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青森県在住。毎週日曜日17時から、FMアップルウェーブ発の番組の一員として参加。音楽・ラジオ好きによる"日々の音"やメディアの話

R&Bシンガー、カール・トーマスのゴスペル曲とバッドボーイリユニオン

以前取り上げた、ヘゼカイア・ウォーカーの先月リリースのアルバム『"Better": Azusa - The Next Generation 2』が最新9月3日付の米ビルボード、ゴスペルアルバムチャートを制しています。ベテランが放つ安定のゴスペル作で、日本でも数多くのクワイアがこの作品からカバーしていくのではないかという予感がします。

 

さて、アルバム後半の冒頭を飾る曲「Holding On」にはR&Bシンガーのカール・トーマスがメインボーカルとして参加しています。Apple Musicのリンク先を下記に掲載しますのでチェックしてみてください。

この起用、他の曲が圧倒的歌ヂカラで歌い上げるのに対し、彼だけがともすれば淡々とした感じがしていて、少なからず違和感を覚える方もいらっしゃることでしょう。

とはいえ、彼は以前もゴスペル作に起用されたことがあったことを思い出し、ともすればゴスペルシンガーに愛される歌い手なのではないかと考えています。それがこの「Angels」。

ザ・トライシティ・シンガーズとしてデビューしてから間もなく四半世紀を迎えるドナルド・ローレンスが、初のソロ作品(名義は”Donald Lawrence & Co.”)として『I Speak Life』(2004)をリリースする際に招聘したのがカールでした。このアルバムには他にもレイラ・ハサウェイやフェイス・エヴァンスといったR&Bアクトも招かれています。

ちなみにこの「Angels」、元は1993年にゴスペルグループのカンパニーが「Angel」としてリリースした曲のカバー(アルバム『Devotion』収録)。打ち込みと判る音やニュージャックスウィングを彷彿とさせる跳ねるビートは(リリース時において)時代錯誤感があることは否めませんが、個人的に気に入っている曲です。

上記動画にはブックレットの内側も掲載されているのですがそこで解るとおり、このカンパニーにはドナルド・ローレンスが在籍していたんですね。そのドナルドおよびスタンリー・ブラウンの共作曲だった「Angel」をセルフカバーしたのが2004年の「Angels」ということになるわけです。

 

さらに遡れば、カールがメジャーデビュー以降しばらく在籍していたレコード会社、バッドボーイがリリースしたゴスペル曲「You」(2002)にも参加。今年4月に弊ブログにて記載していました。

数多ある歌手の中で、バッドボーイ所属以外の方も参加しているのですが(もしくは今後デビュー予定だったのに出来なかったと思しき方の名前も)、その中のひとりがヘゼカイア・ウォーカー。つまりは今回のヘゼカイア・ウォーカー feat. カール・トーマス「Holding On」に至る源流はこの「You」にあったと言えるでしょう。

 

ちなみに、バッドボーイについては今月、レーベル設立20周年を記念してヒット曲を網羅した5枚組ボックスセットがリリース。下記リンク先でトラックリストを確認出来ます。

とはいえ「You」が未収録なんですよね。バッドボーイでゴスペルアルバムをリリースするなんて話もあったのですが立ち消えとなり...さすがに黒歴史とレーベルが考えているわけではないでしょうが(単にヒットしなかったゆえ収録を見送っただけかもしれませんが)、ただただ残念です。とはいえ、このアルバムにはカール・トーマスの名唱も収録されていますので、彼の曲を聴いてみたいという方にとっての入門編的アルバムになるかもしれませんのでよかったら。客演を除く4曲中2曲がインタールードというのはちょっと...と思いつつ。

フェイス・エヴァンスとの共演作も収録。

 

嬉しいのは、バッドボーイが”やる気”になっているのが今回動画を調べて判ったこと。上記3作品はいずれも2ヶ月ほど前にアップされ、いずれもバッドボーイのYouTubeアカウントより発信。ボックスセット収録曲も今年リマスターされた音源であり、そして20周年のリユニオンツアーも近く開催されます。これを機にカール・トーマスが再度脚光を浴びてくれたなら、と思わずにはいられません。

 

そういえば、ドナルド・ローレンスのアルバムにカールと共に(別の曲ですが)参加したフェイス・エヴァンスは近年、ゴスペル曲を歌うことが増えているんですよね。たとえばケリー・プライスとの「Jesus Loves」(2012 アルバム『R&B Divas』収録)。

フェイス・エヴァンスはいつゴスペルアルバムを作ってもおかしくない気がするんですが、そこでカールとの共演が再び果たせたならとも思いますし、もしくはバッドボーイリユニオンの勢いで、立ち消えになったレーベルゴスペル盤の企画が復活したならば、それはそれで嬉しいなと。

今はツアーの成功と、そこからの新たな流れの登場を願っています。