イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

”90年代R&B”復興の鍵を握るのはこの人

まさかの大胆サンプリング。

女優としても活躍するゼンデイヤが、クリス・ブラウンを招いた新曲「Something New」が日本時間の昨日公開。これがまんまTLC「Creep」使いなのです。

・Zendaya feat. Chris Brown「Something New」(2016)

TLC「Creep」(1994)

オリジナルのBPMを早め、一方でキーは下げて引用。米ビルボードシングルチャートで週間1位、1995年の年間チャートでは3位という堂々たる成績を残した、まさに”90年代R&B”を代表する「Creep」が用いられたことに、”90年代R&B”ムーヴメントは本物ではないかと感じています。ちなみに自分はこの曲を米ビルボードのホームページで知ったのですが、それから間もなくしてbmrでも紹介されました。

「Creep」が収録されたTLCの大ヒットアルバム『CrazySexyCool』(1994 米ビルボードアルバムチャート週間3位、1995年の年間チャート5位)に同じく収録された「Red Light Special」などを手掛けたベイビーフェイスが、今回「Something New」をプロデュースしたそう。これは正直いって意外でしたが、もしかしたら童顔氏も”90年代R&B”ムーヴメントの興隆を目標としているのかもしれません。

 

 

さて、”90年代R&B”といっても様々なジャンルがあるのですが、ここでは『ヒップホップに端を発する引用のマナーを一般化させながらオーセンティックなハーモニーと先鋭性が融和していた時代の音 (中略) 92~97年頃のアーバン・メインストリームの音』(bounce2016年増刊号P38より引用)と定義させていただきます。そしてそのbounceで特集されていたSWV(本日ニューアルバム『Still』をリリース)はまさに、”90年代R&B”を代表するグループのひとつ、ですね。

SWV「Right Here (Human Nature Radio Mix)」(1992)

マイケル・ジャクソン「Human Nature」を施したリミックスがオリジナル版よりも有名になりましたが、この曲を大胆に用いたのがクリス・ブラウン「She Ain't You」でした。

Chris Brown「She Ain't You」(2011)

このリミックス版に、復活作をリリースする前のSWVが”ご本人登場”(→YouTube)。ライブでは既に復活していた彼女たちですが、アルバム『I Missed Us』が翌2012年のリリースということを考えれば、クリス・ブラウンは彼女たちの(CDリリースという形での)表舞台復活へのお膳立てをしたといっても過言ではないでしょう。

そのクリス・ブラウン、最新作『Royalty』(2015)では同年復活したジョデシィ、そしてヤギ声でお馴染みの(?)キース・スウェットも引用。とりわけ、キース「Nobody」使いにはグッと来るものがありました。

Chris Brown「Who's Gonna (Nobody)」(2015)

そしてこの曲、「She Ain't You」同様に”ご本人登場”リミックスも登場。

 

その流れで、今度クリスはゼンデイヤTLC使い曲に登場したわけです。客演という形ではありますが、ゼンデイヤのお膳立てをしたのみならず、復活作を予定しているTLCについても今一度知らしめることが出来るかもしれません(TLCの復活作についてはTLC「最後のアルバム」を重鎮ロン・フェアが監修 ダラス・オースティン、ニーヨらも参加か | bmr(2015年1月31日付)を参照してください))。もしかしたら、”90年代R&B”ムーヴメントを広めんとする最大のキーパーソンはクリス・ブラウンなのでは?と思わずにはいられません。

 

 

他にもこういうサンプリング曲は多数存在しており、その辺のところはbounce最新号に詳しく紹介されていますので是非手にとっていただきたいところ。特集を読み、”90年代R&B”ムーヴメントが実際に興隆するか確かめていこうと思います。勿論、クリス・ブラウンの動向には注視しないといけませんね。