イマオト - 今の音楽を追うブログ -

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ジャパネットたかた社長交代報道から見えてくる新聞表現の違和感

ジャパネットたかたの社長交代の、ある報道に対する”違和感”。

通販大手「ジャパネットたかた」の高田明氏(66)が2015年1月15日、社長から退任した。16日には、長男の旭人(あきと)新社長(35)とともに会見に臨んだが、そこでの「声のトーン」がネット上でにわかに注目されている。

甲高い声でおなじみだった「名物社長」の退任あいさつに、ネットユーザーは「あの声がなくなるのか...」と惜しむ一方で、会見時の声がいつもの調子とは異なる「普通」のものだったため、「たかた社長って普通の声出るんだ!?」といった驚きの声も出ている。

J-CASTニュース - ジャパネットたかた社長の「普通の低い声」に衝撃走る 退任会見で「あんな声も出るんだ!?」とネット大注目より

『デイリーフライヤー』(JFN系)などで極稀に前社長が登場する際、声のトーンの低さ(というか落ち着き、なのですが)がテレビとは違っていることは以前から把握していましたし、そのことは過去のブログエントリーで触れています。

ほぼ低音で通し(それでもきちんと抑揚があって分かり易い)、最後の価格のところで少し甲高い声が出るくらいです。

・face it - ジャパネットたかたラジオショッピングを踏まえた、ラジオ"原稿レス"化の願いより

普段の声が落ち着きがある分、要所要所で特徴的な甲高い声が出るとよりインパクトがありますし、お買い得感などもより強く表現されるなど、営業手法としても面白いと思って聴いておりました。

 

しかしながら、ドキュメンタリー番組等で普段の前社長の声のトーンが広く世間に知られていたのでは…と勝手ながら認識していたのですが、ネット上での反応に、(J-CASTニュースが報じたのはネット上の一部かもしれませんが)意外だと思ってしまいました。

 

とはいえ。

この会見について、朝日新聞デジタルが「ジャパネットたかた社長が退任 低い声で『役目終えた』」の見出しで報じると、ネットユーザーは「低い声」の部分に反応。

J-CASTニュース - ジャパネットたかた社長の「普通の低い声」に衝撃走る 退任会見で「あんな声も出るんだ!?」とネット大注目より

たしかに”低い声”の見出しにはインパクトがあります。普段の声を知っている人が多いとしてもやはり独特の声のイメージが広く浸透しているわけですから…と思ったのですが、見出しに、それどころか原稿においてすら、”低い声”と記載したのは大手新聞社の中で朝日新聞だけなんですよね。

『「すっきりした形で、無事に役目を終えることができた」。親子2人で会見に臨んだ明氏は、テレビ出演での甲高い声と違い、低い声で語り出した。今後のテレビ出演については「1年ぐらいをめどに終えようと思う。回数を減らしながら若い人にシフトしたい」。

 今後も経営に関与するかとの質問には、「私は目立ちすぎるでしょう、声とか。新社長が思い切りできるように、私は完全引退です」と話し、会場の笑いを誘った。今後は個人事務所をつくったうえで「全国を歩いていろんな商品を発掘し、それをジャパネットに提供するような補佐的なことができれば」と話した』

朝日新聞(Yahoo!ニュース) - ジャパネットたかた社長が退任 低い声で「役目終えた」より

 

『明氏は「(社長を務めた)29年間はあっという間だった感じもする。お客さまの目線に立つことの大事さを日々感じてきた」と振り返った。社長交代については「若いメンバーが自分たちで考え、議論する姿を見て、もう私がいなくてもいいと決断した」と心境を語り、「これからは少し離れたところから行く末を見守ろうと思う」と述べた』

・読売新聞 - ジャパネット高田明社長が退任 番組は当面出演より

 

『明氏は東京都内で旭人氏とともに記者会見し「自分が元気なうちにバトンタッチしたかった。新社長や他の社員に力がついたので決めた」と退任理由を説明。旭人氏は「思ったより早いタイミングでこういう立場になり、身の引き締まる思い。期待を裏切らないよう頑張っていきたい」と決意を述べた』

毎日新聞(Yahoo!ニュース) - <ジャパネットたかた>成長維持、長男に託す…社長が交代より

 

『会見で、高田旭人社長は「ジャパネットはお客さま目線で、隠れたいいものを紹介し、販売してきた。このやり方を継承し、さらに、素早いアフターサービスなどを専門会社で手がけることで、顧客満足度を引き上げる」と語った。平成27年12月期については、売上高を前期の1538億円から7%程度増やす方針を説明した』

産経新聞(Yahoo!ニュース) - ジャパネットたかた、高田明社長が退任 持ち株会社を発足、長男の旭人氏を社長により

その他、東京新聞にも”低い声”の表現はありませんでした。

 

朝日新聞の、原稿を書いた記者のみならず記事の掲載にゴーサインを出した人も含めいわゆる”中の人”が、単に前社長の普段の声を知らなかったのかも?と一瞬思ったのですが、通販業界大手で各メディアグループとコネクションがあるだろう、またドキュメンタリー等の通販以外の番組にも出演しておりその制作時等でやり取りしているだろうことを踏まえれば、メディアの”中の人”で普段の声を知らない人がいるというのは意外というか、厳しい見方だけども”認識不足では?”とも思うわけです。

いや、仮に知らなかったとして、その原稿があたかも報道番組のワイドショー的演出に感じられたのが、もう一つの違和感の正体。低い声という”魅せ方”もそうですが、笑いを誘ったというユーモア表現、そして”「~シフトしたい」。”で次の段落へ行くという表現の止め方は、最近NHKニュースでも多用されるような、最初の一文での体言止めに近いものを感じ、”ニュースをドラマティックなものにしようとしてないか?”と疑問を抱きました。テレビの報道番組で多用される演出手法を新聞社も真似しだしていることに、激しく違和感を覚えた次第です。

 

無論、イメージと普段の姿が違うということを知らない人が少なからずいたでしょうし、またそれを原稿で表現すればたしかにインパクトがあります。とはいえそれを”わざわざ”取り上げるのはいかがなものでしょう。新聞社が市井の目線に立って書かれたものと言ってしまえばそれまでですが、なんだか”目立ったもの勝ち”なのかと思えてならないんですよね。その考えが徐々にワイドショー的演出を過剰にしていき、客観的事実を見えにくくする危険性を孕んでいる…と危惧しています。