イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Pop meets ”運命”

自分がスタッフとして関わっているFMアップルウェーブの番組、『わがままWAVE It's Cool!』(毎週日曜17:00~18:30)。昨日が777回目の放送でした。自分は2007年からの参加ではあるのですが、15年以上の歴史を持つ番組に携わることが出来たことを誇りに思います。

 

当日は”777(回目)”にちなんで【ラッキー・幸運】な音楽特集をお送りしましたが、その中の一曲が、間寛平とボーイフレンド「アタレ!宝くじ」(試聴可能場所は見つかりませんでしたが、コンピレーションアルバム『徳間ジャパン 秘宝盤② アイドル&コミック編』に収録されています)。曲の冒頭でベートーヴェン作曲の交響曲第5番、いわゆる”運命”が用いられており、”運命”の引用→語り→ギャグ→本編、という形で展開していきます。”運命”を取り入れることで確実に耳が持っていかれるという、良い意味でヒキョーな楽曲だなあと実感しました。

 

さてこの”運命”、楽曲特有の♪ジャジャジャジャーン を効果的に引用した曲は何気に少なくないんですよね。というわけで主だったものを列記してみます。

 

黒木メイサ「SHOCK -運命-」(2009 アルバム『MAGAZINE』収録 → iTunes Store)

 

上海太郎舞踏公司B「交響曲第5番『朝ごはん』」(2003 アルバム『聴くな! BRAVISSIMO』収録 → iTunes Store)

 

・ウォルター・マーフィー「A Fifth Of Beethoven (Beethoven's Fifty Symphony)(邦題:運命'76)」(1976 アルバム『A Fifth Of Beethoven』収録 → iTunes Store)

 

・A+「Enjoy Yourself」(1999 アルバム『Hempstead High』収録 → iTunes Store(US))

 (※ ウォルター・マーフィー版をサンプリング)

 

ロビン・シック「When I Get You Alone」(2002 アルバム『A Beautiful World』収録 → iTunes Store)

 (※ ウォルター・マーフィー版をサンプリング また当時は”シック”として活動)

 

黒木メイサさん、そして一昨年「Blurred Lines」が大ヒットしたロビン・シックが共にデビューシングルに”運命”を用いているというのが興味深いですね(尤も、黒木メイサさんの場合は同年春にミニアルバム『hellcat』が実質的なデビュー作品ではありますが、シングルとしては初)。洋楽では、ウォルター・マーフィー版がリリースの翌年にあの『サタデー・ナイト・フィーバーサウンドトラック(1977 → iTunes Store)に収録され、アルバムが大ヒットしたことでさらに知られるようになったと思われます。A+もロビン・シックもウォルター版を用いていますが、ウォルター版のトラックの格好良さや認知度の高さゆえ、サンプリングとして使いやすかったのかもしれません。

が、ロビン・シックは後に大ヒット曲を送り出す一方で、A+が「Enjoy Yourself」以降にヒットに恵まれなかったところをみると(そして世間的にはA+イコール”運命”の人…という認識があるような)、劇的にキャッチーなサンプリング使用は以降の活動に制約を与えかねない諸刃の剣、なのかもしれません。その意味では完全なコミックソングに仕上げた上海太郎舞踏公司Bは巧いと思います。

 

そのリスクもありつつ、たとえば今月リリースされたLeadのシングル「My One」は、”運命”ではないのですがバッハによる「G線上のアリア」をサンプリング(ナタリーより。ミュージックビデオ視聴可能)。広く世間に関心を持っていただくという意味でも、クラシックの使用はやはり有効な手段かもしれませんね。無論、曲そのものが良く、サンプリングしたことに意味があると思わせることが重要かもしれませんが、Leadに関しては曲の持つ優しさがクラシックと合致している気がします。

 

 

ちなみに。日本で浸透している”運命”の名称、実は曲名として相応しくないそうで。

交響曲は、日本では「運命」または「運命交響曲」という名称で知られているが、これは通称であって正式な題名ではない。この通称は、ベートーヴェンの弟子アントン・シントラーの「冒頭の4つの音は何を示すのか」という質問に対し「このように運命は扉をたたく」とベートーヴェンが答えた(後述)ことに由来するとされる。しかしこのシントラーの発言は、必ずしもこの作品の本質を表しておらず、現在では「運命」という名称で呼ぶことは適当でないと考えられている。

「運命」という名称 - 交響曲第5番 (ベートーヴェン) - Wikipediaより

このような勘違いというか取り違えから誤った名称がつけられることはこの曲に限らないとは思うのですが、”運命”のほうがしっくりくるような気がするのはその名称が既に広く浸透、刷り込まれたからなのかもしれません。仮に今から訂正しようにも、冒頭の♪ジャジャジャジャーン はあまりに知られているわけで、今更変えることは非常にリスクが高い気がします。

 

 

サンプリングじゃないですが、メロン記念日「This is 運命」は本当に完成度が高いですね。