先週は木曜と金曜の2日間、ビルボードジャパンソングスチャートにおけるTwitter指標の影響度の高さについて記載しました。
一昨日のブログエントリーでも触れましたが、今日取り上げる三浦大知「Blizzard」についてはファンの自発的なTwitter活動、いわゆる"ブリ活"がチャートアクションに大きく寄与していると書きました。この曲でのテレビ出演が一段落、ライブツアーも完結したタイミングで「Blizzard」について振り返ってみようと思います。
「Blizzard」のビルボードジャパンソングスチャートにおけるチャートアクションをみてみましょう。
※各指標について
・ポイント:総合ポイント
・ポイント前週比:前週および当週共に50位以内にランクインした場合のみ計算(50位未満は総合ポイントが表示されない)
・上記の理由により50位未満、総合ポイントで比較不能時は※で表示
・各指標について
(詳細はビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)
CD:シングルCDセールス
DL:デジタルダウンロード
ST:ストリーミング
RA:ラジオエアプレイ
LU:ルックアップ
TW:Twitter
MV:動画再生
KA:カラオケ
・各指標毎順位における[-]はランク圏外、[ ](ブランク)はランクインせず。これらはCHART insight | Billboard JAPANから曲名をクリックすると確認可能
・三浦大知「Blizzard」
(12月19日シングルCD発売、11月9日先行配信)
日付 ポイ
ント前週
比総合
順位CD DL ST RA LU TW MV KA 2018/11/5 ※ - 53 2018/11/12 ※ 2018/11/19 1192 ※ 47 27 14 2018/11/26 ※ ※ 59 38 - 87 68 - 2018/12/3 ※ ※ - 100 - 49 - - 2018/12/10 1267 ※ 42 48 - 33 31 49 2018/12/17 1667 131.6% 29 40 90 19 27 36 2018/12/24 3518 211.0% 11 12 42 3 2 9 2018/12/31 7400 210.3% 2 5 8 14 2 8 3 5 2019/1/7 4828 65.2% 6 25 10 16 10 14 5 5 2019/1/14 3548 73.5% 10 19 20 17 10 16 14 9 - 2019/1/21 3416 96.3% 10 37 23 17 22 19 3 14 - 2019/1/28 3559 104.2% 9 39 20 18 20 19 2 10 - 2019/2/4 2820 79.2% 10 59 36 24 50 22 4 12 - 2019/2/11 2711 96.1% 16 70 45 27 - 27 5 21 - 2019/2/18 2412 89.0% 16 94 47 29 - 26 6 19 - 2019/2/25 2061 85.4% 21 84 57 58 29 13 9 - 2019/3/4 1661 80.6% 27 - 73 70 39 14 15 - 2019/3/11 1973 118.8% 21 - 77 73 45 3 14 - 2019/3/18 1508 76.4% 32 - - 95 51 15 22 - 2019/3/25 1474 97.7% 32 - - 96 52 15 24 -
「Blizzard」は自身最長となる6週連続(通算6週)のトップ10入りを達成しました(ちなみに「EXCITE」は通算3週トップ10入り)。40位以内では15週連続ランクインを果たし、最新3月25日付に至るまでストリーミング指標は100位以内、ルックアップ指標は50位前後をキープ。そして先述したTwitterおよび動画再生指標の強さは抜きん出ています。
三浦大知さんについては「Blizzard」のリリース前、実力や曲の良さとチャート成績に大きな乖離があると述べ、弱い点を指摘し、勝手ながら改善点を提案した経緯があります。
当時、三浦大知さんのチャート上における弱みを【シングルCDセールスの失速に比例してランクダウンする】【動画再生指標が低い】と書きました。その上で、三浦大知さん(の運営)側には公式Twitterアカウントの細やかな対応等、もっと徹底してほしいと願った次第。その補完として、ファンによる公式アナウンスの代替を提案したのですが、「Blizzard」においては弱みを克服し、ファンおよび運営側が一役も二役も買ったものとみています。
「Blizzard」のチャートアクションがこれまでになく好調に推移した理由は、以下の5つから成るのではないでしょうか。
① 強力な作品のタイアップ
② 長期に渡るテレビ出演
③ ブリ活によるファンの支え
④ 運営側の意識の変化
⑤ YouTube対応の変化
①はなんといっても、主題歌に用いられた映画『ドラゴンボール超 ブロリー』の大ヒットが挙げられます。日本ではシリーズ歴代最高の興行収入をマークし、アメリカでも週間興行収入ランキング4位を記録。世界での累計興行収入が1億ドルを突破する大ヒットとなりました。
米津玄師「Lemon」、星野源「恋」等、ビルボードジャパンソングスチャートで大ヒットした楽曲の多くが、ヒットした映像作品の主題歌に起用されています。映像作品や楽曲の質の高さは勿論のこと、楽曲の世界観と作品との相乗効果もあり大ヒットに至ったといっていいでしょう。
②について。年末年始はテレビ局が特番主体の編成を行うこともあり、「Blizzard」を披露した番組は多くはありませんでした。しかしながら、『NHK紅白歌合戦』(NHK総合等)で別曲ですがパフォーマンスしたことが話題になったこと、そして2月24日に行われた天皇陛下御在位三十年記念式典で、天皇陛下作詞・皇后陛下作曲による「歌声の響」を披露したことが大きく影響していると言っていいでしょう。
CDリリースのおよそ1ヶ月後に式典参加のアナウンスがあった際も大きな話題になりましたが、独唱の模様がテレビやネットで生中継されたことで大きな反響が。熱冷めやらぬ中、2日後には『うたコン』(NHK総合 4月からは火曜19時57分)に登場し、当日の模様があらためて紹介されるとともに「Blizzard」を含む2曲を披露。式典の翌日からの1週間を集計期間とする3月11日付チャートでは、「Blizzard」がTwitter指標14→3位に躍進し、総合ポイントも前週比118.8%を記録。テレビで話題になることが如何に大事かが解ります。
③については間違いなく"ブリ活"が影響しています。Twitter指標では都合9週もの間、同指標でトップ10入りを果たしており、その強さが伺えます。しかもシングルCDセールス指標が加算される直前(デジタルは配信済)の昨年12月24日付の段階で既に、Twitter指標が2位にランクインしているのです。
そしてこの、ファンの自発的且つ積極的な行動が、運営側を動かしたと言えるかもしれません。
以前はシングルCDを発売してメディアに露出して一段落、というのが三浦大知さんに限らず多くの歌手(の運営側)の手法だったと思うのですが、「Blizzard」においては延期されたホールツアーの名古屋公演終了のタイミングで、同曲のライブ映像をYouTubeで公開。さらなる一手を打ってきました。これが④に該当します。
映像を新たに公開した1月29日を集計期間に含む2月11日付ソングスチャート(1月28日~2月3日が集計期間)では総合ポイントで前週比96.1%とほぼ前週並の勢いをキープしています。勢いを維持した理由は他にもあるかもしれませんが、ワクワク感を与えてくれる施策は口コミで話題になると共に、ファンにとってブリ活等をさらに続けていきたいというモチベーションにつながったはずです。
そして⑤。これは運営側の意識の変化とも絡んでくるのですが。「Blizzard」は動画再生指標において15週連続でトップ40入りを果たしているのです。これはこれまでの作品とは大きく異なっています。
ダンスが素晴らしく、そして踊りながらでも歌がぶれない三浦大知さんの作品を動画でチェックしたいと思う人は多いのではと思うのですが、その推測とは裏腹に動画再生指標が極めて弱く、前作「Be Myself」(2018)では一度として同指標で100位以内に入ることがありませんでした。無論、「Blizzard」が大ヒット映画の主題歌であったために映画ファンが流入したということはあるでしょうが、前作までの手法を大きく変え、フル尺で公開したことが大きく影響しているのではないかと考えます。
日本は他国ではほぼ見られない短尺でのミュージックビデオの公開が散見されます。日本では映像盤を同梱して発売すること、デジタルでの購入やストリーミング等での接触よりもシングルCDセールスを重視することが、音楽業界にとって今でも主流となっていることが背景にあるかと。つまり、映像をフルで観たいならばシングルCDを買ってほしいという意識(意図)が歌手や運営側にあり、ミュージックビデオが"プロモーションビデオ"と呼ばれ(続け)るのはそのような理由があるものと考えます。
しかしながら先述したように、他国では映像盤の同梱はほぼなく、ミュージックビデオもフル尺が基本と言えます。アメリカにおいてはYouTube再生回数もストリーミング指標としてソングスチャートに組み込まれているのですが、仮にアメリカで短尺版をYouTubeにアップすれば、あまりに無礼だとして信用失墜は免れないのではないかと思うのです。ちなみにアメリカでは一昨年、ポスト・マローンが「Rockstar」でサビのループだけのビデオをアップし再生回数を稼ぎましたが、このやり方をYouTubeが認めないよう対応。アメリカでは卑怯なやり方は許さないという姿勢がはっきり示されました。
今回フル尺で公開された「Blizzard」が主題歌となった映画『ドラゴンボール超 ブロリー』は世界中で公開されているゆえ、世界中からアクセスした方が「Blizzard」が短尺公開だと知ったら強く批判する可能性もあったかもしれません。
(尤も、日本の音楽業界がミュージックビデオのYouTubeでの公開を未だ短尺主体にしていることが、絶対的に間違っていると断言出来るだけの材料がないと思う自分がいます。短尺とフル尺とでチャートアクションにどう影響があるのかを比べ、中長期的に分析した上で結論を出す必要があるかもしれません。ただ、いくら音楽業界の意図は解ったとしても、フル尺ではないことが判明した際に愕然とするのは自分だけではないと思うのです。)
以上、①~⑤の要因によって、「Blizzard」がロングヒットに至れたと捉えています。
過去のエントリーではTwitter指標が強いことを主体的に取り上げてきましたが、最新3月25日付のCHART insightにおけるチャート構成比をみるとTwitter指標は3割強。他方、動画再生やストリーミング指標が2割前後を占めるなど、多くの指標でバランス良くポイントを獲得しています。Twitter指標だけに偏っていない、頼っていないこともまたロングヒットの条件を満たしていると言えます。
大きなトピックがなくなったゆえ今後のランクダウンは必至でしょうがしかし、各指標のバランスの良さを踏まえればその降下は緩やかなものと思われます。
「Blizzard」の2019年度(2018年12月10日付以降)における現段階での合計ポイントは46000弱。この数値、たとえば昨年度におけるAKB48のシングル(選抜総選挙投票権が封入された「Teacher Teacher」を除く)の、シングルCDセールス加算初週および2週目の合算分とほぼ同じなのです。昨年度と今年度で各指標のウェイトにおそらく違いがあり単純比較は出来ませんが、順調に行けば「Blizzard」は年間トップ40入りするのでは、と個人的には考えています。最新チャートではTwitter指標だけで500ポイント程度稼いでおり、仮にブリ活等でTwitter指標が今のレベルをキープすれば、同指標だけで年度末までに1万ポイント以上獲得する可能性も。少なくとも現状において「Blizzard」は、ビルボードジャパンソングスチャートを意識して人選を行う『NHK紅白歌合戦』当確と言えるでしょうが、さらなる高みを目指すためにはファンの応援や、たとえば『ドラゴンボール超 ブロリー』映像盤リリース時に何かしらの仕掛けを行う等運営側のさらなる一手も必要でしょう。