イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

"宣伝目的のための出演"が見えてしまったら冷める

一昨日放送された『J-WAVE GOLDEN WEEK SPECIAL "STAR WARS" LIGHTS THE FUTURE』(J-WAVE 5月4日9時)。"May The Force Be With You"にちなんで"May The Fourth(5月4日)"に組まれたスター・ウォーズ特番。ホームページでも分かる通り、沢山のゲストが登場しました。個人的にはRHYMESTER宇多丸さんと、宇多丸さんが自身のラジオ番組『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』(TBSラジオ 毎週土曜22時)内映画評論コーナーにてその映画作りへの"姿勢"を批判した山崎貴監督とが、別の時間ではあれ同じ番組に登場することに興味を抱き聴いていたのですが、特番の中での両者の姿勢がはっきりと見えた瞬間があったので記載します。

 

RHYMESTERは4月29日にリリースされたレーベル移籍第一弾シングル「人間交差点 / Still Changing」を引っさげての登場、また15時からJ-WAVEと同じ六本木ヒルズにある六本木ヒルズアリーナにて行われるフリーライブ(J-WAVEにて生中継)、およびRHYMESTER主催の野外フェス"人間交差点"(5月10日)といった宣伝内容が多数…なのですが、12時台に登場した宇多丸さんと番組ナビゲーターのDJ TAROさんとのスター・ウォーズ談義はとどまることを知らず(番組ホームページ内"PHOTO GALLERY"でも分かるのですが、宇多丸さんは自前のスター・ウォーズ衣装で登場という気合いの入りよう)。その流れの中で「人間交差点」を挿入する際、宇多丸さんは曲紹介前に"すいませんねぇ"と言っていたんですよね。スター・ウォーズの話で盛り上がっているところへの新曲OAはまるで宣伝みたいだよねという照れなどがあって出てきたその"すいませんねぇ"が印象的でした。

 

一方、山崎貴監督は公開中の映画『寄生獣 完結編』を引っさげての登場(そしてその分は事前録音されたものでした)。VFX技術に長けているということでその観点においても今回の特番に呼ばれたようなのですが、(宇多丸さんとのやりとりほどではないにせよ)話が盛り上がってきたところに曲が挿入されクールダウンした後の山崎監督の言葉が、こちらも印象的でした。曰く、"何のために来たのか分からなくなっちゃいましたよ"というような内容(一字一句合っているわけではありませんが)。話の流れから察するに、『寄生獣』の宣伝目的で出てきたのにスター・ウォーズで盛り上がりすぎて本来の目的をついつい忘れそうになった、というニュアンスだと受け取ることが出来ました。そう捉えることが出来た瞬間、山崎貴監督に対して完全に冷めてしまった自分がいました。

 

無論この受け取り方は、自分自身が両者に対して以前から抱いていた心象が加味されているのかもしれません。とはいえ宇多丸さんがゲストトーク時、そしてその後のフリーライブで言っていた、"どのゲストよりも一番スター・ウォーズを知っているしスター・ウォーズ愛に溢れている"というアピールは、特に山崎貴監督との対比において本当にその通りだと思ったのです。宣伝目的のための出演という目的がほとんど見えなかった宇多丸さんに対して、宣伝目的がはっきり出てしまった山崎貴監督という構図が見えてしまったゆえ。

(ちなみにRHYMESTER主催フェス"人間交差点"の宣伝については、フリーライブの際、ライブの盛り上がりの中で行われました。この日のライブの雰囲気を味わいたいなら是非、というような自然な流れだったように受け取っています)

 

実際、スター・ウォーズ特番に登場した他のゲストの多くにも各自の宣伝内容がありました。蔦谷好位置さんは昨日今日J-WAVEで行われるフリーライブの主催者としてライブを宣伝、OKAMOTO'Sのハマ・オカモトさんおよび市川紗椰さんはリリースされた(される)ニューシングを引っさげて登場していました。宇多丸さんほど極端に(分かりやすい形で)宣伝を恐縮することはなかったように思うものの、そのあたりはきっちり行われていたと認識しています。

 

で、その宣伝目的での出演が明らかに見えてしまうと、どうも自分は冷めてしまうのです。無論宣伝する曲などが素晴しければ、またゲスト出演時のトークが盛り上がればまだその落差は小さくて済むのですが。ゲストを迎え入れるテレビ/ラジオにとっても、宣伝目的ならば通常時よりおそらく安価で豪華ゲストを呼べるという利点があるでしょうから両者の利害関係は一致している…その構図が分かっていても冷めてしまうというのは自分だけなのでしょうか。

 

今の番組は、テレビ/ラジオに関わらず、ゲストに登場する方のほとんどが何かしらの宣伝理由を持ち合わせています。そういう体でのゲスト出演があまりにも多くなってしまったため、たとえば『しゃべくり007』(日本テレビ 毎週月曜22時)にブレイクしたばかりの芸人が何の宣伝目的もなしに登場すると、その宣伝のなさを出演者陣にイジられることをごくまれに目にしますが、それはあたかも宣伝目的がないことが(好くないとまではいかないまでも)おかしいよという風潮が前提にあるような気がするんですよね。その風潮にこそ首をかしげる必要があると思うのですが、おそらくこれこそが今やデフォルトなのかもしれません。ちなみに先述した『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』においても、特集コーナーやDJコーナーに登場するゲストに何かしらの宣伝目的がある場合が多いのですが。

 

 

ではその風潮の中で、番組が宣伝目的のあるゲストを呼ぶ際にはどこに気をつければいいのか…ひとつは宣伝目的を"いい感じに茶化す"ことだと考えます。先の宇多丸さんの謙遜や、『アメトーーク!』(テレビ朝日 毎週木曜23時15分)でひな壇ではない方に座ったゲストの女優が番組最後に出演作品をはっきりと宣伝したときの出演者陣からの総ツッコミ、または『マツコの知らない世界』(TBS 毎週火曜21時)に先月登場した萬田久子さんが映画『龍三と七人の子分たち』(北野武監督 先月公開)の宣伝のための出演と最後に知ったマツコ・デラックスさんが笑いながら萬田さんの宣伝を認め、"若い女優がする宣伝とは訳が違うよね"と言ったことなどが該当します。たとえ宣伝への流れが強引だったり厚かましかったとしても、それをうまく笑いに転化させることで宣伝という義務感を柔和させることが出来ます。何よりもまず番組本編は芯をぶらしてはいけないですし(たとえばスター・ウォーズ特番ならば、ゲストは宣伝目的作品に絡めすぎずに"スター・ウォーズ愛"を語ることが大前提)、本編で満腹感を得た視聴者/リスナーのシメのデザートみたいな形で柔和した宣伝を挿入出来たならば、その宣伝に好印象を持ってくれる人は多いのではないでしょうか。

 

もうひとつは…と書きたいところですが、実は上記以外浮かんできませんでした。たとえば『マツコの知らない世界』の他の回や『ヨルタモリ』(フジテレビ 毎週日曜23時15分)のようにゲスト出演者が特に宣伝目的もなく登場するような番組が増えれば、受け手も肩肘張らず観たり聴いたり出来るような気がします。つまりはテレビ/ラジオが、ゲスト出演者が宣伝目的を持ち合わせるような番組を作らない、という現在の風潮そのものをひっくり返すことが必要ではないかと思うのです。それで好いものが出来、視聴者/リスナーに支持されたならば確実に流れは変わると思うのですが、いかがでしょうか。