イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

オリコンチャートのチケット”同梱”カウント問題。問題はカウントそのもの以上に根深い

二週連続でシングルをリリースした三代目J Soul Brothers。そのシングル「starting over」と「STORM RIDERS feat. SLASH」の”売上枚数の差”がとんでもないことになりそうです。

まずは先週リリースされた「starting over」の初週セールス。

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そして今週リリースされた「STORM RIDERS feat. SLASH」の初日セールス。 

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「STORM RIDERS feat. SLASH」の初日の数字を考えれば、週間では前作「starting over」の売上枚数に届かないどころか、圧倒的に下回るのでは?と不思議に思い、あらためて「starting over」の初日(いわゆるフラゲ日)セールスをチェックすると、なんと42万枚。しかしながらその後、日曜日までのセールスが二万弱というのは何だか不自然に感じたのですが。

今作では「三代目 J Soul Brothers LIVE TOUR 2015 “BLUE PLANET”」コンサートのCD付チケット(プレミアムパッケージチケット)を発売している。このコンサートのチケット1枚に、CDが1枚付属しており、チケットが1枚売れるとCDが1枚売れたことになり、オリコンにカウントされている。EXILE TRIBEは、過去にもこの商法により売上枚数を爆発的に伸ばし、年間ランキングの上位に作品を送り込んできた。今作も三代目JSBの過去の実績を大きく上回る枚数を記録する結果となり、年間上位入りが確実となっている。

15/04/14(火)付オリコンシングルデイリー:三代目 J Soul Brothers、CD付チケット効果で初日42万枚のロケットダッシュ!2位にモーニング娘。'15の新曲が初登場 - The Natsu Style(4月15日付)より

「starting over」はチケットへの同梱という形でカウントされていたのですね。たしかにドームツアー開催を考えるとこの数字には納得がいきます。そしてこの”同梱”について、オリコンの集計方法ではまだOKとなっており、それについて問題だと思う気持ちはほぼありません。

しかし、先述したように次のシングルの初日セールスが「starting over」の二割弱であることを踏まえれば、「starting over」だけが突出しているという”異常性”だけが際立って(捉えられて)しまうのではないかと思うのです。初日7万超えというセールスは実際は誇らしいことなのですが、一度でも行ってしまった(言葉は悪いですが)”ドーピング”が、彼らの心象を好くないものにしてしまいかねない気がして、凄く勿体無いと思うのです。

 

さて。オリコンではチケット同梱に伴うCDセールスのカウントを実は今年の6月1日付にて終了すると発表していたのですが、最近になって”6月29日付まで延期する”と発表しています。個人的には、こちらの方が問題だと思っています。

 

オリコン、チケット付きCDの合算終了日を6/1付→6/29付に延期すると発表 - The Natsu Style(4月7日付)

 

リンク先では6月17日リリースの9nineの新曲を例に挙げていますがもしかしたら他にも該当作品は出てきそうです。それにしてもなぜ合算終了を延期するのでしょう。

《理由》

通常、コンサートチケットとCDのセット販売の企画進行期間は、ミュージックカード等の企画進行期間と比べて長期にわたり、既発売の企画があることを鑑みたため。

コンサートチケットとCDのセット販売の合算集計終了日の変更について - オリコン・リサーチ株式会社(3月25日付)より (※PDFにつき注意)

要するに、既にオリコンの集計対象を予定していた企画については盛り込みましょうということですが…なぜ盛り込むのかが理解できません。既に存在している企画への情状酌量は冷静沈着に臨むべきチャート主催者からすれば必要ないはずで、厳しく臨むべきではなかったかと。客観視出来ていないというかしようとしていないことを自ら証明してしまった形です。

更に、6月1日という日付は年間チャートのほぼ中間地点にあたります(前年の12月初週から11月最終週までがその年の年間チャートの範囲であることから)。つまり延期することによって、下半期の最初の1ヶ月だけ”同梱”がセールスのカウントに許されてしまうというキリの悪さが生じることも問題なのです。

 

他方、同週のビルボードジャパンのシングルチャートでは「starting over」はセールス部門にて2位でしたが総合では首位を獲得しています(三代目JSB「starting over」が逆転、ビルボード総合Hot100首位獲得│Daily News│Billboard JAPAN(4月22日付)より)。セールス2位ということはほぼ間違いなく”同梱”を除外した結果であり、各指標のランキングも掲載していることからより”見える”チャートである(それを意識している)ように感じられます。一方で、オリコンは「starting over」が週間チャートを制したと報じた際、”同梱”については一切触れていません(【オリコン】三代目JSB、自己最高初週43.9万枚で1位 前作比2.3倍 | ORICON STYLE(4月21日付)参照)。アルバムが大ヒットした直後のシングルだけに売上上昇は自然かもしれなくとも、そこまで急激に…という不自然さに何ら触れていないのは受け手に違和感を与えてしまうのではないでしょうか。同梱は現在はまだカウントを認めている手段なのですから、同梱により売上が大きく拡大したということは書いていいのではと思うのです、それが事実なわけですから。もしかしたら、書くことによって三代目~が矢面に立たされるのを避けたのか、オリコンが先述した延期という自らの事情を勘案して敢えて書かなかったのではないか…と邪推してしまいます。

 

この延期の問題ひとつをとっても、オリコンが発し手(発売元等)に対してあまりに寄り過ぎることが見て取れました。オリコンチャートは日本の音楽チャートで最も多く取り上げられていることから”オリコンイコール公式チャート”という見方は多くの方が持ち合わせているのかもしれませんが、そのチャートが客観的ではないのははっきり言って異常です。弊ブログエントリーの再掲にはなりますが、オリコンシングルチャートは公式チャートではないと断言する2つの理由(1月25日付)で指摘させていただいた問題群が未だ治っていないことを踏まえると、各メディアがオリコンのみを用いている現状はやはり問題であり、ビルボードチャートとの併用制にするなどして現状を速やかに打破することが必要だと考えます。