イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ソングスチャートにおけるオリジナルとリミックス、客演の有無…日本はアメリカに合わせて合算したほうがよいのではないか

日本とアメリカ、双方のソングスチャートの動向を追いかけていると、アメリカにおける”仕掛け”が重要な意味を成していることが解ります。とりわけ客演参加等のリミックスやミュージックビデオの追加投入は曲にさらなる魅力を与えるのみならず、それらがオリジナルバージョンに合算されるためチャートを上昇させる点でも有効な戦略なのです。

この仕掛けが功を奏し首位を奪取した例はいくつもあり、最近ではリル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」の20週目の首位を阻止したビリー・アイリッシュ「Bad Guy」が話題に。その他、現在トップの座に君臨するリゾ「Truth Hurts」はダベイビーを迎えたリミックス等が初めて加算された週に1位に初めて1位を獲得しました。

「Bad Guy」の場合、厳密にはリミックス投入の後に縦型ミュージックビデオを公開したタイミングで首位を奪取したのですが、ジャスティン・ビーバーの参加が大きなトピックとなったのは事実。日本でもラジオでよく流れていましたが、その日本ではビリー単独のオリジナルバージョンとジャスティン参加版とで集計が分かれています。日本では客演参加等のリミックスは合算されない…ここに日米のチャートの違いが表れています。 

「Bad Guy」ジャスティン・ビーバー参加版の最高位は7月29日付の59位でありオリジナルバージョンを上回ることはありませんでしたが、同日付のオリジナルバージョンは46位。仮に合算していたならばトップ20に入る可能性もあったと考えられるだけに、至極勿体ないと思うのです。

 

合算されない例でいえば、BTSがホールジーをフィーチャーした「Boy With Luv」が日本語版制作においてホールジー抜き(客演なし)バージョンとなり、オリジナルバージョンと別集計となる事態も発生しています。 日本語版が初登場した7月15日付で仮に合算されていたならば「Boy With Luv」がトップ10入りしたはずです。

 

リミックスや客演参加の有無を合算するかどうか、以前ビルボードジャパンにその方針を問い合わせた結果は弊ブログにて掲載しています。

『基本的に、同一歌手による同じタイトルの複数の曲は最終的には名寄せの上でランクインさせます(リマスター前後、等)。 ただ、客演やリミックス等オリジナルにない要素が追加されていると判断すれば分けます』『言語違いの複数タイトルは原則合算します』というのがビルボードジャパンのチャートポリシー(『』内は上記ブログエントリーより)。ですのでホールジーも日本語が出来たなら「Boy With Luv」日本語版が加算されることになったわけです。この”客演やリミックス等はオリジナルにない要素が追加するため分け”るという説明に当時は納得出来たのですが、しかし最近の追加投入等の仕掛け(とチャートでの結実)を踏まえるに、日本でもアメリカに倣って合算してもいいのでは?という思いに駆られています。

 

逆に、ビルボードジャパンのチャートでは下記の作品が合算されているのですが、あらためて考えると合算が成り立つのかと思い至る曲がいくつか浮かんできました。

たとえば星野源「アイデア」のミュージックビデオでは、大サビの弾き語りシーンで元の音源と歌い方やブランクの時間が異なります。

ビルボードジャパンソングスチャートを構成する指標のひとつである動画再生(YouTubeおよびGYAO!)においては、ミュージックビデオに国際標準コードのISRCが付番された曲がカウント対象となるのみならず、権利者の許諾を受けて音源が使用されたユーザー生成コンテンツ(UGC)も対象になります。「アイデア」においてはISRCが付番されたことで、ミュージックビデオが元の音源と多少異なれど合算対象になったことが解ります。

ではリバイバルヒットとなった荻野目洋子「ダンシング・ヒーロー (Eat You Up)」はどうでしょう。こちらはUGCであるバブリーダンスの動画が大きく寄与し、動画再生指標で首位を獲得、総合でも最高2位を記録しています。 

しかしこの動画で用いられるバージョンは、イントロ前や1番サビ後の間奏に別曲が挿入され、更にはBPMがオリジナルバージョンより速くなっており、ここまでくるとリミックスと言われてもおかしくないのではないでしょうか。

これら例示した曲について、動画におけるオリジナルとは異なる音源は動画をより魅せるための工夫でありオリジナルバージョンのISRCが付番されているため問題ない、あくまでビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標の基準を満たしているのだから元の音源と合算してもよいと言われればそれまでです(なおISRCUGCについてはダイナソーJr.をはじめ複数の楽曲が動画再生指標を稼ぎチャートを急伸した理由…ほぼ判明しました(2月10日付)を、動画再生指標の基準については【Billboard JAPAN Chart】よくある質問 | Special | Billboard JAPAN内のYouTubeについてをご参照ください)。仮にこれらを合算対象外にするのならば、ショートバージョンやより尺の短いティーザー等、フルバージョンでないものは合算すべきではないという考えも出てくるでしょう(個人的にはそうしたほうが好いのではとも思いますが、集計基準がISRCUGC等の埋め込まれたデータである以上、フルバージョンとそれ以外を分けるのは非現実的でしょう)。

ただ、合算されるものが純粋にリマスターと言えない、オリジナルにない要素が追加されている場合でも合算されている状況が発生しています。

先の「ダンシング・ヒーロー (Eat You Up)」のCHART insightページに貼付されているミュージックビデオは『ディア・ポップシンガー』(2014)収録の新録バージョン。音をブラッシュアップし歌い直しを実施しています。原曲と大差ないためリマスターに近いとして合算していると思われますし、動画の詳細欄における登録内容はオリジナルバージョンとなっています(これはこれで疑問が残ります)。しかし最後のサビ直前、オリジナルバージョンにはないフェイクの”Oh”が登場、そこからサビに入る際に元のメロディを少し変更しているのです。

上記ミュージックビデオはショートバージョンゆえに”Oh”の登場部分前に尺が終了しますが、これはオリジナルにはない要素であり、別集計になるのではないか…そう思うと、「ダンシング・ヒーロー (Eat You Up)」のオリジナルバージョンと、バブリーダンスバージョンおよび2014年版とは音の上で全て別物であり、『同一歌手による同じタイトルの複数の曲は最終的には名寄せの上でランクインさせます(リマスター前後、等)』という説明における”リマスター”とは比較的大きく異なるリミックス(もしくはマッシュアップ)的なものや再レコーディングバージョンであるため、名寄せするのは無理があると思うのです。

 

ビルボードジャパン側が最終的に合算していることには賛同しますが、ならばオリジナルバージョンもリミックスや客演バージョンもアメリカに倣って合算すべきではないかというのが今回の提案です。実際、そのほうが計算上楽ではないかというのもありますが、主な理由は3つ。1つ目は日本において、チャート上で合算されないことでリミックスや客演という文化が育ちにくいため。2つ目はアメリカで通用する洋楽やK-Popの戦略が日本のチャート上では成立せず楽曲が成功を収めにくくなり、最終的に日本を主要な音楽市場とみなさなくなる可能性があるため。そして3つ目は、日本の音楽業界で"仕掛け"という戦略や気概が生まれにくいため。

上記ページで【Chart insight biz】という法人向けサービスが紹介されていますが、このサービスでは大半のデータが開示されているものと思われます(リンク先にはCHART insightとの比較も掲載)。レコード会社や芸能事務所はこのサービスでの情報を元に、次のリリース戦略を練っていることでしょう。ただその際、アメリカで有効な仕掛けを日本で施せないことにジレンマを感じているのではないでしょうか。

 

ビルボードジャパンには次のチャートポリシー変更の際、この合算する/しないについての再考、議論を求めたいと思います。自分は合算に強く賛同します。

ジャニーズ事務所運営レコード会社発のシングルCD、レンタルタイミングを元に戻したのは嵐サブスク解禁の前兆だったのか

先週水曜に突如、ごく一部ながらサブスクリプションサービスで解禁された嵐の楽曲が好調に推移しています。

解禁日の翌日、Spotifyデイリーチャートでは5曲全てが前日よりアップ。この好調っぷりを踏まえて全曲解禁に至るか…それはわかりません。あくまでCDや映像盤購入促進を優先するためのサブスク解禁であり、ゆえに5曲にとどめているというのが自分の見方です。

さて、今回の動きはあまりに突然のことだったとはいえ、よくよく考えたらその前兆があったのではと。実はジャニーズ事務所が運営するレコード会社からリリースされるシングルCDのレンタルタイミングが元に戻っていたのです。

Big Shot!!/ジャニーズWEST レンタルCD - TSUTAYA 店舗情報 - レンタル・販売 在庫検索

ジャニーズWESTの所属レコード会社はJ Storm内のJohnny's Entertainment Record。5月22日にリリースされたHey! Say! JUMP「Lucky-Unlucky」以降しばらく、ジャニーズ事務所が運営するレコード会社発のシングルCDはレンタル解禁日が発売の17日後に設定されていたのです。

ジャニーズWEST「Big Shot!!」の前にも、嵐「BRAVE」が発売同日にレンタル解禁していたため、実際は「BRAVE」のタイミングでCDの展開方法を基に戻したことになります(ちなみに自分は、嵐の同日解禁を勝手ながら特例だと捉えていたため、「BRAVE」のレンタルタイミングについてスルーしていました)。「BRAVE」および「Big Shot!!」を踏まえるに、ジャニーズ事務所側はレンタルタイミングを元に戻したと言っていいでしょう。そしてこの柔軟な姿勢の変化が嵐のストリーミング解禁に至らせたのかもしれません。

今後ジャニーズ事務所がどのような策を講じるか、嵐のその他楽曲のサブスク解禁なるかも含め、注目しましょう。

ビルボードジャパンアルバムチャートにおけるデジタルの考え方について、最新チャートから推測してみる

今日も最新のビルボードジャパンチャートについて取り上げます。

10月14日付ビルボードジャパンアルバムチャートはMrs. GREEN APPLE『Attitude』が初登場で首位を獲得しました。

が、チャートを構成する3指標のうち、アルバムCDセールスおよびルックアップ(パソコン等に取り込んだ際、インターネットデータベースへアクセスした回数)においては2位のGLAY『NO DEMOCRACY』に敗れているのです。

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しかし、ダウンロードにおいて『Attitude』が『NO DEMOCRACY』に勝利し、総合でも逆転する形となりました。

『Attitude』のCDセールスは26854枚(同指標3位)、ダウンロードは5213DL(同1位)。『NO DEMOCRACY』のCDセールスは40098枚(同1位)。また、売上は不明ながら『NO DEMOCRACY』のダウンロード指標は4位となっています(数字および順位は上記記事より)。『Attitude』が『NO DEMOCRACY』にルックアップで敗れ、またCDセールスでは13244枚の差がつけられているにもかかわらず、ダウンロードで逆転した理由は何でしょう。『NO DEMOCRACY』のダウンロード数が仮に1000枚だとして、ダウンロード差4000枚でCDとルックアップを逆転出来るのか?と当初は不思議に思っていました。

そこで『Attitude』のチャート構成比をチェックすると、CDとダウンロードのウェイトの差が判明するのです。

 

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チャート構成比に占める比率はCD:ダウンロード=6(未満):4なのに対し、売上数では『Attitude』の比率がCD:ダウンロード=5(以上):1。ここから、売上1枚/DLあたりのポイントはダウンロードのほうが大きいことが解ります。

 

ではなぜ、ビルボードジャパンではダウンロードのウェイトを上げているのでしょう。ビルボードジャパンではアルバムCDセールスにおいて、シングルCDとは異なり複数買いを考慮した係数(売上枚数が極端に高い場合、作品毎に調整するために用いる数値)を用いていない模様です(係数については【Billboard JAPAN Chart】よくある質問 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)。しかし、アルバムでも複数種販売が一般化し、シングルほどではないにせよユニークユーザー(実際の購入者)数が売上枚数と乖離することは珍しくありません。他方ダウンロードは基本1種類であり、ダウンロードサイト毎に買うという熱烈なファンの方がいらっしゃると仮定しても、売上枚数とユニークユーザー数の乖離はほぼないものと思われます。この実情を踏まえて、ウェイトの差を設けたのではないかと結論付けたのですが、いかがでしょう。

 

さて、ビルボードジャパンのアルバムチャートでは米ビルボードにはないルックアップ指標が導入されていますが、一方でサブスクリプションサービスでの再生回数に基づくストリーミング指標は用いられていません。米ビルボードソングスチャートおよびアルバムチャートで昨夏から導入された、ストリーミングの算出方法は下記に。

ビルボードジャパンがアルバムチャートにルックアップを用いるのは日本特有のレンタル動向をチェックするためですが(【Billboard JAPAN Chart】よくある質問 | Special | Billboard JAPAN参照)、今や接触手段においてはレンタルのみならずサブスクリプションサービスも台頭。特にここ最近のストリーミングソングスチャートにおける再生回数急増はそのことを如実に示しています(ストリーミングを制するものがチャートを制す? 日本的な売れ方は真のヒットと言えるか?…10月14日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック(10月11日付)参照)。これを踏まえるに、もしかしたら次のチャートポリシー改正でストリーミング指標が導入され、アルバムチャートを構成する1要素になるかもしれません。ちなみに、もしも現段階でストリーミング指標が構成要素の1つであったならば、10月14日付ビルボードジャパンストリーミングソングスチャートで100位以内に9曲も送り込んでいるMrs. GREEN APPLEGLAY(100位以内のエントリーはゼロ)との差を広げていたことは間違いないでしょう。

ストリーミングを制するものがチャートを制す? 日本的な売れ方は真のヒットと言えるか?…10月14日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

通常は木曜に紹介する、水曜に発表された最新10月14日付ビルボードジャパンソングスチャート。昨日はサブスクリプションサービス解禁案件を優先して取り上げた関係で、今日あらためてソングスチャートの注目点を紹介します。

 

・坂道グループとAKBグループの差はシングルCDセールス加算初週に表れる

今週ソングスチャートを制したのは、日向坂46「こんなに好きになっちゃっていいの?」でした。

日向坂46に限らず、坂道グループはシングルCDセールス指標が強いものの他指標もきちんと稼いでいるのが特徴。

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では、2週前に首位を獲得したAKB48サステナブル」はどうでしょう。2週前のCHART insightをみると。

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サステナブル」は9割以上をシングルCDセールスで占めたことでCDセールスが急降下した翌週は他指標が補填出来ずに39位に急落。そして首位獲得からわずか2週後の今週、100位圏外(300位以内)へ急落してしまいました。

こちらが今週。

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シングルCDセールス加算以降の100位以内在籍週数は「センチメンタルトレイン」(→CHART insight)、「NO WAY MAN」(→ CHART insight)より1週、「ジワるDAYS」(→CHART insight)より2週短く、あまりにも短期的と言わざるを得ません。これが坂道グループとAKBの如実な差となっていますし、AKB48の人気に陰りが…と言われてもおかしくないでしょう。

ただ坂道グループで今年デビューした日向坂46についても気になる点が。シングルCDセールス加算初週における接触指標群が芳しくありません。デビュー曲の「キュン」、セカンドシングルの「ドレミソラシド」と比べて落ち込みが目立ちます。ストリーミングは11→24→41位、ラジオエアプレイは3→7→34位、ルックアップは1→1→2位、そして動画再生は30位→100位圏外(300位以内)→100位圏外(300位以内)といずれも低下。次週の動向次第では坂道グループも近いうちにAKB的方向にシフトするのでは? そう考えるのは早計でしょうか。

 

・”J-Pop的K-Pop”は支持されないことが今回も証明される

前週ソングスチャートを制したIZ*ONE「Vampire」が今週は17位。こちらも首位獲得週のシングルCDセールス指標がチャート構成比の9割を超えており、シングルCDが失速したことと他指標が伴わないことでの反動による急落。AKB48等日本のアイドルグループと似たチャートアクションとなってしまいました。

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他方、前週初登場したTWICE「Feel Special」。

ミニアルバムの表題曲で前週4位に初登場。日本でシングルCD未発売ゆえシングルCDセールスおよびルックアップ未加算の状況ながら前週4位に初登場し、今週はトップ10落ちするも11位。IZ*ONE「Vampire」を逆転しています。

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シングルCD関連指標がない中で「Feel Special」を支えたのがストリーミングおよび動画再生の2指標。これはK-Popアクトが韓国をはじめ世界へ向けてリリースした作品の特徴であり、IZ*ONEの「Violeta」についても同様の動きが見て取れます。

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K-Popアクトの、韓国向け作品と日本向けのとでチャートアクションが異なるのは以前ブログエントリーで示しています。

記載から半年が経過しましたが、今回も同様の動きに。コアなファンはCDを購入する一方でライト層や、K-Popならびに韓国文化に興味を抱く方は所有まで至らずも接触する傾向が強いものと考えます。接触指標群はどちらかといえば若年層が好んで利用する傾向があるものと思われますが、彼らにとっては韓国向け作品は好んでも日本独自の、いわばJ-Pop的アプローチの楽曲群にはそこまで興味を示さないことが証明されたと言えるかもしれません。これは、楽曲が世界仕様かドメスティックかの差ではないかと思うのです。

 

・ストリーミングのヒットはチャートを制すことがより鮮明に

ビルボードジャパンが水曜に発信した記事に、ソングスチャートを構成する指標のひとつであるストリーミングについての興味深い指摘が。

また当週は、トップ10のボーダーラインが初めて200万回再生を超えた。同ボーダーラインが初めて50万回を超えたタイミングが2018年2月26日付チャート、100万回を超えたタイミングが2019年3月4日付チャートであることを踏まえると、この7か月で急速にトップ10入りが困難になったことが窺える。

ストリーミングのカウント対象となるサブスクリプションサービス(の再生回数)が急激に伸びていることを示しており、利用者の増大が考えられます。同指標でトップ10入りすることが一気に困難になったことは言い換えれば、同指標を制するものがチャートを制しブレイクする…Official髭男dismやあいみょんさんの例を見れば明らかでしょう。

そんな中で、ストリーミングを急激に伸ばしているのが前週紹介したNovelbright「Walking with you」。 

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TikTokSNSサブスクリプションサービス…と聴かれ方が伝播し、遂にはテレビが拡散という流れ。テレビメディアの影響力の大きさを感じずにはいられませんが、そこに至るまでの流れはまさに今の時代のヒットの法則ではないでしょうか。次週、そのメディア効果が薄れた時が勝負の分かれ目と言えそうです。

またNovelbrightと同様にストリーミングで初のトップ20入りを果たしたのがちゃんみな「Never Grow Up」。

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アルバムのタイトルトラックであり自身がInterFM897で今夏番組を務めたこともあってか一旦はラジオで火が付きますが、こちらも現在に至るヒットの原動力はTikTokで多くの方が用いたためとみられます。次週以降の動きに注目しましょう。

 

今週のソングスチャートトップ10はこちら。

 

最後に、10月9日付のSpotifyの日本のデイリーチャートが更新されましたのでそちらを紹介。ストリーミングで大ヒット中のOfficial髭男dismがメジャーファーストアルバム『Traveler』をリリースし、同作をサブスクリプションサービスで解禁しました。

解禁初日の動向は下記に。

1位 (1位) Pretender

2位 (2位) 運命

3位 (4位) イエスタデイ

4位 (3位) ノーダウト (『Traveler』未収録)

8位 (8位) Stand By You

10位 (10位) 115万キロのフィルム (『Traveler』未収録)

49位 (53位) バッドフォーミー

59位 (65位) Amazing

79位 (初登場) Rowan

84位 (115位) FIRE GROUND

96位 (77位) ESCAPADE (『Traveler』未収録)

106位 (101位) 異端なスター (『Traveler』未収録)

108位 (100位) SWEET TWEET (『Traveler』未収録)

115位 (初登場) 最後の恋煩い

126位 (初登場) ラストソング

136位 (初登場) 旅は道連れ

146位 (初登場) Travelers

173位 (173位) Tell Me Baby (『Traveler』未収録)

200位以内に入った18曲中、アルバム『Traveler』収録は12曲。「ビンテージ」、および「Pretender」のイントロダクションとなる「052519」はランクインしていませんが、同日サブスクリプションサービスを解禁したスピッツが8曲(うち今週リリースのアルバム『見っけ』からは4曲)ランクインしていたことを踏まえれば、堂々たる結果だと言えます。ただ、アメリカでは今週のチャートで結果を残したダベイビーやポスト・マローン等、ストリーミングがトップ100以内に大挙エントリーすることが多く、日本におけるストリーミングの浸透や影響度はまだまだかもしれません。

スピッツ、星野源、嵐…サブスクリプションサービスでの”限定”解禁について見解を述べるならば

毎週木曜は、前日に発表されたビルボードジャパン各種チャートをで紹介しているのですが、昨日はソングスチャートを構成する指標のひとつ、ストリーミングに関する大きな出来事がいくつかあり、そちらを優先して紹介。ストリーミング指標はサブスクリプションサービスの再生回数に基づくもので、そのサブスクリプションサービスと”限定”との絡みについて述べていきます。

 

スピッツサブスクリプションサービス解禁も実は1曲のみ解禁されていた

昨日リリースされたアルバム『見っけ』はCDセールスにおいて、渋谷すばる『二歳』およびOfficial髭男dism『Traveler』との激戦が始まっています。そして、スピッツはこのタイミングで過去曲を全てサブスクリプションにて解禁しています。

しかしながら、今回の一挙解禁に先駆けて、1曲だけ先行で解禁された曲が。それがドラマ『なつぞら』(NHK総合)テーマソングの「優しいあの子」。

サブスクリプションサービス解禁はシングルCDリリースの後であり、ストリーミング指標が初登場したタイミングでこの解禁について触れています。

最新10月14日付ビルボードジャパンソングスチャートでは40位と比較的好調に推移していますが、とはいえストリーミング指標の順位は高くありません。下記CHART insightにおいて青の折れ線グラフがストリーミング指標を示します。

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以前のエントリーで指摘したように、”CDリリース後時間を置いて解禁したこと”と”解禁の周知徹底不足”に問題があったものと思われます。サブスクリプションサービスで全曲解禁するのであれば『見っけ』リリース前、「優しいあの子」のリリースタイミングで行うほうが、個別の楽曲のチャートアクションも好くなり、アルバムへの期待感がより高まったのではないでしょうか。

 

星野源 feat. スーパーオーガニズム「Same Thing」、Apple Musicのみで先行解禁した結果は

先週金曜、突如リリースがアナウンスされた星野源さんの新たなEP『Same Thing』。10月14日のデジタルリリースに先駆け、発表当日にスーパーオーガニズムを迎えた表題曲「Same Thing」がApple Music限定で解禁されました。リリースについてはEPの発表日にブログに記載しています。

その「Same Thing」、10月14日付ビルボードジャパンソングスチャートにランクインを果たしています。

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ストリーミングサービスをApple Music限定で公開したこと、おそらくは世界標準となる金曜リリースに合わせたことが順位に影響したと言えます。月曜集計開始の日本のチャートでは金曜解禁は不利であるゆえ、それでもこの順位を獲得したことは立派かもしれません。また、全曲をサブスクリプションサービスにて解禁した際に日本人で初めてBeats 1 Radioを担当し、Apple Musicとの密な関係性があるゆえ同サービスに先行解禁を許可したと考えられます。しかし、たとえば自身の「アイデア」がロケットスタートを切り2週連続でチャートを制したことを踏まえれば、その順位は少し低すぎる気がしなくもありません。尤も「アイデア」のリリース時はサブスクリプションサービスが未解禁の状態でしたが。

 

・嵐、サブスクリプションサービス解禁&公式YouTubeアカウント開設も現状デジタル化は5曲のみ

昨晩、突如飛び込んできたのがこのニュース。

とはいえサブスクリプションサービス解禁、およびYouTubeチャンネルで公開されたミュージックビデオは「A・RA・SHI」「Love so sweet」「Happiness」「truth」「Monster」の5曲のみ。これではスピッツが「優しいあの子」を公開したときとさほど変わらない気がします。それでも大きな話題になるのは、ジャニーズ事務所がこれまでデジタルに明るくなかったことの反動ゆえでしょう。

それでもやはり気になるのは5曲のみの解禁。ラグビーがワールドカップで盛り上がっているにも関わらず、日本テレビ系列の中継テーマソングである「BRAVE」が漏れていることが不可解でした。しかし、嵐ファンらしき方の”興味持った人がミュージックビデオ集やベストアルバムを購入するならばプロモーションとして良いやり方”的なツイートを見て。

超が付くほど限定的なサブスクリプション解禁はCDや映像盤等フィジカルセールスのための施策であり、歌手やレコード会社側にとってはあくまでフィジカルが最優先なのかもしれません。渇望の度合いを高めるそのやり方は戦略としては正しいかもしれませんが、果たしてそれで満足出来る方がどれだけいるのかが気になります。

 

 

サブスクリプションサービスの限定解禁についてはback numberが以前行っていました。LINE MUSICで限定解禁した後、サブスクリプションサービス全体で解禁するもベストアルバム『アンコール』までの旧譜のみに限定しています。

サブスクリプションサービス未解禁のアルバム『MAGIC』に収録されたドラマ主題歌「HAPPY BIRTHDAY」を、同じくドラマ主題歌等条件の似たあいみょん「今夜このまま」と比べてみると、サブスクリプションサービス解禁/未解禁はミュージックビデオフルバージョン解禁/未解禁共々、チャートアクションに大きく影響していることを以前提示しました。

これらを踏まえるに、サブスクリプションサービスを一部に”限定”して解禁することも、一部楽曲に”限定”して解禁することも大きな意味を成さないという結論に至っています。back numberの例を踏まえれば、何が最善か解るものと考えています。

 

 

スピッツが1曲”限定”で先行解禁した曲がチャートアクションの下支えになったとは断言出来ないこと、星野源さんのApple Music”限定”先行解禁曲がチャート上で勢いがあるとは言い難いこと、そして嵐の”限定”解禁が好くない方向に考えられること。邪推と言われればそれまでですが、”限定”とした理由がおそらくフィジカルを売るため、もしくは一つのサブスクリプションサービスと密な関係性を築くためというのは分からなくはありません。しかし、厳しい物言いを敢えて用いるならばそれらは歌手やレコード会社側の都合を優先し過ぎたものではないでしょうか。曲数限定ではなく全曲を、サブスクリプションサービスを区別することなく総じて解禁させることが大前提であり、そして遥かにユーザーフレンドリーです。

2019年の大ブレイク筆頭株、ダベイビーが米ソングスチャートで今年最多ランクインを果たす

日本時間で昨日発表された米ビルボードソングスチャートではトップ10入りを逃したものの、ダベイビー(DaBaby)の勢いが凄まじいことになっています。

10月12日付アルバムチャートで初登場首位を獲得したのがダベイビー『Kirk』。自身の名字を冠した作品が自身初となる首位に。前作『Baby On Baby』は今年3月1日のリリースゆえ、わずか半年での新作リリース自体がダベイビーの勢いを物語っています。そして前作収録曲で、悪名高きヒップホップ界の大御所(にして現在収監中)であるシュグ・ナイトの名を借りた「Suge」が米ソングスチャート7位を記録したことで、今回のアルバムへの期待やダベイビーの認知度がさらに高まったと言っていいでしょう。

先行シングル「Intro」はアルバムリリースの8日前となる9月19日にリリース。直前のリリースは近いうちにアルバムが出るのかもという興味を抱かせると共に(ここ数年はリリースの直前にSNSで告知する傾向にありますが、先行シングルがアルバムリリースを匂わせる効果をより高めるものと思われます)、アルバムに先立ってシングルを切ることで熱の上がりにくいラジオエアプレイを少しでも上げておくという作戦のように見受けられます。これはポスト・マローンが、大ヒット中のアルバム『Hollywood's Bleeding』(2019)のちょうど1週間前に「Circles」をシングルリリースした手法と似ており、事実「Circles」はソングスチャートトップ10入りを継続中。「Intro」はポスト・マローンのように大ヒットとまでは至っていませんが、前週17位に初登場を果たし今週は13位にアップ、アルバムのお膳立ては十分だったと言えます。

アルバム『Kirk』は初登場で首位を獲得。前作『Baby On Baby』が最高7位だったため、わずか2作目且つメジャーデビューした年にアメリカを制覇したわけです。そして今作の『週間ユニットは145,000で、そのうちアルバムの純粋な売上枚数はわずか8,000枚、ストリーミングによるユニット数が136,000と、全体の9割以上を占め』(上記ビルボードジャパンの記事より)、”所有<接触”の差が明確になっています。

その結果。

今作収録の全13曲(「Intro」含む)が最新10月12日付米ソングスチャート100位以内に登場しました。

No. 13, "Intro" (up from No. 17, new peak)

No. 19, "Bop"

No. 20, "Suge" (down from No. 18; hit No. 7 in July)

No. 21, "Vibez" No. 26, "Baby," with Lil Baby (down from No. 21 peak)

No. 28, "Toes," feat. Lil Baby & Moneybagg Yo

No. 43, "iPhone," with Nicki Minaj

No. 44, "Cash Shit," Megan Thee Stallion feat. DaBaby (down from No. 41; hit No. 36 in September)

No. 47, "Off The Rip"

No. 49, "Pop Star," feat. Kevin Gates

No. 51, "Raw Shit," feat. Migos

No. 52, "Enemies," Post Malone feat. DaBaby (down from No. 36; hit No. 16 in September)

No. 55, "Gospel," feat. Chance The Rapper, Gucci Mane & YK Osiris

No. 63, "Really," feat. Stunna 4 Vegas

No. 69, "XXL"

No. 73, "Prolly Heard"

No. 79, "Baby Sitter," feat. Offset (down from No. 71 peak)

No. 89, "There He Go"

(上記記事より引用。前作『Baby On Baby』収録曲および客演参加曲は斜体で記載。)

しかもこの大量エントリーにより、ダベイビーは2019年ソングスチャートに計20曲をエントリーさせ、ポスト・マローンと並んで最多エントリー曲数を達成しました。しかも、ノンクレジットながら現在ソングスチャートトップ10入りしているリゾ「Truth Hurts」やリル・ナズ・X「Panini」リミックスに参加しており、実際は22曲と言えるかもしれません(アメリカではリミックス版はオリジナルバージョンに加算されますが、より再生やOAされるほうが優先されるため、ダベイビー参加版はノンクレジットとなっています)。リミックス版の参加により「Truth Hurts」は首位に、「Panini」はトップ10入りを達成。ダベイビーは両曲のチャートを押し上げたのです。

 

ダベイビーの大ブレイクの要因は何と言ってもストリーミングであり、その中でもサブスクリプションサービスは大きな役割を果たしています。デイリーチャートが発表されるSpotifyではアルバムリリース日に上位を占拠していたのが印象的であり、今後はベテラン新鋭に限らず、特にストリーミングに強いジャンル(ヒップホップ中心)はSpotifyサブスクリプションサービスの動向を追いかけていくと面白いなと、今回の『Kirk』の動向から感じた次第です。

 

日本においてはまだまだこの動きが出ていません(し、ビルボードジャパンアルバムチャートにはストリーミングが反映されません)が、Official髭男dismが今日リリースするメジャーファーストアルバム『Traveler』が各サブスクリプションサービスでロケットスタートを切るかどうか、こちらにも注目しようと思います。

(追記あり) リゾ「Truth Hurts」6連覇、そして3年前の曲が次のシングルに…10月12日付米ソングスチャートをチェック

ビルボードソングスチャート速報。現地時間の10月7日月曜に発表された、10月12日付最新ソングスチャート。リゾ「Truth Hurts」が6連覇を達成、また「Good As Hell」が初のトップ40入りを果たしました。

女性ラッパーの最長首位記録であるイギー・アゼリア feat. チャーリーXCX「Fancy」(2014)まであと1週に迫ったリゾ「Truth Hurts」。ダウンロードは前週比19%アップの30000、ラジオエアプレイは同2%アップの1億2200万で2指標を制覇。ストリーミングは同1%アップの2780万で1ランクアップの6位に。この勢いもあって、次のシングル「Good As Hell」も43→28位に上昇、初のトップ40入りを果たしました。

Truth Hurts」は2017年にリリースされ、TikTokでチャレンジモノがヒットしたり今年ネットフリックスの映画に用いられたことでブレイク、アルバム『Cuz I Love You』(2019)に追加収録された経緯がありますが、こちらは2016年春にリリースされたEP『Coconut Oil』に収録され(ゆえにミュージックビデオも3年前に制作)、一方で『Cuz I Love You』には未収録。今年のMTVビデオミュージックアワードで「Truth Hurts」と共に披露されたのがこの「Good As Hell」でした。ダウンロードは前週比16%アップの12000で同指標8位、ストリーミングは同10%アップの1140万で同50位に再浮上、そしてラジオエアプレイは同50%アップの2410万で同40位に初登場。レーベルが「Good As Hell」を次のラジオ向けシングルと位置付けたことで、さらなる上昇が期待されます。

 

今週4位のリル・テッカ「Ran$om」は自己最高位をキープしたのみならず、ストリーミングは4310万を獲得し、前週比6%ダウンながら同指標7週目の首位を獲得。2013年1月以降のストリーミングチャートにおいて、「Ran$om」はデビュー曲における長期政権記録で9位タイとなりました。ちなみに3位は先述の「Fancy」(13週)、2位はデザイナー「Panda」(2016 14週)、そして1位はリル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」(2019 20週)。「Old Town Road」の強さが際立ちます。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (1位) リゾ「Truth Hurts

2位 (2位) ショーン・メンデス & カミラ・カベロ「Señorita」

3位 (4位) ルイス・キャパルディ「Someone You Loved」

4位 (6位) リル・テッカ「Ran$om」

5位 (5位) クリス・ブラウン feat. ドレイク「No Guidance」

6位 (7位) ビリー・アイリッシュ「Bad Guy」

7位 (8位) ポスト・マローン「Circles」

8位 (6位) リル・ナズ・X「Panini」

9位 (9位) ポスト・マローン feat. ヤング・サグ「Goodbyes」

10位 (10位) リル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」

次週注目すべきはトラヴィス・スコット「Highest In The Room」。

Spotify米デイリーチャートでは10月4日のリリースから3日連続で首位を獲得、さらにミュージックビデオの再生回数も加算されることで次週トップ10入りが期待されます。

そして、同日発売案件ではストリーミングに強いカントリー作品も。

カントリー歌手のダン+シェイがジャスティン・ビーバーをフィーチャーした「10,000 Hours」は米Spotifyで2→2→3位と好発進。保守と言われるカントリージャンルの楽曲がストリーミングで人気を博す要因はジャスティンの参加、および3名のパートナーとの様子を映したミュージックビデオにあるでしょう。ラジオに強いカントリー曲がストリーミングで勢いをキープすれば、こちらも次週トップ10入りもあり得るでしょう。

 

(※追記 10月8日 7時34分)

そのダン+シェイ feat. ジャスティン・ビーバー「10,000 Hours」について寄稿した記事がReal Soundで公開されました。”カントリーのジャンルレス化”は、保守的なカントリーというジャンルがストリーミングでヒットするための鍵となっています。