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青森県在住。毎週日曜日17時から、FMアップルウェーブ発の番組の一員として参加。音楽・ラジオ好きによる"日々の音"やメディアの話

ジャスティン・ビーバー「Yummy」、米ソングスチャートの次週動向が気掛かりなのです

昨日トップ10を紹介した、最新1月11日付米ビルボードソングスチャート。Hot 100をみると興味深い点がいくつかあります。

クリスマスソングが一掃された結果、初登場曲を除きほとんどの曲が上昇もしくは再登場。唯一ダウンしているのは94位のジュース・ワールド「Let Me Know (I Wonder Why Freestyle)」であり、訃報に伴って上昇した作品ゆえやむを得ないことと言えます。

そして気になるのは、この100位以内にジャスティン・ビーバーの新曲「Yummy」が不在という状況。9位に ダン+シェイとの「10,000 Hours」、28位にエド・シーランとの「I Don't Care」が入っていますが、1月3日リリースの「Yummy」はエントリーしていません。

1月11日付米ビルボードソングスチャートの集計期間は、デジタル2指標(ストリーミングおよびダウンロード)が昨年12月27日~1月2日、そしてラジオエアプレイは12月30日~1月5日。ゆえに最新チャートではラジオエアプレイ3日分のみで下位にチャートインするものと予想していました。昨年は、テイラー・スウィフトがアルバム『Lover』からの第1弾シングルとしてパニック・アット・ザ・ディスコのブレンドン・ユーリーを迎えた「Me!」が、ラジオエアプレイ3日分のみで100位に登場(翌週2位)。前作『Reputation』(2017)からの先行曲「Look What You Made Me Do」もラジオエアプレイだけで77位を記録し、翌週には首位に至っています。

ラジオエアプレイのみでのランクインはレアなケースではあるのですが、しかしながらジャスティン・ビーバーにとっては大ヒットした前作『Purpose』(2015)以来となるオリジナルアルバムからの先行曲(と思しき作品)であり、また共演や客演でも結果を残し続けてきただけに、個人的には今週の未ランクインは引っかかるのです。尤も、次週上位に登場してもその後急落したら真のヒットとは言えないでしょうが。

 

今作「Yummy」が成功すれば、2020年の音楽業界はR&B(的トラック)が流行するような気がします。「Yummy」が何気にエクスケイプ版「Who Can I Run To」(1995 オリジナルはジョーンズ・ガールズ(1979))を思わせると感じるのは自分だけでしょうか。

ポスト・マローン首位返り咲き、クリスマスソング一掃でマライア・キャリーは"有終の美"…1月11日付米ソングスチャートをチェック

ビルボードのソングスチャートをチェック。現地時間の1月5日月曜に発表された、1月11日付最新ソングスチャート。集計期間がクリスマス以降となりマライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」をはじめとするクリスマスソングが一掃、新たな首位の座にはポスト・マローン「Circles」が返り咲きました。

ポスト・マローン「Circles」は昨年11月30日および12月7日付で首位を獲得しながら、ザ・ウィークエンド「Heartless」(1週)およびマライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」(3週)にその座を明け渡し、今回が5週ぶりの帰還。中4週を経ての首位返り咲きは2014年秋、テイラー・スウィフト「Shake It Off」が初登場から2週連続で首位に立ちながら、メーガン・トレイナー「All About That Bass」に8週間その座を明け渡した後にカムバックを果たして以来の長期ブランクとなります。なお、首位返り咲きまでの最長期間記録はチャビー・チェッカー「The Twist」の1960年9月~1962年1月となります。

「Circles」はラジオエアプレイで3週目の首位を記録、前週比3%アップで同曲初の1億超えとなる1億210万を達成しました。ダウンロードは前週比43%アップの23000(同指標2位)、ストリーミングは同16%アップの2420万(同指標7位)。ストリーミングは前週38位でしたがクリスマスソング一掃につき急上昇した形です。なお米ビルボードの記事では大見出しで、クリスマスソングが"溶けてなくなった(melt away)"と表現しています。

2位にはマルーン5「Memories」が7ランクアップで同曲初のトップ3入り。これによりマルーン5は2000年代、2010年代そして2020年代に2位以上の曲を獲得し、グループではローリング・ストーンズに次ぐ史上2組目の快挙を達成しました。なおローリング・ストーンズは1960年代に6曲が2位以上(うち5曲が1位)、1970年代に3曲が1位、そして1980年代に「Start Me Up」(1981)が2位を記録(ちなみに「Start Me Up」を阻んだのはクリストファー・クロス「Arthur's Theme (Best That You Can Do) (邦題:ニューヨーク・シティ・セレナーデ)」そしてダリル・ホール&ジョン・オーツ「Private Eyes」なのですから、不運と言えるかもしれませんね)。一方、マルーン5は2000年代、2010年代共に首位獲得曲があることから、2020年代に1位を獲得すればグループとして唯一の3年代首位獲得歌手となります。

「Memories」はダウンロードで前週比37%アップの25000を獲得し同指標3週目の首位、ラジオエアプレイは同5%アップの9500万(同指標3位)、そしてストリーミングは同15%アップの1770万(同22位)となっています。

ロディ・リッチ「The Box」が10ランクアップし3位となり、自身初のトップ10入りを達成。さらにマスタードに客演参加した「Ballin'」も今週最高位となる12位に到達しました。ストリーミングは前週比15%アップの4260万で同指標初の首位に立ちましたが、ダウンロードが前週比29%アップの6000(同31位)、ラジオエアプレイが同177%アップの360万(同50位未満)と2指標が低いゆえ、総合力で上回る2曲に敗れたと言えます。とはいえ、「The Box」を収録した『Please Excuse Me For Being Antisocial』は昨年12月21日付米ビルボードアルバムチャートで首位を獲得し、最新1月11日付では2位と好調をキープしており、弱点となる2指標にもアルバムの勢いが波及しそうです。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (5位) ポスト・マローン「Circles」

2位 (9位) マルーン5「Memories」

3位 (13位) ロディ・リッチ「The Box」

4位 (8位) ルイス・キャパルディ「Someone You Loved」

5位 (6位) アリゾナ・ザーヴァス「Roxanne」

6位 (10位) リゾ「Good As Hell」

7位 (14位) トーンズ・アンド・アイ「Dance Monkey」

8位 (38位) トラヴィス・スコット「Highest In The Room」

9位 (17位) ダン+シェイ&ジャスティン・ビーバー「10,000 Hours」

10位 (18位) セレーナ・ゴメス「Lose You To Love Me」

30ランクもの大幅アップでトップ10に返り咲いたトラヴィス・スコット「Highest In The Room」は、トラヴィスが主催するレーベルのコンピレーションアルバム『Jackboys』に収録された、ロザリア&リル・ベイビーを客演に迎えたバージョンが合算されことで再浮上。『Jackboys』は今週のアルバムチャートを制しています。

他方、前週トップ10に5曲登場したクリスマスソングはすべて100位圏外に。昨年12月21日付でザ・ウィークエンド「Heartless」が1→17位となり首位獲得翌週の大幅ダウン記録を更新したのですが、マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」がその記録を更新してしまいました。無論これは季節柄やむを得ないことではあります。

「All I Want For Christmas Is You」は前週が最後のエントリーになったと米ビルボードは報じています。というのも、一定週数以上チャートインしている曲がある順位を下回ればチャートから除外するというリカレントルールが米ビルボードソングスチャートに存在、20週以上在籍した曲が50位を下回ればチャートに復活できないのです。「All I Want For Christmas Is You」は合計37週在籍した後に100位未満となったため、今後米ビルボードソングスチャートに登場することはなくなりました。それゆえ、「All I Want For Christmas Is You」は前週、有終の美を飾ったと言えます。

 

さて来週は、「All I Want For Christmas Is You」でマライア・キャリーと共演したこともあるジャスティン・ビーバーの新曲「Yummy」(1月3日リリース)がどの位置に登場するか、注目しましょう。

ゴスペル最新ヒットコンピレーション、カニエ・ウェスト関連…ゴスペルにも未CD傾向が

過去にゴスペルクワイアに所属した経験のある身としては、毎年楽しみにしていたゴスペルのヒット曲コンピレーションアルバム『WOW Gospel』シリーズの終焉が非常に残念でなりません。

上記の2019年版を最後に、『WOW Gospel』シリーズはどうやら終わりを告げた模様。通常ならば今月リリース予定の2020年版は、現段階でアナウンスがありません。

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アメリカのAmazonで検索しましたが、出てきません。

昨年のゴスペル界は、ヒップホップアクトとの共演も多いカーク・フランクリンの新譜の登場、そしてヒップホップ界からカニエ・ウェストの進出等、いつにもまして注目されたと思うのですが、その年のヒット曲を網羅した定番シリーズがないのは残念です。

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昨年のCDに記載されたSNSアカウントを辿ると、Twitterにおいてはいわゆるツイ消しが行われていたようです。

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インスタグラムもFacebookも、"@wowgospelmusic"という共通アカウント名で登録されているのですが、インスタグラムは3枚の投稿のみ、Facebookには別のアカウントの引用投稿はあれどそのアカウント自体からのものは見当たらず、やはり『WOW Gospel』シリーズは終了したものと考えられます。米ビルボードゴスペルアルバムチャートではヒットし続けていたシリーズゆえ、売れなくなったというわけではないと思うのですが、その理由が気になります。

 

先述したように昨年はゴスペルが注目を集めた1年でしたが、カニエ・ウェスト関連の2作もまたCD化されていませんし、されていたとしても一般流通には至っていません。

昨年のクリスマスに『Jesus Is Born』をリリースしたカニエ・ウェストクワイアであるサンデー・サービス(・クワイア)のホームページ(→こちら)からカニエ・ウェストの通販サイトにつながり、カニエ自身の名義である『Jesus Is King』はCDやレコード、カセットテープといったフィジカルのほか、ダウンロードでも購入することは出来ます(→こちら)。しかし現段階でCDは一般流通されておらず、またクワイアによる『Jesus Is Born』はフィジカル化すらされていないようです。

この時勢にあってCDにこだわるのはもはや少数派かもしれず、自分の場合はラジオ番組を担当しており番組で用いたいという思いゆえというのは否定出来ません。しかし、今や音楽聴取の主体となったサブスクリプションサービスがしかしネットに不得手な方(年配層やネットの環境が芳しくない者等)に完全には浸透していないだろう状況を踏まえれば、CDとしての流通は必要かもしれないと思うのです。

仮に『WOW Gospel 2020』がリリースされ、そこにカニエ・ウェストの未CD化(一般流通されていない)アルバムから「Follow God」が収録されたならば年配層にも"ヒップホップ×ゴスペル"という音楽が届き、非常に面白いリアクションが生まれたのではないかと。現に『Jesus Is King』はチャート上でもヒットを記録しているゆえ、未CD化(および一般流通しない施策)は勿体無いと思ってしまいます。

『Jesus Is Born』については80分超えの作品ゆえ1枚のCDに収めることは厳しいでしょうが、クワイアのレベルも高くまたR&Bファンにとっても聴きどころ多い作品ゆえ、いつの日かCD化されることを願ってやみません。

『Jesus Is King』評はメディアで多く見られた一方、『Jesus Is Born』はリリースタイミングが年末だったことやヒップホップ好きにとって予想を遥かに超えるゴスペル作品ということもあってかレビューがほとんど見られないのが気になります。バンドが敢えてあの音(ミックス)にした理由とカニエ・ウェストの音作りの関連性等、ヒップホップの面からも語れることはあると思うのです。

出来るならば日本向けに、『Jesus Is King』と『Jesus Is Born』の2作品をひとまとめにして、解説や訳詞込みでCDリリースしていただけたならと思うのですが、いかがでしょう。

2020年の日本の音楽業界に求めたい、3つの"新しいヒットの形"

音楽関係者が選び、好事家の注目を集める『バズリズム02』(日本テレビ 金曜24時59分)の恒例企画、【今年コレがバズるぞ!BEST10】が1月3日の放送で発表され、Novelbrightが1位を獲得しました(詳細については同日付の番組バックナンバーをご確認ください(→こちら))。このNovelbrightがSNS上の口コミ(バイラル)で人気を博した「Walking with you」については、以前Real Soundにて取り上げました。

TikTokを用いてバズが生まれるスタイルは海外では自然な現象となりつつあります。重要なのはそのバズが自然発生的に生まれるのではなく、自分たちが仕掛けていくということ。下記記事からもその姿勢が見て取れます。

現在の音楽業界においては、楽曲の質や所属歌手の認知度にメジャーとインディとで大きな差はないと考える一方で宣伝力やそこに掛けられる予算が唯一の乖離だと感じているのですが、SNSでバズらせるにはそれほどの金額は不要であり、ネットへの知識やアイデアに長けた者が勝つのだと実感させられます。

Novelbrightは今日新曲「ランナーズハイ」をリリースしましたが、こちらには大型タイアップが。

地上波等で流れるのではなくWebCMへのタイアップにはなりますが、とはいえアサヒスーパードライという大型ブランドに用いられるのは凄いこと。この動きは、Spotifyバイラルチャートでヒットしデイリーソングスチャートへも波及したアリゾナ・ザーヴァスやアント・サンダースがメジャーレーベルと契約を交わしたことを思わせます。

このNovelbrightが自らをブレイクさせるに至った手法は"新しいヒットの形"の一環と捉えています。さて、日本の音楽業界においてはこの新しいヒットの形が今後生まれるでしょうか…いや生まれてほしいのです。そこで、今後生まれてほしい新しいヒットの形として3つを取り上げてみましょう。

 

TikTok発のバイラルヒットを自ら生む姿勢

先述したNovelbright「Walking with you」のようにバイラルヒットを経てビルボードジャパンソングスチャートで100位以内に到達する曲は昨年いくつかみられており、ちゃんみな「Never Grow Up」については以前ブログに取り上げました。

「Never Grow Up」の場合はちゃんみなさん自身が担当したラジオ番組が下地にあったと捉えていますが、Novelbrightの場合は先述したように自身が宣伝を行ったことがブレイクに影響しています。TikTokがバイラルヒットのきっかけになることは日米のチャートで証明されている以上、今後はそのバイラルヒットをどう仕掛けるかが重要と言えます。

仕掛けるのは何も歌手には限りません。エイベックスが日本のレコード会社では初となる包括契約TikTokと結び、昨年末にレコード会社としてアカウントを開設しています。

このように、バイラルヒットが生まれるのではなく"生む"体制を整え、実行していくことは重要でしょう。

 

② 解禁日をより注目させ、バズらせる工夫

模範となるのは、シングルCD未リリースながらビルボードジャパンソングスチャートで2連覇を達成した星野源「アイデア」。2018年8月20日月曜にリリースすることを事前アナウンスし、当日にはミュージックビデオも公開。発売日には『おげんさんといっしょ』(NHK総合)がOAされ、宣伝トラックを見たらツイートする企画も実施、ラジオエアプレイも同日解禁と、シングルCDセールスおよびルックアップ、そして当時未解禁だったサブスクリプションサービスでの再生回数を基礎とするストリーミング以外の指標を一気に獲得することに成功したわけです。

アメリカでは今年1月3日にジャスティン・ビーバーが「Yummy」をリリースしましたが、こちらも昨年の段階でリリースを予告。その予告解禁日についても予告しています。

「Yummy」が米ビルボードソングスチャートを制するかは分かりませんが、一斉であれ段階的であれ解禁日へ向けてどうやって注目を集めさせていくか、そして解禁日(以降)にどこまでバズらせるかの工夫が成されています。「アイデア」「Yummy」は日米ソングスチャート共に集計期間初日の解禁であり、初週により爆発的ヒットすべく設定されているのです(米ビルボードソングスチャートにおいてはラジオエアプレイの集計期間開始日はデジタル2指標の3日後となるため、厳密に言えば明後日発表のチャートではラジオエアプレイ3日間の集計分のみでランクインする可能性があります)。日本ではCDリリースが基本的に水曜であることからこの手法は難しいかもしれませんが、CDに頼らない解禁であれば出来なくはないはずです。

 

③ リミックスや客演等、追加バージョンの投入

ビルボードソングスチャートではもはやこの方式が戦略として当たり前の手法となっています。最近ではリゾ「Truth Hurts」にラッパーのダベイビーが参加したバージョン等を投入し、デジタルで初加算された週に自身初の首位に立ちました。

またビリー・アイリッシュ「Bad Guy」についてはジャスティン・ビーバーが参加したバージョンが後日公開。加算直後は首位に至れませんでしたが、スマートフォンを意識した縦型ミュージックビデオを追加投入し、初の首位獲得に至っています。

「Bad Guy」は昨年の米ビルボード年間ソングスチャートで4位となり追加投入も功を奏したと言えますが、しかし日本では縦型ミュージックビデオはオリジナルバージョンに合算される一方でジャスティン・ビーバー参加版はオリジナルバージョンと合算されません。これによりビルボードジャパン年間ソングスチャートでトップ50を逃したと考えており、改善は必要ではないかと今年ビルボードジャパンへ提案しました。

リミックスは日本でもよく用いられている手法であり、オリジナルバージョンをより多角的に楽しめます。リミックスとは異なるかもしれませんが、最近では椎名林檎宇多田ヒカル「浪漫と算盤」にLDN/TYOの2バージョンが用意されていたのが印象的でした。

リミックスや客演等、追加バージョンの投入は音楽の多角的な楽しさを伝え、ヒットの可能性を拡げるものだと思うのです。ビルボードジャパンソングスチャートが合算を許可したならば、このような手法がどんどん採用されていくものと考えます。特にラッパーが他ジャンルのリミックスの際に客演参加しやすくなり、他国に比べてチャートに登場しにくいヒップホップの勢力拡大につなげるチャンスではないでしょうか。

 

 

以上3点、日本ではまだまだ確立されていないと思しき"新しいヒットの形"をいち早く採用し、ヒットに至る曲が生まれることを望みます。

『NHK紅白歌合戦』はビルボードジャパンソングスチャートのどの指標に影響を及ぼすのか

昨年大晦日の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の視聴率が芳しくないことを機に、低調の予兆はあった云々の記事がスポーツ誌を中心に登場していますが、そのような後出しジャンケンをして咎めるよりも、内容を客観的に精査した上で"ならばどうすべきだったか、そして今後どうすればいいか?"の提言をしてくださったほうがはるかに好いと思う自分がいます。

 

さて、音楽チャートの面から紅白の動向をみてみましょう。デイリーでチャートが更新され詳細な数値が出るもののひとつがSpotify。このサブスクリプションサービスは昨年度末にビルボードジャパンがストリーミング指標に導入(同時に、有料サービスと無料サービスとでウェイトを分ける方法も採用)していることもあり、日本でも認知度が高まりつつある同サービスの動向を追いかけてみます。まずは昨年のビルボードジャパン年間ソングスチャート3位、紅白でも披露されたOfficial髭男dism「Pretender」のこの1ヶ月ちょっとの動向を押さえます。

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「Pretender」は期間中連日1位を続ける曲ですが、12月29日までをみると基本的に週末(青色表示の土曜および赤色表示の日曜)が高い傾向があり、これがSpotifyにおける基本動向と言えるでしょう。そして12月30日からは年末年始休暇の影響からか、週末並の数値をキープしているのですが、元日になると前日比84.5%と急落。翌1月2日には平日並みに回復しています。

では、昨年の紅白で披露した曲の動向はどうでしょう。

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1月1日付で200位以内に登場した曲を抽出し同日付の上位から順にまとめた結果が上記(嵐については「A-RA-SHI:Reborn」はカウントせず)。紅白直前に再浮上したについては、直近で200位以内に入っていた日付および順位を補記しています。再浮上した曲は以前より数値を伸ばしているだろうものの、紅白以前から200位以内に入っていた曲はOfficial髭男dism「Pretender」同様、12月30~31日は土日並の数値をキープするものの元日は低いという動向が見て取れます。一方で1月2日は土日並の水準に至る曲が多いようです(「Pretender」も先述したように回復していますが、King Gnu「白日」や菅田将暉まちがいさがし」、LiSA「紅蓮華」よりは回復度合いが低いですね)。

こう考えると、明日の朝までに発表されるだろう1月3日付についても前日程度の水準となり、仮にSpotify以外のサブスクリプションサービスも同様の動きをみせるならば、12月30日~1月5日を集計期間とする1月13日付ビルボードジャパンソングスチャートのストリーミング指標では元日を除く6日間が土日並の高い数値を上げることが予想されます。しかしながらLiSA「紅蓮華」が大晦日Spotifyで初めてトップ10入りした以外は特に100位以内において順位に大きな変動はあまりみられないことから、サブスクリプションサービスの数値上昇はストリーミング指標全体の底上げにはなれど、紅白歌唱曲の総合チャート上昇には直接つながりにくいのかもしれません。

 

そこで、一昨年の2019年1月14日付ビルボードジャパンソングスチャートを振り返ってみます。同日付ソングスチャートは下記に。

2018年の大晦日からの1週間を集計期間とするチャートでは、米津玄師「Lemon」、DA PUMP「U.S.A.」、あいみょんマリーゴールド」そしてMISIA feat. HIDE(GReeeeN)「アイノカタチ」と、上位4曲が一昨年の紅白歌唱曲。そしてその紅白を機に認知度が上昇し昨年は遂に日本レコード大賞を受賞するに至ったFoorin「パプリカ」は100位圏外から32位に登場しています。「アイノカタチ」以外は2019年のビルボードジャパン年間ソングスチャートでトップ10入りしていますが(同チャートはこちら)、そのトップ10入りした曲の一昨年の紅白前後の動向をみてみましょう。同じく年間トップ10入りしながら紅白では披露されなかった、あいみょん「今夜このまま」も記載しています。f:id:face_urbansoul:20200104075458j:plain

(前週比の右側は各指標の順位。左からCD:シングルCDセールス、DL:ダウンロード、ST:ストリーミング、RA:ラジオエアプレイ、LU:ルックアップ、TW:Twitter、MV:動画再生、KA:カラオケ を示します。)

ほぼすべての指標がジャンプアップした「パプリカ」とサブスクリプションサービス未解禁の「Lemon」を除けばストリーミング指標の順位はさほど変わらないことが解ります。そしてソングスチャートを構成する8つの指標の中で最も大きな変化が見られるのはシングルCDセールスだということが判明します。「U.S.A.」においてはダウンロードがダウンし、また同曲を収録した『THANX!!!!!!! Neo Best of DA PUMP』が紅白の3週ほど前にリリースされていながら、シングルCDセールスの順位が上昇するという傾向がみられるのです。

 

これを踏まえれば、紅白の影響はストリーミング指標にも表れるものの、シングルCDセールスという所有指標により大きく表れるのかもしれません。とはいえその売上枚数がデイリー単位ですべて見えてこないため、土日並のシングルCDセールスが年末年始ずっと続くかは解りかねるのですが。お年玉をもらった子どもたちが年始の買い物でCDショップに繰り出し紅白で印象的だった曲を購入する…そんな行動が、CD全盛期ほどではないにせよ未だに根強くあるのかもしれません。

レコード会社や芸能事務所はこれを踏まえ、CDショップでの展開は勿論のこと、年末年始のメディアでの披露曲のプレイリストを各サブスクリプションサービスに用意するなどして再生回数の拡大につなげる必要があるでしょう。下記プレイリストはSpotifyが作成したものですが、NHKも積極的にこのような仕掛け(そしてその仕掛けはアフターフォローにつながります)を行うことで、紅白の影響力の持続に結びつけることが出来るのではないでしょうか。

ビルボードジャパンソングスチャート、ラジオで語られた各指標の詳細が興味深い

昨日はビルボードジャパンソングスチャートへの改善案を提示しました。

同日夕方、TBSラジオ『ACTION』(月-金曜15時30分)にそのビルボードジャパン編集長の高嶋直子さんが登場し、昨年のヒット曲の傾向等を紹介していました。これが興味深い内容でしたのでメモ。

 

ビルボードジャパンソングスチャートを構成する8つの指標のうち、いくつかの上位5曲を紹介していました。まずはラジオエアプレイ指標。

ラジオエアプレイはオンエア回数に人口比率と聴取率を加味して弾き出されたものであり、アメリカと同じ手法だと語られていました。純粋なオンエア回数ではないというのは間違えやすく、あらためて気をつけねばと感じた次第。実際自分も当初誤って解釈していましたし、最近のビルボードジャパンの解析記事でも回数と表記したものがありました。なお、純粋な回数は同じくプランテックが公表し、ミュージックマン内"エアモニ"の記事で公開されています。

この指標のウェイトは全体のおよそ1割と公表。決して小さくはない気がします。

 

そして驚いたのは、シングルCDセールス指標。

この順位、実はビルボードジャパンのホームページで発表されているものとは異なります。

(上記ツイート、2018年度ではなく2017年度でした。失礼しました。)

複数種リリースやユニークユーザー数(売上枚数に対する実際の購入者数)等を考慮に入れてビルボードジャパンが独自に設定した係数の設定により、シングルCDの売上枚数がそのままチャートに落とし込まれなくなった2017年度以降はより社会的ヒット曲が可視化されるようになったと考えますが、その係数を用いる前の純粋な売上がビルボードジャパンのホームページに掲載されたもの、そして用いた後のものが今回『ACTION』で紹介されたものと受け止めていいでしょう。

この係数の存在については番組内で触れていなかったため、番組を機にチャートが気になった方が検索した際に誤解が生じるだろうことを踏まえればきちんと紹介すべきだったとは思います(なので代わりにここに記載した、というのも今回のエントリーの理由です)。とはいえ、大体どのくらいの数値が当てはめられるか判っただけでも、昨日のラジオは興味深い内容であったと考えます。

 

 

ここまで細かく追わなくとも、複数指標から成るビルボードジャパンソングスチャートの存在を知り興味を抱く方がいたならば、昨日の放送には十分な価値があると考えます。

ビルボードジャパンソングスチャートがより"社会的ヒットの鑑"になるための5つの改善点の提案

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介する日ですが、今週はビルボードジャパンの年末年始休業のため、紹介はお休みします。

このようなアナウンスをそれも固定ツイートとして(最上位に登場する形で)提示するのは好いことです。これは2018-2019年には見られなかったことで、自分は昨年年明けにその点を指摘していました。

この一点だけとってみても、ビルボードジャパンソングスチャートがより好いチャートになったと言っても過言ではないでしょう。その他、この一年で変わったビルボードジャパンソングスチャートの中身と、さらなる改善点について今日は触れていきます。

 

ビルボードジャパンソングスチャートについては上記エントリーを含め、いくつかの改善要求を記載しています。10月にはチャートを構成する8つの指標それぞれの改善案を記載。

さらに週間チャート1位と2位の状況を踏まえ、シングルCDセールス指標についてはさらにウェイトを下げる必要性を唱えています。

そんな中、ビルボードジャパンは昨年度末、サブスクリプションサービスのSpotifyをストリーミング指標加算対象とし、さらに有料サービスと無料とでウェイトの差をつける加算方法を採用。これは自分が10月に書いた提案希望に沿うものであり、また米ビルボードソングスチャートのウェイト付けに倣ったものです。

チャート好事家からは、Spotifyの加算ならびにストリーミング指標のウェイト付けにより理想に近いチャートとなったという声も聞こえてきますし、自分も"社会的ヒットの鑑"たるチャートになったと捉えています。

 

この一年での改善案と改善内容は上記の通り。では、さらに好いチャートになるにはどうすればよいでしょうか。

 

まずは【各指標毎のウェイトの改善】について。これは先に紹介したビルボードジャパンソングスチャートを構成する8つの指標について、ウェイトならびに中身見直しを提案する(2019年10月20日付)の繰り返しにはなりますが、主だったところではシングルCDセールス指標のダウン(先述したビルボードジャパンソングスチャート1位および2位獲得曲から見えてきた、シングルCDセールス指標のウェイトを下げる必要性(2019年12月7日付)参照)が必要と考えますし、順位の変動が最も小さいカラオケ指標もダウンさせる必要があるでしょう。またTwitter指標についてはカウント対象から外し、米ビルボードに倣いTwitterの口コミチャート(歌手名を取り上げるSocial 50チャートのようなもの)を別枠で設けることも検討して好いかもしれません。その理由は8指標見直し提案に記載しています。

 

その提案時にも書きましたが、ラジオエアプレイと動画再生の2指標についても見直しが必要と考えます。ただしこれらはビルボードジャパンというよりは情報提供元であるプランテック(ラジオエアプレイ)およびYouTube(動画再生)の協力が必要でしょう。

ラジオエアプレイはサンプル局数が少なく、またコミュニティFMを網羅出来ていません。聴取者数の規模の問題もあれど、協力可能な程の人材や機材の確保が十分ではなく、とりわけ突如解禁される音源(たとえば再集結した東京事変が昨日リリースした「選ばれざる国民」など)を確保する機材的もしくは財政面での余裕がないものと考えます。突如解禁の音源等を即座に利用出来るシステムをFM/AM/コミュニティFMで区別することなく導入し、OAしたタイミングで手動打ち込みではなく自動でOA曲を送信するシステムが生まれれば、ラジオ局の手間は格段に省かれることでしょう。そうすれば必然的にラジオエアプレイ指標の精度が上がるものと考えます(し、それによりラジオが今の音楽をきちんと追いかけられるメディアに成るのではないでしょうか)。

動画再生については、カウント対象となるISRC(国際標準レコーディングコード)が付いていないものが未だに多くあり、その付番のシステム構築も課題ですが、一方でショートバージョンやティーザー、広告を本編の最中に挿入する作品はISRCを付番させないシステムを構築してほしいとも思っています。これは弊ブログで幾度となく、ショートバージョン等の動画再生指標の弱さを指摘しているゆえの考えです。

ラジオエアプレイおよび動画再生指標は、ビルボードジャパンは情報提供元から情報を受け取る立場ゆえ、【情報提供元の集計方法の改善】を求めたいと思いますしビルボードジャパンはそれを促してほしいと思います。

 

3つ目は【リミックスや客演の有無にかかわらず合算】が必要だということ。米ビルボードでは合算されているものが日本では非対象となっています。

実際、昨年日本でヒットし今年はドラマ主題歌として起用されることも決まったビリー・アイリッシュ「Bad Guy」は、ジャスティン・ビーバー客演参加版もラジオを中心にヒットしましたが合算されませんでした。これが合算されていたならば、「Bad Guy」は年間ソングスチャート上位50位以内に入っていたはずです。

上記エントリーでも述べましたが、海外の歌手にとっては特に客演参加版の追加導入が当たり前に(そしてそれが米ビルボードソングスチャートで戦略の一環と)なっている現状において、日本でそれが別扱いとなるならば、チャート上での洋楽は弱いままとなり日本でのプロモーションを控える歌手が出てくるかもしれません。そして邦楽においても、客演参加等のプロモーションをしたくても控える方が出ていることでしょう。これらはプロモーションのみならず、客演やリミックスという音楽文化が育たないことにも繋がりかねないゆえ、新たな戦略の形を認める必要があると思うのです。

 

4つ目は【ビルボードジャパンのチャート紹介番組の充実】。これについては2年前にエントリーを記載しています。

ニッポン放送ではチャート紹介番組がありましたが昨秋終了しています。

ラジオでチャート紹介番組があれば嬉しいのですが、実はビルボードジャパンでは昨年末より、ビルボードジャパンのいわゆる中の人によるチャート紹介ポッドキャストがスタートしています。

音楽は流せないため座談会もしくはおしゃべり的要素は強めですが、それでもこのポッドキャストが開始したことは大きな意義があると思いますし、座談会等形式ゆえ気軽に接することが出来ると考えます(実際自分は仕事の移動中に流しています)。更新はチャート紹介と同様毎週水曜であり、その番組配信までの速さも好いと思います。この番組が続くことで、川に例えるならば上流がしっかりしたことになるわけですから、下流である(既存)メディアもきっちり紹介してほしいと思いますし、ビルボードジャパンが働きかけてもいいと思います。

 

最後は【歌手による喜びの声の発信】。これはなにげに重要です。たとえば、最新1月4日付米ビルボードソングスチャートで「All I Want For Christmas Is You」が1位を獲得したマライア・キャリーは喜びのツイートを発信しています。

マライアの疑問は1990年代から4つの年代で首位を記録した初の歌手となったことに対してのもの(当初はおそらくその意味が解らなかったのではないでしょうか)。このような米ビルボードソングスチャートへの喜びのツイートはヒップホップ歌手でもみられ、例えばトラヴィス・スコットが「Highest In The Room」で首位を獲得したときのツイートは以下の通り。

他方、日本の場合はこのようなツイートがあまり見られません。オリコンデイリー●位等、CDセールスに対する反応はアイドル等中心に見られるにもかかわらず、なのです。最新12月30日付で「Pretender」が首位を獲得したOfficial髭男dismは、首位になったことはリツイートの形では伝えているものの、そこに自分たちの言葉を載せてはいません(Twitterアカウントはこちら)。

彼らをはじめ、首位を獲得した歌手がきちんとその喜びを伝えるだけで、ビルボードジャパンの重要性はファンを中心に広がっていくはずです。ならばビルボードジャパンは歌手側に積極的にツイートしてほしい旨を伝え、促してはいかがでしょうか。仮にそれをステルスマーケティング的だと批判されたならば、チャート自体はきちんと客観性を担保している旨を伝えて反論すれば好いと思います。

 

 

【各指標毎のウェイトの改善】【情報提供元の集計方法の改善】【リミックスや客演の有無にかかわらず合算】【ビルボードジャパンのチャート紹介番組の充実】そして【歌手による喜びの声の発信】。これらが少しずつ良くなっていけば、ビルボードジャパンはさらに"社会的ヒットの鑑"としての地位を確立することでしょう。