face it

青森県在住。毎週日曜日17時から、FMアップルウェーブ発の番組の一員として参加。音楽・ラジオ好きによる"日々の音"やメディアの話

(追記あり) 安室奈美恵『Finally』が未だデジタルダウンロード出来ない状況を疑問視する

安室奈美恵さんのベストアルバム、『Finally』が絶好調です。今週火曜に発表されたオリコンランキングでは発売2週目にしてCD売上32.2万枚(累計143.5万枚)、ビルボード・ジャパンのアルバムチャートではCD売上30.2万枚(累計134.1万枚)というように、2週目で30万超えという異例の売上となっています(いずれも11月27日付)。

しかしながら、ビルボード・ジャパンが先週、発売初週でミリオン達成を報じた際のこの文言が引っ掛かるのです。

未定となっているダウンロード配信が始まれば、さらなる広がりを見せ、ロングヒットに繋がる可能性は高いといえる

【ビルボード】安室奈美恵『Finally』がミリオン突破で総合アルバムも制す 2週目の米津は2位 | Daily News | Billboard JAPAN(11月15日付)より

たしかにこの『Finally』は現段階でも未配信のまま。

上記は「Body Feels EXIT」(1995)以降のシングル/アルバムが掲載されていますが、「恋のキュート・ビート/ミスターU.S.A.」から「Stop the music」までの、当時の東芝EMI発のシングルもiTunes Storeで販売されています。『DANCE TRACKS VOL.1』(1995)および『ORIGINAL TRACKS VOL.1』(1996)は全曲が、また『Checkmate!』(2011)は一部楽曲が(おそらくは共演相手の配信NGにより)未配信となっていますが、『Finally』を機に彼女の、歌い直す前の音源も含めた過去作品を手に入れたい方には彼女のカタログがほぼ揃っていることは良いことです。

しかし、ならばなぜ『Finally』がないのでしょう? という思いを、同時に強く抱いてしまう自分がいます。

(厳密には、『Finally』はスマプラミュージック(およびBlu-ray/DVD同梱版購入者にはスマプラムービー)仕様となっており、CDや映像盤をスマートフォンでも聴けるのですが、たとえばパソコンでプレイリストを作成する等には長けておらず、ユーザーフレンドリーとは言い難いというのが私見です。そしてスマプラは、あくまでCD購入者が享受出来るサービスです。)

 

先述したように、安室奈美恵さんの作品はほぼ全て、デジタルダウンロード出来るようになっています(この姿勢は彼女が個人レーベル、Dimension Pointを立ち上げ、移籍してからも変わりません)。配信には後ろ向きではない彼女が、ではなぜ今回に限り未だデジタルダウンロード解禁に踏み切っていないのかが気になるのです。

 

現段階で自分が考える、その理由は2点。ひとつは、CDというパッケージに集中して販売し、”CDセールスで結果を出したかった”のではということ。”ミリオン”が出にくくなった現状においては、その達成が大きな箔となるわけです。デジタルダウンロードを同日解禁すれば、仮にCDセールスとデジタルダウンロードがそれぞれミリオンに満たなかったとしても、両者を合算したビルボード・ジャパンのチャートではミリオン扱いにはなります。しかし未だメディアが重要視するのはビルボードよりもオリコンランキングであるため(オリコンにはデジタルダウンロードランキングはありますが、あくまでCDとは別と位置付けています)、CDセールスのみで結果を出し、インパクトを残す必要があったのでしょう。結果的にミリオンを、それも初週に達成したことで、多くの方に彼女の凄まじさを示す形となりました。

 

そしてもうひとつは、邪推であると前置きした上で書くならば”枷の存在”。今回歌い直すことでおそらく原盤権は彼女の元にあるでしょうが、前事務所とは良好な関係性が築けていないと聞きます(原盤権が前事務所にある関係でベストアルバムに過去音源を収録出来ず、歌い直す必要があったのではという推測を以前、昨日のラジオ番組、自分責任監修による安室奈美恵さん選曲リスト~音楽的変遷と実績を振り返る(11月13日付)にて書きました。このエントリーは長文ですのでご注意を)。その関係性が未だ足枷になっているというか、過去作品の原盤権保持者が【歌い直すことでベストアルバムを出すことが出来た→ベストアルバムによって過去作品の需要が喚起され売上が伸びる→ベストアルバムを配信解禁すれば過去作品への流れが少しでも止められかねないのでCDは認めても配信はNG】と考えているのでは?それを安室奈美恵さん側が考慮しないといけなかったのでは?と。無論これは最大限の邪推ではあるのですが、これまでの作品群と比べて急に配信に明るくなくなった姿勢は不自然に思ってしまうのです。歌い直しは、ライブの度に進化する”今の安室奈美恵”を示すために必要なことだったとも考えてはいるのですが。

 

 

前者の理由においては、安室奈美恵さんと同じ週にリリースしたテイラー・スウィフト『Reputation』が(デジタルダウンロードはOKでも)発売直前になってストリーミングを禁止したことが功を奏してか、アルバムセールスが4作連続となる初週ミリオンを達成したことを踏まえれば、(CD)セールスへの特化という手法は有効かもしれません。しかしながらどの歌手のファンにおいても、デジタルダウンロードやストリーミングを望む方は少なくなく、音楽の接し方は変わっています(そしてその変化に合わせてビルボード・ジャパンのチャート集計方法も進化しています)。今回の件に限らず、多くの邦楽作品が未だアンフレンドリーな方針を採っているのは、厳しい言い方ですがそれらユーザーに失礼だと思うのです。そして後者の理由...目に見えない足枷で自由を制限されているのであれば、やはりエンタテインメント界、芸能界に蔓延る闇はどこかで切り裂かないといけないと強く思います。

 

近いうちに『Finally』がデジタルダウンロード解禁されることを願うばかりです。

 

 

※ 追記 (2019年6月16日)

『Finally』が遂にデジタルダウンロードおよび一部サービス限定でストリーミング解禁となりました。