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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米ソングスチャートは遂に1位が交替も、注目は”社会的意義のある”9位登場曲

ビルボードソングスチャートを定点観測。

現地時間の9月4日月曜(日本時間の火曜早朝)が祝日だったため、翌日に発表された、9月16日付最新チャート。大方の予想通り、ルイス・フォンシ&ダディー・ヤンキー feat. ジャスティン・ビーバー「Despacito」の17週目の首位を阻止し、テイラー・スウィフト「Look What You Made Me Do」が圧倒的な勢いでトップに立ちました。客演参加ではない形での女性によるチャート制覇は今年初です。

記事は下記に。

実はこのツイートのリンク先に掲載されているのは2位以下のみ。1位については。下記リンク先に。

異例中の異例。それだけテイラー・スウィフトの勢いが凄い(そしてそれゆえにビルボードが配慮している)ことが伺えます。

トップ10はこちら。

前週、史上最多タイとなる16週目の1位を獲得した「Despacito」は遂に2位に後退。今週の各指標はデジタルダウンロード76000(前週比6%ダウン)、ストリーミング3950万(前週比11%ダウン)、ラジオエアプレイ8700万(前週比17%ダウン)と後退幅自体少なくありません。他方「Look What You Made Me Do」については2017年最大のセールス&ストリーミングを獲得。デジタルダウンロードは353000で、今年最大だった「Shape Of You」が持つ240000を大きく上回り、ストリーミングは8440万でこちらも「Despacito」が持つ今年最大記録である6960万を破る結果に。その結果、ラジオエアプレイのみで前週77位に初登場していたこの曲は76ランクもの大幅アップを果たし、自身5曲目となる首位を獲得しました。ラジオエアプレイは前週の23位(前週はわずか3日間での結果)から14位にアップしていますが(6400万)、次週以降デジタル部門のダウンも予想されるため今後の肝はラジオエアプレイにあると言えるでしょう。

 

今週は「Look What You Made Me Do」含め3曲がトップ10入り。10位にはリアム・ペイン feat. クエヴォ「Strip That Down」が1ランクアップで登場。リアムは活動休止中のワン・ダイレクションのメンバーで、ソロとしては初のトップ10入り。クエヴォはミーゴスのメンバーで、ソロとしては4曲目のトップ10入りとなりました。

エド・シーランもソングライトに参加したこの曲は既にラジオエアプレイで10位に上昇。デジタル部門が若干ダウンしているものの、トップ10入りしたことで認知度が増しデジタル部門も牽引される可能性はあります。ちなみに、元メンバーを含めグループから3人以上がソロ名義でトップ10入りしたのはビートルズフリートウッド・マック、ニュー・エディションに次いでワン・ダイレクションが4組目(元メンバーのゼイン、ハリー・スタイルズおよびリアム・ペイン)。

 

そして9位。個人的に強く推したいのがロジック feat. アレッシア・カーラ&カリード「1-800-273-8255」。

「Look What You Made Me Do」のミュージックビデオが『MTV Video Music Awards』(8月27日現地にて放送)の中で流れたことが同曲に大きな勢いを与えた一因なのですが、この曲も同賞でパフォーマンスされたことで話題となり、前週比20ランクもの大幅アップを果たしました。

ロジックのアルバム『Everybody』(2017)収録のこの曲。タイトルの数字はアメリカのNPO団体、”National Suicide Prevention Lifeline (全米自殺予防ホットライン)”の電話番号を指します。日本でも8月末から9月前半にかけて、自ら命を絶ってしまう学生がいつもより増えてしまうと聞きますが(そしてそれに対する取り組みが今年、少しばかり大きなうねりとなりました)、自殺という問題は世界全体の課題なのかもしれません。5月にはblock.fmにてDJ YANATAKEさんがこの曲について言及しており、少しずつ話題になっていきました。文字起こしを勝手ながら引用させていただきます(問題があればリンク先を削除いたします)。

この曲に込めたロジックの思い、そして賞で披露した後の反響の凄さは下記記事に掲載。

さらに素晴らしいのは、この曲をビートジャック(音源のビートを用いて歌詞を書くというヒップホップの手法)したSKY-HIさんによる「0570-064-556」。ネットの即時性、柔軟性ならではの作品とも言えますが、そこには間違いなくSKY-HIさんの熱い思いが込められていますので是非聴いてみてください。

こういった曲が存在し、誰かを救う力になるのならこんなに素晴らしいことはないと心から思います。

チャートアクションに話を戻すと、ロジック、そしてR&Bシンガーのカリードにとって初のトップ10入り(アレッシア・カーラにとっては客演含め4曲目)。カリードは「Location」が最高16位だったことを踏まえれば悲願のトップ10入りといえるでしょう。

 

 

今回はロジックの楽曲に強い思い入れをしてしまいましたが、理由は2つ。先に”大きなうねり”と書きましたが、Twitterで”#8月31日の夜に”というハッシュタグ付の投稿が増え、自殺に向き合い、思いとどまるように呼びかけた人が増えたことがひとつ。自分もそうでした。そして、曲のテーマ、何を書くかは自由といえども、敵や果ては自分自身までを非難するという「Look What You Made Me Do」の内容(およびその販売手法)に心地良さを抱けず、他方ロジックの持つ”意義”が素晴らしく、この2曲が対照的だよなあと感じたこと。チャートアクション紹介に私見を織り交ぜるのはよろしくないと解りつつ、どうしても強く思ってしまうのです。