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青森県在住。毎週日曜日17時から、FMアップルウェーブ発の番組の一員として参加。音楽・ラジオ好きによる"日々の音"やメディアの話

今流行のR&B/ヒップホップのあらゆるトレンドを押さえた? ジョーダン・アームストロングのゴスペル作『Blsd』

ビルボード最新チャートをひとつかみ。

11月3日付ゴスペルソングスチャートで24位に初登場を果たしたジョーダン・アームストロング「Favor」。一聴するとアダルトなR&Bですね。R&Bっぽいけど歌詞はゴスペルという方は少なくないものの、ここまで大人な感じの音で迫ってくるのは珍しいかもしれません。

サビには”Hallelujah”のフレーズがあり、たしかにゴスペル的と解ります。

 

ジョーダン・アームストロングは5歳より音楽活動を開始。街で有名なソリストであった母と共に歌うこともよくあったそう。ブランデー、プリンス、アッシャーをフェイバリットに挙げ、プロデューサーとしてハミルトン・パークなどを手掛けた後、タイリースやジョニー・ギル、キース・スウェットと仕事をしたというキャリアの持ち主。世俗(R&B)で一定の成功を収めつつ主軸はゴスペルに置き、イスラエル・ホートンやメアリー・メアリー、フレッド・ハモンド等、R&Bライクなサウンドも少なくないゴスペルアクトの前座に立つなどしています。

 

そのジョーダン、実は8年前に日本にてアルバム『Champion』が、それも国内盤にてリリースされています。

『歌詞は神に向かったもののよう』としながらも、『合コンも!パーティーも!ドライブも!こいつ一枚でアガることマチガイなし!』(上記HMVより)と説明されていて、ジョーダンはさぞかし困惑しただろうなと思うなど。歌詞対訳がどうなっているか気になるところですが、国内盤のリリース経験アリとなると、ジョーダン・アームストロングの名を見て反応する方はいらっしゃるはず。ならば是非、先月リリースされた『Blsd (Deluxe)』もチェックしていただきたいものです。先述した「Favor」も収められています。ちなみに”Blsd”とは”Blessed”の意味。ゴスペルに関係する言葉ですね。

日本では”KiKi”として知られる(そしてかなりの割合でゴスペルと謳われることなく推されていた)キエラ・シェアードや、音楽評論家の林剛氏が一昨年、アーバンゴスペルのベストに挙げたティム・ボウマンJr.も参加。ティムが参加した「Pull Me Through」はブギーでキラキラな好アップとなっています。クワイアが登場するのはキエラ・シェアード参加の「Look At Me Now」のみであり、ドレイク「God's Plan」を明るくしたような「Clout」、80年代感R&B漂う「Tomorrow」、ニュージャックスウィングな「Right Back」、現行EDMを意識しサビをシンセドロップが担う「Mona Lisa」、Gイージーを彷彿とさせる「Hot Boy」から直球ソウル「California Dew」~二箔三連のメロディにボーカル加工を施した「Reverse Effect」という流れ(そして続く「Lose My Number」はポスト・マローンを思わせる)…と、ここ最近のR&B/ヒップホップが全て詰まったかのような、それでいて極々自然なアーバンゴスペルに仕立て上げています。「Hot Boy」終わりの某おもちゃメーカー登場という遊び心にもくすぐられ、とにかく楽しめる作品です。

 

(ちなみに「Favor」に続いて収められている「Kawasaki」はおそらくバイクのことかと。歌詞には”He the plug And im the socket”とあるのですが、これがゴスペルではなく世俗R&Bだったなら、ゴスペルの場合は神様を指すHeをSheに変え、たいしてうまくもない比喩になったのかもしれない…そう思うのは自分の頭に『R&B馬鹿リリック大行進』がいい意味で?こびりついているからかもですね。)

 

この『Blsd』のみならずジョーダン・アームストロングの作品のほぼ全てがCD化されていないのが残念ですが、サブスクリプションサービスにも出ているので気になった方は是非チェックを。海外では未CD化ながら質の高い作品をフィジカル化し届けるのも日本のレコード会社の役割じゃないかなとふと思うのですが、いかがでしょう。