イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

今日のビルボードジャパンソングスチャート発表前に、嵐のSpotify動向をまとめる

11月3日のYouTubeでの発表以降、嵐の動向には多くの注目が集まっています。同日にはシングルCD表題曲およびデジタル限定の新曲「Turning Up」をリリースしましたが、集計期間1日弱にもかかわらず11月11日付ビルボードジャパンソングスチャート10位にその新曲がランクインしたことについては、ビルボードジャパンソングスチャートとオリコンシングルCDおよび合算ランキングとの違いを含め、Real Soundに寄稿しています。

今日12時前後にはビルボードジャパンの最新11月18日付各種チャートが発表されますがその前に、最新チャートからストリーミング指標に導入されるSpotifyの動向を追いかけます。デイリーチャートの順位をまとめました。

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11月18日付ビルボードジャパン各種チャートの集計期間は11月4日から10日。この動向をみるとデジタル限定シングル「Turning Up」が10位以内をキープしており、ダウンロード等を踏まえればソングスチャートでの上昇は確実でしょう。基本的にはほとんどの曲が11月5日以降ダウンする傾向にありますが、11月10日付で上昇した曲が多かったのは前日の奉祝曲を披露した影響でしょう。

そういえば三浦大知さんが今年2月に「歌声の響」を披露した際もYouTubeにニュース映像としてフル配信されていました(→YouTube)。嵐においても同様の報道を採らないといけなかっただろうことを踏まえれば、嵐のデジタル解禁は前もって必要だった(ゆえに解禁した)のかもしれません。

 

今回、Spotifyの一覧表をまとめたのは理由があります。

嵐の楽曲が軒並み高水準であること(ゆえに「Turning Up」にて、嵐がJ-Popを盛り上げる責任を自負したのだと捉えています)は言わずもがなですが、その中にあって”では世間の代表曲はどれ?”となると候補がありすぎるだけに難しいと思っていました。たとえば先輩だったSMAPの場合、1枚あたりのシングルCDセールスでは嵐に敵わないでしょうが、「世界に一つだけの花」「らいおんハート」「夜空ノムコウ」とミリオンセールスを3曲輩出しており、とりわけ「世界に一つだけの花」は平成を代表する曲になったとすら言えます。それゆえに、では嵐は?という感覚を持ち合わせていました。世間とは楽曲や歌手に興味はあれど好んで購入するわけではない人たち…弊ブログで述べるところのライト層と言い換えることが可能であり、そのライト層が所有より接触を好むことを踏まえれば、サブスクリプションサービスの再生回数と世間の認知度や人気は比例すると考えていたゆえ、今回の調査に至ったわけです。

Spotifyの順位の推移をみると「Turning Up」→先行解禁の5曲→「One Love」等となっています。新曲、そして「A・RA・SHI」等先行解禁5曲が上位に来ることは予想出来ましたが、その次が「One Love」、そして「BRAVE」とほぼ同水準で「GUTS!」が入ったことになるほどと実感。今後はクリスマスに向けて「WISH」も浮上するのだろうことも、この1週間同曲が200位以内に滞在していたことから察することが出来ます。なるほど、広く世間で親しまれている楽曲はこれらの曲なのだと把握出来たのは嬉しい発見でした。

 

今回取り上げた楽曲が果たして、ビルボードジャパン最新11月18日付ソングスチャート100位以内にランクインするのか? 今日昼頃発表されるチャートについては、明日ここでも取り上げる予定です。

ルイス・キャパルディ返り咲き、マルーン5トップ10入り、そして気になる新鋭と気掛かりなアリアナ…11月16日付米ソングスチャートをチェック

ビルボードソングスチャート速報。現地時間の11月11日月曜に発表された、11月16日付最新ソングスチャート。前週初の首位に立ったセレーナ・ゴメス「Lose You To Love Me」は5位に後退、2週前に初の首位を獲得していたルイス・キャパルディ「Someone You Loved」が返り咲きました。

返り咲いたものの、実際はピークを超えているのがこの「Someone You Loved」。ラジオエアプレイは今週も首位を獲得しながら、ダウンロードは前週から1ランクアップし7位となりながらこれら2指標は共に前週とほぼ変わらぬ数値(ラジオエアプレイは1億100万、ダウンロードは13000)、ストリーミングは2ランクアップし9位に入ったものの前週比3%ダウンの2400万となっています。一方、少しずつ順位を上げているのはポスト・マローン「Circles」。ダウンロードは前週比10%アップの16000(同指標3位)、ストリーミングは同1%未満ダウンの2450万(同6位)、ラジオエアプレイは同5%アップの8360万(同4位)で、楽曲での最高位を更新。ラジオエアプレイがさらに勢いづけば、自身4曲目の首位獲得も夢ではありません。

セレーナ・ゴメス「Lose You To Love Me」は5位に後退。ラジオエアプレイこそ前週比43%アップの3460万(同指標26位)を記録しながら、ダウンロードは同60%ダウンの16000(同4位)、ストリーミングは同32%ダウンの2640万(同3位)と、デジタル2指標が大きく後退しラジオエアプレイで補完出来なかったことが首位陥落の要因となりました。急落といえば、前週アルバムチャートを制したカニエ・ウェスト初の全編ゴスペル作『Jesus Is King』から7位に送り込まれた「Follow God」は今週37位となっています。前週末ミュージックビデオが公開されたことで次週以降の上昇はなるか、注目です。

なお、前週11月9日付における『Jesus Is King』関連の記録はReal Soundに記載しました。「Follow God」は今週も、クリスチャンソングスチャート、およびゴスペルソングスチャートを制しています。

 

そのReal Soundではじめて寄稿した曲が遂にトップ10入りしており、あくまで個人的な感想を述べるならば、感慨ひとしおというところです。

「Memories」が2ランクアップし9位に登場。これでマルーン5にとって15曲目となるトップ10入りを果たしたこととなります。ダウンロードは前週比11%アップの18000(同指標2位)、ストリーミングは同1%未満アップし1660万(同19位)、ラジオエアプレイは同9%アップの5770万(同11位)を獲得し、堅調に推移しています。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (2位) ルイス・キャパルディ「Someone You Loved」

2位 (3位) ポスト・マローン「Circles」

3位 (4位) ショーン・メンデス & カミラ・カベロ「Señorita」

4位 (5位) リゾ「Truth Hurts

5位 (1位) セレーナ・ゴメス「Lose You To Love Me」

6位 (6位) リゾ「Good As Hell」

7位 (8位) クリス・ブラウン feat. ドレイク「No Guidance」

8位 (9位) リル・ナズ・X「Panini」

9位 (11位) マルーン5「Memories」

10位 (12位) ダン+シェイ & ジャスティン・ビーバー「10,000 Hours」

ダン+シェイ & ジャスティン・ビーバー「10,000 Hours」がトップ10に返り咲いたこともあり、ビリー・アイリッシュ「Bad Guy」が遂にトップ10落ち。「Bad Guy」は女性(がリードを務める)歌手の作品で今世紀最長となる30週間トップ10入り楽曲となりました。ちなみに今週水曜には新曲をリリースするのですが、この水曜リリースという動向は新たなトレンドとなるかもしれません。

次週注目はアリゾナ・ザーヴァス「Roxanne」。今週34位に初登場を果たしていますが、TikTokが人気に火を付けたことが功を奏してかストリーミングの勢いが凄まじく、前週木曜には既にアメリカのSpotifyデイリーチャートを制しています。次週のチャートのデジタル2指標の集計期間初日となる金曜からも「Roxanne」はSpotifyで首位を続けており、ダウンロードおよびラジオエアプレイの動向如何ではトップ10入りも夢ではありません。

他方気になるのは、アリアナ・グランデの勢い。前週リゾ「Good As Hell」にアリアナ・グランデ参加版が加わったことで同曲がトップ10入りしたのですが、アリアナ参加版がオリジナルバージョンを上回る人気となっていないことで、楽曲のクレジットはリゾのみに。今年のアルバム『Thank U, Next』後に放たれた新曲は好調とはいえず、さらに映画『チャーリーズ・エンジェルサウンドトラックからの先行曲でマイリー・サイラスラナ・デル・レイと共に披露した「Don't Call Me Angel」は最高13位止まり、さらにアルバムは今週の米ビルボードアルバムチャートに初登場したものの38位という状況。強い私見と前置きして書くならば、アルバム『Thank U, Next』があまりに短いスパンで世間をアッと言わせ注目を浴びた、その反動が来ているのかもしれません。次週以降の推移を見守りたいと思います。

NHK紅白歌合戦の真偽不明情報が浮き彫りにしたネットリテラシー不足問題、その対処法を考える

7年前に触れてきたことを、また取り上げないといけないか…と思ってしまいます。

この2012年の紅白歌合戦では結局、ももいろクローバーZが出場し小林幸子さんが落選。つまりは報道が正しかったと言われればそれまでですが、しかしながら実態不明な関係者発言や、出場することが”分かった”という曖昧な文言には注意が必要だと記載しています。

しかしながら今年も。

みそかの第70回NHK紅白歌合戦(後7・15)に、ジャニーズ事務所の7人組グループ「Kis―My―Ft2(キスマイフットツー)」の初出場が決まったことが8日、分かった。

(中略)

局関係者は「若い女性を中心にした人気面はもちろん、バラエティーでの経験から、さまざまな企画に対応できるという点も評価されたのでは」と語った。

キスマイ 紅白初出場へ デビュー9年目の悲願 10周年へ大きな弾み― スポニチ Sponichi Annex 芸能(11月9日付)より

一昨日朝はKis-My-Ft2についてスポーツニッポンが報じ、そして同じ頃に真偽不明なLiSAさんの初出場内定情報も独り歩きしたことで、Twitterのトレンドには2組の名前、そして”#紅白歌合戦2019”が登場。しかしスポーツニッポンの報道をみると”分かった”そして”局関係者”というお決まりのフレーズがあり、無論真偽は不明。正直、これら報道はスルーするか(後述しますが)取り締まってもいいのではないでしょうか。

ポスト・トゥルース”とは『「世論の形成において、客観的な事実よりも、感情や個人的な概念に訴えるほうが影響力がある」状況』を表す言葉(「post-truth」時代に私たちがすべきこと | 時事オピニオン | 情報・知識&オピニオン imidas - イミダスより)。熱心なファンの方々の気持ちは解れども、客観性を著しく欠いた自己の理想に基づく狂騒を踏まえるに、音楽ブロガー・ライターのレジーさんによる指摘(勝手ながら取り上げさせていただきました。問題があれば削除いたします)はまさにそうだよなと思ってしまいます。

 

個人的には、立場の異なる三者がネットリテラシーに成熟することが必須と考えます。受け手はNHK紅白歌合戦の直接の発表までは情報を鵜呑みにしないこと、伝え手はポスト・トゥルースの時代を巧みに悪用しアクセスを稼ごうとしないこと(これについては、紅白歌合戦出場者発表後に”なぜあの報道を流した?”と真意を問いただすことや、元来怪しい情報にはアクセスしないことで改善が可能と考えますが、結局は受け手の意識改善が前提かもしれません)、そして発し手であるNHK紅白歌合戦側はただ静観せず、Twitter等で真偽不明の情報が出た際には”公式発表のみが真実ですので発表をお待ちください”と強調し、真偽不明の情報とそれに踊らされる方々を抑えること…これらは必須だと考えます。仮に紅白サイドがこのような狂騒を、今年の紅白への期待度を測るために敢えて静観すると考えるならばそれは違います。大事なのは、未だに根付かないと言っても過言ではないネットリテラシーを育てることではないでしょうか。

虚偽情報を流した方は勿論、それに踊らされて虚偽情報に加担(Twitterにおけるリツイート等)した方はきちんと訂正し謝罪することは必須でしょう。メディアほどの影響力は個人には宿っていないと言われるかもしれませんが、誰かひとりでもアクセス可能なところに自分の声を乗せられる環境にあるならば一個人であれど影響力を持ったメディアであることに変わりはありません。別件のデマ拡散問題に対してつぶやいた内容をここに記載します。

外に向けて発信することには責任が宿ることを多くの方が意識しないといけません。無論、自分も常に反芻し続けます。

AI、デビュー20周年記念アルバム『感謝!!!!! - Thank you for 20 years NEW & BEST-』のゴスペル盤が本格的なのです

ここ最近、ブログでゴスペルを取り上げる機会が増えています。大きなきっかけは2つ、Official髭男dismが週間チャートを制したアルバム『Traveler』(2019)に納められた「Stand By You」のアプローチがゴスペル的だったこと、そしてカニエ・ウェストが全編初となるゴスペルアルバム『Jesus Is King』を全米1位に送り込んだこと。前者についてはラジオで【ゴスペル的J-Pop】特集を組むまでに至り、後者については主にチャートの観点から記載した内容が、Real Soundにて昨日公開されました。

そのReal Soundの記事でも触れたのが、AIさんが先週リリースしたデビュー20周年記念アルバム『感謝!!!!! - Thank you for 20 years NEW &BEST -』の、ディスク1におけるゴスペルの充実っぷりが素晴らしいですね。かつてクワイアに所属していたことのあるAIさんには、力強い援軍が参加しています。

サブスクリプションサービスでは十分なクレジットを手に入れられず、後にCDを購入して確認したところ、B・スレイド&ジェラルド・ハードンというクレジットに興奮&納得しています。

B・スレイドについては紆余曲折の半生がR&B/ヒップホップメディアのbmrに掲載。

現在はB・スレイド名でもゴスペルを歌っており、スヌープ・ドッグのゴスペル作『Bible Of Love』(2018)に参加したり、クリスマスコンピレーションに自身のトーネイ時代の「Make Me Over」とゴスペル定番曲「Total Praise」のメドレーを提供するなど、聖俗両方の世界で活動しています。

ジェラルド・ハードンはゴスペル歌手でR&B的な音使い(コンテンポラリーゴスペル)を得意とするデイトリック・ハードンの兄。AIさんの代表曲である「Story」等5曲すべてのゴスペルバージョンを手掛けているほか、AIさんがクワイア時代に歌っていたフレッド・ハモンド「No Weapon」のカバーもプロデュース。デビューから30年以上、音楽活動開始から40年近く経過するゴスペル界の大御所、フレッド・ハモンドについては以前記載したのでよろしければ。

ジェラルド・ハードンは妻のタミ・ハードンと連名でアルバム『#US』(2015)をリリースし、その妻が今回AIさんのゴスペルバージョンにクワイアメンバーとして参加。クワイアとはいえそのメンバーはタミ、ブリトニー(ブリットニー)・ヘッジウッドそしてアントニオ・カミングハム(カニンガム)の3名のみながらあれだけの分厚い声になるのですから、ゴスペル畑の方々の歌唱力が如何に凄まじいかを実感します。一方のジェラルドは弟のデイトリック・ハードン同様、ゴスペル歌手にR&B的ゴスペルを提供することに長け、たとえばデイトリックがボビー・ヴァレンティノ(現 ボビー・V)のファーストアルバム『Bobby Valentino』(2005)を彷彿とさせるオリエンタル感満載の『7 Days』(2006)をリリースした際、ジェラルドはウィリー・ハッチ「I Choose You」をサンプリングした「Count Your Blessings」を提供。『Bobby Valentino』同様にアルバム全体はティム&ボブが仕切っていますが、流麗な中に力強さを湛えたアクセント的一曲になっています。

とはいえ、AIさんのゴスペルバージョン等はむしろバンド的。ゴスペルクワイアに所属した自分にとって、バンドアレンジのいい意味でのやりすぎ感(アワードでのR&B歌手のパフォーマンスのそれに近い、と言えばわかりやすいかもしれません)が、本場のゴスペルを想起。「ハピネス」のアウトロにはそれが凝縮されていますし、「LIFE」の転調もまたあるあるであり、ゴスペル特有の高揚感が訪れるのです。

 

このように人選や音使いが本格的なゴスペルであるため、先行リリースされアルバム巻頭に据えられた「Baby You Can Cry」は一聴してゴスペルとは遠いと思われるかもしれません。しかし、共演歴もある安室奈美恵さんの「Baby Don't Cry」(2007)をサンプリングした本作は励ましソングであり、ゴスペル的な表現を用いるならば”赦し”の歌と解釈することも可能。”泣いてもいいよ”という言葉を赦しを謳うゴスペルの一側面と捉えれば、「Baby You Can Cry」は広義のゴスペルと考えてもいい…大袈裟かもしれませんがそう思うのです。

 

サンプリングやゴスペルでのリアレンジ、カバーを経てAIさんが自身のルーツであるゴスペルに回帰したことは、日本に本格的なゴスペルを定着させる大きな契機になるかもしれません。すでにライブツアーが開幕していますが、下記動画を観るとR&Bとゴスペルが高い次元で融合しており、その熱気が強く伝わってきます。

ライブを観賞したり音楽を聴いてゴスペルに触れた方々が、AIさんが今作のインタビューやライブで伝えている平和への思いを感じることを願うばかり。そしてゴスペルがより広く伝播したならば、クワイア経験のある自分にとっても嬉しいですね。

サブスクリプションサービスの新たなヒットの形…著名人のプレイリストは楽曲躍進の原動力になることが証明される

嵐がCDデビュー20周年に当たる11月3日に全シングル曲および新曲をデジタルで解禁したことのインパクトの大きさは、解禁からわずか5時間でデジタル限定シングル「Turning Up」がビルボードジャパンソングスチャートトップ10入りを果たしたことから明らかです。そのことについて、Real Soundに寄稿した内容が昨日公開されています。

嵐がSNS上で注目を集めている証拠に、SNSでシェアされた回数に基づくSpotifyのバイラルチャートでは、先行解禁された「A・RA・SHI」などの5曲が11月5日、6日とトップ5を独占。「Turning Up」等が未ランクインなのは不思議なのですが、嵐は日本を代表するアイドルなんだよなあと感じずにはいられません。

そんな嵐独占の最中にあって、上昇を続ける洋楽がいくつか。その中のひとつがゴスペル歌手のカーク・フランクリンによる「Road Trip」。

2015年リリースのアルバム『Losing My Religion』収録の、しかし地元アメリカではシングル化されなかったこの曲ですが、11月6日付の日本のSpotifyバイラルチャートで10位に上昇。また、チャンス・ザ・ラッパーにグラミー賞最優秀新人賞をもたらしたミックステープ『Coloring Book』(2016)から、同じくカーク・フランクリンが客演のひとりとしてクレジットされている「Finish Line / Drown」も5日、6日と続けてトップ50入りを果たしています。

「Finish Line / Drown」については、音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんがラジオ番組『ジェーン・スー 生活は踊る』(TBSラジオ 月-金曜11時)の中で今月、カニエ・ウェストによる初のゴスペルアルバム『Jesus Is King』に関連したゴスペル特集時に紹介されており、カニエの以前のアルバムにはカーク・フランクリンも参加していたことから、いよいよゴスペルが注目されはじめたのか!?と思っていました。

ただ、カニエ・ウェスト『Jesus Is King』収録曲で最も勢いのある「Follow God」は日本のSpotifyデイリーチャートで最高82位止まり。ゴスペル曲がここまで高い位置に来たこと自体実は凄いことなのですが、どうも今回の動きとは関連性が高くないと考え、あらためて調べてみるとこれらの曲の推薦者が見つかったのです。その方とは、星野源さん。

【so sad so happy】と名付けられたSpotifyのプレイリスト(そういえば、高橋芳朗さんが以前担当していたTBSラジオの番組名は『HAPPY SAD』でしたね)には、最新EP『Same Thing』収録曲を含む自身の楽曲も含まれていますが、これまで星野さんがラジオ番組『星野源オールナイトニッポン』(ニッポン放送 火曜25時)やテレビの特番『おげんさんといっしょ』(NHK総合)などで紹介した作品が網羅されています。そういえば今年、星野さんがサブスクリプションサービスにて自身の楽曲を解禁した際にApple Music内のラジオ番組、Beats 1 Radioにて『Pop Virus Radio』を担当していましたが、その中で紹介していたのがカーク・フランクリン「Road Trip」だったわけで、同曲の収録に合点がいった次第。さらには『おげんさんといっしょ』第1弾で紹介したマイケル・ジャクソンがボーカルを務めるThe Jacksons「Blame It On The Boogie」と、歌詞にマイケルへのオマージュを忍ばせた星野さん自身の「SUN」を共に入れるなど、選曲は本当に気が利いています。ラジオ番組やテレビのファン、星野さんのファンのみならず音楽通の方をも満足させるであろうこのプレイリストが再生回数を増やすことで、公開翌日以降のバイラルチャートで大量エントリーを果たしたというわけです。

 

プレイリスト収録曲がヒットに至ることについては、以前ブログにてエド・シーラン「Shape Of You」のロングヒットを取り上げた際に記載し、多くの反応をいただいています。リリースからまもなく3年になるこの曲は現在も、全世界のSpotifyデイリーチャートで未だ100位前後、日本では50位前後を推移しているのですが、Spotifyで歌手名+曲名で検索すると100を余裕で超えるプレイリストが登場しており、ヒットの条件はプレイリストへの引用にありと断言していいでしょう。

今回の星野源さんによる【so sad so happy】プレイリストは、楽曲をプレイリストに取り込むのがサブスクリプションサービスのユーザーではなく星野源さんというところに違いがありますが、収録曲は実際にチャートを駆け上がっており、人気者によるリコメンドが多くの人に伝播することが今回証明されたと言えます。星野さんのラジオなどからは純粋な音楽愛が伝わってくるわけで、星野さんのプレイリストは間違いない!と多くの方が捉えているだろうことが、プレイリストが支持を集める理由ではないでしょうか。ちなみに星野さんがSpotifyでプレイリストを作成、公開した理由は今週放送の『星野源オールナイトニッポン』で紹介されていますので、みやーんさんによる文字起こしを勝手ながら紹介させていただきます(問題があれば削除いたします)。

ヒップホップからゴスペル、Ovallから松任谷由実さんに至るまで、多様なジャンルを網羅したプレイリストは、純粋に好き!という星野源さんの姿勢が如実に表れており、また彼の作品も何ら違和感なく混ざり合っています。こうして少しでも多くの人に新しい音楽との出会いが、またジャンルに関係なく聴く習慣が生まれるならば最高ですね。

個人的には、以前ブログで紹介したレ・シンズが取り上げられているのも嬉しいのですが(ブログエントリーはこちら)、R&Bながらポジティブな歌詞や、繰り返しまくる転調がまさしくゴスペルライクなビヨンセ「Love On Top」が入っているのが実に嬉しいのです。今週はもう1件、ゴスペル関連の大きなリリースがあったこともあり、ゴスペルが浸透していくならばこれほど嬉しいことはありません。

近年、「Shape Of You」のように多数のプレイリストに採り入れられることがヒットの新たな図式となっていますが、これからは歌手がプレイリストを制作することもヒットの新たな形になっていきそうです。

11月1日、マライア・キャリーの季節到来…あの定番曲が早くもチャート上昇中

”It's time...Woh!”と叫んでいるのはマライア・キャリー。そうです、マライアの季節が来たのです。

もはやクリスマスシーズンに耳にしない人はいないであろう、マライア・キャリーのクリスマス定番曲「All I Want For Christmas Is You (邦題:恋人たちのクリスマス)」。日本ではドラマ『29歳のクリスマス』(フジテレビ)の主題歌に起用されミリオンセラーを記録したこの曲は、サブスクリプションサービス等に基づくストリーミング時代に突入した現在、毎年のように世界中でチャートを駆け上がるのです。アメリカでは昨年末を集計期間とする今年1月5日付米ビルボードソングスチャートでストリーミング指標首位、総合でも3位を獲得しています。

「All I Want For Christmas Is You」のリリースから四半世紀経った今年11月1日、マライア・キャリークリスマスアルバム『Merry Christmas』(1994)の25周年記念盤をリリース。冒頭のマライアのツイートにおけるアイシャドウ強めのメイクは前日のハロウィンでの仮装によるもの(→ツイート)。日付が変わると…25周年記念盤の発売日でもあった、というわけです。”It's time...Woh!”はここにもかかっていると言えます。

 

とはいえまだまだクリスマスの雰囲気は薄いよと思う方も少なくないでしょうが、今年は既に「All I Want For Christmas Is You」が上昇気流に。

Spotifyでは25周年記念盤がリリースされた11月1日付デイリーチャートで、グローバルでは180位に、アメリカでは115位に再登場。その後少しずつ順位を上げ、最新11月6日付ではグローバル147位、アメリカ109位となっています。日本では今月に入ってまだ200位以内に入ってはいませんが、もしかしたら今年はいつもの年より早く上昇するのではないかと予想されます。

 

日本でも、ビルボードジャパンソングスチャートではクリスマスソングが上昇する傾向にありますが、昨年の動向をみるにストリーミング指標よりもラジオエアプレイがより盛り上がる傾向にあるものと感じていました。

しかしながら、サブスクリプションサービスの浸透(再生回数の増加等)、同サービスへの解禁増加等もあり、今年のチャートにおけるストリーミング指標には昨年以上に注目しないといけません。厳密にはクリスマスソングではないものの、解禁されて間もない嵐による「WISH」(2005)等も伸びてくるのではないかと考えています。今年のクリスマスソングはいつもより早めに流行する…そんな感じがします。

嵐「Turning Up」がトップ10入り、そして次週のチャートからいよいよSpotifyが加算へ…11月11日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介します。今週のソングスチャートを制したのは=LOVE「ズルいよ ズルいね」でした。

=LOVEは自身初となる首位を獲得。しかしながらチャート構成比に占めるシングルCDセールスが9割を超えること、前作「探せ ダイヤモンドリリー」が2→40位と推移したことを考えるに、次週どこまで踏みとどまれるかが気掛かりです。一方、前週首位を記録したSexy Zone麒麟の子」については。

ジャニーズ事務所所属歌手としては平均的な前週比となりましたが、やはりシングルCDセールスが極端に強い作品がヒットを維持出来ない傾向にあることは間違いなく、Official髭男dism「Pretender」(シングルCDセールス指標は4週連続で100位未満)との差を実感させられます。とはいえ「麒麟の子」は今週になってダウンロード指標が加算されていることに注目。おそらくはレコチョクでフル尺のダウンロードが出来るようになったこと(→こちら)が影響しているのかもしれません。

 

そのダウンロード指標を制したのは、嵐「Turning Up」でした。

デビュー20周年記念日を迎え、11月3日の日曜日にデジタル解禁を発表した嵐。ダウンロードが解禁されたのは、同日の19時で、月曜から日曜を集計期間とする“JAPAN HOT 100”では苦戦が予想されたが、なんと残りの5時間で初めてのデジタル・シングルである新曲「Turning Up」が29,599DLをマークし、ダウンロード指標で1位を獲得した。「Turning Up」は他指標ではTwitter 7位のみポイントを獲得して総合10位となり、訴求力の高い“国民的アイドル”の名にふさわしい結果を叩き出した。

【ビルボード】177,296枚を売り上げた=LOVE「ズルいよ ズルいね」初の総合首位獲得 デジタル解禁の嵐の新曲「Turning Up」わずか5時間で週間ダウンロード1位 | Daily News | Billboard JAPAN(11月6日付)より

仮に11月4日月曜にリリースされたならば、シングルCDセールスがなくともチャートを制した可能性も高かったかもしれませんが、ミュージックビデオをYouTubeプレミア公開しファンと共に祝うなど、CDデビュー20周年記念日を盛り上げることを優先した結果このタイミングでの発表となったと捉えていいでしょう。個人的にはサブスクリプションサービスの再生回数等に基づくストリーミング、および動画再生の2指標で300位以内に入らなかったことが意外でしたが、この2指標は次週加算されるはず。Spotifyデイリーチャートでは11月4日、そして5日付で「Turning Up」が3位に入りOfficial髭男dismが長らく続けてきたトップ3独占を阻むことに成功しています。

 

そのSpotifyですが、遂にビルボードジャパンのストリーミング指標に加算されることになりました。

これは自分が以前、ビルボードジャパンソングスチャート構成8指標について見直しを提案した際に取り上げたこと。

今回のチャートポリシー変更により、ストリーミング指標へ加算されないサブスクリプションサービスはAmazon Prime Musicのみとなりました(ただしAmazon Music Unlimitedは加算対象)。尤もSpotifyには有償と無償のサービスがあるため、米ビルボードソングスチャートのように両者でウェイトに差をつけるかどうかは不明ですが、今回の発表には差をつける云々の文言がないため、おそらくウェイトは同じと考えていいでしょう。

 

今年度のチャートはまもなく終了。自分が提案した各構成指標の内容や指標毎のウェイト変更が叶うかは不明ですが、ひとつはっきり言えるのはストリーミング指標(サブスクリプションサービス)の存在がますます大きくなったということ。Spotifyの加算の意義は非常に大きいと思います。