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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパンソングスチャートにおいてTwitter指標が盛り上がる理由を考える

最新3月25日付のビルボードジャパンソングスチャートについて、昨日は星野源「Pop Virus」の再浮上を牽引したTwitterの仕掛けについて書きました。沢山の反響をいただき、感謝申し上げます。

Twitter指標だけで全体の9割強を占めた「Pop Virus」。総合ポイントは1584ゆえ、1425ポイント以上はTwitter指標に因るものだと判ります。また今週Twitter指標トップのSexy Zone「La Sexy Woman」は総合26位/1777ポイント。この曲もおよそ9割がTwitter指標によるもので、Twitter指標だけで1600ポイント程度稼いだことに。Twitter指標の力、侮ってはいけません。

 

さてアメリカの場合、ビルボードソングスチャートにTwitter指標は含まれていません。その代わりSNS上で、曲に関係なく多く語られた歌手のランキングとしてSocial 50チャートが設けられています。

このチャートが始まったのは2010年12月11日付。このときは一切ランクインしていなかったK-Pop歌手が現在はSocial 50チャートを牽引しており、とりわけBTSは在籍127週、そのうち首位獲得が118週と驚異的です。彼らにおいてはSNSの存在が米での(主にアルバムチャートでの)成功につながったとみていいでしょう。

一方、日本でTwitter指標が設けられた理由。

僕らはTwitterでアーティスト名と楽曲名が含まれた投稿数を集計していますが、たとえばそこにはBOTが自動投稿したものも含まれています。しかし、こちらは計測するとそんなに大きい数値ではなかったんですよね。1万くらいにしかならないので、正直、無視してもいいんじゃないかという方針でやっています。しかし、ユーザーが意識してアーティスト名と楽曲名をさかんに投稿する場合もあるんですよ。リクエストのハガキと一緒ですね。しかしテレビやラジオ局にハガキを送るのと違うのは、Twitterの場合はその投稿が人目に触れることで一定のプロモーション効果があるんですよね。だからこれも僕たちが集計することで、その効果を実感して、さらにTwitterでのプロモーションが盛んになり、結果として、チャートが宣伝力を持つ時代に戻っていけたら面白いのかなあというように思います。

ビルボードジャパンが「複合チャート」を作る意味とは? 担当ディレクターに狙いを聞く - Real Sound|リアルサウンド(2015年3月22日付)より。上記は2頁目に掲載

阪神コンテンツリンクでビルボードジャパンを手掛ける礒崎誠二氏はこのように回答しています。なるほど、私たちのツイートはプロモーションの意味を成しているのですね。

この礒崎氏の発言も踏まえた上で、Twitter指標を大きく獲得する楽曲にはいくつかの特徴があるものと考えています。

ビルボードジャパンソングスチャートにおいて、より高いTwitter指標を獲得する楽曲の特徴

① テレビで取り上げられる

② ファンが多い (アイドル等)

③ 歌手側の公式Twitterハッシュタグを設けている

④ ファンの自主的なTwitter活動が行われる

⑤ 曲名や歌手名に特徴がある

①。特に『ミュージックステーション』(テレビ朝日 金曜20時)時に関連ワードが相次いでTwitterトレンド入りを果たしています。番組の(リアルタイム)視聴率は決して高いとは言えないものの、業界的にもSNS上でも無くてはならない番組と言えます。

またこれは穿った見方でしょうが、日本ではストリーミングやデジタルダウンロード未解禁の歌手は少なくありません。米では大半の歌手がストリーミングも解禁済ゆえ、テレビでパフォーマンスを観た方がダウンロードしたりストリーミングで曲に触れることでチャートに反映されますが、日本ではストリーミング等に直結しにくい現状があります。もし大半の歌手がデジタル解禁すればTwitter指標はなくなることこそないもののウェイトは減少するかもしれませんが、それに至っていない現状においてTwitter指標はストリーミング等の代替としても機能しているだろうというのが私見です。

なお①は、音楽活動以外で取り上げられる場合も影響します。

 

②は、先述したSexy Zone「La Sexy Woman」が解りやすいでしょう。この曲は今週のビルボードジャパンアルバムチャートで初登場首位を記録した『PAGES』の収録曲。ファンの数が多いとTwitterを行う人も増えるわけで、必然的にツイートは増えます。そして発売日には購入したことを記載する方が多く、ゆえに「La Sexy Woman」のツイート数が伸びたものと思われます。

また先週ニューアルバムのリリースが3月12日にアナウンスされたBTSについては、今週Twitter指標が躍進し3曲が50位以内にランクインしているのが特徴的です。

3曲ともすべて前週は100位圏外(300位以内)。これもファンが意識的にツイートしたかそれとも無意識かは判りませんが、結束力の賜物と言えます。

 

ただ、ファンであっても表記間違いはあるでしょう。その場合、歌手側の公式Twitterアカウントが曲名のハッシュタグを用意してツイートを促すことでそれがシェアされていくことがあります。昨日書いた星野源「Pop Virus」はまさにその好例であり、コアなファン以外にも楽曲や歌手が気になる方がツイートしやすい環境を作っています。これは③の事例に当たります。

 

④は特に、三浦大知「Blizzard」における"ブリ活"が該当。

ブリ活効果は、このブログエントリーを掲載した3ヶ月後の現在も続いています。

 

そして⑤。長文タイトルならば表記誤りがあるかもしれません。しかし最近では「アイデア」「Blizzard」をはじめ米津玄師「Lemon」のような1単語、AKB48「ジワるDAYS」のような1文という曲名が増えたように思います。またBTSは歌手名も3つのアルファベットで構成されているのでツイートしやすいと言えるでしょう。他方、ゲスの極み乙女。や ずっと真夜中でいいのに。等いい意味で癖のある歌手名も増えていますが、これらの歌手名はツイートしにくいようで実は書きたい衝動に駆られるのかもしれません。ちなみに略称もカウント対象となっています。

 

①から⑤はあくまで私見によるものですが、歌手側(芸能事務所やレコード会社)はこれら"ツイートしやすい条件"を参考にしてみて損はないものと考えます。

 

 

さて、そのTwitter指標において、気になる曲が。

現在ヒット中の映画、『ドラえもん のび太の月面探査記』主題歌に起用された平井大「THE GIFT」が、最新3月25日付ビルボードジャパンソングスチャートで12位を記録。シングルCDセールス指標が加算された2週前に10位を獲得した後も好調で、今週はデジタルダウンロードおよびストリーミング指標が10位、ラジオエアプレイ指標7位と3つの指標でトップ10入りしている一方、気になるのはTwitter指標の弱さ。昨年の映画『ドラえもん のび太の宝島』主題歌、星野源ドラえもん」がシングルCDセールス指標初加算週にTwitter指標トップを獲得したのとは対照的に、「THE GIFT」は4週連続でTwitter指標が100位圏外(300位以内)なのです。

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(※Twitter指標は水色で表示。星野源ドラえもん」についてはシングルCDセールス指標、および総合でトップを獲得した2018年3月12日付で多くの指標がトップ10入りしたことから、解りやすく拡大で表示しています。Twitter指標はその前週から首位をキープしていることが判ります。)

 

しかも平井大さんは3月8日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日 金曜20時)に出演。先述したように、この番組で披露された曲は総じてTwitter指標が上昇する傾向にあるはずなのですが。

 

これは仮説ですが、この曲が「GIFT」だったら伸びたのかもしれません。ただこれはビルボードジャパン側が、定冠詞の"THE"が入っている楽曲でツイートに"THE"が用いられていないとカウントに認めないとする場合ですが。略称もカウント対象となるゆえ、定冠詞がない場合はカウントしないとは断言出来ません。

(なお、『チャートの公平性を尊重するため、特定ワードの集計可否についてのお問合せにはお答えしかねます』とのこと。【Billboard JAPAN Chart】よくある質問 | Special | Billboard JAPANに掲載されています。)

 

他方星野源ドラえもん」の場合、"ドラえもんの主題歌が星野源"とツイートするだけで「ドラえもん」のTwitter指標が上昇するわけです。曲名を狙って名付けたわけではないでしょうが、見事に功を奏したわけです。

 

平井大さんに話を戻すと、Twitter指標を大きく獲得する楽曲の特徴として取り上げた5点のうち①、そして③は実施済です。

曲名のハッシュタグにはきちんと定冠詞の"THE"が付けられていますが、それでもTwitter指標は低いということに。これはこの公式Twitter発信のツイートの訴求力の強くなさ("#THEGIFT を付けてつぶやいて下さい"等積極的にツイートを促していない)も影響しているかもしれませんが、このエントリーを記載した段階での公式リツイート数が3桁に達しておらず、コアなファンが多くないようにも見えてしまいます。

いや、歌手のファンが多くないとしても、映画『ドラえもん』主題歌ゆえ多数のドラえもんファンがツイートしてもいいと思うのですが(そうすれば条件②は満たされます)…果たして次週以降、「THE GIFT」はTwitter指標で100位以内に入ることが出来るのか、気掛かりです。