イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

安室奈美恵さんから私たちが学ぶべきこと

本日、安室奈美恵さんが引退します。

 

引退発表後にリリースされたベストアルバム『Finally』のリリース週に、自分が担当するラジオ番組『わがままWAVE It's Cool!』(FMアップルウェーブ 日曜17時)で彼女の音楽の変遷を振り返る特集を組みました。その際に自分の思いも記載していますので御覧ください。

また、『Finally』については引退日の段階でも未だデジタルダウンロードが解禁されていません。この件について指摘したブログエントリーには、今もなお多くのアクセスがありますのであらためて紹介します。

 

 

安室奈美恵さんの26年の活動においては幾度となくターニングポイントがあったように思われます。その中で個人的には、【2000年代前半から2008年『BEST FICTION』に至るまでのセールス復活】と【所属事務所の移籍】がとりわけ印象的で…というより、この2つにおける周囲の見方には強い違和感を抱いていました。

 

セールス面の(敢えて書くならば)低調期においては、自身のやりたい音楽にこだわりはじめSUITE CHICというプロジェクトを組み、そこからR&Bを軸とした音楽性を高め、R&Bやヒップホップの制作陣から強固な支持を得るに至ります。それがセールス面でも結実したのが『BEST FICTION』(2008)での首位獲得というわけです。

今だから書きますが、下記エントリーに掲載したライブとは、安室奈美恵さんの『BEST FICTION』を冠したツアーでのこと。

ここで書いたことに加え、たとえば世間一般で用いられがちな"劣化"等表現も含め、一度負の側面が見えると叩くのに躍起になる人が多すぎます。また、ひとつのことや人を熱心に持ち上げるために他を貶す行為(個人的にはこれを"逆謙譲"と呼んでいます)も目立ちます。安室奈美恵さんに対して負の側面を見つけて叩く行為等は2000年代前半に散見されましたし、セールス面で復活した際も(上記ブログエントリーでの友人のように)戯言を吐く人がいるのは悲しい限り。今はSNSが身近になったことで、そんな言葉の刃がより目立つようになりました。

 

また、所属事務所の移籍においてはこんな話もありますが真相は不明。ただ、仮にこの話が事実だとしても、『Finally』の内容がオリジナル音源ではないのはアンフレンドリーな気がしますし、もしも安室奈美恵さん側が前事務所に対しオリジナル音源の貸与等を要請したもののNGを出されたとしたら、前事務所への違和感は拭えません。こういう移籍に関するトラブルが未だ多いのみならず、移籍すると数年メディアに露出出来ないなどの窮屈なマナーがルールではないにもかかわらず頑然と存在する芸能界、また移籍イコールマイナスというイメージを与えんとB級ニュースを報じるメディア、そして移籍の真意を見極めようとせずマイナス面ばかりを見て、記事に踊らされたりもしくは逆に叩く際にだけ都合よく便乗する市井…これら3つのスクラムが、日本のエンタテインメント界が健全化出来ず、はたまた諸外国へスムーズに進出できない理由ではないかと思うのです。ちなみにこの3つのスクラムについては別の側面から以前取り上げたのですが、所属する男性歌手について辛酸を嘗める事務所が、事務所から抜けた人に対しては逆の立場になるというのには唖然とします。

 

【2000年代前半から2008年『BEST FICTION』に至るまでのセールス復活】においては《音楽的変遷を見ようとせずにセールス面の不調だけを見て叩く人たち》が、【所属事務所の移籍】においては《芸能界の暗澹たる現状を知りながら、変えようとする気概がない人たち》が多く見受けられました。しかしそれら逆境の中にあって、安室奈美恵さんは常に前進し結果を掴みました。それも、マイナスなことを吐くことは見られなかったように思います。

その安室奈美恵さんの姿勢とのギャップを知り、自己に落とし込んで省みて、芸能界に対してのみならず一般社会の中でまずは自分の出来る範囲で変えていく人が少しでも登場したならば、マイナスな空気が充満する窮屈な世の中はわずかでも改善すると思います。安室奈美恵さんがこの社会に広めたものは曲やファッションのみならず、自らが前進してしなやかに生きることで酷い言葉たちをひょいと乗り越えることも含まれると思うのです。その意志を、安室奈美恵さんを聴くひとりでも多くの方が継いでほしいと切に願います。

 

 

安室奈美恵さん、26年間お疲れ様でした。そして本当にありがとうございました。