イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

カニエ・ウェスト新作にも参加、聖俗共に活躍するウォーリン・キャンベルのレーベルコンピレーションが豪華なのです

この1ヶ月ほどで弊ブログにおけるゴスペル関連エントリーが大量発生。カニエ・ウェスト初の全編ゴスペル作『Jesus Is King』や、AIさんのデビュー20周年記念アルバム『感謝!!!!! - Thank you for 20 years NEW &BEST -』がこの1ヶ月の間に相次いでリリースされたことに因るところが大きく、そこから様々なゴスペル(関連)作品を紹介しています。

そのカニエ・ウェスト『Jesus Is King』はリリースされて初めて制作陣のクレジットが明かされたわけですが、そこに聖俗共に活躍するプロデューサーのウォーリン・キャンベルの名があり、強く納得した次第。ウォーリン・キャンベルについては以前弊ブログにて取り上げています。

そのウォーリン・キャンベル、自身が運営するレーベル【My Block Inc.】からコンピレーションアルバム『Warryn Campbell Presents My Block Inc.』を先月リリースしました。レーベルコンピレーションは現在このような歌手を抱えていますよという訴求の場と言えるのですが、これが実に濃いラインアップなのです。

ウォーリン・キャンベルは妻のエリカ・キャンベルとの共演曲を昨年リリースしていましたが(先述したウォーリン・キャンベルのブログエントリー参照)、エリカと彼女の妹のティナ・キャンベルから成る姉妹デュオのメアリー・メアリーと共に「Feel So Good To Be Loved」に参加。もしかしたらウォーリンは歌手としても表舞台に出るようになったのかもしれません。現在はエリカおよびティナ共にソロ作に力を入れていますが、今回を機に『Something Big』(2011)以来となるメアリー・メアリーとしてのオリジナルアルバムをリリースしてくれたならと切望します。

 

それにしても今回興味深いのは、かつて日本でも注目を集めた面々がレーベルコンピレーションに参加していること。日本でラジオを中心に「Always」(2009)が注目を集めたジェイソン・チャンピオンの名を見たときには驚きました。さらには唯一のオリジナルアルバム『Two Eleven』(2000)が好作だったトニ・エステスも登場。 

とはいえ、ジェイソン・チャンピオンについては昨夏のブログエントリーでMy Block Inc.入りを果たしたことを伝えていましたし、トニ・エステスにおいてはbmrで昨年レーベル入りを報じていましたので、単なる自分の失念ではあるのですが。

(それにしても、bmrはメジャーからゴスペルまでを網羅し情報量多かったなあとあらためて実感。今年の春以降パタッと止まったのは勿体無いというか…事情はなんとなく読めるのですが。)

そのジェイソン・チャンピオンとトニ・エステスの共演盤が心を揺さぶります。

このアプローチは、メアリー・メアリー「In The Morning」(2002)を彷彿とさせますが、音のダイレクトさ、踊りやすさはきちんと今の音となっていますね。

さらにはゴスペル界の若き実力派、ウォールズ・グループがMy Block Inc.入りし、レーベル入り後初めてのナンバー「High And Lifted」を公開。レーベルコンピレーションに収められています。彼らについても以前記しましたが、レーベル移籍にはいい意味で驚かされます。

ちなみに、ウォーリン・キャンベルの妻、エリカ・キャンベルのソロとしての新曲「Praying And Believing」も収録。驚くのはそのミュージックビデオが現在の悪しき社会情勢を映していること。

先行シングルだったこの曲のジャケットをみると、なるほど社会情勢を謳っていることが解ります。

祈り信じることで現状を変える可能性があると伝えるのもゴスペルのひとつの形。ゆえにオバマ大統領の登場以降は特にゴスペル界(のみならずアメリカのエンタテインメント界)全体が民主党支持だったと捉えています。だからこそカニエ・ウェストトランプ大統領支持を表明したことへの疑問は業界内外に根強いわけですが、それでも『Jesus Is King』に参加したウォーリン・キャンベルは”良い作品を創る”という自身の信念を第一に据えたのではないかと勝手ながら考えています。

 

その他にも今回のコンピレーションは良曲が続々。先述したトニ・エステスのソロによる「Stressed Out」の80年代な音使いにもニヤリとさせられますし、ウォーリン・キャンベルの妹、ジョイスターはアルバムが出ずじまいなのですが健在ぶりをアピール。

ちなみにジョイスターはレーベルコンピレーションとは別に、先週新曲「Wait For Me」をリリースしています。

 

今回のレーベルコンピレーションは、所属するほぼ全員による「Working!」が冒頭を飾ります。

参加メンバーは”Warryn Campbell, Mary Mary, Jason Champion, Toni Estes, Lena Byrd Miles, JoiStarr, The Walls Group, Krista Campbell, MC Lyte and Jason McGee & The Choir”(上記動画の説明欄より)。トニ・エステスのbmr記事で一時期レーベルに所属していたと言及されているジョン・Bがいないのが残念ですが、今後は彼らそれぞれのソロ作品がきちんと出ることを待ちわび、期待しましょう。無論、ウォーリン・キャンベルの今後のプロデュースワークも楽しみです。 

ビルボードジャパンソングスチャートはSpotify導入を機に、より実態に即した社会的ヒットの鑑になっていく

昨日のエントリーでは最新11月18日付ビルボードジャパンソングスチャートについて紹介しましたが、この日(集計期間は11月4~10日)からSpotifyがストリーミング指標に加わっています。

さらには、今回Spotifyが導入されたタイミングで新たな試みも始まっています。下記は一昨日付、ビルボードジャパンストリーミングソングスチャート紹介の記事より。

なお、Spotifyを含む複数のストリーミング・サービスが次年度以降に、無料と有料を分割してのデータ提供が可能となる見通しを踏まえ、当週より、Billboard JAPAN独自調査によりストリーミング全体数から無料と有料を按分、それぞれに異なる係数を乗じてポイント化することとした。当ニュースにおける再生数は無料と有料の合算としている。

無料と有料とで異なる係数を乗じる方法は、アメリカで昨夏から導入されたもの。日本では係数がいくらかについては公開されていませんが、アメリカでは公開されています。

ニールセンの2018年第3四半期より、有料配信サービス(Apple MusicやAmazon Musicなど)、または有料/広告支援ハイブリッド・サービスにおける有料プラン(SpotifySoundcloudなど)での再生は、広告支援サービス(YouTubeなど)や有料/広告支援ハイブリッド・サービスにおける無料配信より比重が大きくなる。

ソング・チャート“Hot 100”におけるストリーミング・データの算出方法については、2018年からは有料(1再生=1ユニット)、広告支援(1再生=2/3ユニット)、プログラム配信(いわゆるプレイリスト。1再生=1/2ユニット)に分けて計算する。“Hot 100”指標データの重要性はストリーミングが最も高く、次に全ジャンル・ラジオ・エアプレイ、そしてデジタル・ソング・セールスと続く。

米ビルボード・チャート、ストリーミング算出方法を6/29より変更 | Daily News | Billboard JAPAN(2018年5月2日付)より

有料と無料とで分けた理由は明快。

ビルボード・チャートにおけるストリーミングの集計方法を多層的なアプローチに変更したのは、ストリーミングによる収益と、ユーザー側のアクセス方法を反映させる形で再生数を算出しようとする世界的な動きに合わせたものだ。

米ビルボード・チャート、ストリーミング算出方法を6/29より変更 | Daily News | Billboard JAPAN(2018年5月2日付)より

有料サブスクリプションサービスで聴くと収益が上がり歌手やレコード会社をより支えられること、そのためにもユーザーには有料を勧めることが米ビルボードのチャートポリシー変更の狙いではないかと。日本もそれを踏襲したのだろうと考えます。

 

Spotifyの導入、そして有料と無料とで係数を設けることは自分が以前提示した希望に沿ったものです。先月、ビルボードジャパンソングスチャートを構成する8指標についての改善案を提示しましたが、ストリーミング指標についてはまさしく希望する方向となっています。

今年度終了まで間もなくですが、他の指標にもメスが入りまた指標毎にウェイトの変更が行われれば(特にシングルCDセールスについては、毎週のように首位が入れ替わりまたその首位曲が翌週急落する傾向を踏まえれば、見直しは必須だと考えます)、来年度以降のビルボードジャパンソングスチャートはより実態に即した社会的ヒットの鑑になるものと考えます。

 

ビルボードジャパンには是非とも、ソングスチャートを構成する指標群の説明や係数導入の理由をより広く伝播してほしいと希望します。

デジタル解禁の嵐が躍進、「Turning Up」は次週の動向を注目せよ…11月18日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介します。

今週のソングスチャートを制したのはNMB48恋愛至上主義」でした。

獲得ポイントは16900。前作「母校へ帰れ!」の首位獲得時(8月26日付)に比べて82.1%と大きく落ち込んでいます。「母校へ帰れ!」は翌週26位(ポイント前週比10.9%)ですので、シングルCDセールスがチャート構成比の9割を超えた「初恋至上主義」が同様の道を辿る可能性は高いと思われます。なお前週首位の=LOVE「ズルいよ ズルいね」は今週42位に急落、ポイント前週比9.7%となっています。今年度の首位獲得作品と翌週の推移はこちら。

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今週注目すべきは、なんといっても嵐の躍進。

前週初登場した「Turning Up」は、集計期間終了のわずか5時間前の解禁で10位にランクイン。集計期間フルでカウントされた今週は2指標でトップとなり総合2位に。『デジタル解禁日である前週の計測最終日(11月3日)で「Turning Up」が獲得したダウンロードとTwitterのポイントは3,663で、当週のポイント合計数の13,297と合計すると「初恋至上主義」を逆転して総合1位となる』(上記記事より)とのことで、仮に11月4日月曜に解禁していたならば…と思うと、勿体無いと思う部分も否めません。

嵐については、11月3日日曜にデジタルシングル「Turning Up」をリリースしたほか、旧作シングルCD表題曲も一部先行曲を除きサブスクリプションサービスで解禁、およびダウンロード配信を開始。その結果。

このように、とんでもない記録を打ち立てています。デジタル解禁曲のチャート推移を一覧化すると。

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Spotifyの11月3~10日のデイリーチャート順位、および今回の11月18日付ビルボードジャパンソングスチャート総合およびダウンロード(DL)、サブスクリプションサービス等がカウント対象となるストリーミング(ST)ソングスチャート一覧がこちら。Spotifyで強い曲がビルボードジャパン総合チャートにもランクインする傾向がありますが、たとえば最新CD曲「BRAVE」はチャート構成比の4分の1以上をシングルCDセールスおよびルックアップで、「感謝カンゲキ雨嵐」は半分以上をTwitterで占めています。

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前者は最新シングルゆえ、後者は櫻井翔さんのツイートに曲名が付いたことによる効果とみられます。

このように、新曲以外がさらに盛り上がるには何かしらのプラスアルファが有効だということが解ります。

しかしながら勿体無いのは、動画再生指標がほぼ全ての曲で未加算であるということ。嵐の公式YouTubeチャンネルにおいては現段階でアップロードされた動画はわずか13本(「Turning Up」のミュージックビデオ、「A・RA・SHI」等先行配信5曲のミュージックビデオおよびライブビデオ等)。仮に全てのシングルCD表題曲のミュージックビデオが解禁されていたならば最新のビルボードジャパンソングスチャートでは22曲を遥かに上回る楽曲がランクインし、トップ10にも複数曲送り込んだのではないでしょうか。以前、ミュージックビデオを公開しない理由を推測しました。

一点、違和感を表明するならば今回のデジタル解禁にオリジナルアルバムはさることながら、ベストアルバムが含まれていないこと。アルバムCDはシングルよりも廃盤になりにくいこと、またベストアルバムの売れ行きが好調であることを考えれば、ダウンロードは解禁されても1曲250円の価格設定を高いと思い、ならばベストアルバムを買ったほうが得として購入に至らせる心理誘導が今回の施策の根本にあるかもしれません。そう考えれば、全シングル曲をダウンロードおよびサブスクリプションサービスで解禁しながらYouTubeで未解禁のままなのも、リリースされて間もないミュージックビデオ集への誘導と思えば合点がいきます。

ミュージックビデオ未解禁はいわばフィジカルへの誘導ゆえの施策と捉えていますが、チャートでのインパクトがより強ければ”ならばミュージックビデオ集を買おう”という心理を広くライト層(歌手や曲には興味はあれど絶対買うわけではない人たち)に形成出来たのではないかという気がします。

 

さて、ソングスチャート3位にはOfficial髭男dism「Pretender」が登場。ストリーミング再生回数はゆるやかに降下し、総合ポイントも2週連続で前週を下回ってはいます。

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しかしながら心配は要らないかもしれません。「Pretender」を収録したアルバム『Traveler』は今週、4週ぶりにトップに返り咲いています。

ルックアップが特段に強いのがOfficial髭男dismの特徴であり、ストリーミング指標同様接触の強さが目立っています。ストリーミング(サブスクリプション再生回数)はダウンしつつもアルバムをフィジカルでチェックする人たちが増えているわけで、「Pretender」そしてOfficial髭男dismの作品全体が今後しばらく高水準をキープするものと思われます。『NHK紅白歌合戦』の出演次第ではさらなる爆発も期待出来ます。

 

さて次週は、嵐「Turning Up」の動向に注目しましょう。これまでジャニーズ事務所所属歌手の作品はシングルCDセールスが強く同指標初加算週に首位を獲得することが多かったものの、今年度首位を獲得した同事務所所属歌手の作品は翌週すべてトップ10落ち、翌週のポイント前週比は山下智久「CHANGE」を除き10~20%という状況でした。仮に次週「Turning Up」がトップ10内をキープし、ポイント前週比20%を大きく超える結果を残すならば、同事務所はデジタルへの移行(導入)を本格的に協議して好いと考えます。

 

明日、このブログではSpotify新規導入におけるビルボードジャパンチャートポリシー変更についてまとめてみます。既に今週から変化していますが、個人的にはこの変化を強く歓迎します。

 

今日のビルボードジャパンソングスチャート発表前に、嵐のSpotify動向をまとめる

11月3日のYouTubeでの発表以降、嵐の動向には多くの注目が集まっています。同日にはシングルCD表題曲およびデジタル限定の新曲「Turning Up」をリリースしましたが、集計期間1日弱にもかかわらず11月11日付ビルボードジャパンソングスチャート10位にその新曲がランクインしたことについては、ビルボードジャパンソングスチャートとオリコンシングルCDおよび合算ランキングとの違いを含め、Real Soundに寄稿しています。

今日12時前後にはビルボードジャパンの最新11月18日付各種チャートが発表されますがその前に、最新チャートからストリーミング指標に導入されるSpotifyの動向を追いかけます。デイリーチャートの順位をまとめました。

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11月18日付ビルボードジャパン各種チャートの集計期間は11月4日から10日。この動向をみるとデジタル限定シングル「Turning Up」が10位以内をキープしており、ダウンロード等を踏まえればソングスチャートでの上昇は確実でしょう。基本的にはほとんどの曲が11月5日以降ダウンする傾向にありますが、11月10日付で上昇した曲が多かったのは前日の奉祝曲を披露した影響でしょう。

そういえば三浦大知さんが今年2月に「歌声の響」を披露した際もYouTubeにニュース映像としてフル配信されていました(→YouTube)。嵐においても同様の報道を採らないといけなかっただろうことを踏まえれば、嵐のデジタル解禁は前もって必要だった(ゆえに解禁した)のかもしれません。

 

今回、Spotifyの一覧表をまとめたのは理由があります。

嵐の楽曲が軒並み高水準であること(ゆえに「Turning Up」にて、嵐がJ-Popを盛り上げる責任を自負したのだと捉えています)は言わずもがなですが、その中にあって”では世間の代表曲はどれ?”となると候補がありすぎるだけに難しいと思っていました。たとえば先輩だったSMAPの場合、1枚あたりのシングルCDセールスでは嵐に敵わないでしょうが、「世界に一つだけの花」「らいおんハート」「夜空ノムコウ」とミリオンセールスを3曲輩出しており、とりわけ「世界に一つだけの花」は平成を代表する曲になったとすら言えます。それゆえに、では嵐は?という感覚を持ち合わせていました。世間とは楽曲や歌手に興味はあれど好んで購入するわけではない人たち…弊ブログで述べるところのライト層と言い換えることが可能であり、そのライト層が所有より接触を好むことを踏まえれば、サブスクリプションサービスの再生回数と世間の認知度や人気は比例すると考えていたゆえ、今回の調査に至ったわけです。

Spotifyの順位の推移をみると「Turning Up」→先行解禁の5曲→「One Love」等となっています。新曲、そして「A・RA・SHI」等先行解禁5曲が上位に来ることは予想出来ましたが、その次が「One Love」、そして「BRAVE」とほぼ同水準で「GUTS!」が入ったことになるほどと実感。今後はクリスマスに向けて「WISH」も浮上するのだろうことも、この1週間同曲が200位以内に滞在していたことから察することが出来ます。なるほど、広く世間で親しまれている楽曲はこれらの曲なのだと把握出来たのは嬉しい発見でした。

 

今回取り上げた楽曲が果たして、ビルボードジャパン最新11月18日付ソングスチャート100位以内にランクインするのか? 今日昼頃発表されるチャートについては、明日ここでも取り上げる予定です。

ルイス・キャパルディ返り咲き、マルーン5トップ10入り、そして気になる新鋭と気掛かりなアリアナ…11月16日付米ソングスチャートをチェック

ビルボードソングスチャート速報。現地時間の11月11日月曜に発表された、11月16日付最新ソングスチャート。前週初の首位に立ったセレーナ・ゴメス「Lose You To Love Me」は5位に後退、2週前に初の首位を獲得していたルイス・キャパルディ「Someone You Loved」が返り咲きました。

返り咲いたものの、実際はピークを超えているのがこの「Someone You Loved」。ラジオエアプレイは今週も首位を獲得しながら、ダウンロードは前週から1ランクアップし7位となりながらこれら2指標は共に前週とほぼ変わらぬ数値(ラジオエアプレイは1億100万、ダウンロードは13000)、ストリーミングは2ランクアップし9位に入ったものの前週比3%ダウンの2400万となっています。一方、少しずつ順位を上げているのはポスト・マローン「Circles」。ダウンロードは前週比10%アップの16000(同指標3位)、ストリーミングは同1%未満ダウンの2450万(同6位)、ラジオエアプレイは同5%アップの8360万(同4位)で、楽曲での最高位を更新。ラジオエアプレイがさらに勢いづけば、自身4曲目の首位獲得も夢ではありません。

セレーナ・ゴメス「Lose You To Love Me」は5位に後退。ラジオエアプレイこそ前週比43%アップの3460万(同指標26位)を記録しながら、ダウンロードは同60%ダウンの16000(同4位)、ストリーミングは同32%ダウンの2640万(同3位)と、デジタル2指標が大きく後退しラジオエアプレイで補完出来なかったことが首位陥落の要因となりました。急落といえば、前週アルバムチャートを制したカニエ・ウェスト初の全編ゴスペル作『Jesus Is King』から7位に送り込まれた「Follow God」は今週37位となっています。前週末ミュージックビデオが公開されたことで次週以降の上昇はなるか、注目です。

なお、前週11月9日付における『Jesus Is King』関連の記録はReal Soundに記載しました。「Follow God」は今週も、クリスチャンソングスチャート、およびゴスペルソングスチャートを制しています。

 

そのReal Soundではじめて寄稿した曲が遂にトップ10入りしており、あくまで個人的な感想を述べるならば、感慨ひとしおというところです。

「Memories」が2ランクアップし9位に登場。これでマルーン5にとって15曲目となるトップ10入りを果たしたこととなります。ダウンロードは前週比11%アップの18000(同指標2位)、ストリーミングは同1%未満アップし1660万(同19位)、ラジオエアプレイは同9%アップの5770万(同11位)を獲得し、堅調に推移しています。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (2位) ルイス・キャパルディ「Someone You Loved」

2位 (3位) ポスト・マローン「Circles」

3位 (4位) ショーン・メンデス & カミラ・カベロ「Señorita」

4位 (5位) リゾ「Truth Hurts

5位 (1位) セレーナ・ゴメス「Lose You To Love Me」

6位 (6位) リゾ「Good As Hell」

7位 (8位) クリス・ブラウン feat. ドレイク「No Guidance」

8位 (9位) リル・ナズ・X「Panini」

9位 (11位) マルーン5「Memories」

10位 (12位) ダン+シェイ & ジャスティン・ビーバー「10,000 Hours」

ダン+シェイ & ジャスティン・ビーバー「10,000 Hours」がトップ10に返り咲いたこともあり、ビリー・アイリッシュ「Bad Guy」が遂にトップ10落ち。「Bad Guy」は女性(がリードを務める)歌手の作品で今世紀最長となる30週間トップ10入り楽曲となりました。ちなみに今週水曜には新曲をリリースするのですが、この水曜リリースという動向は新たなトレンドとなるかもしれません。

次週注目はアリゾナ・ザーヴァス「Roxanne」。今週34位に初登場を果たしていますが、TikTokが人気に火を付けたことが功を奏してかストリーミングの勢いが凄まじく、前週木曜には既にアメリカのSpotifyデイリーチャートを制しています。次週のチャートのデジタル2指標の集計期間初日となる金曜からも「Roxanne」はSpotifyで首位を続けており、ダウンロードおよびラジオエアプレイの動向如何ではトップ10入りも夢ではありません。

他方気になるのは、アリアナ・グランデの勢い。前週リゾ「Good As Hell」にアリアナ・グランデ参加版が加わったことで同曲がトップ10入りしたのですが、アリアナ参加版がオリジナルバージョンを上回る人気となっていないことで、楽曲のクレジットはリゾのみに。今年のアルバム『Thank U, Next』後に放たれた新曲は好調とはいえず、さらに映画『チャーリーズ・エンジェルサウンドトラックからの先行曲でマイリー・サイラスラナ・デル・レイと共に披露した「Don't Call Me Angel」は最高13位止まり、さらにアルバムは今週の米ビルボードアルバムチャートに初登場したものの38位という状況。強い私見と前置きして書くならば、アルバム『Thank U, Next』があまりに短いスパンで世間をアッと言わせ注目を浴びた、その反動が来ているのかもしれません。次週以降の推移を見守りたいと思います。

NHK紅白歌合戦の真偽不明情報が浮き彫りにしたネットリテラシー不足問題、その対処法を考える

7年前に触れてきたことを、また取り上げないといけないか…と思ってしまいます。

この2012年の紅白歌合戦では結局、ももいろクローバーZが出場し小林幸子さんが落選。つまりは報道が正しかったと言われればそれまでですが、しかしながら実態不明な関係者発言や、出場することが”分かった”という曖昧な文言には注意が必要だと記載しています。

しかしながら今年も。

みそかの第70回NHK紅白歌合戦(後7・15)に、ジャニーズ事務所の7人組グループ「Kis―My―Ft2(キスマイフットツー)」の初出場が決まったことが8日、分かった。

(中略)

局関係者は「若い女性を中心にした人気面はもちろん、バラエティーでの経験から、さまざまな企画に対応できるという点も評価されたのでは」と語った。

キスマイ 紅白初出場へ デビュー9年目の悲願 10周年へ大きな弾み― スポニチ Sponichi Annex 芸能(11月9日付)より

一昨日朝はKis-My-Ft2についてスポーツニッポンが報じ、そして同じ頃に真偽不明なLiSAさんの初出場内定情報も独り歩きしたことで、Twitterのトレンドには2組の名前、そして”#紅白歌合戦2019”が登場。しかしスポーツニッポンの報道をみると”分かった”そして”局関係者”というお決まりのフレーズがあり、無論真偽は不明。正直、これら報道はスルーするか(後述しますが)取り締まってもいいのではないでしょうか。

ポスト・トゥルース”とは『「世論の形成において、客観的な事実よりも、感情や個人的な概念に訴えるほうが影響力がある」状況』を表す言葉(「post-truth」時代に私たちがすべきこと | 時事オピニオン | 情報・知識&オピニオン imidas - イミダスより)。熱心なファンの方々の気持ちは解れども、客観性を著しく欠いた自己の理想に基づく狂騒を踏まえるに、音楽ブロガー・ライターのレジーさんによる指摘(勝手ながら取り上げさせていただきました。問題があれば削除いたします)はまさにそうだよなと思ってしまいます。

 

個人的には、立場の異なる三者がネットリテラシーに成熟することが必須と考えます。受け手はNHK紅白歌合戦の直接の発表までは情報を鵜呑みにしないこと、伝え手はポスト・トゥルースの時代を巧みに悪用しアクセスを稼ごうとしないこと(これについては、紅白歌合戦出場者発表後に”なぜあの報道を流した?”と真意を問いただすことや、元来怪しい情報にはアクセスしないことで改善が可能と考えますが、結局は受け手の意識改善が前提かもしれません)、そして発し手であるNHK紅白歌合戦側はただ静観せず、Twitter等で真偽不明の情報が出た際には”公式発表のみが真実ですので発表をお待ちください”と強調し、真偽不明の情報とそれに踊らされる方々を抑えること…これらは必須だと考えます。仮に紅白サイドがこのような狂騒を、今年の紅白への期待度を測るために敢えて静観すると考えるならばそれは違います。大事なのは、未だに根付かないと言っても過言ではないネットリテラシーを育てることではないでしょうか。

虚偽情報を流した方は勿論、それに踊らされて虚偽情報に加担(Twitterにおけるリツイート等)した方はきちんと訂正し謝罪することは必須でしょう。メディアほどの影響力は個人には宿っていないと言われるかもしれませんが、誰かひとりでもアクセス可能なところに自分の声を乗せられる環境にあるならば一個人であれど影響力を持ったメディアであることに変わりはありません。別件のデマ拡散問題に対してつぶやいた内容をここに記載します。

外に向けて発信することには責任が宿ることを多くの方が意識しないといけません。無論、自分も常に反芻し続けます。

AI、デビュー20周年記念アルバム『感謝!!!!! - Thank you for 20 years NEW & BEST-』のゴスペル盤が本格的なのです

ここ最近、ブログでゴスペルを取り上げる機会が増えています。大きなきっかけは2つ、Official髭男dismが週間チャートを制したアルバム『Traveler』(2019)に納められた「Stand By You」のアプローチがゴスペル的だったこと、そしてカニエ・ウェストが全編初となるゴスペルアルバム『Jesus Is King』を全米1位に送り込んだこと。前者についてはラジオで【ゴスペル的J-Pop】特集を組むまでに至り、後者については主にチャートの観点から記載した内容が、Real Soundにて昨日公開されました。

そのReal Soundの記事でも触れたのが、AIさんが先週リリースしたデビュー20周年記念アルバム『感謝!!!!! - Thank you for 20 years NEW &BEST -』の、ディスク1におけるゴスペルの充実っぷりが素晴らしいですね。かつてクワイアに所属していたことのあるAIさんには、力強い援軍が参加しています。

サブスクリプションサービスでは十分なクレジットを手に入れられず、後にCDを購入して確認したところ、B・スレイド&ジェラルド・ハードンというクレジットに興奮&納得しています。

B・スレイドについては紆余曲折の半生がR&B/ヒップホップメディアのbmrに掲載。

現在はB・スレイド名でもゴスペルを歌っており、スヌープ・ドッグのゴスペル作『Bible Of Love』(2018)に参加したり、クリスマスコンピレーションに自身のトーネイ時代の「Make Me Over」とゴスペル定番曲「Total Praise」のメドレーを提供するなど、聖俗両方の世界で活動しています。

ジェラルド・ハードンはゴスペル歌手でR&B的な音使い(コンテンポラリーゴスペル)を得意とするデイトリック・ハードンの兄。AIさんの代表曲である「Story」等5曲すべてのゴスペルバージョンを手掛けているほか、AIさんがクワイア時代に歌っていたフレッド・ハモンド「No Weapon」のカバーもプロデュース。デビューから30年以上、音楽活動開始から40年近く経過するゴスペル界の大御所、フレッド・ハモンドについては以前記載したのでよろしければ。

ジェラルド・ハードンは妻のタミ・ハードンと連名でアルバム『#US』(2015)をリリースし、その妻が今回AIさんのゴスペルバージョンにクワイアメンバーとして参加。クワイアとはいえそのメンバーはタミ、ブリトニー(ブリットニー)・ヘッジウッドそしてアントニオ・カミングハム(カニンガム)の3名のみながらあれだけの分厚い声になるのですから、ゴスペル畑の方々の歌唱力が如何に凄まじいかを実感します。一方のジェラルドは弟のデイトリック・ハードン同様、ゴスペル歌手にR&B的ゴスペルを提供することに長け、たとえばデイトリックがボビー・ヴァレンティノ(現 ボビー・V)のファーストアルバム『Bobby Valentino』(2005)を彷彿とさせるオリエンタル感満載の『7 Days』(2006)をリリースした際、ジェラルドはウィリー・ハッチ「I Choose You」をサンプリングした「Count Your Blessings」を提供。『Bobby Valentino』同様にアルバム全体はティム&ボブが仕切っていますが、流麗な中に力強さを湛えたアクセント的一曲になっています。

とはいえ、AIさんのゴスペルバージョン等はむしろバンド的。ゴスペルクワイアに所属した自分にとって、バンドアレンジのいい意味でのやりすぎ感(アワードでのR&B歌手のパフォーマンスのそれに近い、と言えばわかりやすいかもしれません)が、本場のゴスペルを想起。「ハピネス」のアウトロにはそれが凝縮されていますし、「LIFE」の転調もまたあるあるであり、ゴスペル特有の高揚感が訪れるのです。

 

このように人選や音使いが本格的なゴスペルであるため、先行リリースされアルバム巻頭に据えられた「Baby You Can Cry」は一聴してゴスペルとは遠いと思われるかもしれません。しかし、共演歴もある安室奈美恵さんの「Baby Don't Cry」(2007)をサンプリングした本作は励ましソングであり、ゴスペル的な表現を用いるならば”赦し”の歌と解釈することも可能。”泣いてもいいよ”という言葉を赦しを謳うゴスペルの一側面と捉えれば、「Baby You Can Cry」は広義のゴスペルと考えてもいい…大袈裟かもしれませんがそう思うのです。

 

サンプリングやゴスペルでのリアレンジ、カバーを経てAIさんが自身のルーツであるゴスペルに回帰したことは、日本に本格的なゴスペルを定着させる大きな契機になるかもしれません。すでにライブツアーが開幕していますが、下記動画を観るとR&Bとゴスペルが高い次元で融合しており、その熱気が強く伝わってきます。

ライブを観賞したり音楽を聴いてゴスペルに触れた方々が、AIさんが今作のインタビューやライブで伝えている平和への思いを感じることを願うばかり。そしてゴスペルがより広く伝播したならば、クワイア経験のある自分にとっても嬉しいですね。