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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

2018米ビルボード年間ソングスチャート発表…34週制したヒップホップはそこまで強くなかった?

一昨日、米ビルボード年間チャートが発表されました。毎週ブログではソングスチャート速報をチェックしていますが、そのソングスチャート年間トップ100は下記に。

ドレイク「God's Plan」首位は予想通りでした。

今回のチャートについての記事はこちら。

2018年のチャート集計期間(2017年12月2日~2018年11月17日付)においてはヒップホップが強く、同ジャンルの首位獲得週数は通算34週に上ったのですが、蓋を開けてみるとトップ10のうちヒップホップは5曲のみ(ドレイク、ポスト・マローンが2曲ずつ、カーディ・Bが1曲)、残りは非ヒップホップという形に。そして、"週間チャートでトップ10入りを逃しながら年間で40位以内に入った曲"が多いのが解ります。その数、実に9つ。

1位 (週間1位) ドレイク「God's Plan」

2位 (週間1位) エド・シーラン「Perfect」

3位 (週間2位) ビービー・レクサ & フロリダ・ジョージア・ライン「Meant To Be」

4位 (週間1位) カミラ・カベロ feat. ヤング・サグ「Havana」

5位 (週間1位) ポスト・マローン feat. トゥエニーワン・サヴェジ「Rockstar」

6位 (週間1位) ポスト・マローン feat. タイ・ダラー・サイン「Psycho」

7位 (週間1位) カーディ・B、バッド・バニー & J・バルヴィン「I Like It」

8位 (週間5位) ゼッド、マレン・モリス & グレイ「The Middle」

9位 (週間1位) ドレイク「In My Feelings」

10位 (週間1位) マルーン5 feat. カーディ・B「Girls Like You」

11位 (週間1位) ドレイク「Nice For What」

12位 (週間2位) ジュース・ワールド「Lucid Dreams」

13位 (週間3位) ポスト・マローン「Better Now」

14位 (週間3位) ブルーノ・マーズ feat. カーディ・B「Finesse」

15位 (週間5位) エラ・メイ「Boo'd Up」

16位 (週間6位) デュア・リパ「New Rules」

17位 (週間1位) エクスエクスエクステンタシオン「Sad!」

18位 (週間6位) カミラ・カベロ「Never Be The Same」

19位 (週間9位) カリード & ノーマーニ「Love Lies」

20位 (週間3位) アリアナ・グランデ「No Tears Left To Cry」

21位 (週間11位) バージィ「Mine」

22位 (週間4位) イマジン・ドラゴンズ「Thunder」

23位 (週間5位) ブロックボーイ・JB feat. ドレイク「Look Alive」

24位 (週間12位) テイラー・スウィフト「Delicate」

25位 (週間6位) リル・ベイビー & ドレイク「Yes Indeed

26位 (週間11位) マシュメロ & アン・マリー「Friends」

27位 (週間5位) ホールジー「Bad At Love」

28位 (週間8位) タイガ feat. オフセット「Taste」

29位 (週間12位) NF「Let You Down」

30位 (週間4位) G・イージー feat. エイサップ・ロッキー & カーディ・B「No Limit」

31位 (週間3位) シックスナイン feat. ニッキー・ミナージュ & マーダ・ビーツ「Fefe」

32位 (週間21位) ダン+シェイ「Tequila」

33位 (週間4位) ポルトガル・ザ・マン「Feel It Still」

34位 (週間6位) ミーゴス、ニッキー・ミナージュ & カーディ・B「MotorSport」

35位 (週間27位) ラウヴ「I Like Me Better」

36位 (週間7位) ファイヴ・セカンズ・オブ・サマー「Youngblood」

37位 (週間12位) イマジン・ドラゴンズ「Whatever It Takes」

38位 (週間13位) オフセット & メトロ・ブーミン「Ric Flair Drip」

39位 (週間16位) ポスト・マローン「I Fall Apart」

40位 (週間7位) ザ・ウィークエンド & ケンドリック・ラマー「Pray for Me」

※週間チャートでトップ10入りしなかった楽曲について、ミュージックビデオを貼付しています。

昨年、週間トップ10入りを逃しながら年間40位以内に入ったのは5曲でしたので、倍近くになりますね。

先述した(そしてミュージックビデオを掲載した)9曲のうち、非ヒップホップ楽曲で目立つのはラジオエアプレイの強さでしょう。2018年のラジオエアプレイ年間チャートをみると、テイラー・スウィフト「Delicate」の9位を筆頭に、イマジン・ドラゴンズ「Whatever It Takes」の21位、バージィ「Mine」の23位、ラウヴ「I Like Me Better」の25位、NF「Let You Down」の29位、マシュメロ & アン・マリー「Friends」の32位、ダン+シェイ「Tequila」の35位と、非ヒップホップ楽曲はラジオエアプレイ年間チャート上位40位以内に全て登場しています(なおNFは、"クリスチャンヒップホップ"というジャンルであり世俗的なヒップホップと異なるという意味で非ヒップホップとしました)。逆にヒップホップではオフセット & メトロ・ブーミン「Ric Flair Drip」も、ポスト・マローン「I Fall Apart」もラジオエアプレイ年間チャート75位以内(掲載範囲)には登場していません。さらにラジオエアプレイの年間チャートトップ10に絞って見ると、ヒップホップ楽曲でのランクインはドレイク「God's Plan」のみであり、年間7位という成績はさすがに低いと言わざるを得ません。同年のストリーミング年間チャートにおいては「God's Plan」を筆頭にヒップホップが7曲もトップ10入りしていたのとは対象的な結果です。

 

毎週チャートを追いかけてきた身として肌で感じるのは、ヒップホップが"瞬間に強く"、それ以外が"持続に強い"ということ。アメリカのラジオエアプレイは上昇まで時間がかかる一方で、熱が冷めにくい効果もありますが、ストリーミングは瞬間的な盛り上がりに長けている側面があります。チャートを構成するうちこの2指標の乖離をどう埋めるかが、実はすべてのジャンルや曲にとっての課題ではないかと思うのですが、ヒップホップはその乖離を埋めるのが弱い気がしてなりません。ドレイク「God's Plan」はその盛り上がりにくいラジオエアプレイに合わせた長期的施策を採っていたゆえのラジオエアプレイ指標トップ10入りだったと考えていますが。

チャートからみる今年の洋楽トレンド、本日発表されるグラミー賞ノミネーションも踏まえた上で後日掲載します。