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青森県在住。毎週日曜日17時から、FMアップルウェーブ発の番組の一員として参加。音楽・ラジオ好きによる"日々の音"やメディアの話

【Diggin'】03. Brandy after 2004

勝手に仮想ラジオ番組を立ち上げ、中心となる特集を”見えるラジオ”としてブログに掲載していく金曜日。先々週から自己満足の域を出ないままはじめてます。

今週は、ニューアルバム輸入盤がリリースされたばかりのR&Bアーティスト、ブランディ(Brandy)を取り上げます。

 

Brandy after 2004】

 

ブランディが1994年秋にアルバム『Brandy(邦題:ブランディー・デビュー!)』でデビューして以降の輝かしい成績は、R&Bファンならば多くの方が存じ上げていることでしょう。とりわけ2002年リリースの3枚目、『Full Moon』までにビルボードのR&B/Hip-Hopシングルチャートで9曲のトップ10ヒット(うち3曲が1位)を放ち、シングル総合チャートでも7曲のトップ10ヒット(うち2曲が1位)を記録。とりわけモニカ(Monica)と共演した98年の2枚目のアルバム『Never Say Never』からの先行シングル「The Boy Is Mine」は、”ひとりの男をふたりの女が取り合う”という構図も受け(双方のファン同士で、どっちが優勢かを競い合ったとも聞きます)、シングル総合チャートで13週もの1位を獲得、その年のシングル総合チャートでも年間2位という大ヒットとなりました。

しかし、『Full Moon』からの「What About Us?」以降は、R&Bでも総合でもトップ10入りするシングルがなくなり、ティンバランド(Timbaland)をメインプロデューサーに据えた4枚目のアルバム『Afrodisiac』(2004)でアルバムセールスが100万枚を切り、レーベル移籍後の『Human』(2008)ではアルバムの最高位も総合で15位とトップ10入りを逃し、レーベルを1枚きりで離れることになりました。私生活でのトラブル(交通事故、未婚の母、弟のセックススキャンダル等)がファン離れとなり、セールスに影響した可能性も、ともすればあるのかもしれません(とはいえ、音楽そのものの質とトラブルは比例しないわけで、聴き手は本来それとこれとを切り離して考えないといけないのですけども)。

(チャートについてはWikipediaのディスコグラフィ欄を参照)

 

さて、今週リリースされた通算6枚目のオリジナルアルバム『Two Eleven』のリリースに至るまでに、彼女は”辛すぎる痛み”を味わいました。それは、 ホイットニー・ヒューストンの死。それも、ブランディの誕生日である2月11日が、ホイットニーの命日となってしまいました。TV映画での共演や、大ヒットシングル「Sittin' Up In My Room」がホイットニー主演映画『ため息つかせて(Waiting To Exhale)』サントラ収録などの縁もあり、ホイットニーと親交のあったブランディですが、ホイットニーが亡くなる直前、ホイットニーにかけてもらった言葉を噛み締め、前を向く力にしていることが、あるインタビューから伝わってきます。

2月12日のグラミー賞に出席する予定だったホイットニーとはそのグラミー週間に顔を合わせており、「彼女が私に最後に言った言葉は、『誰もあなたにはなれない。あなた自身でいなさい。あなたらしくあることを恐れてはいけない』だったわ……。あの時はでも、ただ『わかりました』と答えただけだったけど、それが亡くなった人の最期の言葉になってしまうと、最大限の努力を維持し続けよう、最高の私でいようという気になるの……辛いわね」と振り返った

bmr.jp - NEWS - ブランディ、ホイットニーからの最後の言葉は「あなた自身でいなさい」より

その辛さをバネに作り上げた『Two Eleven』(まさしく、自身の誕生日でありホイットニーの命日でもある”2月11日”を冠しています)からの先行シングルであり、内容は違えど自身の暴力事件によって一度は底に堕ちながら自らの音楽で再起に成功したクリス・ブラウンを客演に迎えた「Put It Down」にて、ブランディは、ビルボードR&B/Hip-Hopシングルチャートでひさしぶりのトップ10ヒットを放ちます(10/13付で最高3位を記録)。『2002年の”What About Us?”が最高3位を獲得して以来』(bmr.jpより)であり、いよいよブランディがR&Bシーンに本格的に戻ってきた!という予感がするのです。

(実は最高3位を記録した週の翌週、10/20付チャートから、ビルボードR&B/Hip-Hopシングルチャートの集計方法が変更され、「Put It Down」は一気にランクダウンしてしまったのです。が、現段階で最新となる10/27付ビルボードR&B/Hip-Hopシングルチャートでは前週より1ランク上昇、赤丸で15位となっています。勢いはまだ衰えてはいないでしょう)

 

というわけで、長くなってしまいましたが、今日はブランディの、「What About Us?」以降ここまでに至るまでの曲、および最新アルバム『Two Eleven』からの曲を紹介します。いつものように、7曲です。

 

 

Brandy feat. Kanye West「Talk About Our Love」(2004 from『Afrodisiac』)

 この年、アーティストとしてのデビューアルバム『The Collage Dropout』で 一気に脚光を浴びるカニエ・ウェストによるプロデュース作。マンドリル(Mandrill)「Gilly Hines」(1978)をサンプリング(この曲が動画サイトで見つからない…マニアックすぎるから?)。抑え目のトーンながら少しスリリングなストリングスとサビでのホーン隊の効果的な挿入が相俟った非常にクールなナンバー。ブランディのハスキーな声も非常に映えます。個人的にも大好きながら、総合36位・R&B/Hip-Hop16位という成績には正直驚いたものでした。

 

Brandy「Long Distance」(2008 from『Human』)


『Human』からのセカンドシングルで、あまりにも美しいバラード。PVにも登場する(と思しき)ブルーノ・マーズがソングライトを担当し、ブルーノとロドニー・ジャーキンス(「The Boy Is Mine」以降多くの楽曲をプロデュースしている)がプロデュースを担当。”Can you hear me crying?"の呼びかけの際、PVのトーンがモノクロからカラーに急激に変わっていく様が鮮烈な印象を与えます。R&B/Hip-Hop38位。

余談ですが、この美しいバラードの展開等が、後にBoA「Milestone」(2011)に踏襲されたのでは、と考えます。決してそれを責めるつもりはなく、非常に素晴らしい出来ゆえ、多くの方に知ってほしいとして記載した次第。

 

John Legend feat. Brandy「Quickly」(2008 from John Legend's『Evolver』)

 ジョン・レジェンド、3枚目のオリジナルアルバム『Evolver』収録曲。シングルカットせず。伝説氏独特の声に果たして合うのか?と思いきや、意外にもしっくり来る不思議。それにしても驚いたのは、この曲のソングライト・バックヴォーカルおよびヴォーカルプロダクションを、あのフランク・オーシャンが担当しているということ(ブックレットには”Christopher Breaux”名義で記載有り)。今年リリースし傑作と名高い『channel ORANGE』をリリースする5年前、音楽集団オッド・フューチャー入りする3年前の作品で、音楽業界入りしておそらく最初期に関わった作品がこの曲というのは驚きです。経緯は不明ですが、仮に伝説氏やブランディが発掘に関わっていたのならば、その嗅覚たるや素晴らしいですね。

 

Brandy, Ray J, Willie & Sonja Norwood「Family Business」(2011 from Brandy & Ray J's『A Family Business』)

 アメリカの音楽チャンネル、VH1で放送された同名リアリティ・ショウから生まれたアルバム。弟でR&Bシンガーのレイ・J(彼もスキャンダルに巻き込まれましたが…)のみならず、父親で著名なゴスペルシンガーであるウィリー・ノーウッド、母親のソーニャも参加した作品。父親の影響もあって、音はアーバンゴスペル的になっていますね。このリアリティ・ショウの登場は2010年ですので、いやらしい見方かもしれませんが、このショウを経て再びブランディに注目したファンは増えたのだと思われます。

 

・Monica & Brandy「It All Belongs To Me」(2012 from Monica's『New Life』)

あの大ヒットシングル「The Boy Is Mine」以来14年ぶりの共演となったことで注目を集めた曲。とはいえいわゆる”キャットファイト”ではなく、恋人との別れを描き、声にも大人の風格が漂う逸品。R&B/Hip-Hop23位。なぜか『Two Eleven』には収録されず、また噂されていたブランディとモニカによる合同ツアーも「一向に前に進まない」と話しており、不穏な状況が伝わってくるのは残念なところです。

 

Brandy feat. Chris Brown「Put It Down」(2012 from『Two Eleven』)

 先述したように、R&B/Hip-Hopシングルチャートで最高3位(10/27現在)を記録し、10年ぶりの同チャートトップ10入りを果たした、”攻め”の曲。音の格好良さもさることながら、クリス・ブラウンを贅沢にも?ラップとPVのみに配したのみならず、PVの監督に巨匠ハイプ・ウィリアムスを迎え、鮮烈な色使いを施したことも”攻め”の大きな要素と言えるでしょう。

 

Brandy「Wildest Dreams」(2012 from『Two Eleven』)

 『Two Eleven』からのセカンドシングル。現段階ではPVは30秒のティーザーのみ。ショーン・ギャレット等によるソングライト作品で、「Put It Down」とは異なり、彼女がこれまで培ってきたR&Bの延長線上にあるような、安定感溢れる作品。

 

 

 

実は、これを書いている段階で未だにアマゾンより『Two Eleven』が届いていないため、アルバムの全容や出来が見えていない状態でこれを書いているのですが(恥ずかしい限りです)、たとえばティンバランドの作品にラッパーとして客演したり、父親等と共同でアーバンゴスペルライクな作品を作ったり、さらには「Long Distance」でドラマティックな作品にも果敢に挑戦したり…と、この数年でとりわけ歌える幅、魅せる幅が拡がったように思います。ゆえに、「Put It Down」のようなクールネスを極めたR&Bから「Wildest Dreams」のようなこれまでの路線を踏襲した作品までを余裕で、より格好良くこなせているような気がして、非常に頼もしい限りです。ホイットニーが教えてくれたことを胸に刻み込んで挑戦を忘れずに続ける限り、ブランディが最前線に戻ってくる日はすぐそこにあるのではないか、と期待しています。

余談ですが、自分も誕生日が”Two-Eleven"…ゆえに、ブランディの活躍を期待せずにはいられない、のです。