イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

King & Prince「koi-wazurai」が前作超えの好スタートながら、加算されない指標が存在している

King & Princeの最新シングル「koi-wazurai」が好調です。最新9月9日付ビルボードジャパンソングスチャートで首位を獲得し、それも前作を上回るポイントを獲得しています。

シングルCDセールスおよびルックアップを制し、Twitter2位およびラジオエアプレイ8位と4指標がトップ10入り。初週のシングルCD売上枚数自体は前作「君を待ってる」の400315枚に及ばなかったものの、シングルCDセールス初加算週のポイントは前作の107.4%と伸びています。

ビルボードジャパンではシングルCDセールスを指標化する際、係数が用いられることがあります(詳しくは【Billboard JAPAN Chart】よくある質問 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)。「koi-wazurai」も「君を待ってる」も3種販売のため、係数に違いが生じたとしても大きな差にはなっていないものと思われるのですが、では「koi-wazurai」が前作を上回った理由を探ってみるに、「koi-wazurai」には動画再生指標がわずかながら加算されているのです。

尤もこの1分間のティーザーはKing & Princeの、もしくはジャニーズ事務所が運営するレコード会社ではなく外部からリリースするジャニーズ事務所所属歌手が行っている手法であり、King & Princeにおいてはデビュー曲「シンデレラガール」(2018)で同指標が24位まで達しています。

その後、「Memorial」(2018)および「君を待ってる」(2019)では動画再生指標が300位以内に入っておらず、今作で再度同指標が加算されることに。前2作については下記に。

「koi-wazurai」のチャート構成比における動画再生指標は1%未満とみられ、同指標を差し引いたところで「君を待ってる」を上回るのですが、動画再生指標が8月26日付で90位まで上昇していたことを考えれば、動画を観て所有や接触に至った方が前作以上にいらっしゃるのではないかと考えます。

 

外部レコード会社とジャニーズ事務所運営レコード会社においては、ミュージックビデオのティーザーをYouTubeにアップする/しない、CDレンタル解禁日を発売と同日に設定する/アルバム同様17日後に遅らせる、という差が生じています。ダウンロードについてもレコチョク等一部サービスに限定しながら、外部レコード会社がフルバージョンでアップするのに対しジャニーズ事務所運営レコード会社は曲の一部のみの公開に。フルバージョンでアップすることが効果的なのは山下智久「CHANGE」で実証済であり、山下さんはソニー傘下のエスエムイーレコーズに所属しています。

しかしそのダウンロードについて、レコチョクをあらためて見てみるとKing & Princeの名前はありません。これには驚きました。

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(現段階での配信歌手一覧を掲載すべく、キャプチャを行いました。問題があれば削除いたします。)

デビュー順の所属歌手一覧についてはジャニーズ事務所 - Wikipediaをご参照いただき、レコチョクの一覧表と比較していただきたいのですが、少年隊やTOKIOの他、King & Princeも配信に参加していないのです。メジャーデビュー組で最も若手であるグループが抜けている事態には驚かされます。ちなみに、レコチョクでKing & Princeと検索して出てくる関連楽曲はこちらのカバーくらいでしょうか。

 

もしかしたらジャニーズ事務所側には、ダウンロードにOKを出すまでにメジャーデビューから数年が必要との決まりがあるのかもしれません。またKing & Princeの所属レコード会社は、ユニバーサルミュージックジャニーズ事務所がタッグを組んだ”Johnny's Universe”であることから(Musicman-net参照)、外部レコード会社ながらジャニーズ事務所運営レコード会社の方針が活きていることも想像出来ます。しかしながらさすがにダウンロード可能な楽曲が皆無というのは不自然ではないでしょうか。

とはいえ、たとえば嵐が今週リリースするシングル「BRAVE」は、ジャニーズ事務所運営レコード会社に所属しながら発売とレンタルが同日となっており(TSUTAYA参照)、King & Princeにおいても「BRAVE」同様例外的なケースなのかもしれません。だとしても、ダウンロード指標が加算されれば大先輩である嵐のポイントも抜けるポテンシャルを持ち合わせているだけに、King & Princeのダウンロード未解禁という設定はやはり勿体無いと思ってしまいます。

メディアへの有効な行動と、番組モニターの勧め(再掲)

私たちによるメディアへの有効な行動は、”直接、真摯に伝えること”です。

 

今週水曜の『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ 月-金曜18時)で、昨年に続いて放送された【高校演劇】特集。昨年の全国高等学校総合文化祭(総文祭)で演劇部門最優秀賞を受賞した香川県立丸亀高等学校『フートボールの時間』は来年の映画化が決まり、高校演劇を舞台にした漫画『まくむすび』も連載中で高校演劇界は盛り上がりを見せているのですが、今年の総文祭を振り返った特集の最後、今年の総文祭最優秀賞作品『ケチャップ・オブ・ザ・デッド』(逗子開成高等学校)が明日Eテレで放送されることを紹介した澤田大樹さんが話した内容に驚きました。

放送後のツイートでは”感じるものがあれば”としていますが、総文祭出場校を追ったドキュメンタリー『青春舞台』、そして最優秀賞受賞作品を紹介する番組が”存続の危機”とのこと。良質な(それも受賞という客観的な尺度があり、はっきりと良質であることが証明されている)作品が流れなくなる可能性を知り、悲しみを覚えた次第。

 

この打破のためには何が必要か…それは直接感想を送ることです。メールより手紙のほうがより思いが伝わりますが、メールであれど文字にしたためることが大事なのです。澤田さんも、そして昨日の同番組での放送内容振り返り企画で構成作家の妹尾匡夫さんも直接送ることが有効だと仰っていましたが、これは自分が過去に番組モニターになった経験からも強く実感しています。

番組モニターには報酬等のメリットもあれど、”好いものは好い、そうでないものはこうすればいいのでは?”をメディアに直接伝えられ、その提案が改善に導く可能性もあります。提案はポジティブな表現で行えるためメディア側も心開いて受け入れてくれます(というか、ネガティブな物言いは書類選考の段階で落とされます)。やり取りの中でメディアの方針も見え、その中で良方へ導くためにはどうするかを考えることで、いわゆる”ゴミ”という揶揄が如何に意味を成さないかも解ってきます。相手も人ゆえ、”直接、真摯に伝えること”は反省を促すことにも、後押しにもなるのです。

 

 

現在はメディア各局が10月からの番組モニター募集を行っているものと思われます(し、既に締め切っているところもあるでしょう)。またNHKでは来年度分を現在募集中(→NHK放送番組モニター募集)。『青春舞台』の存続希望の旨を伝え、また時間等に余裕があれば番組モニターに名乗り出てみてはいかがでしょうか。建設的な意見の提示は、潰す云々よりはるかに効果的なのです。

Superfly「愛をこめて花束を」が今週動画再生急浮上した理由も”UGC”だった

ビルボードジャパンソングスチャートを構成する8つの指標のうち、動画再生が突如増加する曲については弊ブログでその理由を解明してきました。

特にフィッツ&ザ・タントラムズ「HandClap」は先週と今週動画再生指標を制し、最新9月9日付総合ソングスチャートでも22位に。最高位を更新しているのは興味深いところです。

 

そんな動画再生指標を一気に駆け上がった曲が今週も。 

11年前にリリースされたSuperflyの代表曲。総合ソングスチャートでは長きに渡りランクインし、特に2015年1月12日付以降は常時300位以内、時折100位以内にも入っています。さらに今年度からカラオケ指標が導入され同指標で40位前後を保っていることで、より安定したチャートアクションを示すように。しかしながら今週、前週100位圏外だった動画再生指標が突如17位まで上昇し、総合でも97位に上昇したのです。

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ミュージックビデオは今夏1億回再生を突破した人気作品ではありますが、それだけの力ではないのではと思い調べてみると、この動画が突如人気になったからと考えられます。

(動画自体は結婚式のサプライズというプライベートな作品ゆえ、大きく貼り付けるのは控え、リンクの紹介のみにとどめます。)

この動画の投稿日は7月18日でしたが、このタイトルもしくはURLをTwitterで検索すると初めてつぶやかれたのが8月28日。その後数十件ツイートされていることから、動画を観た方の口コミで再生回数を伸ばしたといえます。この動画の詳細欄には「愛をこめて花束を」がクレジットされていることに加え、この動画のインスパイア源とされる動画(説明欄にリンク先有)にも楽曲がクレジットされていることから、今回の集計期間(8月26日~9月1日)内に口コミで2つの動画が多く再生されたことで「愛をこめて花束を」の動画再生指標が伸びたと結論付けていいでしょう。

歌手の公式YouTubeアカウント発ではない動画がビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標にカウントされるのは、先述したフィッツ&ザ・タントラムズ等同様に動画が”ユーザー生成コンテンツ(UGC)”に該当するゆえ。きちんと権利関係をクリアした動画がヒットすれば、チャートも上昇するというわけです。今後はこのようなヒットが更に増えてくることでしょうし、日本でも狙ってヒットさせることが出来るようになるかもしれません(出来ればそのような戦略に長けるようになっていただきたいと願うばかりです)。

 

最後に。カラオケ指標で上位に登場する楽曲は総合チャートでも安定傾向にありますが、楽曲の中にはストリーミングはおろかミュージックビデオもしくはダウンロードも用意されていない曲があり、Twitter等で話題になったとしても牽引される指標がないもしくは少ないためにチャートを上昇しにくい傾向があり、非常に勿体無いと感じます。またカラオケ指標の上位陣は変化に乏しいため、チャート自体の硬直性を招く遠因ではとも。今後のチャート改正(チャートポリシーの変更)時にカラオケ指標について再考してほしいという私見を書き添えておきます。

『凪のお暇』主題歌はトップ10入りなるか? miwa「リブート」に必要なブースト

8月26日~9月1日を集計期間とする、9月9日付のビルボードジャパン各チャートが昨日発表され、ソングスチャートはKing & Prince「koi-wazurai」が首位に立ちました。

シングルCDセールスおよびルックアップを制し、Twitter2位およびラジオエアプレイ8位と4指標がトップ10入り。初週のシングルCD売上枚数自体は前作「君を待ってる」の400315枚に及ばなかったものの、シングルCDセールス初加算週のポイントは前作の107.4%と伸びています。

 

さて今週はmiwa「リブート」に注目。デジタル2週先行リリースのこの曲がシングルCDセールス加算3週目にして16位にランクイン。面白いのは「リブート」が上位20位内に入った曲の中で唯一、トップ10入りした指標がひとつもないこと。しかも2週連続でこの状況であり、突出した指標に欠けている反面、安定しているとも言えます。この状況は是非、CHART insightから確認してみてください。

 

さてこの「リブート」、前のシングル「アップデート」(2018)に大きく勝っています。「アップデート」はデジタル先行ではないため単純比較は出来ませんが、シングルCDセールス初加算週を含む5週分の動向を確認すると差は歴然です。

 ※各指標について

 ・P:総合ポイント

 ・前週比:総合ポイントの前週比。前週および当週共に50位以内にランクインした場合のみ計算(50位未満は総合ポイントが表示されない)

 ・上記の理由により50位未満、総合ポイントで比較不能時は?で表示

 ・各指標について

  (詳細はビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)

   CD:シングルCDセールス

   DL:デジタルダウンロード

   ST:ストリーミング

   RA:ラジオエアプレイ

   LU:ルックアップ

   TW:Twitter

   MV:動画再生

   KA:カラオケ

   (※カラオケ指標は2019年度より導入のため、2018年12月10日付より加算対象となっています。)

 ・各指標毎順位において

   [-]:ランク圏外(101~300位)

   [ ]:(ブランク):ランクインせず(カウント対象前を含む)

   [?]:未表示もしくは計算不能

※これらはCHART insight | Billboard JAPANから曲名をクリックすると確認可能

日付 順位 P 前週
CD DL ST RA LU TW MV KA
2018/5/7 -           -    
2018/5/14 -       -   96    
2018/5/21 13 2184 10 23 - 17 16 46    
2018/5/28 47 942 43.1% 43 57 - 23 68 63    
2018/6/4 - 85 -   80 24 -    
 

日付 順位 P 前週
CD DL ST RA LU TW MV KA
2019/8/12 43 1520   18 - -   56 -  
2019/8/19 25 2154 141.7%   15 26 57   73 96  
2019/8/26 14 3668 170.3% 12 11 19 7 65 59 97  
2019/9/2 20 2766 75.4% 40 12 13 19 - - 71  
2019/9/9 16 3052 110.3% 68 12 11 72 37 62 51 -

シングルCDセールス加算初週の売上は「アップデート」が9569枚に対し「リブート」が8173枚。しかし「アップデート」は100位以内在籍がわずか2週にとどまる一方、「リブート」はデジタル先行分を含め既に5週連続100位以内在籍、しかもシングルCDリリース後もダウンロードは落ちてはいません。

これは主題歌に起用された『凪のお暇』(TBS 金曜22時)効果と言えるでしょう。週刊エンタテインメントビジネス誌『コンフィデンス』による各クール毎のドラマ満足度調査、その初回満足度で今年7月クールは『凪のお暇』が94/100となり、2位の『ノーサイド・ゲーム』(TBS 日曜21時)を17ポイント上回り断トツの首位に。

ドラマ満足度と主題歌のチャートアクションは比例するだろうことは8月26日付ビルボードジャパンソングスチャートで躍進するも「Lemon」に及ばなかった米津玄師「馬と鹿」、その理由を考える(8月22日付)で触れました。『凪のお暇』はリアルタイム視聴率こそ現段階での平均が10%に満たないながら、リアルタイムとタイムシフトの合計から重複分を除いた総合視聴率では常時17%を超えており人気も上々、主題歌である「リブート」を後押ししているだろうことは容易に想像が出来ます。

 

実はmiwaさん、「アップデート」から「リブート」に至るまでに大きな変化が。「アップデート」も収録した昨夏リリースの『miwa THE BEST』の後、リリースしたデジタル限定曲のミュージックビデオはフルバージョンで掲載されています。

これがデジタルに明るい姿勢を示していると支持を集めたのかもしれません。今回の「リブート」は徐々に動画再生指標が上昇。言い換えればショートバージョンはチャートアクションに有利には働かないということですし、ダウンロードやストリーミングの安定は動画再生の好調さと密接にリンクしている可能性は高いですね。

 

そして大きいのはルックアップ。パソコン等にCDを取り込んだ際のインターネットデータベースへのアクセス数を示す指標で、「リブート」は前週100位圏外(300位以内)にダウンしながらも今週急浮上。その理由は、8月14日にリリースされたCDのレンタル解禁日が先月末日だったため。

このレンタル解禁日設定で思い出したのが、上記リンク先で例示したあいみょん「今夜このまま」(2018)。ドラマ主題歌ながら解禁日を急遽遅らせたことでルックアップは同種の動きとなっています。なお、次のシングル以降あいみょんさんはレンタル解禁をシングルCD発売と同日に設定しており、”CDセールスとレンタルで分けずに全指標で曲を売り込む”手法を採り始めています(その最たる成功例がOfficial髭男dism「Pretender」や「宿命」と捉えています)。

miwaさんの場合、前作「アップデート」もレンタル解禁をCDリリースの17日後に設定しており、レンタル解禁までにCDの販売数を伸ばしたいとする歌手側もしくは所属レコード会社の方針が想像出来ます(今夏のドラマ主題歌では米津玄師「馬と鹿」やCHEMISTRY「Angel」も同様の設定となっており、おそらくソニーの方針ではないかというのが私見です)。しかし、たとえばmiwaさんにおいてはそれでシングルCDセールスが伸びたとは言い難いかもしれず、”CDセールスとレンタルで分けずに全指標で曲を売り込む”手法が必要ではなかったかと思うのですがいかがでしょう。

 

とはいえ既にリリース済であるこの「リブート」、総合でのトップ10入りのためにはデジタル指標群の維持に加え、レンタル展開の徹底によるルックアップ上昇が鍵と言えます。最新9月9日付のチャート構成比ではシングルCDセールスをルックアップが上回っているため、シングルCDセールスおよびダウン傾向のラジオエアプレイをルックアップがどうカバーするかが重要です。勿論『凪のお暇』が高品質のまま維持し新たな視聴者を獲得することが重要ですが、ルックアップ次第ではトップ10入りの可能性が高いと言えるでしょう。レンタル解禁の影響を1週間丸々受ける次週のチャートアクションに注目です。

3週連続で首位交代、新たな首位曲も"仕掛け"が効いた9月7日付米ソングスチャートをチェック

ビルボードソングスチャート速報。現地時間の9月2日月曜が祝日のため翌3日に発表された、9月7日付最新ソングスチャート。ビリー・アイリッシュ「Bad Guy」から首位の座を奪ったショーン・メンデス&カミラ・カベロ「Señorita」が1週で陥落。新たな1位はリゾ「Truth Hurts」が獲得しました。

 

今週のアルバムチャートではテイラー・スウィフト『Lover』が今年最高となる867000ユニットを獲得し首位に。

またテイラーのみならずショーン・メンデス&カミラ・カベロやリゾも先週月曜(日本時間火曜)に開催されたMTVビデオ・ミュージック・アワードでパフォーマンスを披露。これらがどう影響するかが見どころとなっていました。

前週首位を獲得したショーン・メンデス&カミラ・カベロ「Señorita」は"いつキスするの?"と焦らすかのようなパフォーマンスで魅了。

この影響で、前週より総合で2%上昇していますが2位に後退。

またテイラー・スウィフトは今年のMTVビデオ・ミュージック・アワードでオープニングアクトとして「You Need To Calm Down」および最新シングル「Lover」を披露。

「You Need To Calm Down」は10ランクアップの4位でトップ10再エントリー、「Lover」が9ランクアップの10位に入り2曲同時トップ10入り。ストリーミングは「You Need To Calm Down」が前週比49%アップの2460万(同9位)、「Lover」が同81%アップの2910万(同指標7位)となり、またラジオエアプレイは「You Need To Calm Down」が前週比2%ダウンしながらも5270万を獲得(同指標12位)。集計期間の前日に「Lover」のミュージックビデオが公開されたことで同曲のストリーミングが伸びた影響もありますが、しかしながら突出した指標がなかったと言えるかもしれません。

とはいえテイラー・スウィフトは「Lover」が通算25曲目となるトップ10入りとなり、エルヴィス・プレスリーの記録に並びました(ただし米ビルボードのチャートが1958年にスタートして以来のカウントとなり、エルヴィスはそれ以前からも活動)。通算トップ10入り数で歴代10位となっています。

 

それらを抑え、新たな首位に立ったのはリゾ「Truth Hurts」。自身初の首位獲得です。

「Good As Hell」共々披露したMTVビデオ・ミュージック・アワードの影響は勿論のこと、リゾもまた仕掛けていました。デジタル集計期間開始日となる8月23日にはNBCのテレビ番組『トゥデイ』に出演。

Truth Hurts」を含む4曲をパフォーマンスしています。そして。

同じく8月23日には、今年「Suge」が7位まで上昇したダベイビーの参加版、およびプロデューサー/DJのCIDによるリミックスの2バージョンが追加リリース。これが功を奏し、ダウンロードは前週の2倍以上となる53000を獲得し同指標首位を獲得。ストリーミングは前週比21%アップの3440万(同指標4位)、ラジオエアプレイは同1%ダウンの9840万(同指標4位)となり、トータルで23%アップしたことで「Señorita」を追い抜いた形です。2バージョンの新規投入等が有効に働いており、仕掛けの重要さがよく解ります。

リゾ「Truth Hurts」は元来2017年9月にリリースされていましたが、今年4月19日にNetflixで公開された映画『サムワン・グレート 〜輝く人に〜 (原題:Someone Great)』に用いられ、メジャーデビューアルバム『Cuz I Love You』(2019)のデラックスエディションに収められていることもあり、今年5月18日付で50位に初登場。今回遂に首位の座を射止めた形です。

リゾはラッパーでもあり、女性ラッパーが客演参加なしで首位を獲得したのはカーディ・B「Bodak Yellow (Money Moves)」以来およそ2年ぶり。女性が主演の楽曲では今年7曲目の首位となり2014年の記録に並びました。また3週連続で、それもいずれも初の首位を獲得した(ビリー・アイリッシュ、ショーン・メンデスおよびリゾ。なおカミラ・カベロは2度目)のは2000年7月後半のヴァーティカル・ホライズン「Everything You Want」→マッチボックス・トゥエンティ「Bent」→イン・シンク「It's Gonna Be Me」以来19年ぶりとなります。

ラジオエアプレイはカリード「Talk」からエド・シーラン&ジャスティン・ビーバー「I Don't Care」(総合9位)に交代。ですが「I Don't Care」のラジオエアプレイは前週と変わらず1億1100万となり、楽曲のピークは過ぎつつあるように思われます。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (3位) リゾ「Truth Hurts

2位 (1位) ショーン・メンデス & カミラ・カベロ「Señorita」

3位 (2位) ビリー・アイリッシュ「Bad Guy」

4位 (14位) テイラー・スウィフト「You Need To Calm Down」

5位 (4位) リル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」

6位 (5位) リル・テッカ「Ran$om」

7位 (7位) クリス・ブラウン feat. ドレイク「No Guidance」

8位 (6位) カリード「Talk

9位 (8位) エド・シーラン & ジャスティン・ビーバー「I Don't Care」 

10位 (19位) テイラー・スウィフト「Lover」

なおテイラー・スウィフトは、アルバム『Lover』から全18曲を100位以内に送り込んでいます。

 

この中から次にどの曲をシングル化するかも注目です。

『NARALIEN』配信からみえてくるENDRECHERIのこだわり、もしくはせめてもの抵抗

堂本剛さんによるプロジェクト、ENDRECHERIのファンクネスを極める姿勢は好事家を中心に支持を集めていますが、一方で接触手段がレンタルのみとなる上に購入手段も少ないことは以前記載しました。

接触手段はレンタルに限られるのですが、先週土曜に解禁されながらも自分の住む地域では酷い状況です。青森県内のTSUTAYAでは五所川原店に通常盤が1枚あるのみ、さらに旗艦店と銘打ったTSUTAYA MORIOKAでは全種類置いていません。他方GEOでは青森柳川店が通常盤の在庫を確保しているのですが(在庫の有無は両チェーンのアプリより確認可能)、この状況は以前書いた森口博子GUNDAM SONG COVERS』と酷似していますね。

GEO青森柳川店が突出している一方で、高い音楽性やチャートで上位を獲得した実績などを追わず過去の(およびそこから想定される)データばかりを重視するかのような店舗やチェーンの姿勢は問われるべきでしょう。

 

さて『NARALIEN』については、配信したほうが好いかをENDRECHERIのファンの方に呼びかけたところ、"レコチョクでは配信されているけれど物足りない"的な解答をいただきました。たしかにジャニーズの作品群は、レコチョクではダウンロード可能となっています。

実はここでも、ジャニーズ事務所が運営するレコード会社に所属する歌手の作品と外部レコード会社所属歌手のとで扱いは異なります。たとえばavex所属のV6が今夏リリースした「ある日願いが叶ったんだ」はフルバージョンで配信される一方、KAT-TUNHey! Say! JUMP、NEWS等はショートバージョンやサビのみの部分配信。価格は抑えてあるとはいえ、シングルCDレンタルの解禁日を遅らせるのと同様の不便さを強いる姿勢には疑問を覚えます。

堂本剛さんおよびKinKi Kidsジャニーズ事務所運営のレコード会社に所属しているため、ENDRECHERI『NARALIEN』においてもやはりフルバージョンでのダウンロード配信はなく、物足りないという意見が出てくるのも理解出来ます。が、面白い動きが。

アルバムから全曲ではないものの配信され、KAT-TUN等のようにショートバージョンやサビのみの部分配信もありますが、「FUNK TRON」では"FUNKと化せ皆人"および"Let's ENDRE IT UP"部分が、「Pani9 disorder man」ではサビの他に"Scream!!!!"部分が、「4 10 cake」では"Your BUTTER"および"I'm HOT CAKE"部分がそれぞれ配信されているのです。昨年までの配信は全てショートバージョンだったことから、ENDRECHERIが配信にこだわりを持っていることが伺えますし、配信に明るくないレコード会社および所属事務所の中にあって出来る範囲でやってみようという抵抗めいたものも伺えるのですがいかがでしょう。

惜しむらくは試聴が出来ないこと。強いインパクトがあるために配信したであろうこれらの部分が仮に試聴出来たならば、レコチョクでの購入を経てゆくゆくはアルバム購入や接触に至る方もいるのでは? そのプロセスを無下にしてやいないかと思ってしまいます。先述したようにレンタル店で借りられないのならば、オンラインでの販売やレンタルにつなげるべく動線を作ったほうが好く、その上でレコチョクがレコード会社とオンラインストア、そしてユーザーとのハブになるべきだと思うのですがいかがでしょう。そもそもジャニーズ事務所所属歌手の作品はデジタルに明るくないという認識が広く世間に伝わっていることを踏まえれば、ダウンロードも出来ること自体訴求しないといけないのですが。

 

ジャニーズ事務所所属歌手では今年、山下智久「CHANGE」ダウンロード販売効果により高いチャートアクションを示したことを書きました。その際、ダウンロードがCD販売を駆逐しないことも取り上げています。

ENDRECHERI側の配信へのこだわりをみるに、少なくともENDRECHERIはデジタルに明るくなってほしいと思っているのではと考えますし、ファンの多くも配信を希望しています。事務所側にはデジタルの姿勢を再考してほしいと切に願います。

ミッシー・エリオットの復活、そして客演参加したゴスペル曲とそのメッセージ

日本時間の先週火曜に開催されたMTVビデオ・ミュージック・アワードでミッシー・エリオットが自身の音楽史の集大成とも言えるパフォーマンスを披露。受賞に相応しい素晴らしさで現役感を示してくれました。

ヒットメドレーの冒頭を飾った「Throw It Back」はこのタイミングでリリースされた最新EP『Iconology』収録曲。現役感というより、完全なるカムバックですね。

フルアルバムにも期待がかかります。

 

そのミッシー・エリオットが最近、客演として参加した作品が同じく先月リリースされています。それがゴスペル歌手のキエラ・シアードによる「Don't Judge Me」。キエラはかつてキエラ・”キキ”・シェアードとして日本ではラジオを中心に親しまれた歌手(ですがそのプロモートの際、ゴスペルを前面に打ち出されていませんでした)。ゴスペルにも柔軟に参加するミッシーの振り幅の広さ、そしてキエラの姿勢も見事ですね。

ちなみにミッシー・エリオットは2003年にもゴスペル界への客演参加を果たしているのですが、それがカレン・クラーク・シアード(シェアード)の「Go Ahead」(アルバム『The Heavens Are Telling』収録→Apple Music)。名前でも解るように、ミッシーはシアード母娘との共演を果たしたことになります。

 

「Don't Judge Me」の曲調から、昨年日本でヒットしたジャネット・ジャクソン feat. ダディー・ヤンキー「Made For Now」をふと思い出したのですが、この2曲のプロデュースともハーモニー・サミュエルズが関わっています。

ハーモニー・サミュエルズは主にR&B畑のプロデューサーで、アリアナ・グランデ feat. マック・ミラー「The Way」等でお馴染み。

その彼がゴスペルというのには驚きましたが、聖俗共に歌うファンテイジアを手掛けたり、ミシェル・ウィリアムズによるデスチャ擬似再結成曲「Say Yes」もハーモニーによるもの。彼もまた、聖俗を柔軟に歩んでいく方なのです。

 

さて、キエラ・シアード「Don't Judge Me」はミュージックビデオも公開。こちらにミッシーは不参加ですが、非常に興味深い作品となっています。

冒頭に登場するスマートフォンの映像は、キエラのパフォーマンス中にウィッグが外れた瞬間のものではないでしょうか。キエラはその映像を提示することで、失敗は誰にでもあるから決して非難するな(”Don't Judge Me”)、唯一裁ける存在は神様だから…というメッセージを込めているかのようです。これを観て考えたのが、一度の失敗を何度も繰り返して流し完膚なきまでに叩き潰す、いや何の落ち度もなくとも自分より下(の集団)に属するというだけで叩くことをよしとする…ここ数ヶ月で急速に息苦しくなった社会。それに対しこの曲が一石を投じるのではないかと思うのは自分だけでしょうか。裁くのはその専門の者に委ね、過ちを犯した当事者が更生することを願い、社会を好くするためにどうするかを考える…これらに徹するほうが遥かに素晴らしいことだと思うのです。

 

キエラ・シアードは軽やかに、優しく、でもしっかりと”Don't Judge Me”という思いを謳います。日本でゴスペルの概念自体なかなか伝わりにくいかもと思いつつ、ポジティブな空気を醸成する一助にこの曲がなってほしいと強く願います。