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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

人気YouTuber”踊ってみた”動画が牽引、aiko「ストロー」がチャート再浮上…5月6日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

4月22~28日を集計期間とする、5月6日付のビルボードジャパン各チャートが昨日発表され、総合ソングスチャートはジャニーズWEST「アメノチハレ」が制しました。

前週トップだったラストアイドル「大人サバイバー」は登場2週目にして100位圏外へ(300位以内にはランクイン)。あらためて持論を記載するならば、シングルCDセールス指標が初加算となった週にピークを迎える曲においては、シングルCDセールス指標の全体に占めるウェイトが大きければ大きいほど翌週順位をキープ出来ないことが多いため、特にアイドル曲においてはシングルCDセールス指標初加算週のみならず翌週の動向をみて、真のヒットか否かを判断すべきです。「大人サバイバー」については不安視していたのですがそれが的中した形です(ビリー・アイリッシュ、アメリカの成功が日本にも波及なるか…4月29日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック(4月25日付)参照)。ゆえに、同じくシングルCDセールス指標が過半数を占める、今週総合1位および2位の曲が次週どうなるかも注目しないといけません。

 

 

さて今週は面白い動きがあったので紹介。昨年のまさに今日リリースされた、aiko「ストロー」がここに来て再浮上を果たしたのです。

シングルCDセールス指標が初加算された昨年5月14日付で最高6位を記録したこの曲ですが、最新週において牽引しているのは動画再生指標で、前週300位未満だった同指標は今週一気に8位に上昇。その結果、総合チャートでも前週の100位未満(300位以内)から80位へ上昇し、46週ぶりに100位以内へ返り咲いたのです。

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動画再生が急激に盛り上がる理由を探ると。

4月20日に公開されたこの動画が大きく牽引していることは間違いないとみていいでしょう。

ぶんけいさんと@小豆さんからなる人気YouTuber、パオパオチャンネルが発信した踊ってみた動画が今朝の段階で200万回再生を記録。公開日が前週のチャート集計期間終盤だったゆえ、5月6日付ソングスチャート集計期間における再生回数は百数十万といったところでしょうか。この動画がチャートアクションに大きく寄与していると捉えることが出来ます。というのも、この踊ってみた動画には「ストロー」が正式登録されているため。

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(楽曲登録の確認のため、YouTubeのキャプチャを掲載しました。問題があれば削除いたします。)

この登録により、動画はオフィシャル音源を使用した”ユーザー生成コンテンツ(UGC)”として動画再生指標にカウントされたわけです。このユーザー生成コンテンツによりチャートインを果たした楽曲といえば、荻野目洋子「ダンシング・ヒーロー (Eat You Up)」や、最近ではダイナソーJr.「Over Your Shoulder」が挙げられます。

動画は現段階でパオパオチャンネル15本目となる200万再生を突破し人気動画となっていますが、一方で同チャンネルが発信し現段階で650万近く再生されているSHISHAMO「君と夏フェス」の踊ってみた動画が動画再生指標にカウントされていないのは、ユーザー生成コンテンツを満たしていないことになります。

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登録情報が見当たらないことに加え、”原曲:『君と夏フェス』SHISHAMO”と説明文に記載され、使用曲がカバー版であることもカウントされていない理由。これが正式なSHISHAMOの楽曲で、且つ登録がされていたならば「君と夏フェス」の動画再生指標が昨年秋に急伸したはずなのですが。下記に掲載した同曲のCHART insightを見ると昨年9月10日付以降総合、そして各指標がいずれも300位以内にランクインしていない状況ゆえ、上記踊ってみた動画はカウントされなかったことが判ります。

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これはヤバイTシャツ屋さん「ハッピーウェディング前ソング」の踊ってみた動画(→YouTube)でも同様。また、ドラマ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ)の”朝礼体操”に用いられ、同じくユーザー生成コンテンツに用いられチャートを上昇したJW・メディア・ミュージック「Dance Stars」を使った【3年A組】30分間で朝礼体操どれくらい踊れるのか - YouTubeについては楽曲登録がされておらず、カウント対象外とみられます(なお、「Dance Stars」がチャートインしたことについては以前記載しています)。

 

となると、aiko「ストロー」を踊ってみた動画において、なぜ本人歌唱バージョンが用いられたのかが気になるのです。実は今回の踊ってみた動画の説明には、”◎今回楽曲についてポニーキャニオン様の許諾を頂いております”とあります。

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一方でaikoさん側がYouTubeに掲載したミュージックビデオ(そしてパオパオチャンネルの説明文に掲載されたYouTubeのリンク先)はショートバージョンであり、aikoさん側が(芸能事務所/レコード会社どちらかは不明ですが)ミュージックビデオ公開にオープンなスタンスではないように思われます。またaikoさんは現段階でストリーミングを解禁していないのですが、YouTubeの動画はYouTube Premium会員が使用出来るYouTube Musicというストリーミングサービスにてオフライン再生が可能となり、実質的にフルでストリーミング可能な状態になるのです(ちなみにこのサービスにおける再生は、ビルボードジャパンソングスチャートにおいてはストリーミング指標ではなく動画再生指標にカウントされます)。このサービスについて、サービスを懸念してミュージックビデオの公開をシングルCD発売直前まで控える動向も含めて以前紹介しました。

このようなストリーミングされる可能性(懸念)がありながらも今回、パオパオチャンネルaikoさん側がなぜ使用を、それもフルバージョンにてOKしたのかは解りかねます。が、調べるうちに@小豆さんがaikoさんのファンだということが判り、なるほどaikoさんは@小豆さんのためにフルでの使用を許可したのかもしれません。だとしたら、なんという粋な計らいなのでしょう。

そしてその結果が今回の「ストロー」のチャートアクションとなったわけです。

 

 

最後に私見、というか願いを。今回のチャートアクションを踏まえ、aikoさん側には是非ともストリーミングおよび(一部は既にフル化されていますが)ミュージックビデオのフルバージョン解禁を検討していただきたいと思っています。最新ソングスチャートでは「ストロー」のデジタルダウンロード指標も97位に上昇しており、これはほぼ間違いなくパオパオチャンネルを観た方による購入が大半だと考えられます。YouTubeのミュージックビデオフルバージョン公開やストリーミング解禁により、接触は増えても所有(購入)は増えないのでは?むしろ減るのでは…という声もあるかもしれませんが(そしてそれこそがこれまで多くの歌手がストリーミングに後ろ向きだった理由と思われます)、今回のチャートアクションはその考えを覆すひとつの検討材料になるかもしれません。6月5日にシングルコレクションアルバム『aikoの詩。』がリリースされますが、その時期に解禁すればアルバムへの話題性、そしてaikoさん自身への注目度も高まることでしょう(尤も、現実的な解禁ベスト時期はシングルコレクションアルバムリリース後数週経ってからかもしれません)。ストリーミングを経てファンになり、購入に至るという流れも確実に存在するはずです。

ミュージックビデオフルバージョンと短縮版については、先月書いた記事で自分なりの見方を書いています。