イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

『凪のお暇』主題歌はトップ10入りなるか? miwa「リブート」に必要なブースト

8月26日~9月1日を集計期間とする、9月9日付のビルボードジャパン各チャートが昨日発表され、ソングスチャートはKing & Prince「koi-wazurai」が首位に立ちました。

シングルCDセールスおよびルックアップを制し、Twitter2位およびラジオエアプレイ8位と4指標がトップ10入り。初週のシングルCD売上枚数自体は前作「君を待ってる」の400315枚に及ばなかったものの、シングルCDセールス初加算週のポイントは前作の107.4%と伸びています。

 

さて今週はmiwa「リブート」に注目。デジタル2週先行リリースのこの曲がシングルCDセールス加算3週目にして16位にランクイン。面白いのは「リブート」が上位20位内に入った曲の中で唯一、トップ10入りした指標がひとつもないこと。しかも2週連続でこの状況であり、突出した指標に欠けている反面、安定しているとも言えます。この状況は是非、CHART insightから確認してみてください。

 

さてこの「リブート」、前のシングル「アップデート」(2018)に大きく勝っています。「アップデート」はデジタル先行ではないため単純比較は出来ませんが、シングルCDセールス初加算週を含む5週分の動向を確認すると差は歴然です。

 ※各指標について

 ・P:総合ポイント

 ・前週比:総合ポイントの前週比。前週および当週共に50位以内にランクインした場合のみ計算(50位未満は総合ポイントが表示されない)

 ・上記の理由により50位未満、総合ポイントで比較不能時は?で表示

 ・各指標について

  (詳細はビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)

   CD:シングルCDセールス

   DL:デジタルダウンロード

   ST:ストリーミング

   RA:ラジオエアプレイ

   LU:ルックアップ

   TW:Twitter

   MV:動画再生

   KA:カラオケ

   (※カラオケ指標は2019年度より導入のため、2018年12月10日付より加算対象となっています。)

 ・各指標毎順位において

   [-]:ランク圏外(101~300位)

   [ ]:(ブランク):ランクインせず(カウント対象前を含む)

   [?]:未表示もしくは計算不能

※これらはCHART insight | Billboard JAPANから曲名をクリックすると確認可能

日付 順位 P 前週
CD DL ST RA LU TW MV KA
2018/5/7 -           -    
2018/5/14 -       -   96    
2018/5/21 13 2184 10 23 - 17 16 46    
2018/5/28 47 942 43.1% 43 57 - 23 68 63    
2018/6/4 - 85 -   80 24 -    
 

日付 順位 P 前週
CD DL ST RA LU TW MV KA
2019/8/12 43 1520   18 - -   56 -  
2019/8/19 25 2154 141.7%   15 26 57   73 96  
2019/8/26 14 3668 170.3% 12 11 19 7 65 59 97  
2019/9/2 20 2766 75.4% 40 12 13 19 - - 71  
2019/9/9 16 3052 110.3% 68 12 11 72 37 62 51 -

シングルCDセールス加算初週の売上は「アップデート」が9569枚に対し「リブート」が8173枚。しかし「アップデート」は100位以内在籍がわずか2週にとどまる一方、「リブート」はデジタル先行分を含め既に5週連続100位以内在籍、しかもシングルCDリリース後もダウンロードは落ちてはいません。

これは主題歌に起用された『凪のお暇』(TBS 金曜22時)効果と言えるでしょう。週刊エンタテインメントビジネス誌『コンフィデンス』による各クール毎のドラマ満足度調査、その初回満足度で今年7月クールは『凪のお暇』が94/100となり、2位の『ノーサイド・ゲーム』(TBS 日曜21時)を17ポイント上回り断トツの首位に。

ドラマ満足度と主題歌のチャートアクションは比例するだろうことは8月26日付ビルボードジャパンソングスチャートで躍進するも「Lemon」に及ばなかった米津玄師「馬と鹿」、その理由を考える(8月22日付)で触れました。『凪のお暇』はリアルタイム視聴率こそ現段階での平均が10%に満たないながら、リアルタイムとタイムシフトの合計から重複分を除いた総合視聴率では常時17%を超えており人気も上々、主題歌である「リブート」を後押ししているだろうことは容易に想像が出来ます。

 

実はmiwaさん、「アップデート」から「リブート」に至るまでに大きな変化が。「アップデート」も収録した昨夏リリースの『miwa THE BEST』の後、リリースしたデジタル限定曲のミュージックビデオはフルバージョンで掲載されています。

これがデジタルに明るい姿勢を示していると支持を集めたのかもしれません。今回の「リブート」は徐々に動画再生指標が上昇。言い換えればショートバージョンはチャートアクションに有利には働かないということですし、ダウンロードやストリーミングの安定は動画再生の好調さと密接にリンクしている可能性は高いですね。

 

そして大きいのはルックアップ。パソコン等にCDを取り込んだ際のインターネットデータベースへのアクセス数を示す指標で、「リブート」は前週100位圏外(300位以内)にダウンしながらも今週急浮上。その理由は、8月14日にリリースされたCDのレンタル解禁日が先月末日だったため。

このレンタル解禁日設定で思い出したのが、上記リンク先で例示したあいみょん「今夜このまま」(2018)。ドラマ主題歌ながら解禁日を急遽遅らせたことでルックアップは同種の動きとなっています。なお、次のシングル以降あいみょんさんはレンタル解禁をシングルCD発売と同日に設定しており、”CDセールスとレンタルで分けずに全指標で曲を売り込む”手法を採り始めています(その最たる成功例がOfficial髭男dism「Pretender」や「宿命」と捉えています)。

miwaさんの場合、前作「アップデート」もレンタル解禁をCDリリースの17日後に設定しており、レンタル解禁までにCDの販売数を伸ばしたいとする歌手側もしくは所属レコード会社の方針が想像出来ます(今夏のドラマ主題歌では米津玄師「馬と鹿」やCHEMISTRY「Angel」も同様の設定となっており、おそらくソニーの方針ではないかというのが私見です)。しかし、たとえばmiwaさんにおいてはそれでシングルCDセールスが伸びたとは言い難いかもしれず、”CDセールスとレンタルで分けずに全指標で曲を売り込む”手法が必要ではなかったかと思うのですがいかがでしょう。

 

とはいえ既にリリース済であるこの「リブート」、総合でのトップ10入りのためにはデジタル指標群の維持に加え、レンタル展開の徹底によるルックアップ上昇が鍵と言えます。最新9月9日付のチャート構成比ではシングルCDセールスをルックアップが上回っているため、シングルCDセールスおよびダウン傾向のラジオエアプレイをルックアップがどうカバーするかが重要です。勿論『凪のお暇』が高品質のまま維持し新たな視聴者を獲得することが重要ですが、ルックアップ次第ではトップ10入りの可能性が高いと言えるでしょう。レンタル解禁の影響を1週間丸々受ける次週のチャートアクションに注目です。

3週連続で首位交代、新たな首位曲も"仕掛け"が効いた9月7日付米ソングスチャートをチェック

ビルボードソングスチャート速報。現地時間の9月2日月曜が祝日のため翌3日に発表された、9月7日付最新ソングスチャート。ビリー・アイリッシュ「Bad Guy」から首位の座を奪ったショーン・メンデス&カミラ・カベロ「Señorita」が1週で陥落。新たな1位はリゾ「Truth Hurts」が獲得しました。

 

今週のアルバムチャートではテイラー・スウィフト『Lover』が今年最高となる867000ユニットを獲得し首位に。

またテイラーのみならずショーン・メンデス&カミラ・カベロやリゾも先週月曜(日本時間火曜)に開催されたMTVビデオ・ミュージック・アワードでパフォーマンスを披露。これらがどう影響するかが見どころとなっていました。

前週首位を獲得したショーン・メンデス&カミラ・カベロ「Señorita」は"いつキスするの?"と焦らすかのようなパフォーマンスで魅了。

この影響で、前週より総合で2%上昇していますが2位に後退。

またテイラー・スウィフトは今年のMTVビデオ・ミュージック・アワードでオープニングアクトとして「You Need To Calm Down」および最新シングル「Lover」を披露。

「You Need To Calm Down」は10ランクアップの4位でトップ10再エントリー、「Lover」が9ランクアップの10位に入り2曲同時トップ10入り。ストリーミングは「You Need To Calm Down」が前週比49%アップの2460万(同9位)、「Lover」が同81%アップの2910万(同指標7位)となり、またラジオエアプレイは「You Need To Calm Down」が前週比2%ダウンしながらも5270万を獲得(同指標12位)。集計期間の前日に「Lover」のミュージックビデオが公開されたことで同曲のストリーミングが伸びた影響もありますが、しかしながら突出した指標がなかったと言えるかもしれません。

とはいえテイラー・スウィフトは「Lover」が通算25曲目となるトップ10入りとなり、エルヴィス・プレスリーの記録に並びました(ただし米ビルボードのチャートが1958年にスタートして以来のカウントとなり、エルヴィスはそれ以前からも活動)。通算トップ10入り数で歴代10位となっています。

 

それらを抑え、新たな首位に立ったのはリゾ「Truth Hurts」。自身初の首位獲得です。

「Good As Hell」共々披露したMTVビデオ・ミュージック・アワードの影響は勿論のこと、リゾもまた仕掛けていました。デジタル集計期間開始日となる8月23日にはNBCのテレビ番組『トゥデイ』に出演。

Truth Hurts」を含む4曲をパフォーマンスしています。そして。

同じく8月23日には、今年「Suge」が7位まで上昇したダベイビーの参加版、およびプロデューサー/DJのCIDによるリミックスの2バージョンが追加リリース。これが功を奏し、ダウンロードは前週の2倍以上となる53000を獲得し同指標首位を獲得。ストリーミングは前週比21%アップの3440万(同指標4位)、ラジオエアプレイは同1%ダウンの9840万(同指標4位)となり、トータルで23%アップしたことで「Señorita」を追い抜いた形です。2バージョンの新規投入等が有効に働いており、仕掛けの重要さがよく解ります。

リゾ「Truth Hurts」は元来2017年9月にリリースされていましたが、今年4月19日にNetflixで公開された映画『サムワン・グレート 〜輝く人に〜 (原題:Someone Great)』に用いられ、メジャーデビューアルバム『Cuz I Love You』(2019)のデラックスエディションに収められていることもあり、今年5月18日付で50位に初登場。今回遂に首位の座を射止めた形です。

リゾはラッパーでもあり、女性ラッパーが客演参加なしで首位を獲得したのはカーディ・B「Bodak Yellow (Money Moves)」以来およそ2年ぶり。女性が主演の楽曲では今年7曲目の首位となり2014年の記録に並びました。また3週連続で、それもいずれも初の首位を獲得した(ビリー・アイリッシュ、ショーン・メンデスおよびリゾ。なおカミラ・カベロは2度目)のは2000年7月後半のヴァーティカル・ホライズン「Everything You Want」→マッチボックス・トゥエンティ「Bent」→イン・シンク「It's Gonna Be Me」以来19年ぶりとなります。

ラジオエアプレイはカリード「Talk」からエド・シーラン&ジャスティン・ビーバー「I Don't Care」(総合9位)に交代。ですが「I Don't Care」のラジオエアプレイは前週と変わらず1億1100万となり、楽曲のピークは過ぎつつあるように思われます。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (3位) リゾ「Truth Hurts

2位 (1位) ショーン・メンデス & カミラ・カベロ「Señorita」

3位 (2位) ビリー・アイリッシュ「Bad Guy」

4位 (14位) テイラー・スウィフト「You Need To Calm Down」

5位 (4位) リル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」

6位 (5位) リル・テッカ「Ran$om」

7位 (7位) クリス・ブラウン feat. ドレイク「No Guidance」

8位 (6位) カリード「Talk

9位 (8位) エド・シーラン & ジャスティン・ビーバー「I Don't Care」 

10位 (19位) テイラー・スウィフト「Lover」

なおテイラー・スウィフトは、アルバム『Lover』から全18曲を100位以内に送り込んでいます。

 

この中から次にどの曲をシングル化するかも注目です。

『NARALIEN』配信からみえてくるENDRECHERIのこだわり、もしくはせめてもの抵抗

堂本剛さんによるプロジェクト、ENDRECHERIのファンクネスを極める姿勢は好事家を中心に支持を集めていますが、一方で接触手段がレンタルのみとなる上に購入手段も少ないことは以前記載しました。

接触手段はレンタルに限られるのですが、先週土曜に解禁されながらも自分の住む地域では酷い状況です。青森県内のTSUTAYAでは五所川原店に通常盤が1枚あるのみ、さらに旗艦店と銘打ったTSUTAYA MORIOKAでは全種類置いていません。他方GEOでは青森柳川店が通常盤の在庫を確保しているのですが(在庫の有無は両チェーンのアプリより確認可能)、この状況は以前書いた森口博子GUNDAM SONG COVERS』と酷似していますね。

GEO青森柳川店が突出している一方で、高い音楽性やチャートで上位を獲得した実績などを追わず過去の(およびそこから想定される)データばかりを重視するかのような店舗やチェーンの姿勢は問われるべきでしょう。

 

さて『NARALIEN』については、配信したほうが好いかをENDRECHERIのファンの方に呼びかけたところ、"レコチョクでは配信されているけれど物足りない"的な解答をいただきました。たしかにジャニーズの作品群は、レコチョクではダウンロード可能となっています。

実はここでも、ジャニーズ事務所が運営するレコード会社に所属する歌手の作品と外部レコード会社所属歌手のとで扱いは異なります。たとえばavex所属のV6が今夏リリースした「ある日願いが叶ったんだ」はフルバージョンで配信される一方、KAT-TUNHey! Say! JUMP、NEWS等はショートバージョンやサビのみの部分配信。価格は抑えてあるとはいえ、シングルCDレンタルの解禁日を遅らせるのと同様の不便さを強いる姿勢には疑問を覚えます。

堂本剛さんおよびKinKi Kidsジャニーズ事務所運営のレコード会社に所属しているため、ENDRECHERI『NARALIEN』においてもやはりフルバージョンでのダウンロード配信はなく、物足りないという意見が出てくるのも理解出来ます。が、面白い動きが。

アルバムから全曲ではないものの配信され、KAT-TUN等のようにショートバージョンやサビのみの部分配信もありますが、「FUNK TRON」では"FUNKと化せ皆人"および"Let's ENDRE IT UP"部分が、「Pani9 disorder man」ではサビの他に"Scream!!!!"部分が、「4 10 cake」では"Your BUTTER"および"I'm HOT CAKE"部分がそれぞれ配信されているのです。昨年までの配信は全てショートバージョンだったことから、ENDRECHERIが配信にこだわりを持っていることが伺えますし、配信に明るくないレコード会社および所属事務所の中にあって出来る範囲でやってみようという抵抗めいたものも伺えるのですがいかがでしょう。

惜しむらくは試聴が出来ないこと。強いインパクトがあるために配信したであろうこれらの部分が仮に試聴出来たならば、レコチョクでの購入を経てゆくゆくはアルバム購入や接触に至る方もいるのでは? そのプロセスを無下にしてやいないかと思ってしまいます。先述したようにレンタル店で借りられないのならば、オンラインでの販売やレンタルにつなげるべく動線を作ったほうが好く、その上でレコチョクがレコード会社とオンラインストア、そしてユーザーとのハブになるべきだと思うのですがいかがでしょう。そもそもジャニーズ事務所所属歌手の作品はデジタルに明るくないという認識が広く世間に伝わっていることを踏まえれば、ダウンロードも出来ること自体訴求しないといけないのですが。

 

ジャニーズ事務所所属歌手では今年、山下智久「CHANGE」ダウンロード販売効果により高いチャートアクションを示したことを書きました。その際、ダウンロードがCD販売を駆逐しないことも取り上げています。

ENDRECHERI側の配信へのこだわりをみるに、少なくともENDRECHERIはデジタルに明るくなってほしいと思っているのではと考えますし、ファンの多くも配信を希望しています。事務所側にはデジタルの姿勢を再考してほしいと切に願います。

ミッシー・エリオットの復活、そして客演参加したゴスペル曲とそのメッセージ

日本時間の先週火曜に開催されたMTVビデオ・ミュージック・アワードでミッシー・エリオットが自身の音楽史の集大成とも言えるパフォーマンスを披露。受賞に相応しい素晴らしさで現役感を示してくれました。

ヒットメドレーの冒頭を飾った「Throw It Back」はこのタイミングでリリースされた最新EP『Iconology』収録曲。現役感というより、完全なるカムバックですね。

フルアルバムにも期待がかかります。

 

そのミッシー・エリオットが最近、客演として参加した作品が同じく先月リリースされています。それがゴスペル歌手のキエラ・シアードによる「Don't Judge Me」。キエラはかつてキエラ・”キキ”・シェアードとして日本ではラジオを中心に親しまれた歌手(ですがそのプロモートの際、ゴスペルを前面に打ち出されていませんでした)。ゴスペルにも柔軟に参加するミッシーの振り幅の広さ、そしてキエラの姿勢も見事ですね。

ちなみにミッシー・エリオットは2003年にもゴスペル界への客演参加を果たしているのですが、それがカレン・クラーク・シアード(シェアード)の「Go Ahead」(アルバム『The Heavens Are Telling』収録→Apple Music)。名前でも解るように、ミッシーはシアード母娘との共演を果たしたことになります。

 

「Don't Judge Me」の曲調から、昨年日本でヒットしたジャネット・ジャクソン feat. ダディー・ヤンキー「Made For Now」をふと思い出したのですが、この2曲のプロデュースともハーモニー・サミュエルズが関わっています。

ハーモニー・サミュエルズは主にR&B畑のプロデューサーで、アリアナ・グランデ feat. マック・ミラー「The Way」等でお馴染み。

その彼がゴスペルというのには驚きましたが、聖俗共に歌うファンテイジアを手掛けたり、ミシェル・ウィリアムズによるデスチャ擬似再結成曲「Say Yes」もハーモニーによるもの。彼もまた、聖俗を柔軟に歩んでいく方なのです。

 

さて、キエラ・シアード「Don't Judge Me」はミュージックビデオも公開。こちらにミッシーは不参加ですが、非常に興味深い作品となっています。

冒頭に登場するスマートフォンの映像は、キエラのパフォーマンス中にウィッグが外れた瞬間のものではないでしょうか。キエラはその映像を提示することで、失敗は誰にでもあるから決して非難するな(”Don't Judge Me”)、唯一裁ける存在は神様だから…というメッセージを込めているかのようです。これを観て考えたのが、一度の失敗を何度も繰り返して流し完膚なきまでに叩き潰す、いや何の落ち度もなくとも自分より下(の集団)に属するというだけで叩くことをよしとする…ここ数ヶ月で急速に息苦しくなった社会。それに対しこの曲が一石を投じるのではないかと思うのは自分だけでしょうか。裁くのはその専門の者に委ね、過ちを犯した当事者が更生することを願い、社会を好くするためにどうするかを考える…これらに徹するほうが遥かに素晴らしいことだと思うのです。

 

キエラ・シアードは軽やかに、優しく、でもしっかりと”Don't Judge Me”という思いを謳います。日本でゴスペルの概念自体なかなか伝わりにくいかもと思いつつ、ポジティブな空気を醸成する一助にこの曲がなってほしいと強く願います。

ストリーミング解禁とロングヒットは比例する…条件の似た2曲を数値面から再検証する

一昨日の星野源さんのストリーミング解禁に触れた際、金曜を解禁日としたのは主演映画『引っ越し大名!』の公開タイミングゆえではと推測しました。

後にコメント欄にて、”ワールドツアーの発表に合わせた解禁ではないか”という意見をいただきました。

ブログアップ後に知ったこの発表を受けて、星野源さんが音源解禁を”海外仕様”に設定したと捉えた次第。海外では金曜解禁が標準化し、米ビルボードソングスチャートにおけるデジタル2指標の集計期間は金曜からとなるため。次作のリリース日が仮に金曜解禁だとしたら、星野さんは世界を見据えていると言えるかもしれません。日本ではチャートの集計期間が月曜からとなるため、ストリーミング解禁の影響は来週および再来週のチャートをチェックして判断したいと思います。

 

 

さて、ストリーミングが主にチャートにどのような効果や影響を及ぼすかについては以前、あいみょん「今夜このまま」とback number「HAPPY BIRTHDAY」を比較して記載しました。

ミュージックビデオの公開手法も大事であることや、さらにストリーミングがセールスを駆逐しないことについてはサカナクションおよびBUMP OF CHICKENの最新アルバムを例に記載しました。星野源さんがストリーミング解禁したことにより、”アルバムが売れなくなる”という危惧感が一部から聞こえてきたのですがそれはほぼ杞憂であり、むしろ、さらなるロングヒットが期待出来ると言っていいでしょう。

それが証拠に、以前比較した2曲について"数値"の面で比較してみると非常に解りやすいのです。

 ※各指標について

 ・P:総合ポイント

 ・前週比:総合ポイントの前週比。前週および当週共に50位以内にランクインした場合のみ計算(50位未満は総合ポイントが表示されない)

 ・上記の理由により50位未満、総合ポイントで比較不能時は?で表示

 ・各指標について

  (詳細はビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)

   CD:シングルCDセールス

   DL:デジタルダウンロード

   ST:ストリーミング

   RA:ラジオエアプレイ

   LU:ルックアップ

   TW:Twitter

   MV:動画再生

   KA:カラオケ

   (※カラオケ指標は2019年度より導入のため、2018年12月10日付より加算対象となっています。)

 ・各指標毎順位において

   [-]:ランク圏外(101~300位)

   [ ]:(ブランク):ランクインせず(カウント対象前を含む)

   [?]:未表示もしくは計算不能

※これらはCHART insight | Billboard JAPANから曲名をクリックすると確認可能

 

  順位 P 前週比 CD DL ST RA LU TW MV KA
2018/10/1 -             -    
2018/10/8                    
2018/10/15 -           -    
2018/10/22 -           -    
2018/10/29 -       9   -    
2018/11/5 7 4209   3 2 3   43    
2018/11/12 11 3877 92.1%   7 1 6   79    
2018/11/19 9 4513 116.4%   11 1 3   69    
2018/11/26 4 7206 159.7% 17 6 1 1 29 58 12  
2018/12/3 8 5506 76.4% 42 6 1 6 60 98 6  
2018/12/10 7 4819 87.5% 72 10 1 7 - - 7 41
2018/12/17 9 5132 106.5% 81 9 1 11 5 93 9 28
2018/12/24 6 5039 98.2% 79 11 1 9 3 - 10 24
2018/12/31 7 5333 105.8% 85 9 1 18 4 91 9 21
2019/1/7 5 5133 96.2% 82 11 1 49 4 - 9 20
2019/1/14 7 5240 102.1% 50 11 2 8 4 - 11 22
2019/1/21 6 4706 89.8% 88 17 2 18 4 85 8 20
2019/1/28 8 4380 93.1% - 21 2 80 5 18 12 15
2019/2/4 7 3667 83.7% - 26 2 - 5 92 11 12
2019/2/11 9 3387 92.4% - 29 2 - 10 - 17 13
2019/2/18 8 3375 99.6% - 28 2 78 12 - 20 13
2019/2/25 8 3357 99.5% -   2 45 9 70 14 13
2019/3/4 6 3909 116.4% - 29 2 76 16 70 7 14
2019/3/11 9 3622 92.7% - 34 3 80 13 - 6 14
2019/3/18 12 3205 88.5% - 35 3 - 26 - 8 14
2019/3/25 10 3277 102.2%   42 3 - 36 - 8 14
2019/4/1 14 2599 79.3%   37 3   37 - 9 15
2019/4/8 13 2383 91.7%   48 3   40 - 11 18
2019/4/15 15 2348 98.5%   38 3   51 - 12 19
2019/4/22 19 2191 93.3%   39 5   56 - 14 18
2019/4/29 12 2607 119.0% - 20 4   54 61 7 18
2019/5/6 17 2216 85.0%   41 6   58 - 11 18
2019/5/13 15 2366 106.8%   33 7   43 - 12 20
2019/5/20 16 2107 89.1%   49 7   73 - 12 20
2019/5/27 21 2051 97.3%   62 9   84 - 13 19
2019/6/3 17 2024 98.7%   59 9   81 - 11 21
2019/6/10 24 1947 96.2%   77 9   95 - 12 21
2019/6/17 24 1906 97.9%   94 10 - - - 15 24
2019/6/24 29 1878 98.5%   - 11 - - - 22 28
2019/7/1 28 1751 93.2%   - 12   89 - 22 36
2019/7/8 25 1754 100.2%   - 13   - - 20 37
2019/7/15 27 1733 98.8%   - 12   - - 22 39
2019/7/22 28 1685 97.2%   - 14 - - - 23 42
2019/7/29 38 1571 93.2%   - 15   - - 26 42
2019/8/5 43 1566 99.7%   - 15   - - 31 46
2019/8/12 41 1567 100.1%   - 17   - - 32 47
2019/8/19 41 1527 97.4%   - 18   - - 44 47
2019/8/26 44 1542 101.0%   - 17   - - 36 48
2019/9/2 48 1470 95.3%   - 19   - - 39 45

 

  順位 P 前週比 CD DL ST RA LU TW MV KA
2019/1/14 -           79    
2019/1/21 -           -    
2019/1/28 -       10   81    
2019/2/4 -       28   -    
2019/2/11 -       19   -    
2019/2/18 -       20   26    
2019/2/25 -       26   -    
2019/3/4 2 9744   1 - 7   73    
2019/3/11 2 12913 132.5% 4 1 - 1 2 37   -
2019/3/18 5 7109 55.1% 17 1 - 12 2 48 - 42
2019/3/25 6 6210 87.4% 25 2 - 17 1 60 - 42
2019/4/1 3 7488 120.6% 33 1 - 2 1 33 31 14
2019/4/8 3 7329 97.9% 37 1   1 2 23 4 11
2019/4/15 7 4720 64.4% 56 1   7 3 56 18 5
2019/4/22 9 3594 76.1% 72 3   30 4 53 7 6
2019/4/29 11 2628 73.1% 77 4   - 11 63 8 5
2019/5/6 18 2187 83.2% - 5   95 13 - 27 4
2019/5/13 11 2644 120.9% 94 6   79 9 - 41 4
2019/5/20 21 1827 69.1% - 9   - 14 99 - 4
2019/5/27 27 1761 96.4% - 14   91 20 - - 4
2019/6/3 22 1685 95.7% - 9   - 23 88 - 4
2019/6/10 27 1669 99.1% - 9     24 - - 4
2019/6/17 27 1441 86.3% - 10     25 -   5
2019/6/24 33 1578 109.5% - 16   - 29 - 61 3
2019/7/1 46 1355 85.9% - 21     43 - 60 6
2019/7/8 53 - 19   - 36 - - 9
2019/7/15 72 - 22     41 -   10
2019/7/22 79   19     53 -   10
2019/7/29 79   28     55 -   11
2019/8/5 95   38     80 -   11
2019/8/12 89   36     77 - - 11
2019/8/19 100   46     96 - - 11
2019/8/26 -   35     92 -   11
2019/9/2 -   40     - -   11

2曲の大きな差はストリーミングと動画再生の2指標にあることは以前記載しましたが、他の条件がさほど変わらない状況(ドラマ主題歌、オリジナルアルバムからの最後の先行シングル、アルバムのチャート動向が似ている、等)でありながらも、しかしポイント前週比は歴然とした差が。あいみょん「今夜このまま」がHot100初登場以降前週比80%未満がわずか2週なのに対し、back number「HAPPY BIRTHDAY」は5週。前者がこれまで一度も50位未満にならず44週連続在籍しているのに対し、後者は50位以内在籍18週、Hot100は25週のランクインにとどまっています。

back numberはストリーミングの解禁をベストアルバム『アンコール』(2016)までにとどめています。仮にアルバム『MAGIC』(2019)もきちんと解禁していたならば、カラオケで23週連続20位以内に入る「HAPPY BIRTHDAY」が今も上位にとどまったことは容易に想像出来ます。解禁済の楽曲のうちストリーミングで最も好調な「高嶺の花子さん」(2013)が最新9月2日付ビルボードジャパンソングスチャートで過去2番目に高い順位となる25位に入り、ストリーミング指標11位の影響を強く受けているだけに尚の事です。それでも同曲はミュージックビデオの公開をショートバージョンにとどめたゆえか動画再生指標が300位未満と大きく乖離しており、彼らにおいてはミュージックビデオ公開手法という別の問題も出てくるのですが。

 

実は今、「HAPPY BIRTHDAY」と似た流れになりそうだと危惧する曲があります。それがRADWIMPS「愛にできることはまだあるかい」。映画『天気の子』使用曲の中で最上位にランクインしているのですが、7月29日付で4位に登場しながらもその6週後には早くもトップ10落ちしてしまいました。

 

  順位 P 前週比 CD DL ST RA LU TW MV KA
2019/4/22 92             14    
2019/4/29 -           -    
2019/5/6                      
2019/5/13                      
2019/5/20                      
2019/5/27                      
2019/6/3                      
2019/6/10                      
2019/6/17                      
2019/6/24                      
2019/7/1                      
2019/7/8                      
2019/7/15 -           -    
2019/7/22                    
2019/7/29 4 9055   1   22   12 6  
2019/8/5 3 10005 110.5%   1   2   23 1 -
2019/8/12 5 7222 72.2%   1   6   28 1 66
2019/8/19 5 6397 88.6%   1   6   31 2 59
2019/8/26 7 5769 90.2%   2   17   53 3 28
2019/9/2 11 3926 68.1%   2   28   71 4 24

ポイント前週比80%未満が既に2回発生していることが気掛かりです。映画『天気の子』は現段階での最新映画興行収入ランキングで首位に返り咲き、興行収入は107億円を突破しているのとは対照的な動きに見えるため、尚の事。

「愛にできることはまだあるかい」はシングルCD未リリースゆえ、シングルCDセールスおよびルックアップの2指標がない状況ですが、ポイント前週比にはさほど影響しないものと思われます。こちらはミュージックビデオがフルバージョンで掲載されていることから、やはりストリーミング未解禁が原因とみていいでしょう。RADWIMPSの場合は一部ストリーミングで解禁していますが、こちらには『天気の子』または『君の名は。』の楽曲も収録されていません。

 

ストリーミング解禁/非解禁の判断は歌手側にあり、判断は自由です。しかしストリーミング解禁がCD等セールスに必ずしも悪影響を及ぼすわけではないこと(それどころか、戦略や工夫次第では前作を超えることも十分あり得ます)、楽曲が長く愛されていくことを踏まえるに、やはり解禁したほうが好いのではというのが数値の面からも見えてきました。ミュージックビデオフルバージョン解禁も含めた接触(指標群)の充実がチャートにも有効に作用していくことは間違いありません。

「サマーヌード」「若者のすべて」…”フラッシュバック”な夏曲がテレビで特集&ラジオ中心にヒット中

今夏の『ミュージックステーション』(テレビ朝日 金曜20時)では”夏の名曲ライブ”と銘打ち、懐かしの楽曲がが披露されてきました。キマグレン「LIFE」(2008)、フジファブリック若者のすべて」(2007)、CHEMISTRYPoint of No Return」(2001)と続き、トリを飾ったのは昨日放送、真心ブラザーズによる「サマーヌード」(1995)でした。

この披露のタイミングで、5年前の弊ブログエントリーへのアクセス数が伸びています。2年前の再掲版を下記に。

 

ミュージックステーション』が夏の定番曲、それも主に夏を思い出したり振り返るタイプの楽曲を特集した理由は解りかねますが、この時期はラジオでもこのようなテーマを含む”夏の終わり”な楽曲がヒットしています。Musicman-netの記事によると。

今週、2019年8月28日発表のラジオ・オンエアチャート(集計期間:2019年8月19日〜8月25日プランテック調べ)では、テイラー・スウィフト「ユー・ニード・トゥ・カーム・ダウン」が首位を獲得。先週14位から急上昇した。

(中略)

なお、お盆休み明けで一時期の暑さも落ち着いた今週、ラジオから流れてくる“夏ソング”も色合いを変えはじめた。筆頭株となる井上陽水「少年時代」は、先週162位から38位へ急上昇。リクエストも倍増した。

クリスマスも桜の季節も、その色合いが最も濃くなるのはストリーミング等よりラジオエアプレイだと捉えていますが、夏(の終わり)についても同じことが言えそうです。

さらには、ビルボードジャパンソングスチャートの指標のひとつであるラジオエアプレイにおいて、先述したフジファブリック若者のすべて」が上昇。最新9月2日付でラジオエアプレイ16位を獲得したのみならず、同指標がチャート構成比の3割強となり総合でも67位に。CHART insightからは、夏が来るたびにラジオエアプレイ中心に伸びていることがわかります。

(※なお、Musicman-net記載のラジオ・オンエアチャートとビルボードジャパンのラジオエアプレイ指標のチャートは内容が異なります。データ提供元は共にプランテックではありますが、前者は純粋なラジオエアプレイ回数を、後者はオンエア回数にエリア毎の人口と平均聴取率を加味して算出しています。)

 

Musicman-netの記事にもあるように、まさに”夏の終わり”な森山直太朗さんの楽曲が伸びていたり。

また自分が好きなRHYMESTERによる「フラッシュバック、夏。」も彼らのラジオ番組でOAされる機会が増える時期。

夏の終わり、いわば”フラッシュバック”な夏曲を自身で探してみるのも好いのですが、時流に合わせた選曲のプロたるラジオ局や番組にBGMを委ねてみるのも面白いかもしれません。

星野源が遂にストリーミング解禁…デジタル解禁は待ったなしの状態に

遂に。

しかもApple Music限定で、日本人初となるBeats 1 Radio『Pop Virus Radio』も用意。

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この徹底っぷりは素晴らしいですね。

 

星野源さんは自身の作品を解禁する以前から、サブスクリプションサービスを使用しています。

記憶が正しければ、星野源さんと交流のあるRHYMESTER宇多丸さんが自身のラジオ番組で、サブスクリプションサービスを自身が使用しその良さを感じていながら自身の作品は解禁していないことへの矛盾や葛藤を抱えていたと話していたはず。もしかしたら星野さんもそうだったのかもしれません。

星野源さんがこのタイミングで解禁した理由を推測するに。

昨夏デジタル限定でリリースされビルボードジャパンソングスチャートを制した「アイデア」は月曜ダウンロード配信開始でチャートの集計期間をフル活用していたので、今回の金曜解禁という事態に驚いたのですが、主演映画のプロモーションに合わせてだとしたら面白いですね。

 

さて、ストリーミング解禁となると”アルバムが売れなくなるのでは?”という疑問をよく耳にします。それについてはメディア展開の巧さも相俟ってではありますが、サカナクション『834.194』が前作『sakanaction』(2013)と変わらない売上を誇っており、その疑問は杞憂と言えるかもしれません。

そして、昨日堂本剛『NARALIEN』についてデジタル解禁の必要性(この場合はストリーミングというよりもダウンロードへの言及が中心ですが)を記載し、ファンの方はデジタル解禁を望んでいるのかどうか疑問を投げかけたのですが、読んでくださったファンの方々から直接いただいたレスポンスは、デジタル解禁を待ち望む声が圧倒的でした。

実はファンもデジタルを待ち望んでいる…その心理を知ることが出来たのは嬉しい発見でした。

 

日本を代表する歌手のストリーミング解禁により、もはやデジタル解禁は待ったなしの状態となりました。ストリーミング解禁がアルバム売上をむしろ伸ばす可能性について書きましたが、そのためには星野源さんのBeats 1 Radio『Pop Virus Radio』やサカナクションのメディア等での展開のように、ただ解禁するだけではなくその解禁効果を最大限に伸ばす工夫が必要であり、それをひっくるめての戦略が今後求められます。そしてデジタル解禁を望むのはライト層だけではない、ファンもだということを芸能事務所やレコード会社側は強く意識する必要があるはずです。