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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

King Gnu、『Sympa』未収録の「白日」に次いでアルバム収録曲「The hole」のミュージックビデオを制作した意図を考える

King Gnuの”次の一手”、チャート上でも有効に作用しています。

5月16日木曜、アルバム『Sympa』収録の「The hole」のミュージックビデオが公開されました。

King Gnuの今年に入ってからの戦略は実に興味深いものがあります。アルバム『Sympa』を今年1月16日にリリースして間もなく、アルバム未収録でドラマ主題歌の「白日」を2月22日に配信限定で発表。そして今回、『Sympa』収録曲をミュージックビデオで公開する…という展開。アルバムリリース後にシングルカットするという動きもある中で、一度未収録曲を挟むという方式はなかなか無いと思うのです。

「The hole」は5月13~19日を集計期間とする最新5月27日付ビルボードジャパンデジタルダウンロードソングスチャートでは53位、ストリーミングソングスチャートでは90位に入り、総合ソングスチャートでも66位に初登場を果たしています。そして同曲が収録されたアルバム『Sympa』は最新5月27日付総合アルバムチャートで前週から2ランクダウンし19位となっていますが、詳細な数字が出ているアルバムCDセールスチャートでは前週から3ランク落とし24位となったものの売上枚数は33枚増加し1983枚へ。デジタルダウンロードもそこまで落とさないかもしくは微増の可能性があり、「The hole」を機にアルバム購入に動いた方も少なからずいらっしゃるものと思われ、つまりは次の一手が巧く作用したと言えます。また、アルバム未収録の「白日」は最新ソングスチャートで5位をキープしながらポイントは前週比107.4%となっており、「白日」にも効果をもたらしたと言っていいでしょう。

 

King Gnuが「白日」をリリースしチャートに登場して間もなく、そのリリースおよびチャートアクションが『Sympa』にも波及し相乗効果となっていることについては一度紹介しました。

ブログエントリーから2ヶ月半が経過し、あらためて両者のチャートアクションをみると。

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「白日」前にはランクダウン一辺倒だった『Sympa』が、「白日」リリース後には見事なまでの安定期に入っています。それでも39位までランクダウンしたものの5月6日付で21位に急上昇、これは集計期間中の4月26日に『ミュージックステーション』(テレビ朝日 金曜20時)で「白日」を披露した効果に因るものとみられます。いや、「白日」は先述したように『Sympa』未収録なのですが、テレビ出演がKing Gnu自体の注目度や知名度の上昇につながった、その結果としてのアルバムチャート上昇とみていいかもしれません。

 

このタイミングで「The hole」のミュージックビデオを投入した意図ははっきりとは解りかねますが、King Gnuは今夏様々な音楽フェスに出演する他、ソングライトを手掛けた常田大希さんの新プロジェクト、millennium paradeが今週初のシングル「Veil」をリリースしたことも関係しているのかもしれません。

とはいえ、「The hole」は音楽フェスにはいい意味で似つかわしくないかもしれない壮大ながら繊細な楽曲であり、millennium paradeもボーカルが異なることから、「The hole」のミュージックビデオ公開がフェスや新プロジェクトを見据えていたとは言えないかもしれません。ただただ純粋に『Sympa』の、King Gnuの素晴らしさを広げるための一環としての戦略であるのではないかという気がしますし、チャートアクションの好調さはそれが結実していることを証明しているように思います。