イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

出し直し盤は熱心なファンを踏みにじってやいないか?

厳しい物言いを承知で、敢えてこのタイトルにしました。

 

 

というのも、昨日のこのニュースに驚いてしまったゆえ。

2016年5月20日にデビュー満30周年を迎える今井美樹。そのアニバーサリーイヤーを記念し、ベストアルバム『Premium Ivory-The Best Songs Of All Time-[New Edition]』が発売される。

このベスト盤は、2015年にレーベルの垣根を越えて発売され、10万枚以上のセールスを記録したオールタイム・ベストアルバム『Premium Ivory -The Best Songs Of All Time-』の特典DVDの内容を一新したもの(以下略)

今井美樹30周年記念ベスト盤[New Edition]発売! 布袋寅泰とのライブ映像を公開 | Daily News | Billboard JAPAN(5月17日付)より

”New Edition”という名目ではありますが言い換えれば”出し直し”であり、仮に昨年発売のベストアルバム(以下、最初に出したベストアルバムを”ベスト盤”と記載します)を購入した方が特典映像欲しさに出し直し盤を購入するとCDがダブつくのでは?という疑問を抱いてしまいました。昨年のベスト盤を購入せず今回はじめて今井さんのベストアルバムを買おうと思った方にとっては、DVDが2タイプあるからどちらか選べるという見方も出来ますが、とりわけファン度が高く彼女の作品をコンプリートしたいという方にとっては出費がかさみますよね。

 

実は同様の動き、AIさんについてもみられました。

なかでももっともユニークな動きをしているのが、AIの『THE BEST』だ(【表2】)。これは昨年11月にリリースしたベスト盤で、先週までは40位台だったのが、今週になって急遽6位にまでアップしている。というのも、5月4日にデラックス・エディションが発売され、その数字が加算されているからだ。この新装ヴァージョンには、auのCMで大人気の「みんながみんな英雄」やEXILEのATSUSHIとデュエットした話題作「So Special」などが新たに加えられている。よって、一度入手したファンが買い直しているというパターンもあるだろう。

【Chart insight of insight】ベスト・アルバムはとにかく長く売るべき!小田和正とAIの戦略とは? | Daily News | Billboard JAPAN(5月14日付)より

 記事での”今週”とは先週の週間チャートのこと(5月16日付)。デラックス・エディションと銘打たれていますがこちらも出し直しですね。

 

個人的にはAIさんのベストアルバム、出し直し分が元のベスト盤と合算されてチャートに登場していることを疑問に思ったのですが、もしかしたら元のベスト盤のCD収録曲に手を加えていない(元のベスト盤が出し直し分ではディスク1となり、追加収録分がディスク2となる仕様)ことで合算可能となっているのかもしれません。あくまで推測ではありますが。

 

はっきり私見だと前置きした上で書きますが、AIさんの出し直しは今井さん以上にそのやり方が汚いと思ってしまいました。今井さんの場合はDVD2タイプのうちどちらか選べるという見方も出来ると先述しましたが、AIさんの場合、出し直し分は昨年のベスト盤のかさ増しであり、たとえば今ベストアルバムを買おうと思った方にとっては確実に出し直し分を選ぶはずです。さらに言えば昨年のベスト盤発売の段階で曲数の多い配信限定盤もあったのですが、そのプラスされていた曲群も今回CD化されたのであれば、CD/配信にかかわらず昨年一度購入した人にとって、今回の出し直し分を知って”なぜあの時買ったんだろう...”と意気消沈したのではないかと思います。なお、デジタル配信のみの楽曲はAI THE BEST 特設サイトで確認出来ます。

 

 

音源をCDでコンプリートしたいというAIさんの熱心なファンにとっては、昨年のベスト盤を買った後、あらためて出し直し分も買わないといけないのです。そして出し直し分のディスク1は元のベスト盤と完全に一緒でありこちらもダブってしまうのです。これは無駄というより他ないのではないでしょうか。いや、出し直し分発売までの期間は愛聴したのだからいいとおっしゃるかもしれませんがそれはあまりに熱心過ぎて盲目になってしまったファン心理であり、レコード会社からすればフィジカル(CD)セールスが1枚増え、さらにはセールスのかさ増しが出来たという物理的メリットにその熱心さが利用されたといっても過言ではないでしょう。

 

ちなみに、今井美樹さんもAIさんも、どちらもユニバーサル発なんですよね。ともすればユニバーサルのやり方の問題なのかもしれません。

今井美樹 - Premium Ivory -The Best Songs Of All Time- [New Edition] - UNIVERSAL MUSIC JAPAN

AI - THE BEST-DELUXE EDITION - UNIVERSAL MUSIC JAPAN

 

そういえば、実はAIさんにとってはこの出し直しという手法、はじめてではないんですよね。3年前にオリジナルアルバム『MORIAGARO』をリリースしたそのわずか4ヶ月後、ボーナストラックとミックスCDを追加した出し直し分、『MOTTO MORIAGARO』をリリースしているのです。つまりは出し直し手法が今回(少なくとも自分の知る限り)二度目であり、となるとレコード会社の強引な戦略をAIさんサイドも許可しているとみていいでしょう。なおアルバムについてはALBUM | AI Official Siteを参照してください。

 

 

たとえば弊ブログのような販売手法に異を唱える者に対し、"何様のつもりだ!"と言ってくるファンの方はいらっしゃるかもしれません。しかし冷静に考えれば、出し直し分を新たに購入した場合CDにダブリが生じることには間違いありません。また、たとえば似たような状況が今井美樹さんやAIさん以外の歌手で発生した場合、そしてその歌手が自分にとってはそんなに好きでもない方だった場合、”出し直し分も買う必要はない”、”ファンに過剰なお金の負担をさせてないか?”など一度立ち止まって考えるのではないでしょうか。ある種、レコード会社等はその熱心さ、何にでも飛びつく盲目的なファン心理を最大限に利用しているといっていいでしょう。そのやり方が正しいか、飛びついていいものなのかを一度咀嚼してほしいと思います。

このような手法を疑問に感じ始めれば、ファンは離れていく可能性があります。まして、熱心なファンであればあるほど、いいように使われていたと知るとファンじゃなくなった瞬間に反動でアンチ化することだってあり得るはず。反感を買うかもしれない手法はレコード会社も、歌手本人サイドも控えないといけないと思うのですが。

 

 

ちなみに、では元の作品の発売時に複数種リリースというのはどうなのか?と問われるかもしれませんので自分の考えを書くならば、複数種販売も快いとはまったくもって思えません。ただ"CD+DVDとCD+ブルーレイで映像特典の内容は同じ"ならば両方選ぶ必要はなく、収録曲が異なるならば試聴やソングライター等で判断しひとつだけ選びます。同時に発売されるからこそファンにとってはまだ選べる余地があり、今回のような後出しジャンケンは、言葉は悪いのですが卑怯だと思えて仕方ないのです。