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青森県在住。毎週日曜日17時から、FMアップルウェーブ発の番組の一員として参加。音楽・ラジオ好きによる"日々の音"やメディアの話

ヒドゥン・ビーチ15周年記念作品とアンジー・フィッシャーのデビュー曲、いつ日本で手に入るのか

2000年6月1日に登場したアメリカのR&B/ソウルの音楽レーベル、ヒドゥン・ビーチ・レコーディングス(以下ヒドゥン・ビーチ)が今夏に設立15年を迎えるに合わせ、ヒドゥン・ビーチの15年を彩ってきた歌手たちによるコンピレーションアルバム『Hidden Beach 15 For 15』が登場。以下はSoultracksによる記事。また、トラックリストは音楽ジャーナリスト、林剛氏のTwitterのリンク先(iTunes Store US)を参照してください。

Listen Now! Hidden Beach Records celebrates 15 years in special way | SoulTracks

ヒップホップをジャズ的アプローチでカバーした『Unwrapped』シリーズから3曲収録されており、そのためか? ゴスペルのオニッシャやサニー・ホーキンス、ジャズのレイ・ジョーンズは未収録。いずれも良作なのに勿体無いなと。彼女たちの詳細はHidden Beach News | でも、それだけのこと。に掲載されています(勝手ながら紹介させていただきます)ので、気になった方は是非。

 

で、林氏が"歌えすぎ"と称したアンジー・フィッシャー。本当に凄まじいです。

この濃厚な"ド"ソウル…凄いです。デビュー曲で今年のグラミー賞においてトラディショナル・R&B・パフォーマンス部門にノミネートされたのですから、その本物っぷりが分かろうというものです

 

10代前半の頃から音楽活動を行っていたアンジー(以前は"アンジェラ・フィッシャーと名乗っていたそう)。コンサートやレコーディングのバックコーラスとしてマイケル・ジャクソンメアリー・J・ブライジチャカ・カーンロッド・スチュワートなど錚々たる面々と仕事をしてきた彼女が、ヒドゥン・ビーチ創設者のスティーヴ・マッキーヴァーの目に留まり昨夏デビューするに至ったとのこと(Angie Fisher - Biography | Billboardを参照)。これだけの歌ヂカラがあればスティーヴやマイケルなどの目に留まらないほうが不自然かもしれませんね。「I.R.S.」での名刺代わりのインパクトはその経歴の凄さを納得させるに十分。いつかリリースされるであろうアルバムを手にしてみたいものですし、同曲が収録された『Hidden Beach 15 For 15』もやはり気になります。

 

手にしてみたい…のですが、実はここ最近のヒドゥン・ビーチの音源、手に入りにくい状況に陥っているのです。『Hidden Beach 15 For 15』は配信のみの登場でCD(フィジカル)の形では現段階でリリースがなく、また日本では配信未発売(iTunes StoreAmazon共に)。『Hidden Beach 15 For 15』に収録され、最近ヒドゥン・ビーチからデビューしたナチュラリー7のアルバム『Hidden In Plain Sight』は輸入盤としては手に入ることが出来る状況ですがこちらも日本未配信。そしてアンジーの「I.R.S.」もこれまた日本未配信という状況なのです。ヒドゥン・ビーチ自体が3年以上もの間アルバムを出していなかったことを考えれば、フィジカルよりも配信に重きを置く(ことで在庫を抱えるリスクを軽減する)というのは自然ですし、長期ブランクの間に日本での発売元が消失(契約解消等)するのはやむなしかもしれません。

(ちなみにヒドゥン・ビーチのCDリリースはHMV(時系列順)を参照してください。『Hidden Beach 15 For 15』は今年1月発売と掲載されていますがおそらくエラーかと思われます。)

 

ヒドゥン・ビーチは看板歌手だったジル・スコットとの決裂(裁判過程はジル・スコット、所属レーベルとの訴訟問題が決着 | bmrを参照のこと)などで運営の巧くなさが露呈したこともあってか、『Hidden Beach 15 For 15』収録の歌手のほとんどが現在はヒドゥン・ビーチを離れているという皮肉な状況。また、ナチュラリー7は既に15年選手というベテランのため純然たる新人はアンジーくらいしかいませんが、アンジーの歌ヂカラを広く世界に見せつけ、ヒドゥン・ビーチには良質的なR&Bレーベルとしての復興を果たしてもらいたいものです。そのきっかけが『Hidden Beach 15 For 15』になるのならば好いことだと思います。

 

 

最後に一つ。「I.R.S.」の作者は(そしてオリジナルを歌っていたのは)B・スレイド。かつてはトーネイと名乗りゴスペルを歌っていた歌手なのですが、曲の詳細について紹介しているbmrの記事の文言が個人的に引っかかっています。曰く、『これは元々トー姐改めB・スレイドがオリジナル』…たしかにB・スレイドは同性愛者でありbmrのバイオグラフィーでは彼が同性愛者と告白するまでのいきさつも事細かに書かれているのですが、とはいえ当て字であれど"トー姐"と書くのはどうなのかなと。B・スレイド本人がオープンゲイとして活動しているのかは分かりませんが、あたかも世間で言うところの"オネエ"とも捉えられる表現は同性愛者を揶揄するように聞こえてきて、違和感を覚えてしまいました。

たとえば今週アカデミー賞の司会を務めたニール・パトリック・ハリスは同性愛者ですが、司会の立ち居振る舞いっぷりを見るに、そのことを訴求してはいないように思います。ニールのスタンスは、たまたま男性が好きだったというだけで他は何ら変わっていないというところにあるのではないかと(それは先日書いたサム・スミスのスタンスと同じものです)。しかし、同性愛者でニール同様のスタンスを持つ方がいらしたとして、それをメディアが必要以上に同性愛者の部分ばかり言及することによって、同性愛を良くも悪くも特殊なほうに導いてしまうのではないかと思うんですよね。それが曲などに余計なフィルターを被せることになってしまい、たとえば同性愛を嫌悪する者が曲を好いと思う純粋な感情を嫌悪感で消してしまうことにつながりかねない…その可能性を考えるとメディアの、とりわけ悪意のある表現は慎む必要があると思うのですが。捉え方の問題と言われればそれまでなのですが、その点において先述した記事に失望感を抱いた次第です。