イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ソニー・ミュージックのiTunes配信開始と、”これから”

本日付で、iTunes Storeにて配信開始。

・ナタリー - Sony Music楽曲がiTunes Storeで配信開始

以前からいろんな方がソニーの動きに疑問視していました(配信しなかった理由を”ユーザーメリットより(ソニー)グループ全体の利益”にあるとしたこのブログ記事に納得です→サラリーマンだって不安定な職業だからね - そんなにiTMSが悪いのか? 「SONYブランドの曲をiTunesで売ってくれ」)。

が、ついに動き出しましたね。7年もの間ソニーに働きかけ続けた小室哲哉氏をはじめとした、”直接説得する”という行為はやはり大きいんだなということをあらためて実感しています。ナタリーの記事では、その小室氏が所属するTM NETWORKのアルバムジャケット(『Gift for Fanks』)が、配信開始の”象徴”として掲載されています。

 

 

ここからは私見ですが、これでいよいよ”スタートラインに立った”と考えています。

(とはいえまだ邦楽配信が全アーティストまんべんなくはじまったわけではないのですが、最大手の一つたるソニーが動いた以上、これまで配信を重視していなかったレーベルやアーティストは配信に本腰を入れざるを得なくなったのでは、とも。)

 

そこで、今後の音楽配信に関連した、個人的な希望を記載。

 

・配信価格の低価格化

配信が開始したとはいえ、実際は高すぎるのがネックと思う方が少なくないでしょう。邦楽の1曲あたりの基本価格は250円、対してレンタルならば当日料金(翌日開店前までの返却)で100~120円、それも当然カップリング曲付なわけで。特にシングルの配信では価格差が生じ、気軽に配信を購入するよりはちょっと時間がかかってもレンタルする方が好いと思う人は多いのでは?

 

・邦楽の全世界的な配信

様々な垣根がありますが、法整備は特に大事かと。さほど法に詳しくないので頓珍漢なことを書くかもしれませんが、現在の法律は全体的にネットの存在が前提にないのが問題なんですよね。ゆえに脅迫の誤認逮捕の件や著作権法の危ういグレーゾーン化も招いているわけで。著作権法が改正の度に”違法建築物化”するのではなく、様々な法律をまずはネット社会を前提に作り直すことで、フィジカル(CDという盤)がなくとも簡単に世界進出できるんじゃないかと。

 

・配信(の影響力)を加味した、米ビルボード的シングルチャートの登場と”公式化”

既にビルボードの日本チャートは存在しますが、その影響力をより高めることで、より流行に即した音楽の存在を知らしめることが大事では。現在の売上のみのチャートではアイドル中心になり(たとえばコチラが分かりやすい)、それがよくないということではないのですが、たとえば配信のみでリリースするという戦略等はチャートに反映されません(安室奈美恵の新曲「Damage」は先週、配信のみでリリース。iTunes配信チャートで2位でした)。

ちなみにアメリカではこんな過去が。アメリカではラジオエアプレイが音楽流行の強い影響力を持っているのですが、特に1990年代中盤以降、レコード会社がアルバム購入促進のためにシングル化はしない方針を採ったため、シングル化曲のみが登場できるビルボードシングルチャートとラジオで流行っている曲との”乖離”が生じました。そのためビルボードシングルチャートは1999年度より『エアプレイのみのシングル(アルバムカット)をHot 100に組み込んだ』(Wikipedia - Billboard Hot 100 - Hot 100のポリシー変更 - アルバムカットより)ことで、その乖離が解消された、という経緯があります。

日本のチャートといえば”オリコン”です。無論、セールスチャートは大事ですし、フィジカルセールスは今の音楽業界において売上の最も大きな要素であることは自明です。しかし、流行との乖離(たとえば社会現象化し、遂に武道館公演を行ったきゃりーぱみゅぱみゅは年間トップ20に入っていない、など)や、複数種購入によって”売上枚数とユニークユーザー数”との乖離も発生している以上、セールスチャートと同時に配信やラジオを加味した複合チャートを登場、公式化させ、それを広く海外にも浸透させるのはどうでしょうか。邦楽の魅力がより内外で伝わるものと考えます。

 

 

と、ざっと挙げてみました。無論これらは希望ではありますが、働きかけるためにはまずは口に出して言ってみないとな、と思った次第です。