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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

日本のチャートにおける桜ソング上昇の原動力はやはりラジオエアプレイ指標だった…一方で動画再生指標が弱い理由

一昨日発表された4月8日付ビルボードジャパンの各種チャートは集計期間が3月25~31日。東京の桜が咲き誇ったタイミングと重なることから、同日付ソングスチャートにはいわゆる"桜ソング"のランクインが目立っています。最上位こそDA PUMPの今年のシングル「桜」(総合14位)であり20位以内にはこの曲のみが入っていますが、100位以内には「桜」を含め計6曲がチャートイン。そして面白いことに、各指標上位20曲で確認すると、シングルCDセールス・デジタルダウンロード・ルックアップが1曲ずつ、ストリーミング・Twitter・動画再生・カラオケが0に対し、ラジオエアプレイは4曲もチャートインしています。

ラジオエアプレイ指標では「さくら (独唱)」が14位、「桜の時」が17位そして「さくら」が18位という状況。2019年産のDA PUMP「桜」は同指標49位で、定番曲が上回っている状況です。

このような季節曲のチャートアクションについて、クリスマスソングでもラジオエアプレイが突出していることを以前記載しました。

ラジオエアプレイ指標とは若干異なりますが、エアプレイ回数に基づくプランテック調べのラジオオンエアチャート(集計期間はビルボードジャパンと同一)によると、森山直太朗「さくら (独唱)」と福山雅治「桜坂」が共に桜ソングで最上位(14位)となったのをはじめ、100位以内には合計13曲もの桜ソングがランクインしています。

 記事では『総体的にみると桜の咲き具合と地区毎のオンエア数が比例しており、関東エリアでは次週も引き続き、桜ソングのオンエアが見込めそうだ』とあります。エアプレイ回数に人口比率と聴取率を加味したラジオエアプレイ指標でも同様のことが言えそうです。

クリスマスソングにおいて、アメリカではストリーミングがラジオエアプレイ等よりも季節感が反映されていることを以前書きましたが、一方日本においてはどうでしょう。4月8日付ビルボードジャパンストリーミングソングスチャートをみると上位100曲に桜ソングは4曲のみ、また最上位となるDA PUMP「桜」が28位という状況であり、日米のラジオエアプレイとストリーミングの差を実感します。

 

 

ちなみに、日本でストリーミングや動画再生(アメリカではストリーミング指標の中に定額制音楽配信、動画再生双方が含まれます)が伸び悩むのは無理ないかもしれません。ストリーミングを解禁していない歌手が未だ少なくないこともありますが、動画再生についても、たとえば上記桜ソングの動画の多くは短尺版、または途中CM入りとなっており、またケツメイシ「さくら」は公式なミュージックビデオ自体YouTube未掲載の状況です。ケツメイシについては、たとえば移籍後のレコード会社発の楽曲のミュージックビデオが掲載されていたり、Twitterを調べると以前はどうやら(違法か合法かは不明ですが)「さくら」のミュージックビデオが以前YouTubeで観られながらも後に削除されたことが推測出来ます。そして削除された動画がおそらくは合法であったことが、CHART insightから見えてきます。

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2016年春にはかすかながら動画再生指標(赤の折れ線グラフ)がランクイン。違法アップロードながら然るべき登録がされたものもカウント対象になりますが(ダイナソーJr.をはじめ複数の楽曲が動画再生指標を稼ぎチャートを急伸した理由…ほぼ判明しました(2月10日付)参照)、この当時も今でも違法アップロードにわざわざ楽曲登録を行う方がどれだけいるかは疑問ゆえ、公式動画が消されたと推測するのが自然かと。だとすれば、動画を観た方がストリーミングに移行したり、楽曲もしくはアルバムの購入に至る動機が生まれないという点において、削除措置は機会損失ではないでしょうか。移籍等が動画削除の背景にあったのかもしれませんが、そのようないわゆるオトナの事情で楽曲を潰えさせるというのは音楽業界に蔓延る問題だと思います。