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青森県在住。毎週日曜日17時から、FMアップルウェーブ発の番組の一員として参加。音楽・ラジオ好きによる"日々の音"やメディアの話

「花束を君に」から思い出す楽曲群

宇多田ヒカルさんが来週水曜にリリースするアルバム、『Fantôme』が発売前から話題を集めています。椎名林檎さんとの”EMIガールズ”再結成や、ラッパーのKOHHさんが招かれるなどゲストもいい意味で意外性があり(というよりも、そもそもゲストを招くことを想像自体していませんでした)、そして先週水曜にラジオエアプレイが解禁された「道」の格好良さ...それまでの先行配信曲とは異なるアップで、アルバムへの期待がグッと高まっています。

 

さて、収録曲のひとつが先行配信されている「花束を君に」。

この曲のテーマは”死”。椎名林檎さんもアルバムのコメントで触れていますが、(おそらくは)母親の死が少なからず影響した楽曲ではないかと。自分は今年上半期の邦楽ベストにこの曲を取り上げているほど気に入っています。

 

直接的な表現を避けながら死について的確に捉えた歌詞もさることながら、この曲の肝(と個人的に思う点)はアウトロ。1分近い長尺、そしてストリングスの音色の丸くなさーそれこそ若干の不穏さすら感じられるようなーは、死について実はまだ受け入れきれていなかったり、はたまた哀しみがピークに達していたり...そんな様々な感情を示しているように聴かせる(そしてその感情の解釈を聴き手に委ねる)仕掛けが見事だと思うのです。ストリングスの旋律がユニゾンになっているのですが、途中から上のパートが目立ってきている感じが不思議だったり。

 

このアウトロで思い出したのは、畠山美由紀さんによるユーミンのカバー、「翳りゆく部屋」。配信シングルとしてリリースされた後、ベストアルバム『CHRONICLE 2001-2009』(2009)に収録されています。下記でベストアルバム(の一部)をApple Musicで聴くことが出来ます。

「翳りゆく部屋」もまた、主人公の(仮定としての)死が歌詞に登場しますが、このカバーでのアウトロもまた印象的で、乾いた音色のストリングスが奏でる、少しずつメロディを変えながら繰り返される旋律に不穏感や哀しみなど様々な感情を読み取ることが出来るのです。主人公が本当に死を選ぶとは考えにくいのですが、最悪の事態を選ぼうとしているのではとすら思えてしまう旋律、と言えばいいでしょうか。

 

「花束を君に」の編曲者は判りかねますが、「翳りゆく部屋」のプロデュースとアレンジの担当は宮川弾さん。自分が好きな安藤裕子「さみしがり屋の言葉達」の作曲も手掛けていて、淋しさや悲しさ、痛みをテーマにした楽曲においての宮川さんは強い、と実感しています。

 

 

それにしても、宇多田ヒカルさんの活動再開後の初アルバム...今からものすごく期待しているのですが、彼女ならその期待をひょいと飛び越えてくる予感がします。