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青森県在住。毎週日曜日17時から、FMアップルウェーブ発の番組の一員として参加。音楽・ラジオ好きによる"日々の音"やメディアの話

【Diggin'】17. オリジナルアルバム2枚同時発売の"理由"

毎週金曜日恒例の【Diggin'】。その週にリリースされる作品からひとつをピックアップし、それを元にちょっと広く、ちょっと深く掘り下げていきます。

 

 

 今週発売のGLAYのアルバム『JUSTICE』と『GUILTY』が、週間セールスチャートでワンツーフィニッシュになりそうな勢いです。売上枚数にもよりですが、ワンツーフィニッシュになればGLAYの存在感がより強く印象づけられそう。ベストアルバムではよくみられる"2枚同時発売"ですが、オリジナルアルバムでは珍しいよなあと思い、その2枚同時発売の"理由"について、掘り下げてみました。

 

 

①プロデューサーの違い

●GLAY『JUSTICE』&『GUILTY』(2013.01.23)

11thアルバム「JUSTICE」は初のセルフプロデュース作品で、『JUSTICE [FROM]GUILTY』『運命論』を含む全10曲を収録。デビュー20周年にあたる2014年までの主な活動を発表し未来を約束したGLAYの新たなサウンドが凝縮されている。

12thアルバム「GUILTY」は佐久間正英プロデュース作品。夏に行われた長居スタジアムのテーマソング『Bible』やG-DIRECT限定で販売していた『G4・II -THE RED MOON-』に収録された『everKrack』のalbum ver.を含む全10曲がGLAYらしさ全開の王道サウンドで収録されている。

・GLAY公式サイト - NEWS & INFO - ニューアルバム 1月23日2枚同時発売決定!より

今週出演したラジオ番組『坂本美雨のディア・フレンズ』(TOKYO FM)でも"佐久間さんのスケジュールが取れないときがあった"と語っていました。そこで生まれたセルフプロデュース作品を1枚にまとめており、佐久間氏の作品群と聴き比べてみるのも楽しいかもしれません。

プロデューサーではなくアレンジャーの違いという点では、椎名林檎のカヴァー集『唄ひ手冥利~其の壱~』(2002)における亀田誠治盤"亀パクトディスク"と森俊之盤"森パクトディスク"というのもあります。ちなみにこのアルバムは2枚同時にではなく2枚組としてリリースされています。

 

 

②コンセプトの違い

大橋トリオ『L』&『R』(2011.12.07)

大橋:(中略)アルバム用にあがってくる歌詞を見てると(大橋は歌詞を自分では書かない)、今までの感じと、ちょっとメッセージの強いものと、どちらかに分かれてたんですね。それをごちゃ混ぜにしてしまうのもどうかと思ったし、分けてリリースしてみたら面白いんじゃないかと思ったっていう。

―それで、これまでの大橋さんっぽいのが『L』(=LOVE)、メッセージ色の強いものが『R』(=REAL)になったわけですね。大橋さん自身、曲を書く上での意識の変化はありましたか?

大橋:意識の変化というか、音楽家としてどう表現したらいいか「気にしてた」っていう。ただなかなか答えは出ないし、今も気にしてるので、メロを作る上では自然とそういう部分が反映されてるのかなと。

・CINRA.NET - 「あまのじゃく」だからこそ 大橋トリオインタビュー(3頁)より

無論、1枚のアルバムの中に"LOVE"と"REAL"の双方を落とし込んでもよかったのかもしれませんが、より統一感のある作品に仕上げるという意味では必要な作業かもしれませんね。

 

今回、GLAYの2枚リリースの件で真っ先に思い出したのが、L'Arc〜en〜Cielの『ark』『ray』(1999.07.01)。ワンツーフィニッシュを果たし初週売上が2枚合計で300万枚を超えるモンスターアルバム。『(前作の)『HEART』以降出したシングル8曲を1枚に入れたら、ただの半ベストになってしまうから』(Wikipedia - arkより)というのが2枚同時発売の理由ですが、『ark』が陽・明るいイメージなのに対し『ray』が陰・暗いイメージというコンセプトの模様。いやむしろ、『ray』の方こそラルクの方向性ではという見方もあります

 

コンセプトの違い、それもラルクのような"対極のコンセプト"を2枚同時に…という点では新居昭乃さんの『Red Planet』&『Blue Planet』(2012.04.25)も。『メロディアスであたたかみのある6thアルバム『Red Planet』、水や雨、夜を思わせる7thアルバム『Blue Planet』』(Newtype - アニソン ニュース - 新居昭乃、2枚同時リリースのアルバム公式HPがオープン!より)とのことで、詳細(ライナーノーツ等)はアルバムの公式ページに掲載されています。

 

 

③メジャーとインディ…リリース元の違い

RAM RIDER『AUDIO GALAXY-RAM RIDER vs STARS!!!-』&『AUDIO GALAXY -RAM RIDER STRIKES BACK!!!-』(2012.04.11)

──ではそれぞれのアルバムの話も聞かせてください。フィーチャリングボーカルアルバム「AUDIO GALAXY - RAM RIDER vs STARS!!! -」は、メジャーレーベルからのリリースということもあって、非常に豪華な内容ですね。

そうですね。ボーカリストの名前だけ見ても本当に豪華で派手で、しかもRAM RIDERらしいラインナップになったと思う。

・ナタリー - PowerPush RAM RIDER - アルバム『AUDIO GALAXY』2枚同時リリースで本格再始動(3頁)より

客演を多く招いた側がメジャーレーベル(日本クラウン)からのリリース、そして全編がRAM RIDER本人の歌唱となる"逆襲盤"はASOBI SYSTEM内のレーベル、ASOBI MUSICからのリリース。客演か単独かという違いもあれど(これはコンセプトの違いとも言えそう)、こういうレーベルの違いというのは面白いですね。もしかしたらメジャーレーベル側は客演を多く招いた方がより好いと考えているのかもしれません。

 

そういえばKOKIAも、ビクターから『KOKIA∞AKIKO~balance~』、自身のレーベルancoから『AKIKO∞KOKIA~balance~』を同日リリース(2009.03.18)したことがあります。それにしても彼女のリリース元は実に多く、ビクター、自身のレーベルそしてランティスからもリリース。契約形態は分かりかねるのですが、コンセプト(タイアップ)に応じてリリース先を変えているのかもしれません。

 

ちなみに客演的違いの点で言えば、SUGIZO『FLOWER OF LIFE』および『TREE OF LIFE』(2011.12.14)も挙げられます。前者が『純然たるSUGIZOのオリジナル作品』で後者が『様々なアーティストとのコラボレーション作品が中心』とのことです(ViF - 特集-Special Feature- - SUGIZOより)。

 

 

④その他

●AOEQ『think』&『think twice』(2011.7.13)

まず2枚同時リリースとなった背景を考えよう。両アルバムともコンセプトやテイストに大きな違いはなく、これは、当初の予定より収録楽曲が増えてしまい「1枚で収まりきらない」という事態から、こうしたリリース形態が選ばれたと考えるのが妥当であろう。

・honeyee.com - THINK PIECE - ‘think’ ‘think twice’ by AOEQ AOEQがデビューアルバム2枚同時リリース!より

AOEQはYO-KING&藤原ヒロシによるユニット。収録曲が増え1枚に収めるのではなくもしくは2枚組にするわけでもないのは、なんだかYO-KINGさんらしいなあと納得してしまったり。特に大きな差はなく流れ的に…というのが一番しっくりくる?理由かもしれません。

ちなみに、2枚に分けた理由を調べてみたものの明確な回答が見つからなかったのが岡村靖幸『エチケット(ピンクジャケット)』『エチケット(パープルジャケット)』(2011.08.24)。もしかしたら、2枚同時リリースが"岡村ちゃん復活!"のインパクトをより強めることに貢献したのかもしれませんね。

 

 

というわけで、4つのパターンを紹介してみました。思ったより多く存在するんだなあというのが正直な感想です。それも最近の作品が多いというのも驚きました。

 

先述したベストアルバムの2枚同時リリースについては個人的に懸念を抱いています。分け方がどうあれ、昨年リリース分においては3枚組(プラスα)での形態を採用した桑田佳祐山下達郎松任谷由実の方が"潔い"のではないか、と思うからです。無論キャリアの長さ(それゆえ曲が多い)ゆえ3枚組が成り立つというのもあるでしょうが、安価に抑えているからこそ50万枚以上のセールスを記録し、『総売り上げが前年比4.1%増の約3270億円と、6年ぶりに増加に転じた』(47NEWS - 6年ぶりに総売り上げ増加 音楽ソフト、オリコン調べより)ことに大きく寄与したのではないかと。無論、分けて販売した方が、2枚同時購入による販売額は大きくなるものの、そのようなやり方が音楽業界の"搾取"に見えてしまう可能性はありますよね。例を挙げるとキリがないので敢えて触れませんが。

 

オリジナルアルバムにおいては、調べてみると違いがはっきりしてるものが多いため、2枚同時という方法には納得できることが多いです。とはいえ調べていくうちに、"財布に優しくない"というブログ等でのコメントに何度かぶつかったのも事実です。分ける理由は分かれどまずは躊躇いなく手に取りやすい状況づくりに(特にレーベル側は)工夫を凝らしてほしい、と願うばかりです。