イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

8月5日付ビルボードジャパンソングスチャートでTWICEに逆転を許したSKE48「FRUSTRATION」が採るべきだった施策を考える

7月22~28日を集計期間とする、8月5日付のビルボードジャパン各チャートが昨日発表され、ソングスチャートはTWICE「Breakthrough」が逆転でトップに立ちました。

「Breakthrough」はシングルCDセールスこそSKE48「FRUSTRATION」にトップの座を譲ったものの他指標は全て上回り、7万5千枚ほどのCDセールス差を逆転。他方「FRUSTRATION」を指標毎にみると、100位以内に入ったのは半分の4つにとどまっています。

実は前作「Stand by you」についてはTwitter指標もトップ10入りしていません。

同曲は上記エントリーにて紹介した(テーマに該当してしまった)のですが、シングルCDセールス指標初加算週に総合首位に躍り出た後、翌週には16位に急落。その「Stand by you」に比べて「FRUSTRATION」は総合ポイントが24060→27257、シングルCDセールスが270083→363394と伸びており、またTwitter指標もトップ10入りしていることを踏まえれば、前作より好いと捉えることは出来るでしょう。

しかし気になるのは、今回振るわなかったシングルCDセールス以外の指標の問題。個人的に注目したのは動画再生指標で、300位にも満たないことを不思議に思ったのですがそれもそのはず。

弊ブログでは幾度となく”ミュージックビデオのショートバージョンは再生回数を伸ばさない”と記していますが、前作「Stand by you」がフルバージョンでアップされている(→YouTube)にも関わらず、スペシャルエディットと銘打ってはいるものの今作では短尺化してきたのです。尤も前作も動画再生300位以内未達のため、ショートバージョンでも問題ないと踏んだのかもしれません(詳細は「Stand by you」のCHART insightで確認出来ます)が、動画のコメント欄にSKE48のメンバーが自薦コメントを書き連ねるならばなおのこと、コメント見たさにアクセスしてきた方を落胆させかねないショートバージョンでの公開には疑問を抱きます。

そして動画再生指標ではもう一つ、勿体無い事態が発生。

上記ダンス練習動画はミュージックビデオのショートバージョン同様、エイベックスのアカウントよりCDリリース日にアップされています。スタジオで流した音源をそのまま用いているため音質は悪いものの、こちらはフルバージョン。この動画、実は今朝までに22万回以上再生されており、7月3日に公開されたミュージックビデオのショートバージョンにあと2万弱で追いつくのです。またコメント欄での評判が良く、良評価の割合もミュージックビデオが8割強なのに対しダンス練習動画は95%以上と大差がついています。

ダンス練習動画の再生回数を踏まえるに動画再生指標でランクインしてもおかしくないのですが、おそらくISRC未付番のためランクインを逃しているのではないでしょうか。だとしたら実に勿体無いですね。加算されたとしてTWICE「Breakthrough」に逆転を許したままだったかもしれませんが、チャートアクションを見て動画にアクセスする方が増え、ダンスに魅了されて歌手を気に入る…という流れが生まれにくくなったのは機会損失でしょう。ダンス練習動画は歌手のファンだけではなく、ダンスが好きな方も観るだろうことを踏まえれば、ライト層(その歌手のファンというわけではないが曲等に興味はある方を指す)を増やす好い機会であり、このライト層の育成こそCDセールス一辺倒の歌手がより長く活動するために必要な施策だと考えるため、SKE48側にはダンス練習動画がよりチャートに反映されるようなアプローチを行う(ISRC未付番ならばきちんと付番する等見直す)必要があるものと考えます。たとえばダンス練習動画に魅了され、ダンスを練習する方が「FRUSTRATION」を用いる流れが生まれれば、ストリーミング等他指標にも波及する可能性は出てくるはずです。

「Old Town Road」天下は来週まで? 再来週はアリアナ・グランデが米ソングスチャートを制する予感

弊ブログへのアクセスが一昨日昨日と2日続けて23時台に急伸したのですが、『news zero』(日本テレビ 月-木曜23時、金曜23時30分)でリル・ナズ・Xについて取り上げたことがきっかけの模様です。彼が放った「Old Town Road」が、ビリー・レイ・サイラスの尽力もあって米ビルボードソングスチャートで単独で歴代最長首位記録を樹立したことが少しずつ話題になっているのが解ります。記録を達成した8月3日付チャートについては昨日詳しく記載しています。

ヒットの”きっかけ”についてはこちらが解りやすいかもしれません。

動画投稿にも触れつつ、弊ブログでは尺の短さ、子どもウケ、ジャンルレスが大きな要因だと以前まとめています。

それに加えて、この1ヶ月ちょっとの間にさらなるリミックスや動画を相次いで投入したことも、ロングヒットに至る要因となりました。

 

さて、次週8月10日付米ビルボードソングスチャートではBTSのRMを招いたリミックスも集計期間フルで加算されるため、リミックス投入の段階で”20週もあり得る?”と書きました。

しかし、ここに来て暗雲が。「Old Town Road」の首位記録は18週で潰える可能性が高まったのです。

アリアナ・グランデがアルバム『Thank U, Next』をリリースしてからわずか半年あまりで新曲「Boyfriend」をリリースすることがアナウンスされました。

上記リンク先にあるように、アリアナが投稿した動画はミュージックビデオの一部と思われ、8月2日金曜には配信と同時にミュージックビデオを解禁する可能性もあります。となると、彼女の新曲が首位になる可能性は高いというのが私見。それは過去の彼女の楽曲の初動から察することが出来ます。

f:id:face_urbansoul:20190731061657p:image

こちらはチャートポリシーが変更となった昨夏以降、全米で首位を獲得した曲のチャート構成3指標の数値および順位を記したもの。「Old Town Road」はここにきてストリーミングを減らし(ただし7月27日付では新リミックス投入効果で上昇)、ラジオエアプレイは急激にダウンしているのが解ります。

一方、アリアナ・グランデは昨夏のアルバム『Sweetener』(2018)発表からわずか2ヶ月半でリリースした「Thank U, Next」(2018)が自身初となる首位を獲得。今回の「Boyfriend」もアルバムから【短いインターバルで発表】されるわけで、似た動きが期待出来ます。

その「Thank U, Next」は昨年11月17日付での初動も高かったのですが、ミュージックビデオが後日公開され、再生回数がストリーミングに初加算された昨年12月15日付でトラヴィス・スコットから首位の座を奪取すると共に、同指標で9380万という驚異的な数値をマークしています。【ミュージックビデオ投入効果】が如実に表れた形です。

そしてアリアナ2曲目のナンバーワンヒットとなる「7 Rings」(2019)は音源配信と同時にミュージックビデオを公開し、2月2日付で首位に初登場。瞬発力が弱い(徐々に伸びる傾向がある)ラジオエアプレイが初登場時に50位以内に入ることは稀であり、【ミュージックビデオ同時公開】が話題性を高め、ラジオエアプレイも含む全指標で高い数値を獲得した要因とみられます。

これらを収録したアルバム『Thank U, Next』(2019)は2月23日付米ビルボードアルバムチャートで初週36万ユニットを獲得し首位に立ったのみならず、先行曲等が同日付ソングスチャートでトップ3を独占する快挙を成し遂げたことは記憶に新しいところです。

これらを踏まえるに、アリアナ・グランデは前作の勢いを保ったまま8月2日金曜に新曲「Boyfriend」を配信し、ミュージックビデオも同時に解禁するのではないかとみられます。チャートに反映されるのは再来週となりますが、その8月17日付ではストリーミングが9000万前後、ダウンロード9万前後を獲得することが予想され、またラジオエアプレイも50位以内に登場、1500~2500万を獲得するのではというのが自分の見立てです。

他方、「Old Town Road」は次週こそBTSのRM参加バージョン投入効果でダウンロード主体に伸びることが予想されるものの反動で再来週、8月17日付では全指標ダウンが予想されます。仮に同日付の各指標の数値をストリーミング6000万、ダウンロード3万、ラジオエアプレイ3000万(いずれも前後)と予想するならば、ラジオエアプレイがデジタル2指標をカバー出来ず、アリアナ・グランデに首位の座を譲ることが予想されます。

この予想を覆すならば、たとえば現在SNSでやり取りしているマライア・キャリー等の助太刀が新たに必要となるかもしれません。リル・ナズ・X側が8月2日以降に何かしら新規投入をするか注目ですが、「Old Town Road」天下はひとまず18週で終了するだろうというのが今のところの予想です。

リル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」が前人未到の17週首位を記録…8月3日付米ソングスチャートをチェック

ビルボードソングスチャート速報。現地時間の7月29日月曜に発表された、8月3日付最新ソングスチャート。リル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」が17週目の首位に立ち、最長首位獲得記録で単独1位となりました。

ルイス・フォンシ&ダディー・ヤンキー feat. ジャスティン・ビーバー「Despacito」(2017)およびマライア・キャリーボーイズIIメン「One Sweet Day」(1995-1996)が持つ16週1位の記録に前週並んだ「Old Town Road」が今週も首位を獲得し、今まで誰も成し得なかった17週1位という金字塔を打ち立てました。リル・ナズ・Xは20歳にして歴史にその名を刻んでいます。

「Old Town Road」は今週、ストリーミングが前週比16%ダウンの7250万(同指標1位)をマーク。前週、ヤング・サグ&メイソン・ラムジーによる新リミックスおよびエリア51を題材とするアニメーションを投下し伸びたことの反動が表れていますが、”Week 17”バージョンの投入でさらなる降下は免れた形です。

ラジオエアプレイは前週比12%ダウンの4700万、同指標14位となりトップ10落ちした一方、ダウンロードは同1%アップの46000をマーク。これはBTSのRMをフィーチャーしたバージョンが公開された効果とみられます。

公開日の関係で、最新チャートのデジタル指標群では1日程度のみの加算となりましたが、次週は集計期間フルで加算対象となるため、ダウンロード中心に伸びるものと思われます。

 

一方、今週も2位をキープしたビリー・アイリッシュ「Bad Guy」は、ジャスティン・ビーバー参加バージョンが前週初めて集計期間フルで加算された反動で、ストリーミングは前週比9%ダウンの5090万(同指標2位)、ダウンロードは同34%ダウンの22000(同5位)となった一方、ラジオエアプレイは同5%アップの8930万(同4位)に。「Old Town Road」が今週全体で13%、「Bad Guy」が9%ダウンとなったことから、両者のポイント差は「Bad Guy」を1とすれば「Old Town Road」は1.2。1.9→1.5→1.3→1.2と徐々に縮まったものの、「Old Town Road」が逃げ切りました。

リル・ナズ・Xは喜びのコメントを動画やInstagramで投稿。

この歴史を塗り替えた偉業は音楽メディアのみならず、たとえばCNNも取り上げており、リル・ナズ・Xは自身のTwitterでそれら報道をリツイートし取り上げています。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (1位) リル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」

2位 (2位) ビリー・アイリッシュ「Bad Guy」

3位 (4位) ショーン・メンデス & カミラ・カベロ「Señorita」

4位 (5位) カリード「Talk

5位 (6位) リゾ「Truth Hurts

6位 (3位) エド・シーラン & ジャスティン・ビーバー「I Don't Care」 

7位 (7位) ポスト・マローン feat. ヤング・サグ「Goodbyes」

8位 (8位) ジョナス・ブラザーズ「Sucker」

9位 (9位) ポスト・マローン & スウェイ・リー「Sunflower (Spider-Man: Into the Spider-Verse)」

10位 (13位) ショーン・メンデス「If I Can't Have You」

「Señorita」はラジオエアプレイが前週比27%アップで同指標9位に、またそのラジオエアプレイでは「Talk」が今週も制し1億3450万を獲得(前週比1%アップ)。リゾは「Truth Hurts」で初のトップ5入りを果たし、「Sunflower (Spider-Man: Into the Spider-Verse)」は今週32週目となるトップ10入りで最長記録(エド・シーラン「Shape Of You」(2017)およびマルーン5 feat. カーディ・B「Girls Like You」(2018-2019))にあと1週と迫っています。また「If I Can't Have You」は5月18日付で2位に初登場して以来となるトップ10入り。デジタル指標群の瞬発力が強い曲は好位置に初登場しても、徐々に上がる傾向のラジオエアプレイが追いつかない限りは急落しそのままトップ10内に再浮上出来ないことが多いのですが、そんな中で「If I Can't Have You」の再浮上はショーン・メンデスの人気を示すかのよう。自身初の2曲同時トップ10入りとなりました。

 

次週は「Old Town Road」が18週目の首位獲得なるか、注目です

うちのチロがLINEスタンプになりました その3

音楽やラジオからは離れますが、紹介させてください。

うちの愛犬、チロがLINEスタンプになりました。昨年11月(→ブログ)、今年1月(→ブログ)に続く第3弾です。

f:id:face_urbansoul:20190729072003j:image

f:id:face_urbansoul:20190729071836p:image

f:id:face_urbansoul:20190729071845p:image

親友のtaroroくん作による、いい感じに緩いスタンプ。”あはん”がよく審査通ったなと思いつつ、よかったら手に入れて楽しんでいただけたならと思います。

 

そんなチロは今日が5歳の誕生日。taroroくんはハーネスを、自分は新しいおもちゃの詰め合わせをプレゼント。

f:id:face_urbansoul:20190729073105j:image

ほんわかな表情してますが、おもちゃに近づこうとする自分の手を”奪われてたまるか!”と噛もうとします。飼い主なんですけどね。

 

そんなわけで、今日はほっこりと。チロLINEスタンプ、よろしくお願いいたします。

歌い手ジャンルが音楽チャートをさらに駆け上がるためには、ライト層を作り育てることが必要である

最新7月29日付のビルボードジャパン各種チャートで注目すべき存在が。それは歌い手のそらるさん。アルバム『ワンダー』はアルバムチャート初登場2位を果たし、リード曲「海中の月を掬う」はラジオエアプレイ指標で4位、ソングスチャートで94位にランクインしています。

アルバムチャートでは、総合首位の座こそRADWIMPS『天気の子』に譲ったとはいえ、アルバムCDセールス指標では首位に。『天気の子』が映画公開日の金曜に合わせて発売日を設定したことも影響しているとはいえ、堂々とした記録達成です。

 

最近そらるさんを注目するようになったきっかけは、『あさイチ』(NHK総合 月-金曜8時15分)に出演している藤原薫さんが大の歌い手好きであり(自らも”歌ってみた”動画を投稿)、その彼が今月NHKラジオ第一でDJを担当した特別番組『NHKで”歌ってみた”』(7月15日放送)に出演したこと。同じく歌い手の天月-あまつき-さんや96猫さんも出演したこともあって、番組はTwitterでトレンド入りするなど大きな反響を集めていました。

 

自分がスタッフの一員を務める『わがままWAVE It's Cool!』(FMアップルウェーブ 日曜17時)でも数年前に、歌い手やボカロ等動画投稿サイト発のヒット曲や注目株を当時の大学生スタッフ発案で取り上げたことがあるのですが、その際は恥ずかしながらピンと来ていませんでした。しかし今やNHKが特別番組を組みチャートでも実績を積み上げるとなると、”歌ってみた”というジャンルはスルー厳禁だと強く感じます。とはいえ作品のチャートアクションをみると、強みとそうでない部分、さらなるヒットのために必要なことが見えてきます。

 

f:id:face_urbansoul:20190728085315p:image

そらる『ワンダー』はアルバムCDセールスこそ首位を獲得したものの、パソコン等にCDを取り込む際のインターネットデータベースへのアクセス数であるルックアップは22位と大きく乖離しています。この指標はCDレンタルにも大きく左右されるため今週は嵐のベストアルバム『5×20 All the BEST!! 1999-2019』が同指標を制していますが、とはいえそれらCDレンタルで強い作品群を除いてもセールスとルックアップの乖離は気になります。そしてダウンロードが41位というのも、歌い手がネットとの親和性が高いジャンルなのになぜ?と思ってしまいます。

f:id:face_urbansoul:20190728085338p:image

これは他の歌い手の作品も同様で、天月-あまつき-『それはきっと恋でした。』(2018)は初登場で総合4位、96猫O2O』(2017)は31位を記録しながら、共にCDセールスと他指標で乖離が生じていました(『それはきっと恋でした。』はアルバムCDセールス4位、ルックアップ15位、ダウンロード30位。『O2O』はアルバムCDセールス16位、ルックアップおよびダウンロードが100位圏外(300位以内))。

f:id:face_urbansoul:20190728085350p:image

f:id:face_urbansoul:20190728085401p:image

ソングスチャートでの動向はどうでしょう。そらる「海中の月を掬う」はシングルCD化していないためシングルCDセールスおよびルックアップが未加算ですが、(曲単位での)ダウンロードやストリーミング、動画再生といったデジタル指標群が300位以内に登場していないのが気になります。ミュージックビデオは発表から1ヶ月強で320万回以上再生されているのですが。

f:id:face_urbansoul:20190728085413p:image

シングルCD化された直近の作品でみてみると。

・そらる「ユーリカ」(2019)

f:id:face_urbansoul:20190728085431p:image

・天月-あまつき-「スターライトキセキ」(2019)

f:id:face_urbansoul:20190728085449p:image

(※96猫「フィロソフィーエッグ」は1指標でも20位以内に入らなかったためか、CHART insightは確認出来ませんでした。)

「海中の月を掬う」同様、シングルCD化楽曲でもデジタル指標群が弱いのが気になります。歌い手、”歌ってみた”ジャンルとネットの親和性はそのジャンルの源を踏まえればよく分かるのですが、YouTube等の再生回数が伸びていないのはやはり気掛かりです(ちなみに、仮にニコニコ動画に投稿されヒットしたとしても同動画サイトがビルボードジャパンの動画再生指標において加算対象外であるため上昇出来ないということもあるでしょう)。YouTubeへアップした動画が動画再生指標の加算対象の条件であるISRCの付番がなされているかを確認することも必要ですが、いかんせん歌手やジャンルのファン以外の方がYouTubeを介して観る傾向が高くないように思われます。動画再生はダウンロードやストリーミングの各指標群とリンクし上昇する傾向を考えれば、YouTubeで視聴される流れを作ることは必須ではないでしょうか。

シングルもアルバム同様CDセールスが強いのですが、こちらでもルックアップが乖離。さらにランクダウンするスピードが速いことや先述したようにデジタル指標群が伴っていないことを踏まえれば、その売れ方はアイドルのそれに近く、熱狂的なファンとそうでない者との間に小さくない溝が出来ているのでは…というのが結論です。熱狂的なファンが多いからこそ、『NHKで”歌ってみた”』がTwitterでトレンド入りしたとも言えるかもしれません。アイドルの中でも極端な売れ方を示す例については、以前書いたこちらが最も解りやすいと思います。

とはいえCD販売手法がアイドルのそれと異なるならば、”熱狂的ファンはきちんとCDを購入する一方、そうでない者にはジャンル自体が浸透していない”というのが歌い手ジャンルを示す最適な表現かもしれません。ゆえに弊ブログで時折用いる、その歌手のファンというわけではないが曲に興味はある等を指す”ライト層”という表現は”そうでない者”とイコールではないように思います。

 

今後歌い手の作品群が伸びるには、そうでない者との溝をどう埋めるかが重要であり、そのヒントの一端をラジオに見出すことが出来ます。そらる「海中の月を掬う」はラジオエアプレイ指標で大ヒットしており、これまでの歌い手ジャンルにはない動きをみせています。どのような番組でかかっているかまでは特定出来ませんが、大ヒットするということはOAするジャンルを区別しない番組でもきちんと流れている証拠であり、このような”良曲をジャンルで区別しない”姿勢はメディアにも、そして広く市井にも求められるのではないでしょうか(これは過去の自分への反省を込めて記載します)。そして今回のラジオエアプレイの多さは『NHKで”歌ってみた”』がメディアへの気付きをもたらしたゆえと言えるかもしれません。いずれ『ミュージックステーション』等で取り上げられればジャンルの売れ方や見方はきっと変わっていくはずで、歌い手ジャンルはメディアとの親和性を図ることでライト層の萌芽、醸成につなげていくことが必要だと感じています。

スピッツ「優しいあの子」再浮上の鍵は、ミュージックビデオとストリーミング解禁の周知徹底にある

最新7月29日付ビルボードジャパンソングスチャートで前週より7ランクダウンし27位につけているスピッツ「優しいあの子」。シングルCDセールス初加算週に2位を獲得しながら、緩やかにでも確実にランクを落としてるこの曲に、ちょっとした異変が起きています。

f:id:face_urbansoul:20190727005712p:image

異変とは、最新週でストリーミングが99位、動画再生が95位に初登場を果たしたこと(詳しくはCHART insightをご確認ください)。「優しいあの子」は6月14日にミュージックビデオがショートバージョンにて公開されていたのですが、動画再生は7月1日付で300位以内に一度登場したのみ。そして下記6月14日付記事のリンク先を見ると判るのですが。

実はそのショートバージョンは削除されていました。というのも、おそらくショートバージョンと差し替えたのでしょう、7月15日にフルバージョンが公開されたのです。

そして。

また、Apple Music、LINE MUSIC、AWAAmazon Music Unlimitedなどの各主要ストリーミングサイトで、「優しいあの子」の配信がスタートしました。

Apple Musicではスピッツとしておそらく初となるストリーミング配信となっています。

これらが功を奏し、2つの接触指標でチャートインしたものと思われます。

 

正直な感想を述べるならば、ミュージックビデオのフルバージョンでの公開とストリーミング解禁は遅きに失した感は否めません…というのも、このブログにてショートバージョンでのチャートアクションの乏しさ、ストリーミングが与える影響力を幾度となく書いてきたゆえ。たとえばこちらなど。

スピッツ接触指標群の充実を遅らせた理由は解りかねますが、所有指標群、特にシングルCDセールスに影響をきたし利益をもたらさないという考えがあったのかもしれません(し、ストリーミング未解禁を続ける歌手にはこの考えが通底している気がしています)。しかしストリーミングからの利益はCDより少なくとも比較的長い時間をかけて得られるはずです。またカラオケ指標がここ3週で91→93→90位と伸び悩んでいますが、カラオケで披露すべく曲を覚えるために接触指標群をチェックする人が増えればそれら指標群もカラオケも共に上昇気流に乗る可能性があります。そのカラオケからの利益も上げることにより、CDセールス(から得られる利益)の補填は出来るでしょう。尤も、そもそも接触指標群の充実がCDセールスを落とすわけではないとは思うのですが。

 

「優しいあの子」の7月15日の解禁については、音楽ナタリー等ニュースサイトに掲載されていないままなので、今からでも接触指標群が充実したことを訴求すればチャートの再浮上もあり得るはず。是非とも広くアナウンスを実施してほしいと思います。

リル・ナズ・Xは「Old Town Road」で米ソングスチャート前人未到の20週1位を見据えている…BTSのRM参加リミックス投入に思う

今日は米ソングスチャートの今後を占う動きについて。まさかこんな展開が来るとは、予想すらしていませんでした。

リミックスの度に馬の数や色が変わる「Old Town Road」、今回がなんと80バージョン目になるとか。非公式が含まれているかは不明ですが。

 

ビリー・レイ・サイラスの加勢と共に勢いを増し、最新7月27日付米ビルボードソングスチャートで最多タイとなる16週目の首位を獲得した「Old Town Road」、次週は前人未到の17週首位を獲得するのは堅いというのが私見です。

とはいえこのブログエントリーを載せた段階で、まさかBTSのRMを招くとは想定していませんでした。今回のリミックスはアメリカで24日深夜に公開されているため同リミックスが次週のチャートに加算されるのはデジタル2指標でわずか1日程度しかありません。しかしながらアルバム3作品が米チャートを制覇、特にダウンロードが強くソングスチャートトップ10入りも複数見られたBTSのメンバーを”homie (仲間)”に入れるとなると、集計期間1日分の加算なれどダウンロード上昇が見込めるのは確実と言えるでしょう。

 

「Old Town Road」がチャートを制した16週の、チャート構成3指標の推移は下記に。

日付 ストリーミング ダウンロード ラジオエアプレイ
2019/4/13 4660万/1位 22000/3位 1190万/50位未満
2019/4/20 1億4300万/1位 124000/1位 2880万/33位
2019/4/27 1億2520万/1位 91000/1位 4520万/18位
2019/5/4 1億1440万/1位 89000/1位 5540万/12位
2019/5/11 1億400万/1位 78000/2位 6770万/6位
2019/5/18 1億410万/1位 78000/1位 7760万/4位
2019/5/25 1億310万/1位 69000/2位 8380万/3位
2019/6/1 1億3070万/1位 76000/1位 8740万/3位
2019/6/8 1億1530万/1位 81000/1位 9530万/3位
2019/6/15 1億1560万/1位 87000/1位 9830万/2位
2019/6/22 9900万/1位 71000/1位 9910万/3位
2019/6/29 9160万/1位 59000/2位 9580万/3位
2019/7/6 8870万/1位 59000/1位 8250万/4位
2019/7/13 8930万/1位 57000/1位 7580万/6位
2019/7/20 7050万/1位 43000/1位 6520万/8位
2019/7/27 8620万/1位 45000/1位 5350万/10位

※4月13日付ではビリー・レイ・サイラス客演版未加算につき、リル・ナズ・Xの単独クレジットとなっています。

なだらかに下降していたデジタル2指標が最新チャートで伸びたのは、ヤング・サグおよびメイソン・ラムジーを加えた新たなリミックスを公開したことやエリア51を題材としたアニメーションを投入したゆえ。

最新週ではストリーミングは前週比22%アップした一方、ダウンロードは4%のアップにとどまっています。ここで所有指標に長けたK-Popアクトを投入することはダウンロードの拡大につながり、下降するラジオエアプレイのさらなる補完となるはずです。これにより来週、そして再来週(集計期間フルでRM参加バージョンが加算されます)のチャート1位はより強固なものになったと言えるかもしれません。そうなると、前人未到記録を更に伸ばし20週というとんでもない記録も狙えるのでは?と思っていますし、今後はマライア・キャリードリー・パートンとも組むのではというSNSの動きをみるに、それらリミックスが投入されればますます面白いことになるかもしれません。

 

ここまでリミックスが増えると”合算させず別扱いにしたほうが”という声もあるかもしれませんが、個人的にはジャネット・ジャクソン「Together Again」(1997)の様々なリミックス投入(それが功を奏してか米チャートを制覇)を思い出した次第です。