イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【Diggin'】05. The Collaborations - Domestic & Foreign Music -

※今回のエントリーより、敬称略で記載します。ご了承ください。

 

 

勝手に仮想ラジオ番組を立ち上げ、中心となる特集を”見えるラジオ”としてブログに掲載していく金曜日。今週は、【近年の洋邦R&B的コラボ集】を取り上げます。

 

 

今週、日本先行でリリースされたニーヨ(Ne-Yo)のアルバム『R.E.D.』(デラックス・エディションはコチラ)。先行シングル「Let Me Love You (Until You Learn To Love Yourself)」は最新の全米シングルチャート(11月10日付)で9位を記録し、アルバムの好セールスも期待できます。

巧いなあと思うのは、シングル曲は現在の売れ線たるクロスオーヴァー(R&Bにポップやハウスの要素を取り込んだ)路線で広く音楽ファンに訴求しつつ、アルバム全体はR&B要素が強いので、(クロスオーヴァー要素に戸惑い気味な?)R&Bファンをも納得させ、ポップもR&Bも両方を満足できる一挙両得の売り出し方をしてるという点。その戦略、さすがは(移籍した)モータウンの重役に就任しただけのことはあります(就任の記事はコチラ)。

さて、今回このアルバムの国内盤(DVD付デラックス・エディション、CDのみのスペシャルプライス盤どちらも収録曲は同じ)のラストに、BENIを客演に迎えた先行シングルのデュエットヴァージョンが収録されているんですよね。というわけで、今回はニーヨとBENIの共演をきっかけに、ここ最近の”洋邦コラボ集”を、R&Bジャンルをメインに探っていきます。ちなみに、邦楽アーティストの”海外進出アルバム”での共演も含みますので、厳密には”洋洋コラボ集”と言えるかもしれませんが、ご了承ください。

 

 

・Ne-Yo feat. BENI「Let Me Love You (Until You Learn To Love Yourself)」(2012 Ne-Yo『R.E.D.』国内盤ボーナストラックとして収録)

おそらくこのPVは公開レコーディング形式で撮影され、以前録音したものに合わせて歌ってるものと推測。

2番のパートはBENI主体で、後半はもう少し絡み合うものの、BENIの歌唱が如何せんライトで、ニーヨと絡み合う声にはR&Bらしい黒さが薄いかも、と思ったり。とはいえ、たとえばマライア・キャリー「We Belong Together」ライクな「Kiss Kiss Kiss」などで、R&Bライクなポップスを歌うことに長けていることは証明されており(声の軽やかさや器用さがある歌い手だと実感)、それゆえの起用なのかもしれません。直後に出るBENIのカヴァー集第2弾のためのBENIの名前の浸透と意味合いもあるかもですが。

ちなみにニーヨは以前もシングルカットの際、デュエット仕様に施し日本人アーティストと共演したリミックスが存在。それがコチラ。

 

・Ne-Yo feat. Utada「Do You」(2007 Ne-Yo『The Collection Complete Edition』収録)

ニーヨのセカンドアルバム『Because Of You』からの、日米で大ヒットしたアルバムタイトル曲に次ぐシングルで、日本版ではUtadaを、アメリカ版ではメアリー・J・ブライジをフィーチャー。Utadaの声もBENI同様、いやもっと軽いものの、独特のビブラートが黒さと深みを持たせ、ニーヨにうまく絡みあっています。おそらくUtadaもメアリーも、ニーヨと同じレーベル所属だったゆえの起用かもしれませんが、そういった内情があったとして、それで曲の印象がより好くなるならば、こういった戦略は好いことだと思いますね。

さて、宇多田ヒカルは2004年に海外進出していることもありこの曲ではUtada名義となっていますが、その前にもサントラ収録曲で海外進出。その際の名義は”Utada Hikaru”となっています。

 

Utada Hikaru feat. Foxy Brown「Blow My Whistle」(2001 映画『Rush Hour 2』サウンドトラック収録)

ジャッキー・チェンの全米での代表作のひとつ、『ラッシュ・アワー』シリーズ第2弾のサントラ収録曲。フォクシーのラップ、プロデュースを担当したネプチューンズのビート共に疾走感に溢れており、畳み掛けるメロディラインやAメロの低音を軽々と歌いこなす宇多田ヒカルとの相性は抜群。宇多田ヒカル/Utada名義でネプチューンズとの仕事はなかったと記憶しているのですが、非常に勿体無いなと。それくらい相性抜群の逸品。

ちなみにサントラでは非シングル化の名曲が多く、特にドゥルー・ヒルのジャズとジル・スコットが組んだ「Love Again」はスウィート&メロウで、冬の陽射しに映えるようなあたたかさに溢れた名曲です。

 

・AISHA feat. DMC「Fallin' 4 U」(2010 AISHA『AISHA.EP』収録)

デビュー作となったEP(自身の名を冠するという堂々っぷりたるや!)の冒頭を飾るアップ。ラジオではじめて聴いたとき、日本人離れした声の逞しさやR&B的節回しの巧さに心が鷲掴みされた記憶があります。Hip-Hop界の重鎮にして2009年にロックの殿堂入りを果たしたRun-DMCDMCが客演に参加したのは驚きですが、実はメジャーデビュー以前に今は亡きグールー(Guru)の「It's On You」に既に客演していて、幾多の大物と繋がっているのは彼女が本格派R&Bシンガーであることの証といえるでしょう。メジャーデビューから2年の時を経て、先月ファーストフルアルバム『I, Shout !!!』をリリース、ここでの巻頭を飾るのもこの曲です。

ちなみに『AISHA.EP』ではアン・ヴォーグ(En Vogue)のロッキッシュなアップ「Free Your Mind」をカヴァー。力強い歌唱は本家を彷彿とさせます。オススメ。

 

・Far East Movement feat. Crystal Kay「Where The Wild Things Are」(2012 Far East Movement『Dirty Bass』収録)

2010年に「Like A G6」でアジア系アーティストで初の全米シングルチャートを制した、アジア系(日・中・韓・比)アメリカ人4人組による、今年発売した4枚目からのシングルカット。レーベル移籍後、配信にて世界進出を果たしたCrystal Kayとのタッグ。Crystal Kay自身の移籍後の作品群も現在の主流たるクロスオーヴァーな曲が多く、ゆえにこの曲でも両者が極々自然に溶け合っています。アルバムは通常盤と曲数の多い豪華盤とがありますが、ボーナストラックではなく通常盤にもしっかりと収録。

 

清水翔太 duet with Joe「”Be With You”」(2010 清水翔太『COLORS』(2011)収録)

清水翔太が渡米する際、以前から尊敬していたJOEと一緒に“曲を作ってみたい”とスタッフを通じてオファーしたことがきっかけとなり実現』(CDJournal - 清水翔太とJOE、夢のデュエットソングが実現!(2010年6月30日付)より)。いかにもジョーらしい美しいバラードに、ヴォーカルの粘っこさはジョーより少し足りないながらもしっかり、そしてしっとり歌いこなす清水翔太の、曲へのひたむきな姿勢や思いが垣間見える作品。ちなみにこの曲が出る2年前には、ライフ・ジェニングス(Lyfe Jennings)の「Midnight Train」に客演しています(清水翔太とライフの声質は真逆だとは思っていたので、こちらはちょっと意外)。

 

・TOSHI(久保田利伸) feat. Angie Stone「Hold Me Down」(2004 TOSHI『Time To Share』収録)

現在活躍する邦楽アーティストの中で海外進出の基礎を築いたと言っても過言ではない久保田利伸と、今や”R&B界の母”(と勝手に呼んでますが、老舗レーベルのスタックス(Stax)を復活させ、またニュークラシックソウルやオーガニックソウルのムーヴメントに大きく貢献したのも彼女なわけで。R&B界の”良心”とも言えるかも)であるアンジー・ストーンとのデュエット。アンジーと、彼女の盟友であるジョナサン・リッチモンドのプロデュースにより生まれたのは、一切肩の力が入らない、極々スムースに魅せる逸品。先述したサントラ『Rush Hour 2』におけるジャズとジル・スコットの「Love Again」のようなぬくもりに溢れています。

 

 

ここ数年では他にも、来週ベストアルバムをリリースするJUJUとデルタ・グッドレム(Delta Goodrem)、『カエルの王女さま』で女優としても活躍した福原美穂レオナ・ルイス(Leona Lewis)、AIとジャクソンズ(The Jacksons)などの共演があります。さらに、R&B的ではない作品を挙げるならば、B'zの松本孝弘ラリー・カールトン(Larry Carlton)の共演作はグラミー賞を受賞するなど、共演から生まれる”化学反応”は少なくありません。

こういった共演では、たしかに話題作りや双方のファンを取り込むなどの”戦略”が垣間見えることもありますし、そういう裏事情が見えると途端に揶揄する方も実際にいらっしゃいます。しかしながら、今日取り上げた作品群はいずれも(個人的には)良曲(と考えるもの)であり、いくら戦略や裏事情があったとしても、感覚的に”イイ!”と思った曲はそういった硬い考えを余裕で飛び越え、感動を与えてくれるものです。聴くのを敬遠するのではなく、実際に聴いてみてそれが一生の名曲になることだってあるのですから、まずは一度チェックしてみるのが好いと思います。