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青森県在住。毎週日曜日17時から、FMアップルウェーブ発の番組の一員として参加。音楽・ラジオ好きによる"日々の音"やメディアの話

【Diggin'】14. 2012年間ゴスペルシングル・チャートと『WOW Gospel 2013』

今週リリースされたCDの中から一作品を取り上げ、その音世界をちょっと広く、ちょっと深く掘り下げていく金曜日の特集、"Diggin' "。

今週はリリース作品もありますが、月末のリリース作品が非常に多く、その中からちょっと早いですが一作品を取り上げます。

 

 

1/29に発売される『WOW Gospel 2013』(リンク先はCD、他に同名DVDも。ここではCDを取り上げます)。その名の通りゴスペルのコンピレーションアルバムですが、毎年1月下旬にリリースされるこの”WOW Gosoel”シリーズ、最近のビルボードゴスペルアルバムチャートでは09~11年が全て年間2位、そして昨年は『WOW Gospel 2012』が年間1位となり定番化しています。自分は一時期ゴスペルクワイアに所属していたのですが、課題曲も多く収録されていたため重宝しましたし、ゴスペルに興味を持った方にアルバムを薦めるならばこの”WOW Gospel”シリーズは最適、間違いない作品といえます。

 

さて、今年もリリースがアナウンスされたこの作品。収録されている30曲中、2012年のビルボード年間ゴスペルソングチャート50位以内にランクインされた曲が15曲収録されています。また、昨年以前の”WOW Gospel"シリーズに収録された曲のうち、昨年のチャートで50位以内にランクインした曲も8曲にのぼり、シリーズを抑えておけば(年間チャート的)ヒット曲の半数近くは手に入れられるといってよいでしょう。

 

ゴスペルは音楽的アプローチが様々で、宗教色の強い定番のゴスペルサウンドもあれば、R&B色の強いいわゆるコンテンポラリーゴスペルもあります(キエラ・"キキ"・シェアード(Kierra KiKi Sheardの「Let Go」はR&B的アプローチゆえ世俗、特に日本で大ヒットしましたね)。まずここでは、収録曲の中からR&B色の強いものを取り上げてみましょう。

 

※『WOW Gospel 2013』のトラックリストはAmazon.comに掲載されています。

 

・Disc01-Track01:Kirk Franklin「I Smile」(2012年年間チャート26位)

カークのクワイアによる歌唱はゴスペル的ながら、ア・トライブ・コールド・クエスト(A Tribe Called Quest)が「Bonita Applebum」で使用したリトル・フィート(Little Feat)「Fool Yourself」をサンプリング(「Fool Yourself」は他にもサンプリングとして多数用いられています)、メロディそして歌詞はSOS・バンド(The SOS Band)「Tell Me If You Still Care」を(歌詞は一部改変の上)引用。このアプローチはまさしくR&B的。

 

・Disc01-Track03:James Fortune & FIYA feat. Monica & Fred Hammond「Hold On」(2012年年間チャート23位)

こちらもカーク同様クワイアによる楽曲ながら、2番のメインとを務めるモニカの歌声がとにかく可憐。母のような優しさをも持ち合わせた温かいヴォーカルで聴かせてくれます。曲最後の1分少々のみの登場ながら、フレッドの存在感、伸びやかな低音も凄い。曲を聴けばまさに包み込まれるような感覚に誘われます。

 

・Disc01-Track07:J Moss「Good & Bad」(2012年年間チャート21位)

ゴスペルのみならずR&Bのプロデュースも行う"PAJAM"のひとり、J・モスによる一人多重コーラス。後半の盛り上がり、そしてちょっと癖…粘り気のあるヴォーカルがもたらすいい意味で変態的な心地よさ。惹き込まれ度強し。熱いです。

 

・Disc01-Track12:Fred Hammod「I Feel Good」(2012年年間チャート7位)

クワイアを用いず、余裕に溢れたと言っても過言ではないくらいのクールダウン的ナンバー。去年リリースしたアルバム『God, Love & Romance』にはフランク・マッコム(Frank McComb)を招いた「My Love Is Real」もあり、スムースジャズテイストで非常に格好良いです。

 

これらの曲に興味を抱いたならば、『WOW Gospel 2013』を一度是非手にとっていただけたなら嬉しいです。

 

ちなみに、年間チャート10位以内では、8~10位および2位の4曲が未収録。そして1位の曲は前年の『WOW Gospel 2012』に収録されています。それがこの曲。

1位 Andrae Crouch Featuring Marvin Winans「Let The Church Say Amen」

半世紀以上ものキャリアを持つアンドレ・クラウチが1位というのは凄いことです。そのアンドレ・クラウチ、実はつい先日テレビに登場しています。昨年末放送された『マイケル・ジャクソン BADのすべて』(2012年12月28日 NHK総合)内、スパイク・リー監督によるドキュメントフィルム【BAD25】。後半、妹(一部には姉という話も)のサンドラとともに登場したアンドレは、自身がはじめてマイケルの作品を手がけ、アルバム『BAD』に収録された「Man In The Mirror」について語っていました。一度はレコーディングを終えたものの、”最後(の部分)は変えるべきだ”とクインシー・ジョーンズに提案し生まれたのが、曲終わりの"Change”のフレーズだった、と。たしかにラストの”Change”のフレーズは決意をより強く示す重要な箇所であり、変える前の音源は分かりかねるものの変えたことは大正解じゃないかと実感です。以降アンドレは自身のクワイアと共に「Keep The Faith」「Will You Be There」そして「Earth Song」に参加。マイケルのゴスペル的楽曲の右腕となったわけです(手がけた曲に関しては、Wikipedia - Andraé Crouch - Influenceより)。

そうしてマイケルと深く関わってきたこともあって、マイケルの追悼式に自身のクワイアにて大ヒット曲「Soon And Very Soon」を披露しています(MTVに記事有り)。ちなみにアンドレは、マイケルの死去の3週間前、マイケルに「It Won't Be Long」を歌ったそうです。マイケルが自身の音楽についてアンドレに相談しその際歌をお願いしたとのことですが、それがマイケルが改宗したのかという憶測を招き、死後騒ぎになったそうです(詳しくは【石井希尚Official Web Site - Andrae Crouch at Michael Jackson Memorial Service-マイケル・ジャクソン追悼式によせて-】を参照してください)。

マイケルにとって、アンドレは心の師といえる存在だったのでしょうね。

マイケルの死去はあまりにも大きな損失ですが、アンドレがこうして活躍していることは非常に頼もしく、またマイケルも見守ってくれていることでしょう。アンドレが気になる方は是非『WOW Gospel 2012』そしてアンドレのアルバム『The Journey』をチェックしてみてください。