イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

シングルCDセールスが目立つ歌手の弱点とは?ロングヒットに至らせるための方法を考える

一昨日発表された、3月23日付ビルボードジャパンソングスチャート。Official髭男dism「I LOVE...」の勢いの凄まじさについては昨日触れました。

そしてこの勢いは、ビルボードジャパン以外の媒体でも伝えられています。

他方、今週シングルCDセールスで首位を獲得したジェジュンBrava!! Brava!! Brava!!」は5位に登場。前週総合首位を獲得し、今週はシングルCDセールス2位となったJO1「無限大」は6位に。シングルCDセールスに長けながら上位に至れない状況となっています。

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総合チャートおよびチャートを構成する8つの指標の順位が一覧化されたCHART insightから最新週における1~7位を抜き出してみると、5位と6位が似通った動きをしており、一方で1~4位および7位が似ています。後者においてはそれぞれの曲のチャート構成比がロングヒットの法則をなぞっています(一部異なる部分もありますが、それについても下記ブログエントリーにて言及しています)。

この法則を踏まえて、5位および6位のCHART insightを見てみましょう。

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ジェジュンBrava!! Brava!! Brava!!」およびJO1「無限大」の特徴は、①シングルCDセールスに対しルックアップの順位が低い、②Twitterの順位が高い、③ストリーミングおよび動画再生という接触指標群の順位が低い…とまとめることが出来ます。そしてこの3つの特徴は、アイドルやK-Pop(の日本向け作品)等によくみられる傾向であり、この3点の克服こそがロングヒット、広く日本全体に親しまれるために必要なことと言えるでしょう。

 

まずは①、【シングルCDセールスに対しルックアップの順位が低い】について。ルックアップとは、パソコン等にCDを取り込んだ際にインターネットデータベースにアクセスされる数のことですが、この乖離について、昨年度以降首位もしくは2位を獲得した曲で比較してみましょう。

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順位の[ - ]は100位未満300位以内を、[   ](ブランク)はシングルCD未リリースによるカウント対象外を指します。シングルCDセールスに強いAKB48グループがシングルCDセールスを制しても同週のルックアップの順位は1位を獲れないことが多く、そこから売上枚数に対する購入者数(いわゆるユニークユーザー数)の多くなさが見て取れます。また[   ]のうち黄色で示したものは、シングルCDをリリースしながらもルックアップが300位に満たないことを示します。2019年度以降に該当する2曲(MONSTA X 「Alligator」およびMAG!C☆PRINCE「Try Again」)は2位獲得の翌週、100位圏外へ急落しています。

シングルCDセールスに長けた曲がルックアップで思うような順位を獲得出来ないことについては、(a)ユニークユーザー数が多くない、(b)パソコン等に取り込む人の割合が高くない、(c)レンタル数が多くない…ことが予想されます。特に(c)においては、今週リリースされたAKB48のシングルですら行きつけのレンタル店で2枚程度しか在庫が置かれておらず、今週シングルCDセールス11位ながらルックアップを制したOfficial髭男dism「I LOVE...」(総合1位)の5分の1程度の在庫数に。予算やレンタルされやすい作品の傾向を踏まえれば、レンタル店側が男性アイドルグループやK-Pop等においては名の知られた歌手を優先することが予想され、他のアイドル等は置かれないかもしくは置かれても極少数という可能性が高いのです。その点を考慮すれば、レンタルチェーンに対し在庫の拡充を働きかけることが大切になってくるものと思われます。

 

続いては②、【Twitterの順位が高い】について。

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最新3月23日付ビルボードジャパンソングスチャートのCHART insightから、Twitterの上位を抜き出したものが上記。ジェジュンさんの最新シングルCD収録の2曲、JO1のファーストシングルから「無限大」を含む3曲、さらに1月に同時デビューしたジャニーズ事務所所属のSixTONESおよびSnow ManのシングルCD表題曲が7位までを占めています。実はこのようなアイドル等が占める傾向はここ1年で顕著になってきています。

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SixTONESおよびSnow ManのシングルCDセールス初加算の前週、1月27日付のCHART insightにおけるTwitter順位では、既に2組のシングルCD収録曲が6位までを独占。ここから、アイドルのファンの方々がTwitter活動を積極的に行っていることが見えてきます。

歌手名と曲名がひとつのツイートに記載されればビルボードジャパンソングスチャートのTwitter指標に加算されるのですが、アイドルファンの中にはその加算を主な目的としたTwitterアカウントも存在し、Twitterでの活動の際には”ビルボード活動”的な名称が付けられることがあることも伺っています。昨日KinKi Kidsの新曲タイトルがトレンド入りしたように、アナウンスされたタイミングで口コミで広がるのは自然ですが、しかし熱心につぶやき続ける活動は人工的と言えるかもしれません。それらツイートはファン同士で盛り上がるゆえにファン以外の方のタイムラインに登場することは稀だと思われますし、もっと言えば邪魔になる可能性すらあります。以前、好んで観ていたドラマにあるアイドルグループ所属の俳優が出演していた際、その方の登場シーンになるとドラマのハッシュタグに、ドラマとは一切関係ない”アイドルグループ”と”新曲のタイトル”が併記されたツイートが散見され、ファンの熱心さは解れども不快感を抱いた次第。ファンがツイート活動に盲目的になるほどドラマのファンがアイドルグループに対してネガティブな印象を抱きかねないというやり方は違うと思うのです。

Twitter指標については以前、ウエイトの減少を提案しました。その理由は上記ブログエントリーにて記載していますが、その提案の時以上にTwitter指標の順位が固定化していること、Twitterの順位と総合とで乖離が発生していること(ウェイトが小さくないためか、今週はTwitter20位以内の曲がすべて総合で100位以内にランクインしているため、一見乖離が起きているようには感じにくいのですが)を踏まえれば、近いうちにビルボードジャパンがチャートポリシーを変更する可能性は十分あり得るでしょう。Twitterでの熱心な活動を、歌手のファンではなくとも歌手や曲に興味は抱いているいわゆるライト層を自然に増やすためにどうするか考える方向に舵を切ったほうが好いと思うのですが、いかがでしょう。

 

そして③、【ストリーミングおよび動画再生という接触指標群の順位が低い】について。先に紹介したジェジュンBrava!! Brava!! Brava!!」は両指標ともに300位以内に登場していません。ミュージックビデオが(というよりもどうやら彼の作品全体が)YouTubeにアップされていないため動画再生指標未ランクインは理解出来るのですが、サブスク再生回数を基とするストリーミングにおいて、たとえばSpotifyを見ると(下記キャプチャ参照)、新曲はシングルCDリリース日に解禁済。しかしストリーミングで300位以内に入っていない状況です。

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アイドル等シングルCDセールスに長けた歌手のファンについては、音源聴取がサブスクよりもCDから、ミュージックビデオ視聴はYouTubeではなくCDに同梱された映像版から…という場合が多いように思われます。それはそれで何ら問題はないのですが、サブスクやYouTubeはライト層がアクセスしやすいツールであることから、そこにアクセスさせる方法を考え実践し、ゆくゆくはライト層からコアなファンへの昇華を目指すべく働きかける必要があるでしょう。

 

今回は今週のチャートより取り上げたゆえ、ジェジュンさんおよびJO1への言及が多くなりましたが、CHART insightから各週の動向および曲毎のチャートアクションを確認すれば、アイドル等の多くが同様の弱点を抱えていることが解るはずです。CHART insightについては下記リンク先をチェックしてみてください。

①シングルCDセールスに対しルックアップの順位が低い、②Twitterの順位が高い、③ストリーミングおよび動画再生という接触指標群の順位が低い…これらアイドル等の3つの特徴、すなわちロングヒットに至れない弱点においては、ファンがヒットを願う意味でTwitter活動を行うゆえに②が発生するという矛盾を孕んでいます。ならば、たとえばツイートする場合にファン以外の方に向けた訴求を行うのが好いかもしれません。そこにミュージックビデオのリンクを貼りツイート内で再生が完了するようにする、もしくはSpotify等サブスクのリンクを貼り誘導させるのもひとつの手段です。歌手名と曲名だけを記載、またひとつのCDのカップリング曲も含めて複数の曲名を載せることは、ファン以外の方にとってはファンの目的がビルボードジャパン向けの活動にあると知ったならば尚の事心象が良くないように思われます。宣伝ならば外向けに曲自体を伝え、そうでないならば自然に聴きたくなる誘導の仕方を研究してほしいと思います。

 

しかしながら、ファンの活動には限界があります。ならば歌手側が率先して上記の誘導を行う必要があるでしょう。たとえばTwitter活動においては星野源さんの例が参考になるかもしれません。

ライブ参加者は必ずしもコアなファンに限らず、コアなファンの友人や恋人等も参加しているはずで、ライブ参加者につぶやきを勧めることは友人や恋人等ライト層(と定義付けられてもおかしくない方)のつぶやきも増え、そこからフォロワーに伝播していく可能性があります。先述したようなレンタルチェーンへの働きかけが現実的ではないとするならば、星野源さんの例は非常に現実的であり、やりやすいと思われます。

 

良曲をコアなファンの間だけで留めておくのは非常に勿体無いというのが私見。そしてその曲を広めるはずの活動が十分になされず、コアなファンの域を超えないこと、逆にコアなファンとライト層で温度差が生じていることは機会損失だと思うのです。自然で巧い手法が開発され、新たな定番となる曲が生まれることを願っています。

3月23日付ビルボードジャパンソングスチャートは「I LOVE...」の首位返り咲きを筆頭にOfficial髭男dismが寡占、その内容をどう読むか

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介します。

 

3月9~3月15日を集計期間とする3月23日付ビルボードジャパンソングスチャート。前週首位のJO1「無限大」は6位へ後退。Official髭男dism「I LOVE...」が4週ぶり、通算3週目の首位を獲得しました。

主題歌に起用されたドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS)が好調に推移し、ドラマとリンクして勢いづく「I LOVE...」。前週にはシングルCDセールス加算初週のポイントを超えたことから、そのタイミングで曲とドラマの勢いについて取り上げました。

そして今週、さらにポイントを積み重ねています。

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「I LOVE...」は、サブスク再生回数を基とするストリーミングや動画再生といった接触指標群が伸びたのは勿論のこと、シングルCDセールスやダウンロードという所有指標群も上昇。数は多くないものの、シングルCDセールスの伸びからはドラマを機に手に取る人が少なくないことが見て取れます。さらにはCDをパソコン等に取り込んだ際のインターネットデータベースへのアクセス数を示すルックアップも首位を獲得し、レンタルする方も多いことが伺えます。

 

最新チャートの集計期間中に放送された『恋はつづくよどこまでも』第9話のリアルタイム視聴率は14.7%(ビデオリサーチ調べ・関東地区の結果。以下同じ)を獲得。また前回の総合視聴率(リアルタイム視聴率とタイムシフト視聴率(1週間以内の視聴)を足し、重複分を差し引いたもの)は21.5%と過去最高を記録しています。そして一昨日放送の最終回は、リアルタイム視聴率がわずかながら伸びて過去最高を記録し、総合視聴率も右肩上がりとなることが予想されます。 

となると次週発表の3月30日付ビルボードジャパンソングスチャートにおいて、「I LOVE...」がさらに伸びるのは確実。最終回のサブタイトルには「I LOVE...」の歌詞が充てられており視聴者を曲に誘導する効果が生まれているのみならず、ドラマの余韻を持続させる新たな動きも登場します。

ドラマのコアなファンをさらに掴んで離さない施策がOfficial髭男dism人気に波及するだろうことは、トップ20入りしたすべての曲が前週に続き今週もポイント前週比100%超えを達成していることから確実(「Pretender」(2位 前週比105.4%)、「宿命」(7位 同105.5%)、「イエスタデイ」(8位 同102.0%)、「115万キロのフィルム」(11位 同100.1%)、「ノーダウト」(17位 同102.1%))。接触指標群の上昇によるライト層の拡充のみならず、所有指標群も伸びていることから【ライト層からコアなファンへ昇華】する動きも登場しているように思われます。今年、Official髭男dismの人気がさらに高まるのは間違いないでしょう。

 

最後に、このOfficial髭男dism人気に際し、ビルボードジャパンソングスチャートのチャートポリシー変更を願う一部の声が見られたことに対する私見を転載します。

最初のツイートは後に訂正しています。

チャートポリシー変更について、8指標の見直しを希望する旨は以前記載しています。

後にストリーミングについてはSpotify導入、有償サービスと無償とで1再生あたりのウェイトを変えるという措置が採られることになりました。

また、米ビルボードソングスチャートにおけるリカレントルールについては下記をご参照ください。

そして、ロングヒットは接触指標群の充実にあると以前示しています。

これらを踏まえた上で、昨夜のツイートとなりました。元々自分がつぶやくきっかけとなった声に、一部歌手の寡占に”飽きた”という表現があり、その極めて私的な、且つネガティブな感情を隠さず発信することに強い違和感等を抱いた次第です。ただ、その疑念が多くの方で共有されるとチャートへの不信につながりかねない可能性もあることから、ビルボードジャパンは定期的に見直しを議論してほしいと思います。

三代目J Soul Brothers「Rat-tat-tat」が今になって新たなミュージックビデオを発信した理由とは

三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBEが今週、「Rat-tat-tat」の新たなミュージックビデオを公開しました。

YouTubeの説明欄によると、今回のミュージックビデオは『昨年末に募集したラタタダンスを踊って三代目 J SOUL BROTHERSと一緒にスペシャルムービーを作ろうというラタタチャレンジ企画に参加した日本全国のユーザーの動画と「Rat-tat-tat」MUSIC VIDEOをミックスしたスペシャルムービー』とのこと。「Rat-tat-tat」は今日リリースされたニューアルバム『RAISE THE FLAG』に収録されていますが、元々配信リリースされたのは半年前。なぜこのタイミングで今回公開なのか、気になっていました。

実はこの「Rat-tat-tat」、近年の三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBEの曲の中でも異質なチャートアクションを見せています。ビルボードジャパンソングスチャート、CHART insightをみると。

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昨年9月30日付で14位に初登場を果たし、計3回トップ20入り。先週発表された最新3月16日付では100位以内には入っていませんが、およそ半年の間エントリーを果たしています。この「Rat-tat-tat」を『RAISE THE FLAG』収録の他の曲と比べてみると。

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先行でシングルCD化された曲のうち、5曲のチャートアクションは上記に(ダブルAサイドシングルの場合、どちらか1曲にのみシングルCDセールスおよびルックアップ指標が加算されるため、「RAISE THE FLAG」および「White Wings」はシングルCDセールス指標等が加算されていません)。黒の折れ線で示される総合チャートおよび、総合チャートを構成するサブスクの再生回数に基づくストリーミング(青の折れ線)やYouTube等の動画再生(同赤)において、「Rat-tat-tat」が明らかに高く、また勢いを持続させていることが解ります。

 

これを踏まえるに、このタイミングで「Rat-tat-tat」の新たなミュージックビデオが公開されたことにはいくつか大きな意味があるものと考えます。

理由の1つ目はアルバム『RAISE THE FLAG』のリード曲としての位置付け。実際にアルバムから直近でリリースされたのは「冬空」と「White Wings」のダブルAサイドシングルにはなりますが、より勢いのある「Rat-tat-tat」をアルバムの顔にしたほうが好いという判断ゆえでしょう。

2つ目は、ソングスチャートでの上昇という目的。ビルボードジャパンアルバムチャートで初登場を飾る週、収録曲がソングスチャートでも上昇する傾向があります。特にストリーミングおよび動画再生という接触指標群に長けた曲(もしくは歌手自体が接触指標群で大きな支持を集める場合)はその傾向が強く、最近ではOfficial髭男dismやKing Gnuが好例として挙げられます。今回、「Rat-tat-tat」を含むアルバム『RAISE THE FLAG』は発売と同日にサブスク解禁。

新たなミュージックビデオの報を聞いてアルバムにアクセスし「Rat-tat-tat」に積極的に触れる方が増えれば、最終的にソングスチャートで伸びることが期待されます。そしてソングスチャートでの上昇を機に収録アルバムの存在を知る人が増える…という好循環につながるだろうことを考えれば、この好循環を目的にソングスチャートを押し上げるべく採られた施策が「Rat-tat-tat」の新たなミュージックビデオ投入と言えるでしょう。

(ただし、YouTubeの説明欄には動画の著作権記載がなく、もしかしたら動画再生指標のカウント対象となるISRC(国際標準レコーディングコード)が未付番である可能性があります。仮にそうだとすればチャート上昇が鈍くなるわけで、至極勿体無いと思うのです。)

そして3つ目はCDの購入促進。そもそも「Rat-tat-tat」はアルバム収録により初CD化。さらに今回のミュージックビデオにはTikTokに投稿した多数の方が登場するため、選ばれた方が記念に購入するという可能性も考えられます。TikTokでは曲に用いられる”ラタタダンス”がハッシュタグとして付けられた動画の再生回数が1月末の段階で2億を超えており(まさかのローランドも出演! 三代目JSB、爆笑コスプレ続出の「Rat-tat-tat」MV公開 – 音楽WEBメディア M-ON! MUSIC(1月29日付)参照)、ラタタダンスの参加者をCD購入に取り込む狙いもあるものと見られます。

 

「Rat-tat-tat」はCM起用やTikTokでの展開、今回の参加型ミュージックビデオの登場等、長期に渡る施策を展開しロングヒットに至らせています。この動きがアルバムの飛躍につながるか、そしてソングスチャートでも駆け上がるか…来週水曜に発表される3月30日付ビルボードジャパン各種チャートに注目しましょう。

ロディ・リッチ遂に10連覇、リル・ウージー・ヴァート3曲トップ10入り、ドレイクが新記録達成…3月21日付米ビルボードソングスチャートをチェック

ビルボードのソングスチャートをチェック。現地時間の3月16日月曜に発表された、3月21日付最新ソングスチャート。ロディ・リッチ「The Box」が遂に10連覇を達成し、リル・ウージー・ヴァートがトップ10に3曲初登場。また、ドレイクがソングスチャート(Hot 100)における史上最多ランクイン記録を更新しました。

遂に10週連続で首位の座に就いたロディ・リッチ「The Box」。10週以上首位の座を獲得したのはこれが39曲目となり、昨年19週という史上最長首位記録を更新したリル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」以来の二桁記録達成です。ストリーミングは前週比8%ダウンの4510万を獲得し同指標11週目の首位、ダウンロードは同12%ダウンの10000(同9位)、ラジオエアプレイは同3%アップの6560万(同10位)と、未だラジオエアプレイが伸びています。

他方、2位以下は大きく動きました。

前週自己最高の3位に上昇したデュア・リパ「Don't Start Now」はさらに1ランク上昇し2位に到達。ラジオエアプレイは前週比3%アップの9780万となり、ポスト・マローン「Circles」(今週総合5位)を抜いて遂に同指標を制覇。所属レコード会社のワーナーで女性歌手がラジオエアプレイを制したのは今から25年前のマドンナ「Take A Bow」以来となります。

4位にはザ・ウィークエンド「Blinding Lights」が3ランクアップし、彼にとって8曲目となるトップ5ヒットとなりました。上昇の理由は3月7日に放送された『サタデー・ナイト・ライブ』(NBC)でこの曲を披露したため。ダウンロードは前週比31%アップの22000となり同指標2位を獲得、ストリーミングは同2%ダウンの2140万(同指標12位)、ラジオエアプレイは同14%アップの6420万(同11位)となっています。

今週は、米ビルボードアルバムチャートを制したリル・ウージー・ヴァートが躍進。アルバム『Eternal Atake』収録の全18曲を含む20曲が今週のソングスチャート100位以内に登場し、そのうちアルバム収録曲の「Baby Pluto」が6位、「Lo Mein」が8位、「Silly Watch」が9位にいずれも初登場を果たしました。

トップ10入りした3曲はストリーミングで2~4位を獲得。トップ10に3曲以上を初登場で送り込んだのはJ・コール(2018年5月5日付)、ドレイク(2018年7月14日付)およびリル・ウェイン(2018年10月13日付)以来となる4組目。リル・ウージー・ヴァートはこれまで、ミーゴスに客演参加した「Bad And Boujee」で2017年にチャートを制したほか2曲のトップ10ヒットを持っていますが、今回の3曲ランクインによりトップ10ヒットは計6曲に。そして次週さらに増やすかもしれません。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (1位) ロディ・リッチ「The Box」

2位 (3位) デュア・リパ「Don't Start Now」

3位 (2位) フューチャー feat. ドレイク「Life Is Good」

4位 (7位) ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」

5位 (4位) ポスト・マローン「Circles」

6位 (初登場) リル・ウージー・ヴァート「Baby Pluto

7位 (6位) アリゾナ・ザーヴァス「Roxanne」

8位 (初登場) リル・ウージー・ヴァート「Lo Mein」

9位 (初登場) リル・ウージー・ヴァート「Silly Watch

10位 (10位) ジャスティン・ビーバー feat. クエイヴォ「Intentions」

冒頭で紹介したドレイクの最高記録更新について。

リル・ヨッティおよびダベイビーとの「Oprah's Bank Account」が今週89位に初登場を果たしたことで、ドレイクは208曲目となるソングスチャート100位以内ランクイン。グリー・キャストの持つ207曲を上回り、単独での最多記録を達成しました。

ドレイクは2009年5月23日付で「Best I Ever Had」が92位に初登場して以来、10年10ヶ月で単独最多記録を更新。一方のグリー・キャストはドレイク初登場の2週間後にジャーニーのカバー「Don't Stop Believn'」を4位に、エイミー・ワインハウスのカバー「Rehab」を98位にそれぞれ送り込み、チャート上でのキャリアをスタートさせています。グリー・キャストはドラマの出演者による作品群ということもあり、2013年10月までのわずか4年強の間に207曲を一気にランクインさせていますが、ドレイクは今回遂にグリー・キャストを抜き去った形です。なお現在の最多ランクイン記録トップ10はドレイク、グリー・キャストに次いでリル・ウェイン(168曲)、エルヴィス・プレスリー(109曲)、ニッキー・ミナージュ(108曲)、カニエ・ウェスト(107曲)、ジェイ・Z(100曲)、クリス・ブラウン(99曲)、テイラー・スウィフト(97曲)、フューチャー(93曲)の順となっています。

 

さて来週以降ですが、ザ・ウィークエンドが今週末に「Blinding Lights」を含むニューアルバム『After Hours』を、デュア・リパが4月3日に「Don't Start Now」を含むニューアルバム『Future Nostalgia』をリリースすることによりそれぞれの収録曲が再来週および4週後のチャートで上昇することが見込まれ、「The Box」との首位争いが面白くなりそうです。そして次週はリル・ウージー・ヴァートのアルバム『Eternal Atake』のデラックス・エディション収録曲が大挙初登場を果たす可能性が。デラックス・エディションについては昨日記載していますが、トップ10の初登場曲数のみならず、今週ソングスチャートに20曲を送り込んだリル・ウージー・ヴァートが次週は何曲ランクインさせるかも気になります。

アメリカ、”デラックス・エディション”の新たな策は浸透してしまうのか?

3月6日にリリースされたリル・ウージー・ヴァートの2枚目のアルバム『Eternal Atake』が絶好調。日本時間の今朝発表された、最新3月21日付米ビルボードアルバムチャートで初登場首位を獲得しました。

初週の288000ユニットのうち、ストリーミング再生回数のアルバム換算分(SEA)は278000。18曲入りのアルバムがサブスク等のストリーミングで初週4億回聞かれた計算に。集計期間1週間でのストリーミング再生回数4億超え達成は、2018年10月13日付でリル・ウェインが『Tha Carter V』が成し遂げた4億3300万回以来となります。

アルバムの勢いはソングスチャートにも波及し、日本時間の明日朝速報発表予定の同日付ソングスチャートでは、リル・ウージー・ヴァートがトップ10に3曲を送り込むのではないかと、チャートを予想するサイモン・フォークさんは分析します。トップ10のうちオレンジで表示されたものがすべてリル・ウージー・ヴァートの曲です。

そのリル・ウージー・ヴァートが新たな策を採ってきました。

たとえばSpotifyでデラックス・エディションを開くと、アルバム名は『Eternal Atake (Deluxe) - LUV va. The World 2』と表示されます。『LUV va. The World 2』は単体ではアルバムとして表示されません。

このデラックス・エディションの策を採る歌手が出始めています。たとえばヤング・サグは昨夏リリースのアルバム『So Much Fun』に5曲を加えて昨年12月20日にリリース。

またマック・ミラーは、今年1月にリリースされた『Circles』に2曲を追加したバージョンを今週末リリースする模様です。

しかしながら、リリースの翌週にデラックス・エディションを出すというのは聞いたことがありません。

ヤング・サグ『So Much Fun』のデラックス・エディションがはじめて反映された今年1月4日付の米ビルボードアルバムチャートでは、『So Much Fun』は前週から26ランク大幅アップし10位に到達。他方、”(Deluxe)”と記載されたバージョンはチャートに登場しておらず、デラックス・エディションが合算され集計されたものと思われます(同日付チャートはこちら)。となると、『Eternal Atake』についても同様の合算措置が採られる可能性があります。デラックス・エディションが解禁された日、3月13日付の米Spotifyデイリーチャートではトップ10のうちリル・ウージー・ヴァートが9曲を占め、うち6曲がデラックス・エディション収録曲であることから、次週の米ビルボード、アルバムチャートおよびソングスチャート共にリル・ウージー・ヴァートが大暴れする可能性は高いと思われます。

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そこでタイトルについてですが…強い私見と前置きして書くならば、個人的にはこのデラックス・エディションは好みません。弊ブログではこのデラックス・エディションを以前から疑問視しています。同じ作品を2回買わせることでファンに、またオリジナルバージョンの在庫が残っている段階でデラックス・エディションを売り出すことで小売店に、それぞれ経済的な負担がかかるというのがその理由。

ですが、この疑問視はあくまでCDリリースをメインとする場合であり、ダウンロードに関しては後出し分を追加で買えば好いでしょうし、ましてやサブスクにおいてはこのデラックス・エディションをお気に入り登録等すれば好いだけの話、なのかもしれません。それでも、1週間しか間を置かないならばはじめからデラックス・エディションをオリジナルバージョンとして出せばよかったのにと思うのですが。

デラックス・エディションに疑問を抱いた自分に、日刊US HIPHOP NEWSのTwitterアカウントからリプライをいただきました(勝手ながら引用させていただきました。問題があれば削除いたします)。たしかに再生回数が稼げるのは先のSpotifyでも証明済なのですよね。

ただ、今後もしかしたら米ビルボードがアルバムチャートにおけるデラックス・エディションの換算方法を変更する可能性もあります。米ビルボードは昨年末、グッズとのセット販売、いわゆるバンドルについてチャートポリシーの変更を実施しました。

この速やかな変更を考えれば、近いうちに今回のリル・ウージー・ヴァートのようなデラックス・エディションについても議論されるかもしれません。浸透してしまう前にその芽が摘まれるのではないか?というのが自分の予想です。

「POISON」「3月9日」は「カブトムシ」に学んでほしい…いつどんなリバイバルヒットが生まれてもいいように”受け皿”を充実させよ

ネットのバズがリバイバルヒットを生み出す…最新3月16日付ビルボードジャパンソングスチャートからはそのような例が確認出来ます。

1998年7月にリリースされた反町隆史の「POISON~言いたい事も言えないこんな世の中は~」が、赤ちゃんに聞かせると泣き止むいう説がワイドショーで特集され、ネット上の話題に拍車がかかり、Twitter 2位、ダウンロード38位と急伸して、総合38位に初登場した。

【ビルボード】JO1「無限大」がシングル344,299枚を売り上げ総合首位 赤ちゃんが泣き止むと話題の反町「POISON」はTwitter 2位で総合38位に | Daily News | Billboard JAPAN(3月11日付)より

『とくダネ!』(フジテレビ 月-金曜8時)が【反町隆史「POISON~言いたい事も言えないこんな世の中は~」を聴いた赤ちゃんが泣き止む説】を紹介したのは今月5日のこと。しかしながらこの説を遡れば、ロケットニュース24で取り上げられたのが先月末、さらに反町隆史さん自身がラジオ番組で言及したのが昨年11月のことでした。

それゆえ、リバイバルヒットにはテレビ効果が大きいことを実感するのですが、一方で、この曲の音源を見つけるのに苦労した方は少なくはなかっただろうなということを、チャートアクションから想起することが出来ます。

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最新3月16日付ビルボードジャパンソングスチャートで38位に登場した「POISON~言いたい事も言えないこんな世の中は~」は、先述した記事にもあるようにチャート構成比の8割強がTwitter、2割弱がダウンロードで構成。シングルCDが十中八九廃盤のため購入やレンタルが出来ないこと、このバズをラジオがあまり追いかけていなかったことも原因でしょうが、ミュージックビデオおよびサブスクが未解禁であることはさらなる上昇に至れなかった要因ではないかと思うのです。これを至極勿体無いと考える理由は、同じ週に急伸を遂げた曲と対比すると明らかなため。

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 卒業シーズンの定番曲にして、タイトルの日付前後に盛り上がるレミオロメン「3月9日」は今年も上昇。最新チャートの集計期間が3月2~8日ゆえ今年は次週も上位登場が予想されますが、こちらのチャート構成比はシングルCDおよびルックアップ以外の6指標で構成されています。昨年の3月4~10日を集計期間とする2019年3月18日付ビルボードジャパンソングスチャートでも「3月9日」がランクインしているのですが、チャート構成比において今年はストリーミングが際立って高いことが解ります。

昨年のチャート構成比は上記リンク先をご参照ください(なお、昨年はTwitter指標も高いのですが、これはおそらく(曲名ではない)3月9日が集計期間に含まれているゆえでしょう)。昨年のストリーミング指標が著しく低かった理由は、レミオロメンのサブスク”引き上げ”にあると上記ブログエントリーで結論付けたのですが、一方で今年のストリーミング指標が上昇したのは、昨年10月2日にレミオロメンがサブスク一斉解禁を行ったことにあると言えるでしょう。

話題になったり、ふと聴きたいと思ったときに、ダウンロードやサブスク、ミュージックビデオといったユーザーの受け皿となるものがいくつあるか…これが話題曲のチャート押し上げ幅に大きく関わってくると思うのです。

 

この最良の例を、aiko「カブトムシ」で見ることが出来ます。aikoさんはシングル「青空」のリリースとなる2月26日にサブスクおよびミュージックビデオのフルバージョンを一斉解禁し、ダウンロードも充実させていますが、その前週に『井口理のオールナイトニッポン0』(ニッポン放送 木曜27時)にゲスト出演しKing Gnu井口理さんと「カブトムシ」を共演したことで、サブスク等解禁効果が反映される1週前の段階でチャートを賑わせ始めました。

その段階で一度ブログにまとめていますが、そこから2週経過した今週は総合14位に入り、2週連続でトップ20入りを果たしています。

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特筆すべきはカラオケの急浮上。2019年度の同指標開始以降一度として100位未満にならなかったのも注目すべきですが、この4週で72→72→28→20位と急浮上。またラジオエアプレイも2週連続で100位未満ながら300位以内に入りポイント獲得に至っています。仮にサブスク等が解禁されていなかったならば動画再生はそこまで大きくなく、さらにサブスク再生回数を基とするストリーミング指標はゼロと予想され、ここまでのリバイバルヒットには至れなかったでしょうし、カラオケやラジオエアプレイにも反映されなかったと思われます。そう考えれば受け皿の多さ、そして動画再生指標においてはミュージックビデオフルバージョンの存在が極めて大事であることを実感するのです。

いや、上記ミュージックビデオの再生回数は現段階で100万強であり、下記で紹介するラジオでの共演動画が動画再生指標に大きく寄与しているものと思われます。この動画にはレコード会社等が著作権管理団体として登録されており、動画のアップロード主もしくは著作権管理団体のどちらが登録したかは解りかねるものの、こちらが放送直後から消されていないのを見る限り、レコード会社等が”敢えて残す”判断をしているのかもしれません。この動画に、ビルボードジャパンソングスチャートにおける動画再生指標のカウント基準であるISRC(国際標準レコーディングコード)が付番、もしくはUGC(ユーザー生成コンテンツ)とみなされていることが、動画再生指標上昇の一因と言えそうです。”敢えて残す”の成功例は、先に掲載した2月28日付ブログエントリーにて紹介していますのでそちらを是非。

ラジオ共演動画の動画再生指標獲得は反則行為と捉える方もいらっしゃるかもしれませんが、ストリーミング指標が高値安定していることを踏まえるに、ラジオ共演は「カブトムシ」のヒットのひとつのきっかけであり、やはり受け皿の充実が瞬発力の高さに繋がっていることは確実。もしかしたら「カブトムシ」はそのままロングヒットにも至れるのかもしれません。他方、日付タイトルによって毎年この時期にヒットするレミオロメン「3月9日」については、今年ストリーミングは充実してきたといってもミュージックビデオは未だショートバージョンのままであり、さらには曲名でYouTube検索すると、他者のカバーバージョンが最上位に来るという状況。これは歌い手の名が伏せられ、しかもフルバージョンと謳っていることから生まれる勘違いの多さが最上位登場の理由と思われます。今朝の段階の結果(キャプチャ)は下記に。

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カバー動画にアクセスしてしまった方が愕然とし本家を見る前に離れてしまうという心理は十分あり得るでしょう。またミュージックビデオがショートバージョンゆえ動画再生が伸びないのは以前から指摘していることでもあり、動画再生指標100位未満(300位以内には登場していますが)という状況には納得してしまうのです。非常に勿体無いと思わざるを得ませんし、だからこそaikoさんがサブスク解禁時にミュージックビデオもフルバージョンで解禁したことは大きな意味があるのです。

 

いつどんなリバイバルヒットが生まれるかは分かりませんが、いつどんなリバイバルヒットが生まれてもいいように、曲を所有、それ以上に接触出来る環境を整備してユーザーの受け皿を増やすことは必須と言えます。増やすほどにヒットへの瞬発力、そして持続力が上がることは、aiko「カブトムシ」を見れば自明。今回、反町隆史「POISON~言いたい事も言えないこんな世の中は~」はリバイバルヒットしたとは言えども、ユーザーの受け皿があまりに少ないゆえ瞬発力が高くなかったと言えるでしょう。レコード会社や芸能事務所は、過去曲についても増やしていくことが求められます。

最新のストリーミングソングスチャートにみる、サブスク人気曲の3つの特徴

最新3月16日付ビルボードジャパンソングスチャート。前週首位を獲得したHey! Say! JUMP「I am」が54位へ急落したことについて、昨日私見を掲載しました。

サブスクの再生回数を基とするストリーミング指標がこの1、2年で盛り上がっていることにより全体のポイントの水準が上昇、Hey! Say! JUMP(そしてサブスク未解禁勢)はそれに埋もれてしまう可能性を指摘したのですが、そのストリーミングに強い曲にはいくつかの傾向が見て取れます。そこでビルボードジャパンのストリーミングソングスチャート上位100曲から分析してみます。

こちらは最新3月16日付のストリーミングソングスチャート。

このチャートは2017年10月9日付より上位100曲が掲載されているため、チャートイン数(登場週数)における現在の最長記録は128週となります。

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曲が初めてリリースされた年を併記したのが上記。そこからチャートインしている曲を年別にまとめたのが下記。

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最新曲も多いながら、今年リリースの作品が全体の4分の1程度であり、一方では今から20年以上前の作品も登場しています。歌手別にみると。

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これらから、ストリーミングソングスチャート…すなわちサブスクで強い曲の特徴を挙げるならば。

 

① サブスク世代と言える歌手の大ヒットと、インスタントクラシックの登場

King GnuOfficial髭男dismそしてあいみょんさんは間違いなく今の時代を代表する歌手と言えますが、3組ともストリーミングの強さが際立っており、この3組でチャートイン全体の3割を誇ります。オリジナルアルバムリリース直後、その勢いがセールスに移行してストリーミングが下火となるということはなく、セールス面でもヒットしながらストリーミングも上昇しており、サブスク解禁がどれだけ意味のあることかをこの3組が証明しています。

R&B雑誌を読んでいた自分は、リリースされて間もなく”これは定番化する”と思った曲のことをインスタントクラシックと呼んでいたと記憶しています(実際、ラジオ番組で松尾潔さんがそのような発言をしています(松尾潔 2000年アメリカR&Bチャートを振り返る - miyearnZZ Labo(2015年2月12日付参照))。そういう意味においては、この3組の曲はサブスクを特に愛用するとされる世代におけるインスタントクラシックと言えるかもしれません。

そしてこの3組のみならず、たとえば歌手別で5位タイとなる5曲をランクインさせているMrs. GREEN APPLEの楽曲群や、ちゃんみな「Never Grow Up」、wacci「別の人の彼女になったよ」等も長期エントリーを果たしており、インスタントクラシックと言えそう。[ALEXANDROS]「ワタリドリ」は2015年リリースの曲ながら、ソングスチャートでは最長となる128週ランクインを果たしているのも特筆すべき状況です。デビューから長くても10年程度、サブスクが当たり前になってきた頃に登場した新しい世代がサブスク中心に支持され台頭しつつあることが伺えます。だからこそより広く認知させ、次のKing GnuOfficial髭男dismおよびあいみょんさんの位置にまで上り詰めるための手法を、レコード会社等が講じないといけないとも思っています。

 

② サブスク解禁から間もないことによる話題性の高さ

歌手別ランクイン曲数であいみょんさんに並び、7曲ランクインしているaikoさんは、2月26日のサブスク解禁で一気に注目が高まりました。

ここでも触れた、小袋成彬さんのラジオ発言(をみやーんさんが書き起こした内容)をaikoさんが知ったのがサブスク解禁のきっかけだと、aikoさん本人が『音楽と人』2020年4月号で語っているそう。

aikoさんにおいては解禁前週のラジオ出演もサブスク上昇に大きく寄与しているものと思われます。

ストリーミングソングスチャートにランクインした7曲中、最上位に「カブトムシ」(17位)が入っているのはラジオの反響も理由かと。この出演や新曲「青空」(34位)等を機にaikoさんの曲に触れる方が多いことが、解禁直後の勢いの大きさにつながっています。

 

TikTokとの相性の良さ

ビルボードジャパンでは毎週、TikTok週間楽曲ランキングとして上位20曲を紹介しています。TikTokでどう活用されているかも述べられており、非常に興味深いチャートとなっています。

最新となる3月2~8日を集計期間とするチャート(3月16日付ビルボードジャパンソングスチャートと対象期間が同一)では、上位20曲中7曲がストリーミングソングスチャートに登場。新曲のみならず過去曲が定番化したTikTok週間楽曲ランキングにおいて重複が35%というのは親和性が高い証拠と言えるでしょう。最新のTikTok週間楽曲ランキングで8位、ストリーミングソングスチャートで69位に入ったiri「会いたいわ」についてはビルボードジャパンで特集も組まれており、TikTokが無視出来ない存在でありストリーミングにも影響を及ぼすことがこの特集から見えてきます(し、特集の後半でそのことに言及されています)。

  

サブスクで強い曲の傾向を3点、示してみましたがいかがでしょうか。昨日はHey! Say! JUMPの急落について述べ、デジタル解禁の必要性を説いたのですが、高位置とは言えないものの嵐が2曲ストリーミングソングスチャートにランクインしていることを踏まえれば、やはり解禁を前向きに考える必要があると思います。今週ソングスチャートを制したJO1「無限大」がストリーミングでも54位に入っていることで所有と接触がバッティングしにくいことも想像出来るため、尚の事です。

そして勿体無いと思うのは、米津玄師さんの日本におけるサブスク未解禁でしょう。DAOKOさんへの参加曲を含む3曲がランクインしていますが、これらはいずれも高値安定しているため、解禁されたならばチャートを席巻するかもしれません。またback numberにおいてはベストアルバム『アンコール』(2016)後の曲が未だ解禁されないままですが、こちらも解禁に至れば大きく上昇することは過去曲の動向を踏まえれば容易に想像付きます。是非とも前向きな検討をお願いしたいところです。