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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

1月20日付ビルボードジャパンソングスチャート、前週ポイント獲得に不備があった曲の問題は解消出来たのか

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介します。

1月6~12日を集計期間とする1月20日ビルボードジャパンソングスチャートを制したのはOfficial髭男dism「Pretender」でした。5週連続、通算7週目の首位獲得となります。

次週はSKE48「ソーユートコあるよね?」が高いシングルCDセールス指標を武器に首位を獲得する可能性がありますが、King Gnu「白日」にも逆転を許すかもしれません。King Gnuについては別の機会に記載するとして、今回は年末年始のチャートで疑問を抱いた箇所が訂正されているかについて観測します。すなわち、もっとポイントを稼げるはずだったのに…という曲の問題が解決されたのかの振り返りです。

 

前週となる1月13日付ソングスチャートでは、『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)で披露された曲がトップ5を独占していましたが、5位に入っていたFoorin「パプリカ」は今週早くもトップ10落ちとなってしまいました。またLiSA「紅蓮華」っは4位をキープしながら、動画再生指標はほぼ横ばいとなっています。前週のチャートを踏まえた問題提起は下記に。

今週のチャート動向をCHART insightで追うと。

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総合チャート(黒の折れ線で表示)と動画再生指標(赤)のみを抽出すると、今週も動画再生指標は300位未満となり加算されていません。

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ビルボードジャパンと集計期間は異なるものの、1月3日からの1週間を集計期間とするYouTubeチャートでは「紅蓮華」が6位に入っています。

一発録り”THE FIRST TAKE”動画にビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標で加算対象となる国際標準レコーディングコード(ISRC)が未付番であること(あったとしてもオリジナルバージョンと異なる曲はビルボードジャパンのチャートポリシーにより合算出来ない可能性大。なおYouTubeチャートでは合算される模様)、そしてISRCが付番されていたとしてもミュージックビデオがショートバージョンであれば再生回数が飛躍しない…これらは「パプリカ」共々、前週から変わっていません。

 

Foorin「パプリカ」動画はNHKYouTubeアカウント発でありこれがストッパーになっているかもしれず、NHK側にレコード会社等や芸能事務所が働きかける等、メディアを含めた三者が動画への意識を高めるべきとも提案しました。

しかし「パプリカ」は変わらず、そして同じくNHKYouTubeアカウント発となる嵐「カイト」については今週も動画再生指標が未カウント。週間で動画再生が100万を突破しても300位未満ならば動画再生指標未加算とはなるのですが、しかし公開週となった前週から未カウントなのは違和感を覚えるゆえ、NHK発であることがISRC未付番の大きな要因となっていると断言してよいでしょう。結果、「カイト」はTwitter指標だけでは総合100位以内に踏ん張ることは出来ませんでした。

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NHKの意識不足、ISRCを後から付番出来ることへのレコード会社や芸能事務所の働きかけ不足が歌手や楽曲をより高い位置へ送り込めないのならば、大きな問題です。

 

他方、「カイト」について指摘した以前のエントリーで同じく動画再生指標未加算と紹介した、SixTONES「Imitation Rain」およびSnow Man「D.D.」の2曲は最新チャートにて同指標初加算となりました。

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この点については安堵しました。

 

2組の所属事務所の先輩である嵐に話を戻すと、今週は「A-RA-SHI:Reborn」に動画再生指標が初加算されました。しかし同指標は100位未満となり、総合でも32→69位と大幅ダウンを喫してしまいました。

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(下のCHART insightは総合チャートおよび動画再生指標のみを抽出したもの。)

「A-RA-SHI:Reborn」のミュージックビデオ公開は1月4日0時。上記YouTubeチャート記事では9位に入っていますが、集計期間が異なるビルボードジャパンでは今週が動画公開3日目からの集計となったため勢いがつかなかったと言えますが、ミュージックビデオがISRC未付番の可能性も否めません。

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(下のCHART insightは総合チャートおよび動画再生指標のみを抽出したもの。)

ジャニーズ事務所所属歌手では極めて珍しく11週連続でトップ20をキープしている嵐初のデジタルシングル「Turning Up」(今週16位)は動画再生指標が好調に推移しています。さて、「Turning Up」と「A-RA-SHI:Reborn」のYouTube画面をチェックすると、”この動画の音楽”というクレジットが前者に記載されながら後者には未記載となっており、この未記載がもしかしたら「A-RA-SHI:Reborn」のISRC未付番を示すものかもしれません。

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(この動画の音楽欄の確認のため、YouTubeをキャプチャしました。問題があれば削除いたします。)

「A-RA-SHI:Reborn」はオフィシャルオーディオ、ミュージックビデオのティーザー共にこの動画の音楽欄が未記載となっているため、同曲の動画再生指標はユーザー生成コンテンツ(UGC)のみカウントされている可能性も否定出来ません。ISRC未付番が事実だとしたら極めて勿体ないと思ってしまいます。

 

以前記載したことの再掲になりますが、メディア、レコード会社そして芸能事務所の三者が、管理する音楽をきちんと社会に流布させる責任およびそのための自身の役割を強く意識することは絶対に必要なのです。動画再生指標におけるISRC未付番について監視し問題の是正に努めなければ、所属歌手が不幸を被るだけです。

三浦大知「I'm Here」のミュージックビデオ・サブスクリプションサービス未解禁はグラミー賞の夢を遠ざけやしないか

昨年の音楽業界を賑わせたKing Gnuがアルバム『CEREMONY』を本日リリース。フラゲ日となった昨日はTwitterで盛り上がりを見せていましたが、メンバーの井口理さんはこのようなツイートを。

作品が発売日にきちんとサブスクリプションサービスでも聴取可能である旨を紹介しています。作品への自信や伝えたい思いが感じられます。

他方、同日発売となった三浦大知さんのシングル、「I'm Here」はサブスクリプションサービス未解禁の措置が採られました。今日のSpotifyアーティストページをみると、先行配信され後にシングルのカップリングに収録された「COLORLESS」が最新のリリースとして表示されています。

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解禁しない等の措置については今週月曜、三浦大知さんがInstagramライブ配信の中で明かしています。視聴された方によると、1月31日にミュージックビデオおよびサブスクリプションサービスが解禁されるとのことですが、個人的にはどうも腑に落ちません。カップリング曲で昨年サブスクリプションサービスで解禁されるや否や多くの方に衝撃を与えた「COLORLESS」の、サプライズ配信でいっそう増幅された喜びは一体何だったのでしょう。

 

CDを売りたいこだわりは今作のキャンペーンから見えてきます。

しかし、キャンペーン開始日が本日であるにも関わらずフラゲ日となった昨日には既にパネルが置かれていた店舗が多数あった模様。こういう不徹底は不信すら招きかねないと考えます。

 

尤も、三浦大知さんの楽曲伝播の手段に違和感を抱いたのは今回が初めてではありません。

前作「片隅」(2019)がYouTubeにてショートバージョンで公開され、さらには”ショートバージョン”と銘打たず、あたかも2分ちょっとの曲であるかのようにエディットしているやり方は、動画を機に楽曲を所有/接触した方に戸惑いを抱かせるのに十分。前作「Blizzard」(2018)がフルバージョンでの公開だっただけに、尚の事ショックでした。そしてこの「片隅」が、「Cry & Fight」でブレイクを果たして以降の三浦さんの作品の中ではチャートアクションが最も低くなってしまったのです。

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ビルボードジャパンソングスチャートでは100位以内に4週のみ在籍。シングルCDセールス指標が初加算された週の総合22位という順位、そしてシングルCDセールス指標加算2週目の100位圏外というのは2016年以降のシングルCD表題曲ではワーストとなってしまいました。他方、Twitter指標での盛り上がり(ファンの間では”ブリ活”と呼ばれたツイート活動)も功を奏した「Blizzard」は、昨年の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)でのパフォーマンス効果で100位以内に再浮上したのみならず、一昨年の暮れから昨年春にかけてロングヒット。

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「Blizzard」と「片隅」での大きな違いは、ストリーミング(サブスクリプションサービスの再生回数を示す指標。上記CHART insightの青の折れ線グラフで表示)、および動画再生(YouTubeおよびGYAO!の動画再生回数を示す指標。赤で表示)の接触指標群が充実しているか否か。「片隅」はストリーミングが100位未満ながら300位以内に通算2週ランクイン、そして動画再生は一度も300位以内に達していません。

実は「片隅」のチャートアクションが芳しくないと判った段階で、「片隅」における問題点を記載したエントリーをアップしました。その際は所有指標も低いとは記載しましたが。

今回「I'm Here」における施策が所有指標の(それもCDに特化した)拡充であり、「Blizzard」で好調だった接触指標群の立て直しどころか半ば無視と言っても過言ではない状況、それでいてCDショップのフラゲ日を意識しないかの如きキャンペーンの設定は巧いとは言い難く、納得出来ない自分がいます。

 

 

海外ではミュージックビデオを公開していない曲が最新米ビルボードソングスチャートで首位に立ちましたが、そのロディ・リッチ「The Box」はリリックビデオを公開したばかりであり、ミュージックビデオの登場は間もなくと思われます。敢えて公開を遅らせる手法を採ったと言われるかもしれませんが、ならばMTV等で既に登場しているはずであり、単純に制作スケジュールの問題や、曲が思った以上に早くヒットしたことが原因と考えます。

また、サブスクリプションサービスを公開しないという手段を採る歌手はアメリカではほとんどいなくなりました。テイラー・スウィフトは以前、サブスクリプションサービス開始数ヶ月が無料になることで歌手側に対価が支払われない点を理由に一時サービスから曲を引き上げる等距離を置き、アルバム『Reputation』(2017)までは発売からサブスクリプションサービス解禁までタイムラグを設けていましたが、『Lover』(2019)では同時解禁となっています。

その代わりといっていいでしょう、テイラーは4種類のCDデラックス・エディションを用意。初週ミリオン達成とはならなかったものの、CD施策が初週功を奏しているのは明らかです。

アメリカではCD施策を採る歌手が今後増えるものと予想されます。グッズやチケットを同梱しあたかもCDはおまけというやり方に対してはチャートのカウント方法にメスが入ってきていますが、それでもCD施策が増えると考えるのは、あくまで音楽業界の土台はサブスクリプションサービスであるため。これは音楽プロデューサーの亀田誠治さんも語っていたことであり(下記ブログエントリーにて紹介)、テイラー・スウィフトもサービスの存在を無視出来なくなったゆえに『Lover』の同時解禁に踏み切ったものと考えます。

 

ミュージックビデオやサブスクリプションサービスの存在が欠かせないアメリカの音楽業界の最高賞であるグラミー賞の受賞を以前から夢だと語る三浦大知さんにとって、今回「I'm Here」で採ったやり方はその夢を潰えさせかねない矛盾を孕んでいるものと思わずにはいられません。Instagramライブを観た方のツイートを辿ると今回の施策に対し三浦さん自身が納得いかないところがある模様で、だとすれば自分が昨年記載した(三浦さんの所属事務所である)ライジングプロダクションの方針転換という悪い意味での予感が的中したことになります。

そしてその施策はあくまでCD売上を主軸にするという旧態依然の考えが根っこにあるわけで、その考えに芸能事務所側が立っている以上は三浦さんがこれ以上飛躍出来ないのではないかと強く危惧します。

 

今回の「I'm Here」における施策は動かすことが出来ないでしょう。ならば今回の結果をきちんと検証することは絶対に必要です。仮にCDが予想以上のセールスを記録したとしても接触指標群が伴わなければビルボードジャパンソングスチャートでロングヒットには至れず、社会的ヒットになったとは言えません。三浦大知さんがグラミー賞を目指すならばその夢の実現のために何をすべきか、ライジングプロダクションは今一度考えてほしいと切に願います。

(追記あり) ジャスティン・ビーバー「Yummy」を抑えロディ・リッチ「The Box」が初の首位獲得…1月18日付米ソングスチャートをチェック

ビルボードのソングスチャートをチェック。現地時間の1月12日月曜に発表された、1月18日付最新ソングスチャート。ロディ・リッチ「The Box」が初の首位を獲得、ジャスティン・ビーバー「Yummy」は2位発進となりました。

カリフォルニア州コンプトン出身、21歳のロディ・リッチは今週ソングスチャートで「The Box」が初制覇、さらにアルバム『Please Excuse Me for Being Antisocial』が首位に返り咲きを果たしました。ソングス/アルバム同時制覇は昨年3月9日付でレディー・ガガブラッドリー・クーパー「Shallow」および同曲を収めた映画『The Star Is Born』サウンドトラックが達成した以来となります。

「The Box」の強さは何よりもストリーミング。前週比60%アップの6820万を獲得し同指標を制しています。上記リリックビデオは1月9日公開ゆえ今回の集計期間(ダウンロードおよびストリーミングが1月3~9日、ラジオエアプレイが1月6~12日)には1日のみの加算となり、ミュージックビデオすら公開されていない状態でのストリーミング指標および総合での首位獲得となるのです。この6820万という数値はマライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」が今年1月4日付で獲得した7220万以来の好記録であり、遡ればあのリル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」が昨年8月3日付で7250万を獲得して以来。「Old Town Road」は昨年4月20日付で1億4300万を記録していますが、「The Box」はミュージックビデオのリリース如何では1億超えもあり得るかもしれません。他指標では、ダウンロードが前週比79%アップの11000(同指標8位)、ラジオエアプレイは同196%アップの1090万(同指標50位未満)となっています。

2位にはジャスティン・ビーバー「Yummy」が初登場。

1月3日リリースの「Yummy」はダウンロードが71000を獲得し同指標首位発進、ストリーミングは2930万となり同指標2位、そしてラジオエアプレイでは5090万を獲得、前週から28ランクアップし10位となり早くもトップ10入りを果たしています。ダウンロードはテイラー・スウィフト「You Need To Calm Down」が昨年6月29日付で79000を獲得して以来となる高水準ですが、これはジャスティン・ビーバーの公式サイトで「Yummy」のレコードやカセットが販売された分が上乗せされたことに因ります。

「Yummy」は首位こそ逃したものの、ダン+シェイとの「10,000 Hours」を5位に押し上げる原動力となり、ジャスティン・ビーバーはトップ5内に2曲を送り込みました。昨年9月21日付でポスト・マローンが、ヤング・サグを迎えた「Goodbyes」を3位に、「Circles」を4位にランクインさせて以来の記録達成です。そのポスト・マローン「Circles」は今週3位にダウンしましたが、ラジオエアプレイは前週比1%アップの1億130万を獲得し同指標4週目の首位獲得となりました。

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (3位) ロディ・リッチ「The Box」

2位 (初登場) ジャスティン・ビーバー「Yummy」

3位 (1位) ポスト・マローン「Circles」

4位 (2位) マルーン5「Memories」

5位 (9位) ダン+シェイ&ジャスティン・ビーバー「10,000 Hours」

6位 (4位) ルイス・キャパルディ「Someone You Loved」

7位 (7位) トーンズ・アンド・アイ「Dance Monkey」

8位 (6位) リゾ「Good As Hell」

9位 (5位) アリゾナ・ザーヴァス「Roxanne」

10位 (10位) セレーナ・ゴメス「Lose You To Love Me」

次週はロディ・リッチ「The Box」がストリーミングでどこまで上昇するかのみならず、ロディが客演参加し今週1ランクアップの11位となったマスタード「Ballin'」のトップ10入りなるか、またそのマスタードと主従関係が逆転した「High Fashion」(今週35位に入り初のトップ40入り)は…等、ロディ・リッチの勢いに注目しましょう。

また先週10日にリリースされたセレーナ・ゴメスのアルバム『Rare』からソングスチャートへの大量エントリーも見込まれます。リード曲で首位を獲得した「Lose You To Love Me」(今週10位)、そしてタイトルトラックでアルバムの冒頭を飾り、ミュージックビデオが公開されたばかりの「Rare」の動向が特に気になるところ。

無論、ジャスティン・ビーバー「Yummy」の動向がどうなるかも注目ですが、次週はダウンロード指標の大幅ダウンが予想出来ることから、トップ10をキープ出来ない可能性もゼロではないかもしれません。

 

なお、アルバムチャートでは今週からYouTubeにアップされたオフィシャルオーディオもカウント対象となっていますが、ソングスチャートではYouTubeのユーザー生成コンテンツ(UGC)も加算対象となりました。詳細はビルボードジャパン等の記事で記載され次第あらためて紹介しますが、この動きはビルボードジャパンソングスチャートをなぞるものであり、非常に面白い流れだなと感じています

(※追記 (18時48分):ビルボードジャパンの記事にて、今回のYouTubeにおけるUGCのチャートポリシー変更について紹介されていました。上記における誤りについては訂正の上、以下に内容を引用いたします。

この「ミュージック・ビデオ(オーディオ、リリック含む)の再生回数」についてだが、今週1月18日付チャートより動画共有サービスYouTubeにおける一般ユーザーのコンテンツ=UGC(User Generated Content)動画の算出方法が簡素化され、チャートにカウントされる動画は「song-UGC」、除外されるものは「non-song UGC」と表記される。「song-UGC」には、一曲としてみなされるだけの内容・長さが必要となっている。

また、これまでは(YouTubeなどの)広告支援を含むオンデマンド・ストリームと同等だった「song-UGC」は、プログラム配信(リスナーではなくサービスによって選曲が行われているパンドラなどのネット・ラジオのストリーム数)と同じ比重となる。加えて、有料/サブスクリプションでのYouTubeビデオ・ストリームとYouTube Musicのオーディオ・ストリームが分けられ、その他の有料/サブスクリプションでのストリームと同等の比重となる。これは、現在ストリーミングとしてカウントされている3種のレベル※の内、最も高いレベルとなっている。[※有料(1再生=1ユニット)、広告支援(1再生=2/3ユニット)、プログラム配信(1再生=1/2ユニット)]

これはHot 100のみならず、R&Bソング・チャートやラップ・チャート、カントリー、ラテン等の“Hot”と提示された主要チャートやストリーミング・チャートにも反映される。

【米ビルボード・ソング・チャート】ロディ・リッチ、ジャスティン・ビーバーを抑え自身初の首位に | Daily News | Billboard JAPAN(1月14日付)より

メディア、レコード会社、芸能事務所…動画への意識の改善は必要

NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)放送前後を集計期間とする1月13日付ビルボードジャパンソングスチャート。25位には紅白で初披露され、米津玄師さんが書き下ろした嵐「カイト」が初登場を果たしました。

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Twitter指標は2位となり、『NHK紅白歌合戦』での初解禁効果は大きいと思う一方、放送翌日には動画が解禁されながらも動画再生指標は未ランクイン。上記CHART insightにおいて動画再生指標は赤の折れ線で示されるのですが、出てきません。

動画の左側を見ても明らかなように、この「カイト」スペシャルムービーはNHKYouTubeアカウント発。この”NHKYouTubeアカウント発の動画は動画再生指標未カウント”というのは、昨日書いたFoorin「パプリカ」と同じであり、動画再生指標のカウント対象となる国際標準レコーディングコード(ISRC)が未付番であることは想像に難くありません。「パプリカ」については昨日記載しました。

(※ちなみにはてなブログYouTubeのURLを貼付すると、通常は上記のようにブログエントリー上で動画が見られるようになるのですが、NHKYouTubeアカウント発の動画は埋め込みコードを用いないと上記のような貼付が出来ません。嵐「カイト」については下記のように。)

(これも非常に不便なのです。)

 

さらには、デビュー前ながら昨年の『NHK紅白歌合戦』に出演したSixTONESおよびSnow Manについては、デビュー曲がTwitter指標を武器に既にチャートインしているのですが、両曲ともミュージックビデオが昨年末の段階で公開されながら動画再生指標がカウントされていないのは非常に気掛かりです。

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先述した通り、ビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標のカウント対象となるのは、ISRCが付番されている動画。両曲とも共にYouTubeバージョンとなっていますが、だからといって付番しないというならばそれは理由にならないと思います。またSnow Manはエイベックス所属にもかかわらずミュージックビデオは歌手自身のアカウントから発信されるという珍しいパターンなのですが、エイベックスのノウハウが活かされないためにISRC未付番につながったのかもしれません。

 

ビルボードジャパンソングスチャートが社会的ヒットの鑑にどんどん近づいてはいるものの、無論そのチャートがすべてではありません。ただし、たとえば昨年リリースの曲で同年の年間ソングスチャート最高位(3位)を記録したOfficial髭男dism「Pretender」はオリコン年間シングルCDセールスランキング(→こちら)では100位以内にも入っていませんが、昨年のヒット曲であること、『NHK紅白歌合戦』に出演したこと、ヒゲダン自身がブレイクを果たしたことに異論を差し挟む方はほぼいないはずで、ビルボードジャパンソングスチャートを重要視し同チャートで実際ヒットに至らせるのは重要な意味があると言えます。CDセールスとは異なり上位登場が直接的な利益を意味しないかもしれませんが、フェスで重要アクトの位置付けとなったり、テレビ番組で長尺を与えられる等につながるだろうことを踏まえれば、やはり重視する必要があると考えます。

昨日も書きましたが、レコード会社によるビルボードジャパンソングスチャートのポイント取りこぼし(さらにはその状況を放置すること)は大きな問題であり、所属歌手に対して大変失礼です。Foorin「パプリカ」や嵐「カイト」についてはNHKISRC未付番であることを確認し、付番しない理由を問い、遅れたとしてもすぐに付番させるよう働きかけることが必要です。この姿勢は芸能事務所側も持ち合わせなければなりません。

そして今回はNHKの姿勢を疑問視しましたが、NHKのみならずメディア全体が付番への意識をしっかり持つことが必要です。アメリカでは定番化しているテレビ出演直後のパフォーマンス動画の公開(そしてその動画がチャートに加算される仕組み)はいずれ日本でも主流になっていくかもしれず、それまでにISRC付番のマニュアルを作らないといけないでしょう。

 

メディア、レコード会社そして芸能事務所の三者が、管理する音楽をきちんと社会に流布させる責任およびそのための自身の役割を強く意識することが必要です。

「紅蓮華」「パプリカ」は紅白効果がもっと出てよかったはず…ポイント取りこぼしはあってはならない

先週水曜に発表された、最新1月13日付ビルボードジャパンソングスチャートは上位5曲がすべて『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の披露曲で占められており、視聴率や内容如何にかかわらず紅白の影響力が絶大だと実感させられます。しかし、5強の指標別順位をCHART insightから辿ると、強い違和感を覚えるのです。

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(King Gnu「白日」および菅田将暉まちがいさがし」はシングルCD未発売のため、シングルCDセールスおよびルックアップの2指標はカウントされません。)

ビルボードジャパンソングスチャートでロングヒットする曲は、サブスクリプションサービスの再生回数に基づくストリーミング指標とミュージックビデオ等の再生回数に基づく動画再生指標が共に伸びる曲が多い傾向があると以前も記載しました。しかし、Twitter指標で首位を獲得したLiSA「紅蓮華」は動画再生指標30位にとどまり、昨年の日本レコード大賞を受賞したFoorin「パプリカ」に至っては動画再生指標100位はおろか300位以内にも入っていません。

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(2曲のCHART insightにおいて、動画再生指標は赤の折れ線で表示。)

最新1月13日付ビルボードジャパンソングスチャートの集計期間(昨年12月30日~1月5日)とは若干ズレが生じますが、昨年12月27日~1月2日を集計期間とするYouTubeチャートでは、そのLiSA「紅蓮華」が4位に入っているのです。

YouTubeチャート、ビルボードジャパンソングスチャート動画再生指標(YouTubeのほかGYAO!も含む)の双方ともに、様々なバージョンが合算され且つユーザー生成コンテンツが対象になるのですが、動画再生指標においては国際標準レコーディングコード(ISRC)が付番されたものが最低限の条件となるため、公式動画であってもISRC未付番の作品はカウントされません。この点を踏まえれば、ISRC付番/未付番の差が大きいのだと言えます。

 

実は以前から、そのようなことを幾度となく申し上げています。たとえばFoorin「パプリカ」の場合。

LiSA「紅蓮華」については”THE FIRST TAKE”バージョン(→こちら)にISRCが付番されていなかっただろうことが考えられ、「パプリカ」はNHK発のアカウントゆえISRCが付番されていなかったと言えるでしょう(「紅蓮華」についてはビルボードジャパンがバージョン違いを基本的に合算しないというチャートポリシーも影響しているかもしれません。合算についてはこちら等で記載しています)。しかしISRCは後から付番可能であり、きちんと付番したOfficial髭男dism「Pretender」、King Gnu「白日」および菅田将暉まちがいさがし」はストリーミング指標と比例して動画再生指標も高いと言えます。また「紅蓮華」のミュージックビデオにはおそらくISRCが付番されていますが、「Pretender」等がフルバージョンでアップされているのとは対象的に「紅蓮華」がショートバージョンであることで再生回数が伸びなかったとも言えます。これは年末の需要が喚起されながらも他指標に比べて伸びなかったback number「クリスマスソング」を思わせます。

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「クリスマスソング」において、昨年12月22日までの1週間を集計期間とする12月30日付ビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標は83位でありストリーミング指標(7位)と大きく乖離。翌週の動画再生指標は100位未満となってしまいます。

 

チャートのポイント取りこぼしはただただ勿体無いと思うのです。仮に取りこぼしを防ぐ役割をレコード会社が担うならば、調査分析チームを設けることは必要でしょう。ISRC未付番への対応、ミュージックビデオフルバージョンへの是正(フルでの公開が映像盤を同梱したCDの売上ダウンにつながると懸念するかもしれませんが、懸念を先立たせるよりも実験等を行い分析することが大前提です)、別アカウントから発信されたミュージックビデオのISRC確認等は必須ではないでしょうか。取りこぼしは曲や歌手をさらなる高みに押し上げられない点で機会損失だということを強く意識して、レコード会社は今からでもきちんと対応してほしいと切に願います。

年末年始のラジオエアプレイ動向はソングスチャート他指標と大きく異なって面白い

今年も年始を飾った楽曲はファレル・ウィリアムス「Happy」でした。

昨年12月30日~1月5日を集計期間とする1月13日付ビルボードジャパンソングスチャートのラジオエアプレイ指標では「Happy」が12位に急浮上。昨年同時期、そして改元のタイミングでも上昇しており、ラジオ業界ではこの曲が新年の挨拶曲となったと言えそうです。

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「Happy」のビルボードジャパンCHART insightはこちらに。そして昨年以降のラジオにおける「Happy」の動向は下記エントリーをご参照ください。

 

さて、1月13日付ビルボードジャパンソングスチャートで気になったのが、ZOO「Choo Choo TRAIN」がラジオエアプレイで14位を獲得したこと。総合では100位以内に入らなかったものの、1991年の楽曲がここにきてジャンプアップしています。

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Choo Choo TRAIN」のビルボードジャパンCHART insightからラジオエアプレイ指標のみを抽出すると(→こちら)、冬の時期に同指標100位未満ながら300位以内に幾度か登場。これはZOOによるバージョンが1991年以降数年間、JR ski skiのキャンペーンソングとして起用されたことで冬のイメージが付いたと言えそうです。

キャンペーンの名称は現在、JR SKISKIに変更されているのですが、今シーズンを担当しているのがEve「白銀」。

「白銀」は昨年12月19日に解禁され、クリスマス前後(昨年12月16日~22日)を集計期間とする1月6日付ビルボードジャパンソングスチャートではラジオエアプレイ指標が6位に入り、総合でも88位に登場。最新チャートでは総合100位圏外となっていますが、年末年始モードが一段落した次週のチャートでもラジオの勢いが持続していればロングヒットの可能性もあるでしょう。

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推測の域を出ませんが、Eve「白銀」のスマッシュヒットがZOO「Choo Choo TRAIN」上昇を呼び込んだのではないでしょうか。さすがに「Choo Choo TRAIN」がここまで上昇するには他に理由がありそうですが。共にラジオ主体のヒットであり他指標には波及していないものの、面白い動きだと思います。

 

日本のラジオエアプレイは、大ヒット楽曲の旬は他指標に比べて長くはなく(しかし年末年始には振り返り企画等で再浮上する傾向)、新人をプッシュしたりベテランの新曲を前面に押し出すことに長けている印象があります。特に後者の動きは、たとえば香取慎吾さんが元日にリリースしたアルバム『20200101』において、WONKや須田景凪さんから氣志團KREVAさんといった方々を招くスタンスを想起させ、または米ラッパーのトラヴィス・スコットが昨年末にリリースした自身のレーベルコンピレーションアルバム『Jackboys』のようなショーケース的意味合いを彷彿とさせます。

ビルボードジャパンとオリコン、CDセールスカウントにおける集計期間の考え方の違いを確認する

年明けの音楽ニュースで驚いたのはこの記事でした。

昨年の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)で披露した「いのちの歌」のスペシャル・エディション(2012年リリースのシングルに、「人生の扉」のライブ映像を収録したDVDを同梱し今年元日にリリースしたシングルCD)が1位となり様々な記録を塗り替えましたが、気になったのは週間売上枚数が0.7万枚という点。記事には何日付か未記載ですが、1月13日付シングルCDセールスランキング(集計期間:2019年12月30日~2020年1月5日)ということが判明(ランキングはこちら)。また1月6日付(集計期間:2019年12月23~29日)では27位に初登場していることが解ります(ランキングはこちら)。

他方ビルボードジャパンソングスチャートをみると、1月13日付ソングスチャートで20位にランクインした「いのちの歌」は、シングルCDセールス指標では前週から26ランク上昇し2位につけています。

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1月13日付ソングスチャートでシングルCDセールス指標を制したのは、EXILE「愛のために ~for love, for a child~」。

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シングルCDセールス指標は黄色の折れ線グラフで表示され、わかりにくいかもしれませんが最新週(13週部分)の1位に黄色の点が記載。前週黄色の折れ線は見当たりません。この「愛のために ~for love, for a child~」は「いのちの歌」スペシャル・エディション同様元日シングルCDリリースの作品。しかし興味深いのは、ビルボードジャパンソングスチャートでは1月13日付ではじめてシングルCDセールス指標が加算されたのに対し、オリコンでは1月6日付シングルCDセールスランキングで2位に初登場(ランキングはこちら)、最新1月13日付でも2位となっています(こちら)。実際、元日を発売日に設定した作品群はクリスマス直後には店着し、大幅なフライングがなされています。下記は自分が住む青森県の店舗情報。

他店でも同様の措置が採られただろうと考えると、オリコンは昨年12月29日まで(1月6日付に反映)と昨年12月30日以降(1月13日付に反映)を実売ベースで計算し、ビルボードジャパンのシングルCDセールス指標は元日発売ながら大幅フライングしている作品は1月13日付のみに反映させるという、集計期間に対する考え方の違いがみられます。

同じく元日リリースされた香取慎吾『20200101』のビルボードジャパンCHART insightをみると、こちらも1月13日付が初週ランクイン、対するオリコンでは1月6日付3位→1月13日付1位となっています。

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(ビルボードジャパンアルバムチャートはアルバムCDセールス(黄色の折れ線グラフで表示)、ダウンロード(同紫)およびルックアップ(同オレンジ。パソコン等にCDを取り込んだ際にインターネットデータベースにアクセスした数を示す)の3つの指標で構成されます。)

 

さて、ビルボードジャパンのシングルおよびアルバムのCDセールス指標については一部変更があったと言えるかもしれません。昨年、集計期間中に発売日を設けながら前週に店着した作品においてはルックアップのみ前週のチャートに反映された例がありました。

今回はその措置がみられないことから、ビルボードジャパンのチャートポリシーが変更されたと捉えてよいでしょう(ゆえに今後、上記ブログエントリーのような事態が再度登場したならば大きな問題だと考えます)。なお、竹内まりや「いのちの歌」のビルボードジャパンCHART insightにおいては1月6日付でもシングルCDセールス指標がカウントされていますが、昨年も数週間同指標で100位未満ながらランクインしているため(CHART insightからシングルCDセールス指標のみ抽出したものはこちらに)、2012年リリース版の店頭在庫が『NHK紅白歌合戦』の前の段階から大きく動いたとみていいでしょう。