019年度より導入されていますが、「Sing Out!」は最新週でカラオケ指標300位以内に入っていません)。2週目における順位やポイント、前週比において7曲の中で最も低いところを黄色で塗りつぶしているのですが、「Sing Out!」は総合順位、ポイント、ポイントおよびシングルCDセールスの前週比、ならびにソングスチャートを構成する8指標中4つで最も低くなっているのです。シングルCDセールス共々ストリーミングも最も低く、”所有(購入)”と”接触”の双方が高くないというのは、単に握手会の兼ね合いだけにとどまらないと思うのですが如何でしょう。

 

ここからは強い私見と前置きして書きますが、今回の「Sing Out!」はゴスペルを想起する部分が強いと思うのです。『最大の特徴は、ハンドクラップとストンプ。ゴスペルにおいても見られる力強さとしなやかさを兼ね揃えた要素であり、楽曲の心臓部分だ』(乃木坂46「Sing Out!」に隠されたメッセージとは? 横浜アリーナ公演での注目ポイントを解説 - Real Sound|リアルサウンド(5月26日付)より)という曲解説から、実際歌詞に”Stomp”が出てくることからもゴスペルへの意識は明らかかと。ゴスペルでストンプといえば長きに渡りゴスペル界を牽引するカーク・フランクリンを思い出したり。

ゴスペル(クワイア)を用いた曲は数あれど(この2年でもこんなに生まれている、"J-Pop×ゴスペル"楽曲集(2018年9月21日付)等を参照)、一方でそのゴスペル要素が強すぎると逆に敬遠される傾向も?と思ったり。特に浜崎あゆみ「Bold & Delicious」はその典型だと感じていて、ゴスペルクワイアに所属したことのある自分にとってはその本気度が伝わってきて今でも大好きな作品なのですが、ファンの評価は真逆だと聞きます。

もしかしたら「Sing Out!」もゴスペル度が思ったより高く乃木坂(アイドル)らしくない…として受け入れられなかったのか、それがライト層(その歌手の作品を決まって買うわけではない方)の所有や接触を遠ざけているのかと思うのは邪推でしょうか。

 

先に引用したリアルサウンドの記事では『これまで以上にリリースに向けた数多くの施策が打たれており、運営サイドが今回のシングルにかける意気込みがビシビシと伝わって来る』とあり、たしかにシングルCDリリース指標加算の前週(6月3日付)に9位を記録しているのはそれら施策の成果かもしれませんが、他方シングルCDリリース後の余韻がこれまで以上に醒めるのが速いというのも事実。メンバーの卒業によるものだったり、別の女性アイドルグループにおける問題が解決する見込みが低いことで女性アイドルのファン離れが起きたという可能性もゼロではないと思われ、ひとつひとつの要素をじっくり見ていかないといけないと思うのですが。