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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米津玄師が遂にサブスク解禁、ビルボードジャパンソングスチャートへの影響はどうなる

この2週間ほどでリリースされた作品や話題の音楽トピックを踏まえて関連作品を聴こうとしても、サブスクにないため手軽に接することができないという事態が多く発生しています。というわけで、解禁祈願の意味を込めて掲載するエントリーを前日まとめ、今日アップを予定していたのですが、状況は一変しました。

ニューアルバムのリリース日にその『STRAY SHEEP』を含め米津玄師さんの楽曲すべてが解禁。上記ツイートへのリアクションにはごく一部に”購入したばかりなのに”というものもありますが、個人的には『STRAY SHEEP』をサブスク解禁してもアルバムのセールスが極度に落ちるということはないと考えています。というのも、『STRAY SHEEP』は出荷枚数が既に100万枚を突破。

実売ではないゆえ実際の動向を注視する必要がありますが、セールスに一定の見込みが立ったことでサブスク解禁に至ったのかもしれません。仮にセールスを重視しすぎるならば新作のみ未解禁という選択もアリでしたでしょうが、おそらく米津玄師さん側はどこかで解禁を行いたいという思いがあり、その最高のタイミングがここだったと考えたのでしょう。実際、この1週間で米津玄師さんは様々なメディアに出演したりイベントに参加することで、その全てがアルバムセールスを中心につながるものと考えます。

『MIU404』出演者との共演のほか、『フォートナイト』のイベントに日本人歌手として初めて出演することも決定しています。

『フォートナイト』で披露することがアナウンスされているのが「感電」。

ドラマ『MIU404』(TBS 金曜22時)の主題歌であり、アルバムからのリード曲としてビルボードジャパンソングスチャートでは2週連続で2位をキープ。ドラマの主演である綾野剛さん、星野源さんとの対談番組が土曜に放送されるほか、3話から登場した菅田将暉さんのラジオ番組には出演済。これら共演はドラマを想起させるに十分で、「感電」が収録された『STRAY SHEEP』や楽曲単位での購入につながるでしょう。そしてライト層を中心に接触指標群へも波及していきます。

 

となると気になるのは、来週水曜に発表される8月17日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)の動向。米ではアルバムチャート初登場のタイミングでストリーミングに強い歌手の楽曲が大挙ソングスチャートにもエントリーを果たすことが恒例化、直近の8月8日付ソングスチャートではテイラー・スウィフトが「Cardigan」で首位を獲得、3曲がトップ10入りしたほか、アルバム『Folklore』収録の全曲(CDのみ収録のボーナストラックを除く)をすべて100位以内に送り込んでいます。

この動きが『STRAY SHEEP』でも見られるかもしれません。実際、昨年あいみょんさんやONE OK ROCKのアルバムが初登場を果たした週にビルボードジャパンソングスチャートでも大量エントリーを果たしています。

尤も『STRAY SHEEP』においては『Folklore』のように全曲がミュージックビデオやリリックビデオになってはいません(しかし本日8時の段階で別曲のミュージックビデオが公開予定)。またあいみょんさん等が大量エントリーを果たした1年半前と比べてストリーミング指標の再生回数が大きく上昇しているという違いはありますが、『STRAY SHEEP』がそして米津玄師さんが話題になればなるほど、アルバムから多くの曲がソングスチャートで100位以内にエントリーを果たし、また「感電」はふたたび1万ポイントの大台を回復するかもしれません。「感電」は解禁された週を集計期間とする7月20日付で2位に初登場を果たし20210ポイントを獲得、以降7月27日付で2位(12573ポイント)→8月3日付で8位(8041ポイント)となっています。ポイント前週比が2週続けて6割台となっているのは所有指標が大きく影響しているためであり、動画再生に加えてストリーミングが加算対象となれば接触指標群が充実し、ポイント前週比が緩やかになることは以前ブログで指摘した通りです。

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本日には最新チャートが公開されるゆえ上記CHART insightは8月3日付のものとなりますが、ここから解るのは「感電」がラジオで好調に推移し、カラオケが既に解禁されているということ。サブスク再生回数に基づくストリーミング指標が加算されるのは8月17日付以降となりますが、そのタイミングでは購入行動がアルバム単位にシフトし楽曲単位でのダウンロードが下がるだろう一方、ストリーミングの初加算のみならずアルバムリリースやイベント開催等に伴うTwitter指標の増加、ラジオエアプレイの増加(ただしアルバム収録の他の曲と票割れする可能性も)、ミュージックビデオ再生回数の増加等が見込まれます。となると今週の動向如何とはなりますが「感電」が8月17日付ソングスチャートにてポイント、順位共に回復することはほぼ間違いないでしょう。

そうなれば、これまで10週もの間1万ポイントを超えているYOASOBI「夜に駆ける」との争いもさることながら、8月5日にシングルCDをリリースしたSexy Zone「RUN」との戦いも気になります。Sexy Zoneはこの3作におけるシングルCDセールス加算初週の総合ポイントが16293(「イノセントデイズ」2018年6月18日付)→17050(「カラクリだらけのテンダネス」2018年12月17日付)→17027(「麒麟の子」2019年11月4日付)と推移。他方「夜に駆ける」は8月3日付で17028ポイントを獲得しており、そこにさらに「感電」も首位争いに絡む可能性が生まれてきたと言えるかもしれません。

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RUNは大量のTwitter指標を稼ぎ8月3日付ソングスチャートで初の100位以内に登場。上記ミュージックビデオはショートバージョンながら動画再生指標に初加算されています。しかしビデオがフルバージョンではないこと、そしてダウンロードやサブスクが解禁されていないため獲得可能な指標は限られています。これが8月17日付ソングスチャートにどう影響するのか気になります。

 

 

米津玄師さんがサブスクを解禁したことで、いよいよサブスク未解禁歌手は進退を迫られたというのが自分の見方です。現に今回のサブスク解禁記事を引用し、”自分の好きな歌手が揃ったからサブスクだけで十分”とつぶやく方もいらっしゃいました。サブスク未解禁の歌手はその方にとって存在しないことになるわけです。

サブスク等デジタルに明るくない作品はチャート上でも不利になります。既に8月3日付ソングスチャートではシングルCD未リリースの曲がトップ10のうち7曲を占め、その前週(7月27日付)では4位までがCD未リリースなのです。CD未リリースながらポイントが高水準であることから、デジタルに明るくない作品はロングヒットはおろか単発的にヒットに至らせるのも厳しくなっていることが解ります。仮に8月17日付で「感電」がチャートを制したならば尚の事、デジタルに明るくない歌手、また新譜のみサブスク未解禁の歌手は方針を転換しないといけないのではと強く思いますし、そう願うばかりなのです。

テイラー・スウィフト、史上初となるアルバム/ソングスチャートを制覇…8月8日付米ビルボードソングスチャートをチェック

ビルボードのソングスチャートをチェック。現地時間の8月3日月曜に発表された8月8日付最新ソングスチャート、テイラー・スウィフト「Cardigan」が初登場で首位を獲得し、史上初となるソングス/アルバム両チャートでの初登場首位を成し遂げました。

前週まで通算7週1位を獲得したダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」はストリーミングが前週比9%ダウンの3290万(同指標3位)、ダウンロードが同6%ダウンの10000(同指標7位)、ラジオエアプレイが同10%アップの6790万(同指標2位)。一方でテイラー・スウィフト「Cardigan」はストリーミングが3400万、ダウンロードが71000と2指標を制しています。ラジオエアプレイは1270万となり同指標50位以内に入らなかったのですが、「Cardigan」は「Rockstar」とのラジオエアプレイでの差をダウンロードで逆転したと言えます。これにはいわゆるフィジカル施策が有効に作用し、また別バージョンも設けて合算するという戦略も集計期間内に行われています。これら施策が有効に作用し、女性歌手によるソロの作品としてはマライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」が2020年1月4日付まで3週間首位を獲得して以来となる頂点に上り詰めたのです。

ゆえに、次週はダウンロードが急落する一方でストリーミングが安定且つラジオエアプレイが上昇しなければ「Cardigan」の2連覇は難しいというのが私見ですが、しかしながら今回の首位獲得によりテイラー・スウィフトは大きな記録をいくつも打ち立てています。

まずは冒頭でも触れたように、アルバム『Folklore』および収録曲の「Cardigan」が8月8日付米ビルボードアルバム/ソングスチャートを共に初登場で制覇。初登場の同時制覇は史上初となります。ソングスチャートは1958年8月4日付、アルバムチャートは1956年3月24日付にスタートしており、60年以上の歴史の中で初となるわけです。この報道に触れたテイラー・スウィフトはこのようなリアクションを示しています。

「Cardigan」は史上41曲目となる初登場での首位獲得となりました。テイラー・スウィフトにとっては「Shake It Off」(2014年9月6日付)以来2曲目となり、初登場首位に輝いた曲を複数持つ歌手はこれで8組目。アリアナ・グランデの4曲を筆頭に、ジャスティン・ビーバーマライア・キャリーおよびドレイクが3曲、レディー・ガガ、トラヴィス・スコット、ブリトニー・スピアーズが2曲となり、テイラーはここに並んだわけです。また2020年の初登場首位獲得曲は「Cardigan」は6曲目となり、1年での6曲という記録は史上最多となります。

6曲といえば、「Cardigan」はテイラー・スウィフトにとって6曲目の首位獲得曲となりました。「We Are Never Ever Getting Back Together」(2012 3週)、「Shake It Off」(2014 4週)、「Blank Space」(2014 7週)、「Bad Blood (feat. ケンドリック・ラマー)」(2015 1週)、「Look What You Made Me Do」(2017 3週)に次ぐ記録で、6曲以上の首位獲得者はテイラーが26組目となります。

さらには今週、『Folklore』から「The 1」が4位に初登場したことで、トップ5に2曲を同時に初登場させたのはリル・ウェイン(2018年10月13日付)、ジュース・ワールド(2020年7月25日付)に継いで2組目となり、女性歌手では初となりました。リル・ウェイン、ジュース・ワールドは共に2位と5位での初登場であり、4位以内に2曲初登場というのは初めてです。

テイラー・スウィフトは『Folklore』から、ボン・イヴェールとの「Exile」を6位に送り込みました。トップ10に3曲以上同時に初登場させたのはテイラーにとって初めてであり、ドレイク(2018年7月14日付)、リル・ウェイン(2018年10月13日付)、ジュース・ワールド(2020年7月25日付)、J・コール(2018年5月5日付)、リル・ウージー・ヴァート(2020年3月21日付)に次ぐ6組目となります。なお、6位以内に3曲初登場というのはこちらもテイラーが史上初です。なお、ボン・イヴェールは「Exile」で初のトップ10入りを果たしています。

今回トップ10に3曲を送り込んだことで、テイラー・スウィフトのトップ10獲得曲数は28曲となり、マライア・キャリーおよびスティーヴィー・ワンダーと並び史上6位タイとなりました。上位にはドレイク(40曲)、マドンナ(38曲)、ザ・ビートルズ(34曲)、リアーナ(31曲)、マイケル・ジャクソン(30曲)が控えていますが、30曲超えは間もないかもしれません。また初登場でトップ10入りを果たしたのは18曲となり、ドレイクの25曲に次いで史上2位となります。

アルバム『Folklore』からは、フィジカルのみに収録された曲を除く16曲全てが100位以内に登場しました(最も低い順位は「Hoax」の71位)。

前作『Lover』(2019)も収録された18曲全てが2019年9月7日付でソングスチャート100位以内に登場しています。これによりテイラー・スウィフトのソングスチャート(Hot 100)エントリーは113曲となり、女性歌手ではニッキー・ミナージュ(110曲)を抜いて史上最多、且つ全体では単独4位に浮上しました。ドレイクの224曲が最多となり、グリー・キャスト(207曲)、リル・ウェイン(169曲)と続きます。

 

2位以下をみると、5位のザ・ウィークエンド「Blinding Lights」はラジオエアプレイで17週連続の首位となり、それも前週比2%アップの7620万を獲得しています。1990年12月からスタートしたラジオエアプレイチャートでは最長首位記録がグー・グー・ドールズ「Iris」(1998)の18週であり、「Blinding Lights」はあと1週に迫っています。

テイラー・スウィフト以外で初のトップ10入りとなったのはジョーシュ・シックスエイトファイヴとジェイソン・デルーロによる「Savage Love (Laxed - Siren Beat)」。アメリカでは大統領がTikTokを米国で禁止する流れとなっており、様々なヒット曲を生んだTikTokを禁止することは文化への冒涜でしかないと個人的には思うのですがそれはさておき、TikTokで人気だったジョーシュ・シックスエイトファイヴのインストゥルメンタル曲「Laxed (Siren Beat)」を、そのTikTokで人気を集めているジェイソン・デルーロが歌を付けてカバーしたのがこの曲。ただしそこにはちょっとした問題があった…という件については以前ブログで記載しています。

ストリーミングは前週比1%アップの1790万(同指標17位)、ダウンロードは同14%アップの13000(同指標4位)、ラジオエアプレイは同23%アップの2350万(同33位)。TikTok人気が最も速く派生するであろうストリーミング指標の動きが鈍くなっている一方、ラジオエアプレイは大きく成長していることから今後はゆるやかながらも安定した上昇が見込めるかもしれません。ジェイソン・デルーロにとっては「Want To Want Me」(2015 5位)以来となる7曲目のトップ10入りとなり、ニュージーランドのジョーシュ・シックスエイトファイヴにとっては初のトップ10入りとなりました。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (初登場) テイラー・スウィフト「Cardigan」

2位 (1位) ダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」

3位 (2位) ジャック・ハーロウ feat. ダベイビー、トリー・レーンズ & リル・ウェイン「Whats Poppin」

4位 (初登場) テイラー・スウィフト「The 1」

5位 (4位) ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」

6位 (初登場) テイラー・スウィフト feat. ボン・イヴェールExile

7位 (7位) ハリー・スタイルズ「Watermelon Sugar」

8位 (5位) セイント・ジョン「Roses」 

9位 (6位) ミーガン・ジー・スタリオン feat. ビヨンセ「Savage」

10位 (12位) ジョーシュ・シックスエイトファイヴ × ジェイソン・デルーロ「Savage Love (Laxed - Siren Beat)」

次週はビリー・アイリッシュ「My Future」がトップ10入りを果たすかに注目。そしてテイラー・スウィフトは「Cardigan」をはじめとして今週の勢いをキープできるか、注視しましょう。

2020年7月の私的トップ10ソングス+α、選びました

1月からはじめた【私的トップ10ソングス+α】企画。前の月にリリースされた曲を中心に、しかしその縛りは出来る限り緩くした上で選んでみました。ミュージックビデオ等動画がない曲は巻末のプレイリスト(Spotify)でチェックしてみてください。過去の私的トップ10ソングス、および2020年上半期の邦楽ベストソングスについてはこちらをご参照ください。

 

 

10位 Nao'ymt「Ghosts in the Light」

プロデューサーで自身も歌手活動を行うNao'ymtさんの最新作。こちらを聴いて真っ先に浮かんだのが、Nao'ymtさんとの二人三脚で生まれた三浦大知さんのコンセプトアルバム『球体』でした。好事家の圧倒的な支持を集めながら広く世間に認知されたとは言い難いという印象を勝手ながら抱いていた『球体』ですが、今回の曲で第2章の可能性を感じた次第。

 

9位 Mime「エメラルドグリーンの揺らめき」

シティポップを敷いた作品は数あれど、その中でも特にハマったのがこの曲。山下達郎「DANCER」を想起させる展開、サビ終わりのシンセの駆け上がる音階と直後の上モノにはニヤリとさせられます。

 

8位 フル・クレート feat. カイル・ディオン「Brandy

フル・クレートはオランダのプロデューサー。この曲で初めて知ったのですが、オランダといえば個人的にはジョヴァンカを真っ先に思い出すゆえ、良質なソウルに根ざしたダンスナンバーには納得。タイトルは酒のほうのブランデーですが、R&B歌手のブランディもニューアルバム『B7』を先月末リリース。好評のようで嬉しいですね。

 

7位 リアン・ラ・ハヴァス「Please Don't Make Me Cry」

今年は既に「Bittersweet」「Weird Fishes」を20位以内に選出しており、初のトップ10入りながら3度目の選曲に。先月リリースされた3枚目のアルバムは自身の名を冠しており、彼女にとっての自信作と言えそうです。アルバムは本国イギリスで3作連続となるトップ10入り。

 

6位 Lucky Kilimanjaro「太陽」

サビ終わりのフレーズが楽しく、まるで民謡をポップに昇華させたようなラッキリ流夏のアンセム。Lucky Kilimanjaroは3月のメジャー初のフルアルバムをリリースして以降、今回の「太陽」を含め新曲を既に5曲リリースしています。

 

5位 コリン・ホーソーン「Pray」

米オーディション番組出身、デビュー曲「Won't He Do It」が米ビルボードゴスペルソングスチャートで特大ヒットを記録したコリン・ホーソーン。「Pray」は軽やかなデビュー曲とは一転したシリアスなサウンドで、今の社会状況を想起させるかのよう。新作『I Am』は9月リリース予定。

 

4位 カニエ・ウェスト feat. トラヴィス・スコット「Wash Us In The Blood」

(※動画は一部ユーザーに適さない可能性がある、とYouTubeで言及されています。)

アルバム『Donda : With Child』が当初リリースが予定されていた7月24日に出なかったのは残念ですが、先行曲はその期待を煽るに十分な内容。前作『Jesus Is King』のカニエらしい(そしてカニエにしかできないであろう)ゴスペルの要素を持ちつつ、こちらも先述の「Pray」同様に重苦しさが際立ったナンバーに。

 

3位 Official髭男dism「HELLO」

もはや何を作っても余裕でJ-Popの水準を超えてくるヒゲダン。今週リリースされるEPには映画主題歌の「Laughter」も収録されていますが、Mr.Children「終わりなき旅」の21世紀版とも評される「Laughter」以上に個人的にハマったのが「HELLO」でした。3連リズムが好物という点もさることながら、最後のサビ直前の大サビとなったBメロのアレンジ、追加されたメロディといった工夫は最後のサビをより壮大に昇華させるに十分。これはアガらないほうが無理だというものです。

 

2位 ケム feat. トニ・ブラクストン「Live Out Your Love」

R&B界の良心といえるケム(しかし日本で一枚も国内盤化されていない模様。どういうことでしょう…)が、四半世紀以上艷やかなテナーヴォイスで魅了するトニ・ブラクストンを招いた美しいミディアム。コードを細かく、しかし要所要所で使い分けていることで心の機微を伝えているのが見事。そして両者の歌声の余裕…これぞ大人のデュエットです。

 

1位 三浦春馬「Night Diver」

あの悲しい出来事がなかったとしても1位に選んでいた曲。歌詞はその悲しみを想起させかねないものの、夜深くへ吸い込まれかねない心を描く歌詞(不自然にならない譜割りも含め)をはじめ、特にサビの3連が際立つメロディ、そして最後のサビで全て混ざり合うリズムが圧巻なアレンジと、完璧の一言。Bメロの歌声の表現力等も素晴らしく、テレビでパフォーマンスする姿を見たかったですね。

 

 

以下、次点として10曲。

・杏沙子「クレンジング」

・VIDEOTAPEMUSIC「Spring Fever」

Official髭男dism「Laughter」

土岐麻子「HOME」

PUNPEE feat. KREVA「夢追人」

・向井太一「僕のままで」

森山直太朗「すぐそこにNEW DAYS」

・ビッグ・ピッグ「Don't Turn Around」

・ジェイコブ・コリアー feat. ラプソディ「He Won't Hold You」

ジェイムス・ブレイク「Are You Even Real?」

サブスク未解禁ゆえ選ばなかったのですが、米津玄師「感電」のジャジーなファンクネスも見事。ドラマ『MIU404』との相乗効果もあって紹介しないわけにはいきません。いつになれば解禁されるのか…の期待も込めて記しておきます。

 

Spotifyのプレイリストはこちらに。

今月も素晴らしい音楽に出逢えることを願っています。

テイラー・スウィフト、アルバムのみならずソングスチャートでも初登場首位は確実?「Cardigan」における2つの戦略とは

7月24日金曜に突如リリースされたテイラー・スウィフト8枚目のオリジナルアルバム『Folklore』が好調です。すでにイギリスでは1位を獲得し、日本時間で明日早朝に発表予定の米ビルボードでも首位発進が確実視されています。

このアルバム『Folklore』のフィジカル施策については以前noteに記載しましたが、その戦略の巧さはソングスチャートにも及んでいます。

 

 

アルバムからのリード曲と捉えられるのは「Cardigan」。唯一ミュージックビデオを用意しているゆえ、その位置付けは明確です。

この「Cardigan」が、フィジカルでも購入可能となりました。いわゆるフィジカル施策の実施です。

『7インチのアナログ盤(8ドル/約840円)、12インチのアナログ盤(13ドル/約1,400円)、12インチのピクチャー・ディスク(17ドル/約1,800円)、またはCD(5ドル/約530円)』(『』内は上記記事より)が用意され、購入すればこれらフィジカルが後日届くのとは別に、購入後すぐにダウンロードが可能となる仕組み。そしてこのコレクションは7月30日までの発売となっています。

 

さらに、「Cardigan」の別バージョンが7月30日木曜にリリースされています。

”Cabin In Candlelight”と名付けられたこのバージョンは『オリジナルから音の数をさらにそぎ落としたシンプルなものになっており、それだけにテイラーの声と楽曲本来の良さが際立つ』作品。さらにこのバージョンのミュージックビデオは『アルバム用の写真撮影を行ったときのビハインド・ザ・シーンを元に構成、写真スタンドの中で ”写真撮影時の映像” が映し出される仕様』(『』内はいずれも上記記事より)となっており、アルバムに浸っていた方からすれば興味深い作品と言えます。

 

 

 

これらの施策はいずれも、米ビルボードソングスチャートに有効に作用します。

フィジカル施策においては、後日届くフィジカルおよび即座に手に入るダウンロードが共に、ソングスチャートの指標のひとつであるダウンロードを押し上げます。この施策を用いた「The Scotts」「Stuck With U」「Trollz」そして「Rain On Me」といった曲が初登場で1位を獲得したことは弊ブログでも追いかけている通りですが、翌週以降急落が目立ちこれらヒットが米ビルボードの目指す社会的ヒットの鑑に合わなくなったこともあり、10月以降このフィジカル施策は実質無効となります。

テイラー・スウィフトはチャート上で有効なうちにフィジカル施策を実施。それも、次週8月8日付米ビルボードソングスチャート(日本時間の8月4日早朝発表予定)におけるダウンロード指標の集計期間が7月30日まで(ラジオエアプレイは8月2日まで)であることを考慮するかのような注文締切日を設定しており、この点からもチャートトップを狙っているのは確実と言えるでしょう。

 

また米ビルボードでは、オリジナルバージョンにリミックス等別バージョンが合算される仕様となっています(対して、日本では合算されません)。別バージョンはミュージックビデオも用意されており、サブスクやYouTubeのストリーミング再生回数が上昇することは必至。ストリーミング指標もまた、7月30日までが8月8日付米ビルボードソングスチャートの集計期間となっていることから、別バージョンのリリースは同指標上昇の追い込みをかけるのに十分な効果をもたらすと言えそうです。

 

 

テイラー・スウィフトは『Folklore』を米ビルボードアルバムチャートで首位に至らせるのみならず、「Cardigan」 でも米ビルボードソングスチャートを制しようとしています。アルバムはサプライズリリースであったものの、その後の「Cardigan」のフィジカル施策や別バージョン公開の流れを踏まえれば、実に綿密な戦略を敷いていたのだということが解るのです。

次週の音楽チャートへ影響を与えるテレビ番組は『スッキリ』『今くら』そして『MIU404』?

音楽チャートに影響を与えるもののひとつがテレビ。パフォーマンスを披露するならば尚の事と言えます。最新8月3日付ビルボードジャパンソングスチャート(集計期間:7月20~26日)では集計期間内に放送された『ミュージックステーション』(テレビ朝日 金曜21時 当該週は3時間半のスペシャル)での披露曲が軒並み上昇を果たしましたが、次週8月10日付の集計期間内にゴールデン・プライムタイムで放送される音楽番組は『うたコン』(NHK総合 火曜19時57分)程度。となると次週のチャートでテレビの影響は乏しいかというと、そうではありません。

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7月30日木曜までのSpotifyデイリーチャート上位陣の推移をみるとYOASOBI「夜に駆ける」が上昇を繰り返していることが解るのですが、注目は2位の瑛人「香水」の今週の動向。

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SpotifyデイリーチャートはLINE MUSICよりもロングヒットしやすく、なかなか火が付きにくいという保守的といえる特徴があり、また平日では金曜が少なく、金曜から土曜、土曜から日曜にかけて伸びていきます。黄色で示したのは楽曲毎の1日あたりの最高再生回数を指し、前週は4連休だったことから週の後半が土日並の数値を叩き出したことが解ります。

さて、瑛人「香水」は先述した『ミュージックステーション』にてテレビ初となるパフォーマンスを実施したことで前週再生回数を伸びたといえますが、一方で今週に入り29日に大きく数字を伸ばしています(オレンジの部分参照)。これを調べると。

にしやまさんがマネージャーに就いてからメディア出演やSNSの使い方がぐんと巧くなった印象がある瑛人さん(のTwitter)ですが、上記で解るように「香水」を29日放送の『スッキリ』(日本テレビ 月-金曜8時)で披露したことが大きく影響しています。ちなみにiTunesのダウンロードチャートでも29日の13時以降昨日いっぱいまで、毎時発表のリアルタイムチャートで2位以内をキープしています。

 

この『スッキリ』といえば、NiziUを生み出したオーディション番組、Nizi ProjectをHulu放送後に特集を組んだことでおなじみ。先の表で解るように、プレデビューミニアルバムの表題曲「Make you happy」は登場初週にSpotifyでも20万近いデイリー再生回数を記録したほか、ダウンロードおよびサブスク再生回数を基にするストリーミングで様々な記録を樹立しています。

このNiziUも今週に入り2日続けてデイリー再生回数を17万台に伸ばしていますが、これもテレビが関わっています。29日は『今夜くらべてみました』(日本テレビ 水曜21時)で取り上げられ、翌30日からはHuluでオーディションを振り返る番組『NiziU 9 Nizi Stories』がスタートしたことが影響を与えていると言えそうです。

 

テレビ効果は何も歌手のパフォーマンスに起因するだけではないということが解りますし、しかも「香水」「Make you happy」からは共に『スッキリ』の影響力が見て取れます。下記は2年前のスタッフインタビューですが、音楽を取り上げる志の高さが伺えます。

ゴールデン帯のテレビ番組は放送局の特番攻勢で毎週安定して放送されていないと実感しています。その意味でも、『スッキリ』で音楽を取り扱うことは重要でしょう。

 

ちなみに次週のチャートではKing Gnu「白日」も上昇する予感がします。まさかこの形で注目されるだろうとは…!と驚くばかりです。

 

(8/6追記あり) SixTONES「NAVIGATOR」のルックアップ指標が突出していた理由を考え、ビルボードジャパンに早期の対策を求める

一昨日発表された最新8月3日付ビルボードジャパンソングスチャートではSixTONES「NAVIGATOR」が今年度最多となる5万ポイント超えを達成しましたが、ルックアップ指標の極端な高さに対し違和感を抱いているということについては昨日のブログエントリーでお伝えしたとおりです。

チャート構成比に占めるルックアップ指標の割合はCHART insightの円グラフより推測するゆえ、ルックアップ指標による獲得ポイントはおおよそでしかないのですが、それでも前作より「NAVIGATOR」が同指標で4倍強を獲得したことに違和感を覚えるというのが私見です。

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この違和感についてのビルボードジャパンの見解を伺いたいと、チャート発表から間もなく(収録されると思しき時間の直前に)”#ビルボードポッドキャスト”と付けて疑問を記載したのですが、昨日朝までに更新されたビルボードジャパンのスタッフによるポッドキャストでは見解が示されませんでした。

しかしポッドキャストでは、「NAVIGATOR」のルックアップ指標によるポイントが歴代最多に近いことを紹介していました。そしてその理由については、CDデビュー前の代表曲3曲を3種のカップリングにそれぞれ収録しているからではと推測されています。

 

 

たしかに、前作「Imitation Rain」も3種発売でしたがそのうち2種はCD収録内容が同じであり、「NAVIGATOR」はカップリング曲の特性上、そしてルックアップが増える傾向にあるアニメタイアップ曲であることからルックアップが増えることは予想できます。しかし「Imitation Rain」より初週売上枚数が12万ダウンした状況を考えればルックアップは前作とさほど変わらないものと捉えていたのゆえ、ルックアップが4.5倍というのは驚かされますし、やはり違和感は拭えません。 

 

※追記 (7月31日16時27分):上記の表現に対し、ご指摘をいただきましたので報告いたします。

いただいたご指摘を踏まえた上で、あらためて見解を記しています。

 

 

このルックアップの急上昇について、強い私見と前提の上で申し上げれば、ファンに因るルックアップ活動が影響しているのではと考えます。

 

 

まず気になったのはRTとお気に入り合計で2千を超えるこちらのツイート。ルックアップ指標獲得の方法を記載しているのですが、仮にこの方法を少し加工してiTunesにて”トラックを取得”を繰り返せば、CDの出し入れをせずともルックアップを容易に稼げるのではと考えた次第。仮にファン100人が1日ひとり100回この作業を行えば、チャートの集計期間のうちフラゲ日以降の6日間で6万回のルックアップを獲得できるということになります。1日100回を非現実的だとするならば、1000人がひとり10回ではどうでしょう。先のツイートはRTとお気に入りとで2千を超えているため、その半分がルックアップ活動に参加するというのはそこまで非現実的でないかもしれません。

 

※追記 (8月6日6時15分):上記のルックアップ獲得手段は正しくないことが、ビルボードジャパンのポッドキャストによって示されました(よって打ち消し線を用いて消去しています)。詳細は巻末のリンク先に掲載しています。

 

 

ファンに因る活動が目立ってきたという点では、以前から弊ブログで指摘しているTwitter指標も同様。毎月最終週のTwitter指標20位までを定期的に一覧化したものを最近noteにアップしましたが、この1年で男性アイドルグループ、特にジャニーズ事務所所属歌手が目立ってきていることが解ります。そして最新週のこの指標でトップ10に7曲をSixTONESが送り込んでいることからも明らかなように、SixTONESそして同時デビューしたSnow Manはこの指標で強く、ファンの連帯はこのTwitter指標からも見えてきます。先程のツイートにも7曲が連名のように記載されています。

 

無論このようなファン活動は他のジャニーズ事務所所属歌手のファンも同様でしょう。しかし今週は「Imitation Rain」でもルックアップ指標の構成比が高くなっているのが目立ちます。

たとえば「NAVIGATOR」におけるルックアップ活動にはこのようなツイートもみられ、現段階で180ものRTが集まっています。「NAVIGATOR」のルックアップ活動の流れがあるからこそ「Imitation Rain」でも同様の動きが生まれたと考えるのが自然でしょう。

となるとやはり、「NAVIGATOR」のルックアップ指標はファンの活動によって、想定以上に高まったというのが自分なりの結論です。

 

 

ルックアップの定義を今一度確認します。

CDをPCで読み取る際などにアクセスする、楽曲やアーティスト名などを表示するためのデータベース「グレースノートメディアデータベース」へ接続した回数です。そのアクセス数をシングル盤はHot100、アルバム盤はHot Albumsに合算しています。パッケージに対するユーザーアクティビティをフォローするデータとして、また日本特有のレンタル動向をフォローするデータとして有効であると考えて採用しました。ルックアップチャートは、シングルチャートよりも若年層をコアとしたアクティビティがフォロー可能で、シングルの一層のセールスの可能性を反映する指標として広く利用されています。

【Billboard JAPAN Chart】よくある質問 | Special | Billboard JAPANより

この指標からはレンタル動向がある程度把握でき、売上枚数に対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)も推測できるものと考えます。しかしこのルックアップがファンの活動により意図的に加算されることがあれば、それらを読み取ることはできにくくなってしまいます。ソングスチャートを構成する8指標のうちシングルCDセールスは一定数以上の売上獲得作品に独自係数を用い、ラジオエアプレイはサンプル局のOA回数に聴取可能エリアの人口を加味、サブスクサービスの再生回数に基づくストリーミングは有料サービスでの再生分と無料のそれとでウェイトを変えるという調整が行われていますが、ルックアップについてはそのような調整を聞いたことがありません。ゆえにルックアップ指標は、言葉は悪いのですが”ザル”と捉えられてもおかしくないと思うのです。

さらに、先のビルボードジャパンポッドキャストの見解には矛盾を孕んでいると感じています。チャート分析や予想を行うあささんのコメントにそれを実感した次第。

複数種販売で種類毎にカップリングが異なるにも関わらず表題曲が同じゆえルックアップは表題曲の加算対象というのは、たしかにおかしいと考えるに至りました。これらを踏まえれば、ルックアップ指標は改善される必要があるでしょう。

 

 

今回のSixTONES「NAVIGATOR」のルックアップの上昇はファンによる可能性が高いという結論は、自分なりの推測でしかないと言われればそれまでですが、ビルボードジャパンが今回のルックアップ上昇の理由を同様に考えているならば、そしてルックアップの抱える諸問題に気付かれたならば、ビルボードジャパンはルックアップ指標のチャート構成比に対するウェイトを大きく落としてもよいのではと考えます。以前からTwitter指標においても同様の見解を弊ブログに記載していたこともあり、ビルボードジャパンソングスチャートはTwitterおよびルックアップを抜いた6指標化、外れた指標は別途チャートを作成する(TwitterアメリカのSocial 50のような形で)というのは如何でしょうか? これは極端な例だとしても、そのケースも想定してチャートポリシー変更を議論すべきではないかと考えるに至っています。

 

好きな歌手のチャート成績を好いものにしたいという思いは勿論理解できますが、それがチャートの設計思想を大きく超え、社会的ヒットの鑑となってきたチャートの信頼を損ねるまでに至るならば、ファンによる過度な接触が可能なものについては是正すべきというのが私見です。アメリカでは歌手側が所有指標を過度に拡大せんとフィジカル施策を行ったことが目立ち始めチャートが社会的ヒットの鑑として機能しなくなったのを受け、10月からこの施策を認めないという判断を下しています。

日本においても年一、ニ回のペースでチャートポリシー変更が行われていますが、実はここ数ヶ月で他の作品にもルックアップの過度な上昇が見られるという声があることから、年度の切り替えを待たずに早々に判断を下す必要があるのではと考えます。ビルボードジャパンがルックアップ指標の見直しを議論のテーブルに乗せることを願います。

 

 

最後にファン活動に対する私見を。先にも申し上げた通り、好きな歌手のチャート成績を好いものにしたいという思いは理解できます。しかし、仮にルックアップ活動が事実だとして、他の歌手のファンがこの取組をみたらやりたいと思うでしょうか。むしろ、言葉は悪いですがえげつないと思われるだけでしょうし、そのマイナスイメージは歌手側に対し抱いてしまうはずです。そして逆に、自分が好まない歌手のファンがルックアップ活動を熱心に行い如実な効果を得たとしたらどう思うでしょうか?

特にジャニーズ事務所所属歌手についてはそのほとんどが(それこそデジタルに明るくなったはずの嵐「カイト」ですら)デジタル未解禁ゆえ、シングルCDセールス加算初週にCD関連指標以外でポイントを稼げないことからTwitterやルックアップ活動でポイントを支えたいという気持ちを抱くのは解ります。しかし、CDセールス2週目以降に他指標が稼げず急落する傾向が毎回見られることを踏まえれば、Twitterやルックアップ活動ではなくデジタルを解禁しストリーミングや動画再生を上げることのほうが有効なのは間違いありません。ルックアップへの熱意が強いならば(それ自体相当な手間ゆえ尚の事)、その熱を事務所側へのデジタル解禁打診に向けては如何でしょう? CDはもはやファン向けのグッズとしての側面もあるゆえデジタル解禁してもCDセールスが極度に落ちることは考えにくく、むしろデジタル解禁によりダウンロードやストリーミング、動画再生の指標群が加算されるのみならず、特に歌手のファンではないものの楽曲が気になるというライト層の増加(ゆくゆくはコアなファンに昇華する可能性も)につながり、そして歌手のイメージが向上することは間違いないはずです。

ファンの持つパワーをより好い方向へ用いることを、心から願います。

 

 

 

※追記 (7月31日9時55分):今回の件について、後にいただいた当該エントリーへの反応も踏まえ、ビルボードジャパンのポッドキャスト宛に質問を投げかけました。次週の更新時に回答をいただくことを願い、こちらにもその質問内容を添付します。

回答をいただけた/いただけなかったにかかわらず、次週のブログエントリーにてあらためて報告する予定です。

 

 

※追記 (8月6日6時15分):今回のルックアップの件に対し、ビルボードジャパンがポッドキャストにて見解を示しています。要約ならびにポッドキャストのリンクを掲載しましたので、下記リンク先(8月6日付ブログエントリー)をご参照ください。

SixTONES「NAVIGATOR」が制し金曜リリース曲で三浦春馬「Night Diver」が最上位に登場した8月3日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック、そしてポッドキャストのお知らせ

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。

7月20~26日を集計期間とする8月3日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)は、SixTONES「NAVIGATOR」が今年最大となる5万ポイント超えを達成し、首位の座に就きました。

売上枚数は前作「Imitation Rain」から12万ダウンするものの、初週65万枚というのは立派な成績です。一方で気になることが。

チャート構成比に占めるルックアップ指標の割合はCHART insightの円グラフより推測するゆえ、ルックアップ指標による獲得ポイントはおおよそでしかないのですが、それでも前作より「NAVIGATOR」が同指標で4倍強を獲得したことに違和感を覚えるというのが私見です。カップリングの異なるバージョンが増えたこと、アニメタイアップゆえアニメファンが手にしたこともあってルックアップの増加は想定の範囲内という見方もありますし、ルックアップを上げるべくインターネットデータベースにCDデータをアクセスする作業(CDの抜き差しも同様)はファンの呼びかけで以前から行われているという指摘もありますが、それでもこの数値の跳ね上がりは個人的に納得しづらいと捉えています。ビルボードジャパンのスタッフによるポッドキャストでは”#ビルボードポッドキャスト”と入力してTwitterで質問できることから、このルックアップの跳ね上がりについて問いかけてみました。

回答があればまた紹介したいと思います。

 

7月24日リリース作品が3曲トップ10入り。小室哲哉さんの作家復帰作となる乃木坂46「Route 246」(10位)、嵐のデジタルシングル「IN THE SUMMER」(6位)を押さえて4位に初登場を果たしたのは三浦春馬「Night Diver」でした。

本日午前7時の段階でYouTubeのミュージックビデオ再生回数は1149万に達しています。iTunes Storeでのダウンロードチャートも毎時間1位を記録していることから、次週は総合ポイントで1万を超える可能性は高いと思われます。追悼の思いから曲にたどり着く方も多くいらっしゃるでしょうが、この曲は個人的には年間ベスト級の素晴らしい作品だと思っています。

 

さて今週はソングスチャート全体のポイント上昇が凄まじいことになっています。1位、10位および50位のポイントを定点観測しているのですが、全てにおいて今年最高を更新しているのです。

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10位は7000ポイントを、50位は2000ポイントを突破。今週はダウンロード指標の10位が今年最多となる19046DLを記録し全体的に底上げされたことも大きいですが、サブスクサービスの再生回数に基づくストリーミングが順調に伸びていることが大きく影響したと言えそうです。

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3週前はNiziUのミニアルバム『Make you happy』収録曲すべてがストリーミングチャートでトップ10入りしたことで、1位および10位の再生回数が共に最高を更新したのですが、今週は1位が1千万、10位が400万目前となり共に歴代2位となりました。そして乃木坂46「Route 246」(総合10位)はストリーミングが43位、1713416再生を記録していますが、この数値は昨年同時期の10位レベルに相当するのです(2019年8月5日付におけるストリーミング10位の再生回数は1628797)。コロナ禍の自粛により高まったサブスクへのニーズがその後も減ることなく順調に推移していると考えれば、サブスクサービスで如何に火を付けるかが今後トップ10入り且つロングヒットするための焦点になることは自明でしょう。その意味では、このブログの執筆段階(7月30日7時)でもデジタル未解禁の嵐「カイト」について、「IN THE SUMMER」とは真逆であり且つこれまでのジャニーズ事務所所属歌手の販売手法をなぞるデジタル未解禁に対し、至極勿体ないと思う自分がいます。なお、前週5位に入った山下智久「Nights Cold」(今週80位)のように、一部のジャニーズ事務所所属歌手はレコチョク等一部サービス限定でダウンロードが解禁されていますが、「カイト」はこちらでも、本日7時の段階で配信が開始に至っていません。

次週8月10日付ビルボードジャパンソングスチャートでは「カイト」が初登場で首位を獲得することはほぼ間違いありませんが、同時に「IN THE SUMMER」は1週間フルで集計対象となりポイントを伸ばすことも考えられます。仮に「カイト」がデジタル未解禁を続けるならば、その翌週(8月17日付)におけるポイント前週比にデジタル解禁/未解禁の差が如実に表れるものと考えます。次週の「NAVIGATOR」のポイント前週比共々、注視していきましょう。

 

 

さて、自分が収録し毎週木曜に更新している【Billboard Top Hits】ポッドキャスト、今回から20分枠としてお送りします。こちらもぜひ、よろしくお願いいたします。