イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

日本レコード大賞の”非明確化”は不信感の種ではないか

毎年この時期になると、ここで日本レコード大賞について書いているような気がしますが…。

DA PUMP「U.S.A.」の優秀作品賞受賞に至るまではこれまでカバー曲が同賞にノミネートされなかったり、新人賞に実績十分のKing & Princeがいなかったり等様々な違和感がある(あった)のですが、おそらく今年のビルボードジャパンソングスチャートを制するであろう米津玄師「Lemon」が優秀作品賞に入っていないことが最大の違和感なのです。

他方、同氏のアルバム『BOOTLEG』はアルバム賞、それも最優秀アルバム賞を獲得。アルバム部門が当日ではなく事前に最優秀を決めてしまっていることにレコード大賞の【シングル>アルバム】という意識が透けて見えるのも違和感なのですが、あれ?『BOOTLEG』は昨秋の発売では?と思いあらためて調べたところ、昨年11月1日のリリースでした。

評判や売れ行きを踏まえるに優秀以上の賞贈呈に十分値する作品だと思いますが、昨年の11月1日発売作品は昨年の対象ではないのかと認識していました。そこで対象期間を調べてみるとここに行き着いたのですが。

ここには対象期間が前年12月からの1年間、とあります。しかしこのQ&Aが10年以上前ゆえ、現段階で改正されているものと考えリンク先の日本レコード大賞のWikipediaページを確認したのですが、(本日朝の段階で)”対象年度”という文言は6回用いられているものの、その”対象年度”がいつからいつまでなのかという具体的なものは記載されていません。

そこで日本レコード大賞を主催する公益社団法人日本作曲家協会のホームページを確認したのですが。

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キャプチャ後未加工ですが今後変更される可能性を踏まえ、本日午前の段階のものを掲載しました。こちらでも”対象年度”が2回用いられながら、その期間が見えてきません。また毎年同賞を独占放送するTBSのホームページでは、今年のノミネートリストと歴代受賞者の簡易なデータベースが記載されたのみです。

 

はっきり言って、これでは違和感、いや不信感が募るばかりです。

 

どうやら日本レコード大賞の創設においては、アメリカのグラミー賞を模範とした模様、と先述のWikipediaには掲載されています(その引用元は佐藤剛氏の著書『「黄昏のビギン」の物語』)。しかしそのグラミー賞では、対象期間について明確な記載があるのです。

Nominations for the 61st GRAMMYs will be announced in all 84 categories on Dec. 5, which includes recordings released between Oct. 1, 2017, and Sept. 30, 2018.

61st GRAMMY Awards Dates Announced | GRAMMY.com(7月17日付)より

”来年開催の第61回グラミー賞、全84カテゴリーのノミネート作品発表は来月5日。そしてその対象期間は2017年10月1日から2018年9月30日までにリリースされた録音物”とあります。アメリカではノミネート作品が発表されるかなり前の段階で対象期間を明確化しているにもかかわらず、それを模範としたはずの日本レコード大賞においては公式サイト等に対象期間が見受けられないわけで、これでは対象期間が10月からなのか11月からなのか分からないままではないでしょうか。

 

無論、今年を代表する「Lemon」が優秀作品賞を逃したことも疑問ですがそれは選ぶ側の裁量だと言われればまだ納得出来ます。しかし対象期間の曖昧さはそもそもの賞の基準を曖昧にしている、いや誤魔化しているのでは?と思われてもおかしくありません。

ちなみに、米グラミー賞において今年の最優秀新人賞を受賞したのが対象期間以前にアルバムをリリースしソングスチャートでトップ10ヒットも放ったアレッシア・カーラであり、個人的に違和感を抱いたもののそれはあくまで新人賞という独自のカテゴリーゆえ。他の賞は歌手ではなく作品に与えられるわけで、やはり対象期間をはっきり設け、それをきちんと目に見える形で提示しないといけないでしょう。

 

 

自分は以前も、日本レコード大賞への疑問と改善案を提示し、また日本版グラミー賞の創設を願うということを記載してきました。

今回のエントリーを踏まえ提示する改善案は【対象期間の明確化】ですが、そもそもレコード大賞に”自らの意思で辞退”する歌手が増えた現状においては(そしてそもそもテレビ出演のない米津玄師さんが今回出るとは考えにくいことを踏まえれば)、賞への魅力自体薄れている気が。さらに。

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TBS独占放送が賞の客観性を削ぎ不健全化のままでいるならば、日本レコード大賞自体が放送媒体を切り替えることも必要でしょう。先の自分のツイートを踏まえ、【アルバム部門の重要視】【TBS独占放送の見直し】も求めます。