イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【Diggin'】90年代以降R&B/ヒップホップにおける"Family Song"

星野源さんが今週リリースしたシングル、「Family Song」が大ヒット中です。

アイドルを抑えて現在セールスチャート首位。セールス単体のみならず、その他の指標を加えればビルボード・ジャパンの総合ソングスチャートは間違いなく制しそうです。

 

この曲、一聴していいなと思えたのは、根底にソウルミュージックのエッセンスが溢れているため。ソウル/R&B好きな自分にはたまらない作品になっています。その点について、音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんが音世界、そして曲テーマについて長文ながら見事な解説を寄せています。

ソウルミュージックにおける"Family"については、芳朗さんが寄稿しているように家族以上の意味があるということ、そしてそこには黒人差別という問題が根底にあったということは薄々理解していたのですが、その理解が星野源さんの今作を聴いてくっきりした次第。実は今の日本だって、他国(やそこから移住した人)への蔑視や同性愛嫌悪といった少数派差別、多様性に寛容になれないという状況が顕在化していますよね。その暗い状況の中で「Family Song」は、ソウルに根ざしたアレンジを施すことで柔らかく聴こえながらも実ははっきりと【愛】を謳うことで、不寛容の芽をいつの間にか絶やし希望の光を注ぐことに成功している...そんな気がします。

 

さて、上記リンク先の解説ではソウルミュージックにおける"Family Song"がいくつも例示されていました。

これらソウルミュージックのみならず、90年代以降のR&B/ヒップホップにおいても"Family"は重要なキーワード、テーマのひとつとなっています。今回はそれらの楽曲を紹介し、"Family"が指すものについてチェックしてみましょう。

 

 

・パフ・ダディ & ザ・ファミリー feat. フェイス・エヴァンス & 112「I'll Be Missing You」

  (from パフ・ダディ&ザ・ファミリー『No Way Out』(1997))

凶弾に倒れたザ・ノトーリアス・B.I.G.に捧げたナンバー。ポリス「Every Breath You Take」という大ネタ使いが当時のパフ・ダディらしさ全開で大ヒット。ザ・ノトーリアス・B.I.G.の妻フェイスの他、レーベルメイトの112も参加し、"ザ・ファミリー"の結束の高さを示しています。ここでのファミリーとは【レーベルメイト】であり【同士】のこと。

 

メアリー・J・ブライジ「Family Affair」

  (from『No More Drama』(2001))

R&B界で四半世紀活躍し、クイーンの座に就いたメアリーによる2001年の全米No.1ヒット。ドクター・ドレーによる重めのビートが格好良いですね。タイトルを直訳すれば"家庭の問題"となるのですが、下記の楽曲解説ブログによると【仲間(次第)】という意味合いに。もしくは、白か黒かなんて関係ない、人種間の問題なんて音楽そしてメアリーの前では意味のないことと謳っているわけですから、【(人種の壁を越えた)愛】の歌なのかもしれません。

(勝手ながら引用させていただきました。問題があれば削除させていただきます。)

 

ホイットニー・ヒューストン、シシー・ヒューストン、ディオンヌ・ワーウィック&ファミリー「Family First」

  (from サウンドトラック『Daddy's Little Girls』(2007))

当時の夫、ボビー・ブラウンとの生活により薬漬けになってしまったホイットニーを母シシーがボビー家から"奪い去る"ことを機に、ホイットニーのカムバックに向けて動き出した中での一曲。声は正直戻っていない(いや、最後まで戻らなかった)のですが、家族や親族(ディオンヌ・ワーウィックはホイットニーの従姉妹)に支えられている姿に感動を覚えます。ここでの"Family"は【家族・親類】の意。

 

・キンドレッド・ザ・ファミリー・ソウル feat. スヌープ・ドッグ「You Got Love」

  (from『Love Has No Recession』(2011))

歌手名が示すように、ここでの"Family"は【家族】。フィリーソウルの歌い手として準メジャーで精力的に活動中。そしてどんな歌い手とも積極的にコラボレートするスヌープ・ドッグの対応もまたいいなあと。

 

アリシア・キーズ feat. エイサップ・ロッキー「Blended Family (What You Do For Love)」

  (from『Here』(2016))

この曲の背景にある、アリシア・キーズと夫スウィズ・ビーツ、そしてスウィズの前妻マションダの関係等は下記に。

前妻との間の子、カシーム・ジュニアとアリシアは血がつながってはいないものの、前妻も含め仲睦まじい関係、"ブレンド家族"であることをこの曲で示しています。記事にある通りここでの"Family"は【(血のつながりよりも大切なのは)愛】であり、これこそ星野源「Family Song」に通底するものとほぼ同じなのではないかと実感します。

 

 

他にもまだまだ"Family"にまつわる曲がありますので、気になった方は是非探してみてください。

ちなみに自分がスタッフの一員となって時にDJも担当する『わがままWAVE It's Cool!』(FMアップルウェーブ 日曜17時)、次回8月20日の音楽特集は【家族/Family】です。今回紹介した楽曲がかかるかは未定ですが、様々な素晴らしい"Family Songs"をお送りしていきますのでどうぞお楽しみに。下記FMアップルウェーブのホームページ経由で、サイマル放送でもお楽しみいただけます。