イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ヘビーローテーション不要論

とはいってもAKB48ではなく、ラジオの話。

短い期間に何度も繰り返すこと。特に、ラジオ局などが、推薦曲を繰り返し放送することをいう。パワープレー。

コトバンク - ヘビーローテーションより

日本で最初に導入したのは1989年に開局したFM802。もともと開局前から業界内で注目を集めていたFM802は後発FM局でありながら商業的にも成功を収めたため、後にこの手法が一気に国内FM局に拡がる結果となる。

Wikipedia - ヘヴィー・ローテーションより

AKBの同名ヒット曲に触れてはじめてその言葉を知ったという方も多いかもしれません。ヘビロテと略すことも。

 

先日、サム・スミスの国内盤の遅さのエントリーを書きましたが、記載時にどうしても引っかかったトピックスがありました。ヘビーローテーションに関する元日のレコード会社の発表がそれ。

本日より、サム・スミスの「ステイ・ウィズ・ミー 〜そばにいてほしい」が日本全国で大量オンエアされます!

あなたの街でも「ステイ・ウィズ・ミー 〜そばにいてほしい」が流れること間違いなし。

ユニバーサルミュージックジャパン - サム・スミス - 全国26のFMラジオ局にて、1月のパワープレイが決定!より

ちょっと待てと。アルバム国内盤は8ヶ月遅れ、そして「Stay With Me」はオリジナルバージョンが昨年4月には米でリリースされており昨夏までには世界中で大ヒットを記録済。いくら国内盤がリリースされるタイミングとはいえ、ここにきて?今更な気がしませんか? と(またグラミー賞直前のタイミングだとして、ならばノミネートされたダークチャイルド・バージョンを流すほうが好いのではとも)。無論ラジオで広くこの曲が知れ渡ること自体を咎めるつもりはありません(個人的にも大好きな曲ですし)。しかし、この違和感の正体はなんでしょう。

 

音楽の選曲委員(主にラジオ局のスタッフ、パーソナリティ)などが選曲するタイプと、レコード会社が宣伝の一環としてラジオ局に宣伝料を支払い演奏させるタイプに分かれる。

Wikipedia - ヘヴィー・ローテーションより

ヘビーローテーションの概要を知って、違和感の正体が分かりました。

サム・スミス「Stay With Me」がヘビーローテーションされるに至ったのが、ラジオ局主導なのかレコード会社主導なのかは分かりません。しかしレコード会社主導の場合、世界中で既に半年以上前にヒット済の曲を、自身の国内盤遅らせ事情の挽回の目的でかけてもらうわけです。世界で売れている好い音楽を日本でも認知してもらいたいという文化的側面ではなく(と断言していいでしょう)、どのタイミングで出せば国内盤が売れ、そこにヘビーローテーションが大きな役割を果たせるかということばかりを考えている点において、音楽を単にビジネスとしか考えない自己都合っぷりを実感させられます。はっきりいって厚顔無恥も甚だしいでしょう。

 

他方、ラジオ局も問題です。ヘビーローテーションがレコード会社主導ならば、彼らのビジネス面での自己都合に対してラジオ局がいいなりになってしまっています。だとしたらラジオ局のプライドは見られません。また、世界中で既に半年以上前にヒット済の曲の存在、そして曲自体の好さを知っていれば、その段階で局で紹介したりまたは局独自でヘビーローテーションを行う等出来たのでは?と考えると、嗅覚というかセンスも見られません。好い曲をまずはわが局から!という野心はどこへ行ったのでしょう。ラジオ局は財政難とはよく聞きますが、それが野心すら出させない環境を呼んでいるのならラジオ局だって音楽を【文化的側面より圧倒的にビジネス重視】と捉えているんじゃないかと疑ってしまいます。

ましてや…ヘビーローテーションの先駆者たるFM802も、先月ではありますが「Stay With Me」をヘビーローテーション化。彼らの嗅覚も鈍っている、もしくはレコード会社のいいなりになっていると言えそうで、非常に悲しいというか呆れてすらいます。

 

と考えると、この問題は、サム・スミス「Stay With Me」だけじゃなく、邦楽にだって言えるのではないか。【文化的側面より圧倒的にビジネス重視】という形でヘビーローテーションが存在するならば、良心的な意味でのヘビーローテーションは最早失くなってしまったのだろうと考えるのは自然なことかもしれません。今回の問題でその構図が露呈してしまったわけで。

 

 

好いものは積極的に薦めたい、それがヒットに結びついてくれるならラジオ人冥利に尽きる…というのは過去のものになったのでしょう。そんな良心や野心で食っていけるわけがないだろう!との声が現場から聞こえてきそうですが、そういう裏事情が安易に読めてしまった以上、単に局独自の大量オンエア、もしくは”ヘビーローテーションという名分は捨てる”のが適切だと思います。