イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

アメリカで大物歌手の晩夏~初秋シングルリリースが増えた理由

ザ・ウィークエンドの新曲、「Starboy」が公開されました。スタジオ入りが噂されていたダフト・パンクを従えてのこの曲、ダフト・パンクにとっては2013年の傑作アルバム『Random Access Memories』以降ひさびさの新曲ということになるのでは? ディスコティークな前アルバムの流れを組みつつ、アンビエントやダンスミュージックの要素も加味している...そんな気がします。

リンク先ではアルバム『Starboy』の予約注文が可能。先行曲は冒頭に据えられ、全18曲入り。11月25日発売予定となっています。

 

それにしても先月から今月にかけては大物のシングルリリースラッシュですが、ザ・ウィークエンドも含め下記に取り上げる歌手の作品には共通項が。

レディー・ガガ「Perfect Illusion」(10月21日発売アルバム『Joanne』収録)

・スティング「I Can't Stop Thinking About You」(11月11日発売アルバム『57th & 9th』収録)

・シーア feat. ケンドリック・ラマー「The Greatest」(今冬発売予定アルバム『We Are Your Children』収録。ただし客演有バージョンが収録されるかは不明)

グリーン・デイ「Revolution Radio」(10月7日発売アルバム『Revolution Radio』収録)

ノラ・ジョーンズ「Carry On」(10月5日発売アルバム『Day Breaks』収録)

 

彼らに共通しているのは、シングルは今月までにリリースされ、アルバムは10月以降の発売であるということ。この手法は【2年連続でグラミー賞受賞を狙う】と捉えることが出来ます。

(記事ではセリーヌ・ディオンについても記載されていますが、アルバム情報が見当たらなかったのでこちらでは掲載していません。)

 

2017年2月12日(現地時間)に開催されるグラミー賞では、昨年10月1日から今年9月30日までに発売される作品が対象。つまりシングルを9月までに、アルバムを10月以降にリリースする手法は、アルバム(およびそこからのシングルカット)が2018年分の対象となることで、うまくいけば2年連続主要部門ノミネートという可能性も生じるのです。

前例を挙げるならば、テイラー・スウィフトのアルバム『1989』は2014年10月27日に、先行シングル「Shake It Off」は8月18日にリリースされており、「Shake...」は2015年のグラミー賞で3部門にノミネート、そして『1989』およびそこからのシングルカット分を含めると2016年のグラミー賞では7部門にノミネート(そのうち3部門で受賞)されているのです。2年にまたがるノミネートは、アルバムの話題性が長続きし、グラミー賞等で取り上げられる度に売上が盛り返す(受賞したならば尚の事)...という効果があると思われ、レコード会社にとっても有益であると言えるでしょう。

 

尤も、グラミー賞にノミネートされること自体難しいことであり、それだけクオリティの高い作品でなければならないという前提はあるのですが...それを分かってて勝負を仕掛けていると言えるでしょう。いや、穿った見方をするならば、来年のグラミー賞ではアデル『25』、ビヨンセ『Lemonade』、ドレイク『Views』といった強力作品がノミネート対象であり、且つ目玉となるだろうことを踏まえ、敢えてリリースを先延ばしにしたともいえるのかもしれませんが。