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青森県在住。毎週日曜日17時から、FMアップルウェーブ発の番組の一員として参加。音楽・ラジオ好きによる"日々の音"やメディアの話

【Diggin'】11. Radio "Kills" The Music Star?

今週リリースされたCDの中から一作品を取り上げ、その音世界をちょっと広く、ちょっと深く掘り下げていく金曜日の特集、"Diggin' "。今週は少し趣向を変え、リリース作品ではなくまさに今週の"ラジオの動向"を踏まえ、最近のラジオについて考察します。

 特集タイトルは、【ラジオが音楽を軽視する?】です。

 

 

今週放送された『坂本美雨のDear Friends』(TOKYO FM / JFN38局 月-木曜11時)。いつもは、放送前後に発表される作品を携えて音楽業界を中心にエンタテインメント業界のゲストが招かれるのですが、今週1週間は"芸人スペシャル feat. 坂本美雨"と題してOA。出演者の中で、エハラマサヒロさんの回で紹介された関連作品『みんなの動揺』は9月のリリースであり、なぜこのタイミングでの登場なのか?と疑問を抱いた次第。無論、エハラさんに関しては矢野顕子さんのモノマネを得意としているため、娘である坂本美雨さんとの共演が面白そうという点でブッキングしたものだと容易に想像はできるのですが。

 

考えた結果、今週の番組企画の根源は、【スペシャルウイーク】にあるのではないかと。

首都圏の民放ラジオ局では、今週月曜からの1週間(12/10-16)、"スペシャルウイーク"などと称した祭りを展開しています。首都圏では偶数月のある1週間、聴取率調査週間として"ラジオ版視聴率"を計測するのです。その方法等については後述するWikipediaを確認いただきたいのですが、この聴取率については、偏りの可能性が以前から指摘されています。

実際、レイティング期間中は民放ラジオ局が「スペシャルウィーク」(AM局で多い)、「パワーウィーク」「リスナーズウィーク」「ハッピーウィーク」(FM局の例)などと銘打ち、賞金や賞品などのプレゼントを通常より多く用意したり、豪華ゲスト(大物芸能人など)を呼んだり、また、地方局であればキー局から人気パーソナリティ(プロ野球中継であれば野球解説者)を呼ぶなど、聴取率を増加させるため局を挙げての集客工作が見られる。

Wikipedia - 聴取率 - 調査方法より

大物ゲストを呼ぶこともプレゼントを出すことも問題行動ではありませんが、しかしながら他の週とあまりにかけ離れた番組展開になってやいないか?と思うのです。思うものの、プレゼントで得をする方が多く存在するためか、外からきちんと指摘している方があまり見えてこないのもまた現状なのですが。加えるならば、こういう調査では、スペシャルウイークではない普段の状態でのラジオ番組の比較が出来にくいのではという疑問も、強く持ち合わせています。

 

さて、今回【ラジオが音楽を軽視する?】と少しばかり過激なタイトルを用いたのには理由があります。先述の『Dear Friends』において、ミュージシャンが完全に追いやられたということです。来週が全員ミュージシャン(南波志帆さん、溝口肇さん、音速ライン、木根尚登さん)であることとの差も気になりますが、今週CDを発売したミュージシャンではシングルではNEWSやLUNA SEA、アルバムでは水樹奈々さんやケツメイシ、flumpoolなどがいるわけで(いずれもデイリーセールスチャートのトップ10以内にランクイン)、知名度的にもブッキングしてよかったはず。おそらくお笑い芸人(出演された方を非難するわけでは決してありません)をブッキングする方が"数字が獲れる"とスタッフ側は考えたのかもしれませんが、その考えが成立するならば、逆に"ミュージシャンでは数字が獲れない"という方程式もまた、スタッフ側の頭の中にあるのでは?と思うのです(かなり偏った見方かもしれませんが)。

 

他局ですが、J-WAVEの人気番組『GROOVE LINE Z』(月-木曜 16時30分)では、スペシャルウイークにおいてはゲスト出演がありません(GUEST CALENDARより)。そもそもゲスト登場は毎回のことではないのですが、記憶が正しければ、ここ最近はスペシャルウイークにゲストが来ることはほとんどないはず。仮に大物のリリースがその週にあったとしても呼ばれないわけで、ミュージシャンにとっては機会損失と言えるかもしれません。

 

 

無論、きちんと通常時の放送に近い形でゲストを呼んだりするところも多々ありますので、すべての番組・局がそうとは限りません。しかしながら、スペシャルウイークに限らず、最近特に音楽が軽視される状況を目の当たりにしています。

これは今週、実際にあったことです。局名等は記載しないでおきます。

 

 

●曲名もアーティスト名も"どうでもいい"と考えるDJ

シングルの週間のセールスチャートを紹介する際、アーティスト名と曲名をごちゃごちゃに紹介してしまい、混乱したひとりのDJに、もうひとりのDJが"どっちでもいい!"と笑いながら指摘。"どっちでもいい"と言ったDJは、チャート紹介後、現在のチャートの上位に登場するアーティスト名でわかる人はほとんどない、と断言。

 

...せめてランキングを紹介するのが毎回コーナー化されている以上は事前の読みあわせは必要と思います。それでも読み間違いは起こるもの。また、現在の音楽業界において売上と認知度が以前よりもっと比例しなくなっているという感覚はあります。しかし、"どっちでもいい"と判断するのはリスナー側では? それも、"どっちでもいい"と言った方は自身もミュージシャンとして活動する立場にあり、自身が言われたならばどう思うのか、と考えると唖然としてしまいました。そして(特に年配の方に多用される)自身が知らないことを誇らしげに述べることは、音楽業界自体の問題といえるかもしれない一方で、自身の探求力が低下したとも言えるわけで、それを疑問視しないのはどうなのかなと思うのです。

 

●1番のサビにも至らずにフェードアウトされてしまう曲

これも今週の放送を聴いて痛感。情報番組の合間に通販コーナーがあり、コーナー直後からCMに至るまでの間に、その日届ける情報になぞらえた曲を紹介するのですが、時間の関係上1番のサビがはじまる前にフェードアウト(もしくはDJのしゃべりのBGM化)してしまうのです。今週は特に極端でした。

 

...無論、通販コーナーも大事な要素です(付け加えるならばお得意様でもあります)。しかしながら曲をぞんざいに扱うのはどうなのでしょう、せめて1番のサビ終わりまでは聴かせる方がリスナーにとって心地良いのではと思いますし、作り手がサビに注いだ労力をあまりにもフイにするのではとも。通販コーナーを短くするか、もしくはコーナー直後時間がないのなら曲を割愛する方が自然だと考えます。 

 

他にもこんなことが。

●曲がオリジナルヴァージョンでかからない

これもまれにあるのですが、ある局で1年ほど前、リスナーからのリクエストに応じる形で和田アキ子「あの鐘を鳴らすのはあなた」がかかったのですが、リアレンジされたものでした(おそらくは2006年リリースのシングルに収録されたリメイク版)。オリジナルではないよな...と思いつつも、その後"オリジナルではありませんでした"の説明はなく、その後今年秋にも同様の事態がありました。双方とも"リアレンジヴァージョンでお送りします"との説明はありませんでしたし、曲終わりの説明も無し。

他方、同じ局で別のDJが担当した際、違う曲のリアレンジ版が流れた後、きちんと"申し訳ありません。リメイク版をおかけしてしまいました"ときちんと説明。ともすれば担当したDJによって訂正する/しないの判断が分かれているのかもしれません。

 

...曲は、リクエストでリアレンジの方をなどと要望がなければ、オリジナルヴァージョンをかけるのが好いと思われます。曲のかけ間違いは誰にでもあることですから、より細かな注意を払うことで幾分は防げるはずです。しかしながら、仮に推測したような"訂正する/しないの基準"がDJによって異なっているのであれば問題かと。訂正しないと考えたDJは、曲への意識が高くないと思われてもおかしくないかもしれません。きちんと訂正を入れるべきだと思います。

 

 

 

これらの他にも、以前弊ブログで"イントロ乗せ"の方法を紹介したのですが、逆にいえばイントロ乗せが出来ていないことが最近目立ってきているように思います。あのJ-WAVEでさえそれを実感するのですが(それでも歌い出しに言葉がかぶることはほとんどみられません)、地方局などでは散見されます。歌い出してもしゃべっていることもたまにみかけられ、曲を聴かせようという思いはあるのかなあと懐疑的になるのです。

音楽へのスタンスはDJやスタッフによって異なります。でも先述したように、判断は受け手たるリスナーに委ねるべきなんじゃないかと思うんですよね。DJやスタッフが曲を"ぞんざいに"扱えば、曲の浸透度や曲への思い入れがどんどん低く、また薄れてしまうのではないでしょうか。それが曲単位ではなく曲を生み出す側のミュージシャンの扱いをも軽くさせ、その結果、終いには"数字が獲れない"になってしまう...というスパイラルに陥っていると考えるのは大袈裟でしょうか?

 

CDが売れないと言われている昨今、全体的に売れなくなってきた中で熱狂的もしくはコアなファンを擁するアイドルやバンドなどのセールスが目立つのは自明ですが、それを紹介する側が"誰それ?"というと、DJがその態度なんだから曲はたいしたことないよねと思うリスナーはきっといるでしょう。その意識の積み上げがより今の音楽への興味を削ぐ形になりかねません。AKB48などのセールスが、その商法に疑問はあれど結局は音楽業界を潤し結果的に新たなミュージシャンのデビュー資金等に用いられているものと思われますが、彼女たちのセールスがピークを超えればその資金すら確保できなくなりかねません。ここ数年ミリオンセールス自体が少ない以上、何もないところから金の鉱脈を見つけることは難しく、音楽の良さを示して少しずつでも買ってもらえる状況に持っていかなければならないはず。だからこそ音楽と人とを直接結びつけるはずのラジオ曲や番組、スタッフやDJがその役割を自らの意識の高くなさでもって安易に削いではならない、と思うのです。無論、これは自分への戒めとして心に刻みつけます。

 

スペシャルウイークを起点に、今回の意識の高くなさの話に至ったわけですが、聴取率調査を否定しているものではありません。聴取率調査自体は必要だと思います。ただし、テレビのように毎日できないのならば抜き打ちで行うとか、"スペシャルウイーク"を厳禁とするなどした方がより正確な指標が出るでしょうし、もしくはradikoの聴取者数を公開し聴取率調査とダブルの指標でもって聴取動向を追いかける方がより好いでしょう。"スペシャルウイーク"という看板を大々的に訴求することでリスナーの中にはあまりに普段とかけ離れていることに疑問を抱く人もいらっしゃると思いますし、それによって普段よりもかかる曲が少なくまた短くなるならば、結果的にラジオから好い曲を知る機会も減ってしまうのでは、と強く懸念しています。