イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

『オリ★スタ』休刊で音楽業界は好転する可能性

…があるのではないかと期待しています。

 

昨日、オリコンが雑誌『オリ★スタ』の休刊を発表しました。

『4~9月期に4300万円の赤字を計上』『雑誌売り上げが落ち込む中、4~9月期の売上高は2億600万円にとどまっていた』(いずれも上記記事より)ことが主な理由で、今後はホームページを強化するそうです。

 

とはいえ、個人的には納得出来ない部分が多々あります。たとえば部数は6年前の段階で34万部(週刊エンタメ誌「オリ★スタ」最新号、ほぼ丸ごとWebで無料公開 - ITmedia ニュース(2010年4月23日付)より)もありました。雑誌では決して少ない部数ではない気がするのです。

また、”オリスタ”とTwitterで検索したところ、そこにはジャニーズファンによるお世話になりました的ツイートが散見され、ジャニーズファンが買い支えた雑誌なのだということが解ります。ジャニーズ事務所側はメディアに対し所属タレントのインターネットでの写真掲載を未だ認めておらず(最近では規制が緩くなってきているようには思うのですが、今回の記事に使用された雑誌写真の”グレー塗りつぶし”を見ると未認可は明らか)、それゆえ雑誌をきちんと購入して写真を手に入れる傾向があったはず。それゆえ、ジャニーズファンが一気に雑誌離れを起こしたとは考えにくかったのです。インターネットの強化を図るとはいえど、ジャニーズ事務所側が写真掲載を許可しない以上、ホームページの強化という今後のスタンスにも疑問が生じます。

 

個人的には、今回の休刊については、オリコン内部の体質が(黒字計上出来るまでに)改善されていないこと、スポンサー収入が得られない等の営業努力不足もあったことが否めないのでは、と考えます。そして考えられることがもう一つ。それはオリコンのチャートに興味を持つ方が雑誌離れを起こしたということです。

自分は年末発売の年間チャート掲載号を毎年のように買っていた時期がありました。しかし、CDセールスと世間的ヒットの乖離が目立ってきたこともさることながら、ジャニーズ事務所所属タレントばかりが表紙になりいわば”アイドル雑誌”と化した『オリ★スタ』を買うことに抵抗が生じるようになったのです。立ち読みで手に取るのも躊躇うほど。で、もしかしたらこの心理状態、自分だけではないのかもしれないなと思うに至りました。真のチャートマニアならば月額千円ちょっとの【you大樹】に加入すれば雑誌提供分以上のサービスを受けられるため、そちらに入るでしょう。問題は自分のような、チャートマニアとまではいかなくともチャートが気になるという方に対し、『オリ★スタ』がアイドル雑誌化することで手に取りにくい方向へシフトしたために、一定数いると思われるその層が買い控えを起こしたことで赤字転落したのでは…と思うのです。

実は『オリ★スタ』という雑誌名、幾度となく雑誌名変更が行われた末に名付けられたものでした。

誌名の変遷

1979年8月『オリコン全国ヒット速報』創刊

1981年6月『オリコン WEEKLY』

1994年5月『オリコン・ウィーク The Ichiban(ザ・1番)』

2001年5月『weekly oricon(WO)』

2004年7月『oricon style

2008年10月『オリ★スタ』

2000年に入って3回も誌名が変わっていたんですね〜。

オリスタ休刊の理由は何故なのか!?雑誌はいつまで買える? - BUZZ-LOG.COM(1月28日付)より

最終的な誌名である『オリ★スタ』から”オリコン”という言葉を想起することは難しいかもしれません。それだけチャート色を消したかった、アイドル雑誌化したかったということなのでしょう。上記サイトでの『イメージ戦略で巻き返そうとした片鱗が見え隠れしますね』という言葉に同意します。ここからも、ジャニーズファン以外のチャートが気になる層の買い控え、雑誌離れが進んだことが想像出来ます。

 

 

さて、その『オリ★スタ』の休刊で今後はインターネット媒体に力を入れるということで、自分は2つの方向性を考えました。そのいずれもがオリコンにとってはともかく、音楽業界全体が良くなる可能性があるのではと考えるに至っています。

 

オリコンがチャート紹介という原点に立ち返る

雑誌ではシングル、アルバムとも100位まで紹介していましたが、現状インターネットでは無料閲覧分において50位までの掲載となっています。よってインターネットで確認しても雑誌をチェックしないと細かなことは判らない…というのがこれまででした。しかし雑誌が休刊する以上は今後きちんと51位以下の情報を補完する必要があるでしょう。また、米ビルボードが1つのページ内で1~100位をすべて掲載している一方でオリコンでは10位毎にページを進ませないといけないため、利便性が高いとはいえませんでした。それらを考慮し、雑誌休刊を機にリニューアルを図り、ブラッシュアップしていただきたいと思います。チャートをよりわかりやすく見せる(魅せる)にはどうするか、を考える時間が生まれ実行していくことで、ホームページへのアクセスも増えるでしょう。

これを機に、CDセールスと世間的ヒットの乖離にも着目し、CDセールスチャートに特化していいのかということについても自問自答していただきたいものです。が、こちらについてはビルボード・ジャパンが着実に行っていますのでもしかしたら入り込む余地はないのかもしれません。

 

 

ジャニーズ事務所所属タレントのインターネットでの写真掲載にゴーサインが出る

先述した①については、ジャニーズ事務所所属タレントの写真掲載がホームページで使えない場合の、ある種やむを得ない方向転換(原点回帰)であるともいえます。ただ、これまでジャニーズファンが買い支えてきた雑誌の流れをホームページが引き継ぐとして、ジャニーズ事務所所属タレントの写真掲載が全くないことにはジャニーズファン離れを起こしてしまい、アクセス数が伸びず、広告営業にも悪影響が出かねないと思うのです。ホームページの充実化で広告営業に弾みをつけバナーを貼る等して売上増加につなげる…という皮算用があったとしても、現状のジャニーズ事務所側の方針からすれば難しいかもしれません。

しかし雑誌休刊は、実はジャニーズ事務所側にとっても痛いことではないかと。所属タレントを大々的に紹介出来る媒体が減ることで、周知や浸透に少なからずダメージがあるのではと思うのです。

そこで、両者のウィークポイントを解消する意味でも、ジャニーズ事務所側にインターネットでの写真未掲載という独自規制を緩和する方向に、オリコン側が働きかけを行って欲しいのです。これまでの蜜月とも言える関係を築きあげてきた両者において、雑誌休刊と共に突如関係性が断絶される(ように見える)というのは両者のイメージ的にもよくありません。少しずつジャニーズ事務所側の態度を軟化させ、ゆくゆくはインターネットに親和的になるよう動いて欲しいと切に願います。

そしてその、インターネットへの親和性を大手事務所が持つことは非常に大事です。これまでは、たとえば海外に住みながら日本のエンタテインメントを知りたいと思う人が日本のホームページにアクセスしても、YouTubeへの公式動画のアップも、またランキングにおけるCDジャケットの掲載も行っていないことに違和感を抱いていたはず。日本人ならジャニーズ事務所が…と暗に理由を察知し無理にでも納得するのかもしれませんが、そのような内情を知らない外国人からすればそんな事情で!?と利便性の欠如に不信感を抱くはず。このような足並みの揃わない不十分なエンタテインメントの発信を続ける日本の文化を”クールジャパン”と呼ぶことについて、海外からは冷めた目で見られることでしょう。その不信感を打破するためにも、またここ最近の芸能界の問題におけるイメージ悪化を払拭するという意味においても、ジャニーズ事務所が一方的な規制を緩和することは極めて有効なはず。そしてオリコンはそのための鍵になれるはずです。

 

 

特に②については自分の理想論であるところが大きいのは承知で、それでも文字にしないと届かないと考え、記載した次第です。オリコンの動きにより深く注目していこうと思います。