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青森県在住。毎週日曜日17時から、FMアップルウェーブ発の番組の一員として参加。音楽・ラジオ好きによる"日々の音"やメディアの話

テイラー・スウィフトは新作で”フシン”を払拭するのか

今日リリースされるテイラー・スウィフトのアルバム、『Reputation』。今週月曜には予約数が好調である、と報道されています。

ただ、この報道は『テイラーのレーベル、<ビッグ・マシーン・レコード>がAP通信に伝えたところによると』(記事より)とあり、テイラー側から発せられた内容です。

勿論今作も売れるでしょう。3年ぶりの待望の作品であること、前作『1989』(2014)の大ヒット(米ビルボード年間アルバムチャートでは2014年が3位、2015年が1位、2016年が17位にランクイン)、並びに今作からの先行シングル「Look What You Made Me Do」の初登場から3週連続での全米1位という記録を踏まえれば、初週は記録的な数値を叩き出すことが確実です。

しかし、あくまで私見と前置きするならば、2週目以降に失速するのではと考えています。杞憂かもしれませんが、下記に記載することにします。

 

 

理由は大きく分けて2つ。一つ目は「Look…」をはじめとする先行曲のチャート成績における【不振】。火曜の米ビルボードソングスチャート速報でも触れました。11月18日付において。

先週も触れたテイラー・スウィフトの勢いの問題。先週13位に初登場を果たした「Gorgeous」は今週68位に大幅ダウン。そして。

10月27日金曜に公開され、1週間分の動画公開に伴うストリーミング加算効果が期待された「...Ready For It?」はチャート上で返り咲き、46位から19位に上昇。しかし再びトップ10入りするには至れませんでした。今週彼女のアルバム『Reputation』がリリースされ、”予約数は40万を超えた”とのアナウンスがあるのですが、先行シングルの勢いがどうもパッとしないんですよね。

米ソングスチャート、ミュージックビデオ公開効果でトップ10内に大きな変動が(11月7日付)より

「Look What You Made Me Do」は前週の25位から更に順位を落とし34位に後退しています。これを3曲の票割れとみることもできますが、たとえば同様に『Purpose』(2015)から先行曲を相次いで発表したジャスティン・ビーバーは、『Purpose』が2015年12月5日付アルバムチャートで初登場首位を獲得した同日付のソングスチャートにて、「What Do You Mean?」が5位、「Sorry」が2位となり、また「Love Yourself」が4位に初登場しています。「Love Yourself」以外の2曲は共に前週もトップ10入りしています。そう考えると、やはり勢いの差を感じずにはいられません。

前作『1989』(2014)は、先行曲が「Shake It Off」と「Welcome To New York」。後者はプロモーションシングルとしての扱いゆえ最高48位にとどまりましたが、アルバム『1989』が2014年11月15日付アルバムチャートを制した同日付のソングスチャートでは「Shake It Off」が1ランクアップで首位に返り咲き。同年9月6日付で初登場し2週連続で首位に立った後、8週連続の2位を経てからのカムバック。つまりは曲にそれだけの力があるゆえ踏ん張り(とどまり)続けられたわけで、テイラー自身の前作と今作においても、その勢いの差を感じてしまうのです。

 

そしてもうひとつの理由は、彼女の売り出し方に対する【不信】ではないかと。

彼女は前作リリース後、歌手への配当がフェアじゃないことを理由に、定額制音楽配信サービスから一度全カタログを撤退させています。下記はSpotifyに対して2014年11月に実施した際の記事。

そしてこちらはApple Music。『1989』を引き上げています。2015年6月の出来事。

無料お試し期間中の聴取分に対する対価が支払われないことを理由に引き上げたテイラー。直後にApple側は方針転換しており、彼女の言い分は通りました。しかしその後なかなか解禁に至っていなかったのですが、「Look…」がアナウンスされる前の6月、”『1989』の1000万ユニット突破を記念して”再度定額制音楽配信サービスでの解禁に踏み切ったのです。無論、彼女が謳った配当問題はきちんと考えないといけないものであり、インフルエンサーである彼女の言動・行動により”ストリーミングとは?”と考える業界人は非常に多かったはず。現に改善もされています。しかし、ではもう少し早く解禁に踏み切ってもよかったのではないかと思うのです。そしてこの解禁の『裏には彼女の最大のライバルのケイティ・ペリーの新アルバム「ウィットネス」が6月9日に発売された』ことがあり(『』内は下記記事より)、この解禁はケイティ潰しこそ真の目的では?と思ってしまいかねません。

そうでなくとも、引き上げの際に音楽界の問題と謳っていたはずが、戻ってくる際には『アルバム「1989」の販売枚数の1000万枚突破と楽曲ダウンロード数の1億回突破記念』(記事より)を理由にするという姿勢には驚かされます。大きな問題を自身の都合に矮小化させているのではないかと。そしてストリーミングの再解禁が新曲の初登場1位に大きく貢献しているのですが(米ソングスチャートは遂に1位が交替も、注目は”社会的意義のある”9位登場曲(9月6日付)参照)、ストリーミングがチャート構成指標のひとつであることを踏まえ、今回の再解禁が新曲好発進のための”地ならし”だとしたら、彼女はインフルエンサーではなかったのではないかと思ってしまうのです。

 

さらに...これは非常にセンシティブな問題ゆえ慎重に語らないといけないのですが、彼女は同じく「Look…」のリリース直前になって、セクシャルハラスメント裁判に勝利しています。

ここで彼女は”全ての女性のために戦う”と言い、勝ち得た金額はわずか1ドル。実際この行動に勇気を抱いた女性は多いものと思われますし、もしかしたらこれが今のエンタテインメント業界で増加している”セクシャルハラスメント被害者の告発行動”における精神的支柱になっているかもしれません。テイラーの勝訴は当然のことでしょう。しかしながら、セクハラを起こしたとされる側から2015年9月に訴訟が起こされ、そこからなぜ2年もの期間がかかったのかが気になるのです。米司法制度に明るくないためそれだけ期間がかかることが常識と言われればそれまでですが、結審したタイミングが新曲発表直前というのが、穿った見方と思いつつも強く引っ掛かるのです。もし今回の裁判スケジュールが新曲直前に結審することを目的に組まれたのだとしたら、ここで掲げられた女性のためという社会的意義に、ストリーミング問題の際と同様の疑問を覚えてしまう自分がいます。

 

彼女の曲作りにおいてはよく、”別れた男性との恋愛をネタにしている”ということを耳にします。ラジオDJのクリス・ペプラー氏はその件を踏まえ、自身の番組で彼女を幾度となく”ビジネスウーマン”と呼ぶほどです。無論、リリースのタイミングで知名度が上がるような出来事を仕掛けることは日本でも行われており(テレビ番組のゲスト出演等)、名前を売るというビジネスは大事です。ただ、テイラー・スウィフトに関していえばその露出の仕方、話題になるタイミングが決して心地の良いものではなく、【社会的な問題を表向きにしながら、個人の宣伝に用いているようにみえる】ため、【結局社会的な問題は彼女にとって二の次ではないか】とすら思われるのではないかと。恋愛経験を歌にするのはあくまで個人の自由ですし、ストリーミングの再解禁やセクハラ裁判の結審が”偶然にも”新曲発表前のタイミングだったならばよいのですが、真に社会を良くしたいと思うなら、自身の利益を無視してでもストリーミングの再解禁、セクハラ裁判について早々に動くべきではなかったのかと思うのです。

 

また、アメリカのエンタテインメント業界が反トランプ(大統領)であること(音楽評論家やアメリカ社会に詳しい専門家の中には、米エンタテインメント界の99%は反トランプと言う方も)において、未だテイラーは反トランプか否かを公言していません。下記記事からは薄く反トランプという姿勢も見えてくるかもしれませんが、実際はデモ参加者への支持であり、反トランプか否かには言及していないんですよね。

保守的なカントリー畑出身ながら、しかし今はポップフィールドで活躍していることから音楽等で多様性について寛容だともいえるでしょうし、またスターがどんどん自身の考えを明言する中にあって黙り込むその方法は、アメリカにおいてはちょっと異質に思えてしまいます。その意味でも”テイラー離れ”が起こっている気がするのです。

 

 

彼女の作品は売れるでしょう。が、前作ほどの数値を上げられるか、瞬発力だけ大きくなってやいないか、しばらくその動向を見守ってみましょう。

ちなみに昨日になって、こんな動きも出てきました。

結局彼女はストリーミングについて未だきちんと信頼していないのではないかと思ってしまいますし、今夏のストリーミング解禁は社会的意義というよりケイティ・ペリーへの”私怨”だったという疑いが自分の中で強くなっています。今夏全SNSを消去したこと(テイラー・スウィフト、ニューアルバムは9月? それとも10月以降?(8月21日付)参照)も、ファンからすれば今までのテイラーが見られなくなったという点において非常に無礼な行動だと思わざるを得ません。正直、非常に残念です。