最近手に入れた音源に、シール(Seal)によるスタンダードカヴァー集『Soul 2』(2011)があります。その冒頭を飾るのがローズ・ロイス(Rose Royce)の1978年のソウル・クラシックス「Wishing On A Star」。これまでにも様々なカヴァーが存在しますが、シール版を聴いてみてどうもしっくり来ない自分がいました。いや、素晴らしい歌唱なのは間違いありません。
ジェイ・Z(Jay-Z)がネタ使いし、妻のビヨンセ(Beyonce)もカヴァーしたこの名曲、極々私見ではありますが、オリジナル越えを果たしたのはティーナ・マリー(Teena Marie)版であると断言します。
・Teena Marie「Wishing On A Star」
(TVサウンドトラック『New York Undercover : A Night At Natalies』(1998)収録)
ちなみにオリジナルはコチラ。
・Rose Royce「Wishing On A Star」
カヴァーがオリジナルにかなり忠実(最後の部分が少し違うくらい)ゆえ、ともすればあまりに正攻法すぎて面白くないかもですが、ティーナ・マリー独特の声の癖が、曲の魅力をより増幅させているように思うんですよね。人によって好き嫌いが分かれるタイプの声かもしれませんし、曲によっても声と合致するかどうかが大きく分かれるかもしれませんが、このカヴァーは見事に曲と声とが融け合い昇華した逸品だと実感しています。
(ちなみに『New York Undercover…』のサントラ自体も好いです。全体がソウル・クラシックスのカヴァー集ですが、エクスケイプ(Xscape)やブラウンストーン(Brownstone)の実力の高さを感じることができますし、来日が決まっている112のEW&Fカヴァーは、頼りなさげな声が歌詞の切なさを増幅させることに成功している感じがします)
ティーナ・マリーは2010年末に急死、生の歌声を聴くことができなくなってしまったのが非常に残念ですが、急死する直前にその完成がアナウンスされたアルバム『Beautiful』が今週15日にリリースされます。今一度、唯一無二である彼女の歌声に浸ってみては如何でしょうか。