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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

テイラー・スウィフト、「Me!」首位獲得に至れなかった理由は「Old Town Road」の存在のみにあらず? その理由を数字から紐解く

最新5月18日付の米ビルボードソングスチャート、その速報紹介時にひとつ気掛かりなことを書きました。

いやいや、テイラー・スウィフト feat. ブレンドン・ユーリー「Me!」は順位を落としたとしても1ランクダウンにとどまってると言われるかもしれません。それは間違いないのですが、では数値の上ではどうなのか、米ビルボードの記事を追いかけてみました。3曲ものナンバーワンヒットを生み出しポップアイコンとしての地位を確立したアルバム『1989』(2014)からのリード曲「Shake It Off」、『Reputation』(2017)からの先行曲「Look What You Made Me Do」と、今回の「Me!」(テイラー・スウィフト feat. ブレンドン・ユーリー(パニック・アット・ザ・ディスコ))を比較します。

※ ST:ストリーミング、DL:デジタルダウンロード、RA:ラジオエアプレイの略。

※ 初週はラジオエアプレイのみがカウント対象。

 

・「Shake It Off」

日付 総合順位 ST 順位

前週

DL 順位

前週

RA 順位

前週

2014/8/30 -             2900万 45  
2014/9/6 1 1840万 2   544000 1   7100万 9  
2014/9/13 1 880万 4 52%↓ 355000 1 35%↓ 8800万 7 24%↑

 

・「Look What You Made Me Do」

日付 総合順位 ST 順位

前週

DL 順位

前週

RA 順位

前週

2017/9/9 77             4600万 23  
2017/9/16 1 8440万 1   353000 1   6400万 14  
2017/9/23 1 6120万 1 28%↓ 114000 2 68%↓ 7200万 13 15%↑

 

・「Me!」

日付 総合順位 ST 順位

前週

DL 順位

前週

RA 順位

前週

2019/5/4 100             3690万 27  
2019/5/11 2 5070万 2   193000 1   5410万 13  
2019/5/18 3 2680万 5 47%↓ 29000 4 85%↓ 6220万 10 15%↑

デジタルダウンロードの初週売上が「Shake It Off」と「Me!」では大きく異なりますがこれは音楽業界全体におけるデジタルダウンロードの勢いが落ちており、やむなしと言えます。むしろストリーミングへ移行し、現在ではチャートにおける最大のシェアがそちらになっていることは考慮しないといけません。それを踏まえて、「Me!」における”異変”を書くならば。

 

① デジタル2指標のダウン幅が大きい

デジタルダウンロードの時代における勢いの差こそあれ、最新5月18日付における「Me!」の同指標の前週比85%ダウンはあまりに大きいといえます。最新5月18日付の集計期間開始2日前に【2019 ビルボードミュージック・アワード】で「Me!」が披露されており、その余韻が最新週にも表れるものと考えていたゆえ尚の事です(一方、「Shake It Off」は2014年8月24日に【MTVビデオ・ミュージック・アワード】で披露。現在とは集計期間の開始/終了曜日が異なりますが、同年9月6日付チャートにおけるデジタルダウンロードの集計期間が同年8月24日までであり、翌週にもその余韻が残ったことがダウン幅の大きくなさにつながったものと考えられます)。ストリーミングも、「Shake It Off」の前週比52%ダウンには勝ったものの「Look What You Made Me Do」の28%ダウンより大きく低下しています。

 

② ストリーミングの数値自体が小さい

デジタルダウンロードとは対象的にストリーミングは年を追う毎に需要が高まっているのですが、にもかかわらず「Me!」は「Look What You Made Me Do」のおよそ6割しか獲得出来ませんでした。2017年9月16日付における「Look What You Made Me Do」のストリーミングは、(その週までに)同年最大の値を獲得したのみならず、女性歌手による歴代最高も更新。ゆえに「Me!」はその記録を上回るという見通しがあったのかもしれません。また、「Look What You Made Me Do」は翌週も6000万台にとどまっているのですが、この2017年9月23日付には自身の「…Ready For It?」が4位に初登場を果たしており、2曲で票割れ現象が起きているとも言えます。にもかかわらず「Me!」は「Look What You Made Me Do」に大きく敗れる結果となってしまいました。

 

この2点が、首位獲得を逃したことに影響しているものと考えられます。

 

いやいや、「Me!」はリリースタイミングが悪かったんだという見方もあるでしょう。前週の数値としては1位を獲得してもおかしくなかったというのは毎週チャートを追いかけている身として強く実感しますが、仮にリル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」がリリースされていないという世界を仮定してそこで「Me!」が前週首位を獲ったとしても、今週はショーン・メンデス「If I Can't Have You」に敗れ、次週はエド・シーラン & ジャスティン・ビーバー「I Don't Care」が好位置に登場する見通しであることを踏まえれば、1週天下にとどまったであろう可能性は否定出来ません。「Look What You Made Me Do」は3週首位を獲得しながらもその後急落し、2017年度年間ソングスチャートでは39位と決して高くなかったのですが、「Me!」の数値を踏まえればこのままいくと「Look What You Made Me Do」以上のダウンが予想されるため、「Me!」は週間を制することが出来なかったのみならず年間でも存在感を示すことが厳しいのではと考えてしまいます。

 

この「Me!」が来るべき7枚目のオリジナルアルバムからの先行曲と米ビルボードでは記載されていましたが、ともすればアルバムを先延ばしにして体制を立て直してくるかもしれません。それだけ「Me!」は順位のみならずチャートを構成する各指標の数字をみても、ターニングポイントになりかねないものと思われます。